株式譲渡


2018/7/5



貸したお金(出資した資金)を返して欲しい!

大変よくあることです。必ず、このような要望をする「株主」が出てくると考えておく必要があります。

出資した資金に返済や返金という考えはありません。減資という手続により可能ですが、ただでさえ資本金が少ない中小会社では事実上不可能です。また、最近では会社による自己株式の買取りという方法が上場企業などでは盛んに行われていますが、これについても中小会社では現実的ではありません。

株式を譲渡する(株主が投下資金を回収する方法)

株主が株式への投下資金を回収する方法は、資金を回収したい株主が他の株主あるいは株主以外の者(会社でもかまいません)に譲渡するのが原則的な方法です。このことは、上場企業の株主が株を売買することを考えればご理解いただけるかと思います。しかし、問題は中小会社においては株式を売買する市場も存在せず、さらに譲渡価格の決定方法が明確でないということです。また、譲渡の相手先を誰にするかも問題になります。得体の知れない者を株主として受け入れることができないからです。

資本金の返金を強行した場合の扱い(返金した株主への貸付金)

株主の投資資金の回収を株式譲渡という方法によらず、会社の資金で「返金」した場合は返してもらった人(株主)は会社からお金を借りていることになります。会社にとってはその人(株主)に貸していることになります。当然その人(株主)は金利を会社に支払う必要があります。その人(株主)は「激怒!」するでしょうがこれが正しい扱いです。

資本金を返金すれば決算書に形跡が残る(怪しげな資産)

「どうせ資本金なんて、会社を設立するときにだけ役所(法務局)に見せればいいんだろ!」

ごもっともです。しかし、設立の手続はそれでよいかもしれませんが、このようなことをすれば決算書にその形跡がくっきりと残ります。詳しい説明は省略しますが、決算書の一部である貸借対照表に「怪しげな資産」が計上されてしまうのです。この額がごく少額な場合はよいのですが、資産に占める比率が大きい場合には「資本金を返金した」ことは一目瞭然です。第三者からすれば「資本金は多いけれどもそれ相応の資産がない(資本金の額は見せかけにすぎない)」ことが容易にわかります。

資本金を返金した結果として貸借対照表に怪しげな資産が計上され、金融機関などから厳しい指摘を受け「後悔する人」あるいは「激怒する人」が非常に多いです。多くの人は「資本金の返金は誰でもやっている」あるいは「返金してもばれない(決算書に返金の事実が表れることを知らない)」と考えているので金融機関などからの指摘に驚くのです。

返金に替えて会社の資産を譲り渡す

これも現金で返金するのと同じです。譲り渡した資産(不動産や車両など)の時価相当額が貸付金になります。さらに、時価相当額が簿価(貸借対照表に計上されている金額)よりも大きい場合には譲渡益が生じ法人税が課税されます。また、資産によっては消費税も課税されます。この方法は現金で返金する以上に処理が面倒で株主ともめます。

株式を譲渡する相手先と譲渡する価格(経営者自らが買い取る準備をしておく)

株主が投資資金を回収できるようにしておくためには、あらかじめ譲渡先を確保しておくだけでなく、譲渡する際の価格(株価)の計算方法も定めておく必要があります。

■譲渡の相手先

やはり、会社関係者つまり会社と信頼関係がある「既存の株主」「取引先」「従業員」に限られてくると思います。しかし、まずは経営者が真っ先に買い取る心構えでなければなりません。譲渡を望む株主は経営に不満や不信感を抱いているからです。経営者はこのような事態に備えて自らが株式を買い取るための資金を用意しておく必要があります。

設立当初、資金が足りないので「一時的に」複数の出資者に資金を提供してもらう場合には、将来的には経営者が株式を買取ることにより当初出資者が資金を回収する方法を示しておかなければなりません。

■譲渡価格

大変厄介です。「株式」のように価格の算定が難しい「資産」はないからです。

「当初一株5万円だったので、5万円で買取ります(買取ってください)」

創業後、順調に業績が向上していれば(純資産が増えていれば)株価は当初出資額を上回り、業績が下降していれば(純資産が減っていれば)下回るのが一般的理屈です。しかし、上場企業の株価が業績とかけ離れた水準であるのもめずらしくないことから、株価の算定はそんなに簡単ではないことをご理解いただけるかと思います。

