資本金


2017/7/5

資本金とは

資本金とは、設立当初の出資金額および設立後の追加出資金額のことで登記事項とされています。資本金は、法務局で所定の届けをしなければ資本金とは認めてもらえません。登記事項ですので、法務局へ行けば誰でも調べたい会社の資本金の額を知ることができます。ですから、資本金が会社の信用の目安になるのです。

資本金は出資当初は預金ですが、会社が活動するにつれて商品、事務所の保証金、車両などに変化していきます。

「会社は資本金の額に相当する現金(預金)を常に保有していなければならない」

このように考えている人が非常に多いですが、とんでもない誤解です。資本金は会社の活動のために使うのです。資本金はそのために株主から出資してもらっているのです。株主は出資した資本金を使った(運用した)結果としての配当を望んでいるのです。使わないのであれば資本金はいらないのです。

かといって、資本金は闇雲に使えばよいのではありません。会社の活動に必要な、設備投資、仕入代金や諸経費の支払いに効率よく使わなければなりません。そして、使った額以上のリターンを得なければなりません。不要なこと(収益を生まないこと)に資本金を使ってしまうと、いずれは資金不足に陥ることは説明するまでもありません。

純資産

会社の財産は、資本金ではなく純資産で考えなければなりません。資本金は株主から出資があったという「過去の事実」にすぎず、資本金相当額の財産(現金や預金など)を会社が保有しているということではないからです。純資産の「純」は、資産−負債の差引きであるという意味です。会計(複式簿記)では、財産をプラス(資産)とマイナス(負債)で捉えます。

会社の設立当初は純資産と資本金は一致します。設立当初は、出資された資本金相当額の現金(預金)という資産しかありません。ですから、資産(現金)=純資産=資本金となります。会社が活動するにつれてこの関係は様々に変化してゆきます。

純資産が増えているパターン(資本金は50)
(その1)資産60=純資産60(資本金50)
(その2)資産100−負債40=純資産60(資本金50)
(その3)資産110−負債50=純資産60(資本金50)

純資産は不変のパターン(資本金は50)
(その1)資産50=純資産50(資本金50)
(その2)資産100−負債50=純資産50(資本金50)
(その3)資産90−負債40=純資産50(資本金50)

純資産が減っているパターン(資本金は50)
(その1)資産40=純資産40(資本金50)
(その2)資産100−負債60=純資産40(資本金50)
(その3)資産90−負債50=純資産40(資本金50)

上記の例で純資産を変動させた原因は、その期間の「利益=収益−費用」にほかなりません。ある期間に利益が生じているということは、その期間に純資産が増加しているということです(利益がマイナスの場合には純資産が減っている)。

資産・・・現金および現金になるもの(売掛金=未回収の売上代金、商品=販売すれば現金になる、土地や有価証券=換金できる)

負債・・・現金で支払うもの(借入金、買掛金=未払いの仕入代金)

こう考えれば、「純資産とは現金そのもの」といっても抵抗はないでしょう。そして、常に「収益(売上)>費用(仕入代金や諸費用)」となるように行動していれば、純資産(資産と負債の差額)が増え続けることをご理解いただけると思います。

「純資産を増やし続けなければならない(少なくとも減らしてはいけない)」、これが会社の目的です。経営者の使命なのです

「純資産がゼロになれば倒産」、これが会社の宿命です。

資本金が減るのは減資の場合です。減資は法務局での登記手続をしなければ完了しません。赤字になっても資本金は減りません。ただし、会社設立以降通算して赤字(収益−費用=利益がマイナス)の場合、貸借対照表の「資産−負債」である「純資産(資本金+累積利益=資本)」は減ります。一方、黒字でも資本金は増えません。ただし、「純資産(資本金+累積利益=資本)」は増えます。

