設立後の登記


2018/7/5



登記制度の目的は会社の信用維持と取引の安全(登記事項は公開される)

会社を設立しておきながら、会社が「法務局」で「登記」されているということを認識していない人がいます。登記とは登録という程度の理解でよいと思います。また、法務局は会社設立手続だけに関する役所であると思っている人がいます。法務局は会社という存在を管理して、会社に関する一定の情報を公開する役所なのです。

会社の「商号(名称)」「本店(所在地)」「目的(事業内容)」「役員(取締役、監査役など)」「代表者(氏名と住所)」「資本金」などは登記しなければなりません。登記は会社の義務で、会社が手続をしなければなりません。法務局が調査して登記をするのではありません。

会社の登記は、人でいう「戸籍」や「住民票」に相当するものです。しかし、戸籍や住民票が個人情報保護の対象であるのに対して、会社の登記事項は一定の方法で公表されます。これは、登記された商号やその他会社に関する事項の信用を維持するため、会社と取引をする者に会社に関する情報を判断材料として提供することで取引の安全を図るためです。

会社の登記事項は誰でも知ることができます。登記簿は誰でも見ることができるのです。このことを知らない人が非常に多いです。法務局で一定の手数料を支払えば誰でも登記の内容を知ることができます。また、法務局は登記の内容を「登記事項証明書(登記簿謄本)」という書面にしてくれます。「どうしてそんなことを知っているんだ!?」ということが、実は法務局で公表されているのです。

設立後に登記事項に変更があった場合(登記する義務がある)

会社を設立してから、登記している事項に変更があった場合には変更するための登記をしなければなりません。これは「義務」です。自社のPRをするためではありません。「商号(名称)」「本店(所在地)」「目的(事業内容)」「役員(取締役、監査役など)」「代表者」「資本金」などが変わった場合は速やかに登記をしなければならないのです。

「登記されている所在地と実際の所在地が違う?」
「登記されている代表者は三年前に死んでいるぞ!」

これでは信用されません。

設立後の登記にも費用が必要です。もったいないかもしれませんが、会社としての信用を維持するためのコストなのです。何とか捻出してください。登記をしなかった場合は「過料」が課されます。会社法「第915条第1項」と「第976条第1項第1号」に明記されています。

登記上の本店と事実上の本店が異なる(登記上の本店は簡単に知ることができる)

設立後、本店(活動拠点)を移転したのにその登記をしていないことがあります。確かに、登記上の本店を変更しなくても会社の活動自体はできますので、ホームページや名刺では登記をしていない新たな活動拠点を記載していることがあります。

しかし、このことを取引先に知られた場合には非常に印象が悪いです。「わざわざ登記簿を調べないだろう」と思われるかもしれませんが、登記簿を見なくても知ることができるのです。

国税庁・法人番号公表サイト」で簡単に調べることができます。当然、無料です。

「法人番号」とは国税庁が各法人(会社や学校法人など)に対して指定する番号のことです。法人番号は、各法人へ通知した後、商号または名称、本店または主たる事務所の所在地とともに公表されます。これを公表するのがこのサイトです。なお、会社の登記を扱う役所はあくまでも法務局ですので、より詳しい登記内容を知りたい場合には法務局まで行かなければなりません。

これで調べた本店所在地をグーグルマップで検索すれば、「この会社の本店は駐車場なの?」ということになってしまいます(本店移転後にビルが取り壊され駐車場になっている)。

これでは信用されません。

「みすぼらしい」ですよ!
「うさんくさい」ですよ!

「変更の登記をしなければならないことも知らないのか!?」
「登記費用(数万円)も払えないのか!?」

「登記上の本店は創業の地で愛着がある」というのであれば、それなりの外形を整えておく必要があります。人を招ける建物は必須です。そして、事実上の本店は「支店」として登記しておきます。

設立当初から登記上の本店と事実上の本店が異なることもあります。登記上の本店を、今後も転居する予定がない自宅にするという方法です。こうしておけば登記費用を節約できます。これも同じです。

今流行りのバーチャルオフィス・・・、これも同じでしょうね。

登記事項証明書(登記簿謄本)を提出しなければならない役所や取引先

設立後、登記事項証明書は様々な場面で提出や提示が求められます。その際、登記事項が変更になっているのに(例えば所在地や役員は変わっている)のにその登記をしていなかった場合には、手続や取引が難航する場合があります。

税務関連役所(税務署、都道府県税事務所、市役所・町村役場)には、設立時、設立後に所定の登記事項に変更があった場合、登記事項証明書(写しで可)を提出しなければなりません。

金融機関で預金口座を開設するとき、融資を申し込むときには必ず登記事項証明書の提出を求められます。事務所や倉庫を借りる場合も貸主から提出を求められます。

会社を清算する場合も登記が必要

会社を消滅させる場合も登記が必要です。会社を消滅させることを「清算」といいますが、この登記をしておかなければいつまで経っても会社は登記されたままで、様々な義務(登記は当然として税務申告など)が生じます。「もう活動していないのだから・・・」は通用しないということです。

定款の定期的な見直し

登記と深く関連してくるのが定款です。

設立時に作成する定款は「原始定款」といわれます。定款は会社の根本規則ですので、そう頻繁に変更するものではありません。しかし、変更の必要が生じたときは速やかに定款を作成し直し、登記が必要な場合(商号、目的、本店の変更など)はこれも行う必要があります。

なお、原始定款とは異なり「変更後の定款」は公証人の認証は不要で、登記にあたっても「書面としての定款」の提出は不要で「定款変更の議事録」を提出すれば済みます。そんなことから、設立後に定款を変更しても「書面としての定款」を作成し直していないことがあります。しかし、役所や金融機関には、変更後の定款(写しで可)を提出しなければならない場合がありますので、定款を変更したならば速やかに「書面としての定款」を変更後の内容で作成しておくことが必要です。

重要であるけれども登記事項ではないこと

会社にとって重要であるけれども登記事項ではないこともあります。

■事業年度
事業年度は必ず定めて定款に記載しなければなりませんが登記事項ではありません。ですから、第三者に知られることはないのです。

■決算書
決算書そのものが法務局で公表されることはありません。決算書の一部、売上高や保有する預金残高も登記事項ではありません。登記事項となるのは資本金だけです。純資産も登記事項ではありません。

■株主
株主名やその保有株数も登記事項ではありません。設立時に法務局に提出する書類に株主やその出資額に関する書類(定款など)が含まれ、設立後の登記には「株主リスト」が必要ですが、株主に関する事項は登記事項ではありません。

登記は税理士の仕事ではない

設立登記を税理士がしてくれたことから【注】、設立後の登記も税理士がしてくれていると思っている人がいます。税理士は登記に関する手続をすることができません。登記は「司法書士」の仕事です。税理士が登記手続をすれば司法書士法違反(逮捕)です。

【注】実際には司法書士を紹介しているのですが、それに気がついていない人が多いです。