「譲渡時の一株あたりの純資産額、利益、配当を基準に・・・」など、明確で詳細な取り決めをしておく必要があります。

経営者が株式を買い取るための資金を会社が立て替える(貸付金になる)

経営者が株式を買い取るというのは経営者個人ですることですから、株式を買い取る資金は経営者個人で用意しなければなりません。しかし、経営者個人にその資金がない場合に会社の資金を流用する場合があります。

これは経営者に対する貸付金になります。貸付金ですので、経営者はいずれ会社に返済しなければなりません。当然、金利も支払う必要があります。

仲間(役員で株も保有している)が独立するときの手続

出資をし、役員として一緒に会社を経営してきた仲間が独立することがあります。このような場合には、雇用契約である従業員とは相当異なる手続が必要となります。

■取締役の辞任
取締役は辞めてもらう必要があります。取締役でなくなった場合にはその旨を登記しなければなりません。また、取締役の員数(最低必要人数)が不足する場合には、後任の取締役を選任しなければなりません。

■株式の譲渡
独立を機に会社に対する出資を回収するには、保有する株式を他の株主などに譲渡する必要があります。この際、譲渡価額が問題となりますが、「当初出資額<譲渡価額」であれば譲渡所得に対する課税問題が生じます。

■退職金の支給
勤続年数や功績に応じて退職金を支給することができます。

■一部の取引先や従業員を引き継ぐ
独立に際して一部の取引先や従業員を引き継ぐことがあります。引き継ぐ範囲については十分話し合って決めるとともに、取引先には正確に通知しておく必要があります。

■一部財産の譲渡
在任中に使用していた備品(机・椅子、パソコン、書籍など)や車両などを独立後もそのまま使用したいこともあるでしょう。その場合には、適正な価額で譲渡すればよいです。

★独立後も友好的な関係を保つ
独立後も友好的な関係を保ち取引関係を結ぶ場合、そのまま取締役として残ってもらい株式も保有し続けてもらってもよいです。さらに、仲間が新たに設立する会社の株主と取締役になります。こうしておけば関係がより強固になります。

会社を引き継ぐ場合の注意点

今まで誰かが所有していた会社を引き継ぎ、以後は自身がその会社を所有するという方法があります。会社は不動産、貴金属、石油などと同様、「物」として売買できるのです。

一方、会社は組織ですので組織という人の集団を動かすリーダーが必要です。このリーダーを選ぶのは会社の所有者(会社を買った者=株主)です。資金がある者は会社という物を買い、会社という組織を動かすリーダーになれるのです。

■株式を譲り受ける
会社の最重要事項を決定するのは株主です(株主総会の多数決で決めます)。会社を支配するには過半数以上の株式を譲り受けて、株主総会での決定権を握っておく必要があります。

■役員変更登記をする
株主は株主総会で会社の重要事項を決定するだけであり、実際の会社経営をするのは代表取締役という役員です。自身が代表取締役になるには、株主総会で取締役に選任され法務局で代表取締役として登記しておく必要があります。

■会社の実印を引き継ぐ
これも大切なことです。会社の実印は法務局に登録しなければなりません。上記の役員変更登記をするにも会社の実印が必要です。また、会社が重要な契約書に押印する場合には、契約書に会社の実印で押印するとともに法務局が発行する印鑑証明を添付するのが通常です。

上記の手続は前代表取締役や前株主との間に強固な信頼関係があれば比較的簡単にできます(特に親族間であれば容易にできます)。実際に難航する(悩む)のは次の点です。

〇現存する借金の返済
〇退任する取締役への退職金の支払い
〇退任する取締役が一部事業を引き継ぐ場合の会社との関係
〇従業員の雇用の継続

既存の会社を引き継げば手っ取り早く事業を始めることができます。「裸一貫」の場合のように試行錯誤も不要です。しかし、引き継いだならば、それはそれで苦労も多いのです。