売掛帳


2018/3/26

企業経営者は、複式簿記や会計理論を離れて、自社の商品や販売形態からして合理的な売上計上の時点(日付)を考えてみなければなりません。

「この段階まで到達すれば販売をしたと考えて間違いがない」という時点を通過したならば、売上としてカウントするのです。

売上計上についての明確な尺度を確立し、それを遵守するということは、企業経営上の最重要事項であるといっても過言ではありません。売上計上のルールなくして、事業活動の成果を測定することができないからです。

売掛帳(売上帳、得意先元帳などとも呼ばれる)

売上に関する帳簿は、「売掛帳」「売上帳」「得意先元帳」などと呼ばれ、この帳簿で「売上という収益」の集計と「売掛金という資産」の算出を行います。売上を集計するため、「何時」「誰に」「何を」「いくらで」売ったかを記録しなければなりません。売掛金を算出するため、代金を「何時」「誰に」「いくら」回収したかを記録しなければなりません。

記録と計算は「誰に」という単位でします。「どの得意先に」、「どれだけ販売したのか(請求したのか)」、「入金されたのか」、「入金されていない金額はいくらあるのか」がこの帳簿に記録されなければなりません。

いわゆる「販売管理ソフト」では、売掛帳は必ず作成できるようになっている帳簿です。売掛帳は請求業務(請求書発行)と直結した帳簿です。売掛帳がなければ、どこにどれだけ請求してよいのかわかりません。売掛帳は欠かすことのできない重要な帳簿なのです。

小売店は売掛帳が不要?

小売店で、商品と交換に現金を受け取るという販売しかしていない場合には、売掛帳は不要です。売掛帳が必要になるのは、掛売り(代金後払い販売)をしている場合に限られます。

売掛金一覧表(複数の得意先を一覧にして概観する)

売掛帳は個々の得意先ごとに、どの商品を販売したかまで記録されますが、複数の得意先についての概略を同時に把握するのには不向きです。そこで、各得意先の「売上」「入金」「売掛金残高」を一覧にした「売掛金一覧表」などと呼ばれる表を作成します(月単位で作成します)。この表も売掛帳同様、販売管理ソフトで必ず作成できるようになっています。

売上を計上する日(代金入金の日ではない!?)

帳簿の作成を始めたころ、このことを知って、愕然とする人、反発をする人が非常に多いです。

販売の時点で代金を受け取る小売業などを除いて、ほとんどの業種では代金の受取りは販売よりも遅れます。ですが、売上の計上は入金に先行して販売の時点で行わなければならないのです。

例えば、事業年度が平成29年4月1日から平成30年3月31日で、平成30年3月31日に販売をして、代金の回収は翌事業年度の平成30年4月30日になった場合でも、平成30年3月31日に売上を計上しなければなりません。その事業年度に入金もないのに、売上が計上され利益が増えるということです。

これは「ルール」ですので受け入れるしかありません。このルールは、利益を抑えたい(法人税を少なくしたい)という場合には大変酷です。しかし、ルールなのです。

◇理由?
それは商慣習です。商慣習上、代金は後払いとなっているからです。

◇最終的に代金の入金がされなかった場合!?
大丈夫です。返品、値引き、貸倒れなどとなった場合には後から売上を取り消すことができます。

業種別の売上計上日(例)

売上の計上が販売の時点であるとはいっても、「販売の時点」が何時であるかは、業種や業態によって異なってきます。

◆小売店

小売店の場合には販売(商品の引渡し)と同時に代金を受け取りますので、売上と入金の時点、つまり日付が一致します。しかし、顧客がクレジットカードでの代金支払いを選択した場合には売上計上が入金に先行します。

◆小売店以外で商品販売する場合(卸売業、ネットショップ、製造業の既製品販売など)

代金後払いの販売です。商品を引渡した日に売上を計上します。商品を発送する場合には発送(出荷)の日をもって売上を計上します。商品の発送を運送業者に依頼する場合には、運送業者が発行する受領書の日付で売上を計上します。