資本金の役割

「資本金なんて意味はない?」と考える人がいるかもしれません。しかし、資本金は会社制度において次のような重要な役割を果たしています。

■「純資産>資本金」でなければ配当はできない
純資産は利益によって増減します。利益がプラス(黒字)であれば純資産は資本金よりも多くなります。利益がマイナス(赤字)であれば純資産は資本金よりも少なくなります。配当は利益の結果ですので、「純資産>資本金」でなければできないのです。

■資本金相当額の純資産を維持するのが経営者の使命
当たり前です。利益を出すのが経営者の使命です。つまり、資本金を活用して純資産を増加させるのが経営者の使命なのです。「当社は○○万円株主から出資を受けています」、「当社の経営者の使命はこの○○万円で事業活動を行い、これを増加させ株主に配当することです」ということを「宣誓する」のが資本金なのです。

「純資産(決算書)なんて誰も知ることができないのでは?」と思われるかもしれません。確かに、広く世間一般に知られることはありません。しかし、金融機関の融資申し込みの際は決算書の提出を必ず求められます。また、融資を受け続けている限りは定期的に決算書や試算表(月次の決算書)を提出しなければなりません。

資本金と社長借入金

会社を設立する際は資本金の額にばかり目を奪われ、社長借入金についてはほとんど検討をしない、場合によっては全く無知なことも多いです。ほとんどの中小零細企業は「株主=代表取締役(社長)」です。社長は会社の経営者であるとともに資金提供者でもあるのです。社長が会社に資金提供する方法は「資本金」と「社長借入金」のふたつがあります。

■資本金
株主からの出資です。出資の手続は法定されており、法務局で登記をしなければ資本金としては認められません。資本金の返金も可能ですが、それには法定の減資という手続が必要で、法務局で登記もしなければなりません。

■社長借入金
社長が必要に応じて、個人的な資金を会社に貸し付けることをいいます。社長個人からすれば「会社への貸付金」ですが、会社からすれば「社長からの借入金」です。社長借入金に法律で定められた手続はありませんが、借用書あるいは金銭消費貸借契約書を作成し、利率や返済期限などの条件は明確にしておく必要はあります。社長借入金は会社の設立登記が済めばいつでも受け入れることができます。

★両者の共通点と違い
会社が使える資金であることに変わりはありません。「資本金1000万円」、「資本金500万円+社長借入金500万円」、「資本金10万円+社長借入金950万円」、いずれであっても会社が使える資金は1000万円です。両者の決定的な違いは、社長借入金は自由に増減させることができますが、資本金はそうはいかないということです。

★両者のバランス
中小零細企業の場合は資本金の返金である減資はまずはありません。社長個人にすれば、資本金として提供した資金は会社が継続する限り拘束されるのです。ですから、返金を受けたい資金は資本金ではなく社長借入金として会社に提供すべきです。

★社長借入金の返済財源
会社に現金(預金)がないとできません。受け入れた社長借入金は、設備投資や運転資金に投下されるでしょうから、返済はそれらの成果として獲得した現金(預金)で行うことになります。

★自己資本
資本金のことを自己資本といいます。会社の所有者である株主自らの資金で、借入金のように返済不要であることから「自己」という表現をします。自己資金が多ければ経営が安定するといわれています。しかし、株主の要求や監視が厳しい場合には、経営者としては自己資本に安住してはいられません。

★自己資本比率や資本金の額
中小零細企業といえども大事です。役所(税務署以外)や金融機関は形式を尊重しますから・・・

出資比率と配当

会社の重要な意思決定は、出資者(株主)の持分(持ち株数)による多数決(株主総会)で決定されます。たとえば、発行株式数1000株の会社で各株主の持分が、A350株、B350株、C300株であったとします。AとBの意見が常に一致している場合には両者合計して過半数ですので、Cの意見は常に無視されることになります。特定少数の者による独断の弊害はいうまでもないことです。英知が結集される出資比率としなければなりません。しかし、特定の出資者の独断(場合によっては出資者が一人である)がいけないわけではありません。たとえば、企業を見る目のある人に出資をしてもらい、重大な意思決定についてはその意見を仰ぐことは意義のあることです。

