株式譲渡


2017/7/5

貸したお金(出資した資金)を返して欲しい!

大変よくあることです。必ず、このような要望をする「株主」が出てくると考えておく必要があります。

出資した資金に返済や返金という考えはありません。減資という手続により可能ですが、ただでさえ資本金が少ない中小会社では事実上不可能です。また、最近では会社による自己株式の買取りという方法が上場企業などでは盛んに行われていますが、これについても中小会社では現実的ではありません。

株式への投下資金を回収する方法は、株主が他の株主あるいは他の人(他の会社でもかまいません)に譲渡するのが原則的な方法です。このことは、上場企業の株主が株を売買することを考えればご理解いただけるかと思います。しかし、問題は中小会社においては株式を売買する市場も存在せず、さらに譲渡価格の決定方法が明確でないということです。

この譲渡という手続によらずに、会社の資金で返金した場合には、返してもらった人(株主)は会社からお金を借りていることになります。会社にとってはその人に貸していることになります。当然その人は金利を会社に支払う必要があります。株主は「激怒!」するでしょうがこれが正しい扱いです。

譲渡先と譲渡価格

■譲渡の相手先

やはり、会社関係者に限られてくると思います。経営者は譲渡が必要となった際に備えて譲渡先を探しておくだけでなく、自ら買取る心構え(さらには資金)が必要です。あらかじめ、このような約束をしておくことも有意義かもしれません。つまり、設立当初は多数の出資者が存在しているけれども、将来的には特定の者が買取ることにより当初出資者は資金を回収できます。

■譲渡価格

大変厄介です。「株式」のように価格の算定が難しい「資産」はないからです。

「当初一株5万円だったので、5万円で買取ります(買取ってください)」

創業後、順調に業績が向上していれば株価は当初出資額を上回り、業績が下降していれば下回るのが一般的理屈です。しかし、上場企業の株価が業績とかけ離れた水準にあることも多いことから、株価の算定はそんなに簡単ではないことはご理解いただけるかと思います。

「譲渡時の一株(一口)あたりの純資産額、利益、配当を基準に・・・」など、明確な取り決めをしておく必要があります。

仲間が独立するときの手続

いままで一緒に会社を経営してきた仲間が独立する場合があります。

■取締役の退任あるいは辞任
取締役は辞めることができます。任期満了の場合を退任、任期途中に辞める場合を辞任といいます。取締役でなくなった場合にはその旨を登記しなければなりません。また、取締役の員数(最低必要人数)が不足する場合には、後任の取締役を選任しなければなりません。

■株式の譲渡
独立を機に会社に対する出資を回収するには、保有する株式を他の株主(会社ではありません)に譲渡する必要があります。この際、譲渡価額が問題となりますが、「当初出資額<譲渡価額」であれば譲渡所得に対する課税問題が生じます。

■退職金の支給
勤務日数や功績に応じて退職金を支給することができます。

■一部の取引先や従業員の承継
このようなこともあるでしょう。承継する範囲については十分話し合って決めるとともに、取引先にも正確に通知しておく必要があります。

■一部財産の譲渡
在任中に使用していた備品(机・椅子、パソコン、書籍など)や車両などを独立後もそのまま使用したいこともあるでしょう。その場合には、適正な価額で譲渡すればよいです。

★独立後も友好的な関係を保つ
独立後も友好的な関係を保ち取引関係を結ぶ場合もあるでしょう。そのような場合には、そのまま取締役として残ってもらい株式も保有し続けてもらいます。さらに、仲間が新たに設立する会社の株主と取締役になります。こうしておけば関係がより強固になります。

会社を引き継ぐ場合の注意点

今まで誰かが支配していた会社を引き継ぎ、以後は自身がその会社を支配するという方法があります。なんだか難しいような気がしますが、少し前に壮絶な買収劇で世間の注目を集めたライブドア(堀江貴文、フジテレビ)や村上ファンド(村上世彰、阪神電鉄)はこの手法を用いたのです。もっとわかりやすい例は、プロ野球チームの買収です。プロ野球チームを譲り受けた者は、チーム名、本拠地、監督・コーチ、戦力を自由に決めることができます(プロ球団も株式会社形態です)。

会社という存在は、不動産、貴金属、石油などと同様、「物」として売買できるのです。会社は組織ですので、組織という人の集団を動かすリーダーが必要ですが、このリーダーを選ぶのは会社の所有者(会社を買った者)です。資金がある者は会社という物を買い、会社を動かすリーダーになれるのです(自身をリーダーとして選ぶことができます)。

■役員変更登記をする
会社を動かすのは代表取締役という役員です。自身が代表取締役になるには、法務局で代表取締役として登記しておく必要があります。ただし、そのためには株主総会で取締役に選任されなければなりません。

■株式を譲り受ける
代表取締役になっただけでは十分ではありません。会社の最重要事項を決定するのは株主です(株主総会の多数決で決めます)。会社を支配するには過半数以上の株式を譲り受けておく必要があります。取締役を選任するのは株主ですので、株主から取締役として選任されなければ代表取締役にはなれないのです。

■会社の実印を引き継ぐ
これも大切なことです。会社の実印は法務局に登録しなければなりません。上記の役員変更登記をするにも会社の実印が必要です。また、会社が重要な契約書に押印する場合には、契約書に会社の実印で押印するとともに法務局が発行する印鑑証明を添付するのが通常です。

上記の手続は前代表取締役や前株主との間に強固な信頼関係があれば比較的簡単にできます(特に親族間であれば容易にできます)。実際に難航する(悩む)のは次の点です。

〇現存する借金の返済
〇退任する取締役への退職金の支払い
〇退任する取締役が一部事業を引き継ぐ場合の会社との関係
〇従業員の雇用の継続

既存の会社を引き継げば手っ取り早く事業を始めることができます。「裸一貫」の場合のように試行錯誤も不要です。しかし、引き継いだならば、それはそれで苦労も多いのです。