配当は一株当たりで金額か決まりますので、出資比率が高い(株数が多い)者ほど配当の総額は多いということです。会社が資金提供者に配当をするのは当然です。しかし、次の理由から多くの中小零細企業が配当をしていないのが実情です。

■株主と役員が同一人物
配当よりも会社に資金を残すという選択をすることが多いです。配当には所得税が課税されるからです。配当により資産を目減りさせてしまうよりも、会社に資産を残したほうが、会社と役員個人トータルしての資産は多くなります。

■法人税率が役員報酬の所得税率よりも高い
配当は利益から行います。役員報酬は会社の経費であり、役員報酬に対する所得税の税率(給与所得としての所得税)が法人税率よりも低い限りは役員報酬を増やし続ける(利益を発生させない)ことは当然です。つまり、役員報酬に対する所得税の税率が法人税率を大幅に下回る状態では資金繰り的にも節税上も、とても利益を出して配当をするなどできないということです。

■本当に利益が出せない
悲しい話ですが、現実的な理由はこれです。

中小零細企業といえども純粋の出資者がいることもあるでしょう。しばらくは配当できないでしょうが、必ず年に一度の株主総会は開催しささやかな会食はしてください。当然、費用(交際費となります)は会社負担です。

創業融資(公的融資の活用)

自己資金(資本金+社長借入金)のみで不足する場合は、金融機関から融資を受ける必要があります。一般的には一定の営業年数があり、相応の業績でなければ融資は受けられませんが、創業時の融資に応じてくれる金融機関もあります。

最初の融資はいわゆる公的融資(制度融資)、つまり、国や自治体が中小企業政策の一環として運営している日本政策金融公庫や信用保証協会などから受けることが通常です。

公的融資は使途が厳格に限定されています(設備資金と運転資金など)。使途を守れない場合、たとえば、資本金相当を株主に返金(?)した場合や、役員や株主の個人出費の立替に充当した場合は、以後の融資が一切打ち切られることも覚悟しなければなりません。なお、「使途違反」の結果は決算書に明瞭に表われ、これを隠すことはできません。「ばれるはずはない」は甘いです!また、いかがわしい「融資申込み代行業者」が存在しますので、くれぐれもご注意ください。

★公的融資は返済不要?

まれに、公的融資のことを「補助金」と勘違いしている人がいますが、あくまでも融資ですので返済しなければなりません。特に信用保証協会の「保証」については誤解が多いです。信用保証協会は保証した企業が返済できない場合には「代位弁済」をしてくれます。つまり、企業に代わって金融機関に返済してくれます。しかし、この後の処理について理解をしていない人がいます。信用保証協会は「求償権」というものを行使して、返済できなかった企業に代位弁済した分の返済を求めてくるのです。

信用保証協会はこの求償権というものを徹底的に行使してきます。当然、暴力的なことはしませんが、淡々と事務的にしてきます。書面の送付、呼出しを何度も(永久に)続けてきます。ですから、多くの債務者(返済できなかった企業)は、「保証料を払ったのに!」とか「なんのための公的融資だ!」といって驚きます。しかし、契約書(信用保証協会の求償権を認める)に署名押印している以上はどうにもなりません。

保証ではなく直接融資をしてくれる政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)も同じです。返済できなければ徹底的に法的な手続を繰り返してきます。

★融資の申込み手続は大変です!

融資の申込み手続は大変面倒です。預金口座を開設するだけでしたら、「定款」と「登記簿謄本」で十分です。しかし、融資の申込みとなると次のような膨大な資料が必要となります。

決算報告書、税務申告書、納税証明書、現金(金銭)出納帳、預金通帳、売掛帳、買掛帳、
試算表、資金繰り表、事業計画書、その他

これから起業する人には、ほとんどが未知のものであると思います。そこで、一般的には会計事務所のアドバイスを受けながら上記資料を用意します。