◆注文生産する製造業

注文生産する製造業の場合には、既製品を販売する場合と違って、製品が注文どおりに作られているかを顧客が点検(確認)する作業が必要となります。売上の計上は、この点検が済んだ日にします。

顧客が点検をしたことを証明するために、「受領書」や「引取書」などをあらかじめ用意しておき、それに顧客の署名と署名日の記入をしてもらいます。

◆ソフトウェア製作

既製品を製作して販売する場合には、商品を引渡した日に売上を計上します。その要領は、上記の「小売店以外で商品販売する場合」と同じです。

注文を受けて製作する場合には、完成したソフトウェアをユーザーが使用できる状態になった日に売上を計上します。

◆建設工事

受注した物件が完成し、引渡しをした日に売上を計上します。一軒家の建築工事でいえば、住めるような状態になったということです。なお、完成を見極めるのはあくまでも顧客です。

建設工事の場合は、この完成した日を明らかにするため、「工事完了書」などをあらかじめ用意しておき、それに顧客の署名と完成引渡し日の記入をしてもらいます。

◆サービスを提供する場合

サービスの提供が完了した日に売上を計上します。派遣業であれば派遣期間が終了した日、各種教室であれば授業が終了した日に売上を計上します。

◆ネットショップ(入金確認後に商品を発送)

ネットショップのほとんどが、代金の入金確認(クレジットカードの場合には決済確認)をもって商品を発送していると思います。売上の計上は商品を発送した日にします。

締め日(しめび)

売掛帳の作成においては「締め日」を設ける必要があります。締め日とは、売上を集計する期間です。「月末締め(毎月1日から末日まで)」、「20日締め(毎月21日から翌月20日まで)」といった具合に1か月単位に設定するのが一般的です。

売上の計上は販売された日にしますが、この作業をリアルタイムに行えない場合があります。例えば、倉庫から商品の出荷の連絡が遅れるなどです。また、販売されたことは把握できても、金額が確認できないこともあります。そこで、締め日が過ぎた時点で、期間中の販売記録を漏れなく収集して、その分の売上計上をするという作業が必要となります。

締め日の翌日から事業年度末までの売上

締め日と事業年度末が「ずれる」場合があります。締め日が20日で事業年度末が月末の場合です。このような場合は、事業年度が終了する月に限って締め日の翌日(21日)から事業年度終了日(月末)までの売上を特別に集計しなければなりません。なお、翌事業年度の最初の月の売上は1日から20日までの分となります。

売掛金残高の確認

締め日における売掛金の残高は「前回の締め日の残高+期間中の売上−期間中の代金回収」でなければなりません。この状態になっていないということは何らかの処理誤りがあるということです。原因を追及してしかるべき処理をしなければなりません。

簡易な売掛帳で十分な場合も

得意先が極めて少なく、その取引形態も単純な場合には、簡易な売掛帳で十分な場合もあります。例えば、数件の賃貸ビルの管理を毎月定額の手数料で請け負っている場合は、請求書の控を売掛帳としてもよいです。

売掛帳の目的である、「何時」「誰に」「何を」「いくらで」売ったか、代金を「何時」「いくら」回収したかが明らかにできれば、販売管理ソフトが提供しているような売掛帳でなくてもよいのです。

現金売上の売掛帳における扱い

現金売上(販売してその場で入金がある売上)の売掛帳における扱いをどうするかが問題となります。売掛帳は売掛金残高を算出するための帳簿であると考えるならば、現金売上は売掛帳には記載しないということになります。売上を集計するための帳簿と考えるならば、現金売上も売掛帳に記載しなければなりません。

現金売上を売掛帳に記載しない場合には、現金売上は総勘定元帳に直接記載することになります。また、現金売上と掛売上の両方がある得意先の売上は、売掛帳の掛売上と総勘定元帳に記載した現金売上の合計となります。

クレジットによる代金回収

クレジットにより代金を回収する場合には、顧客に対する売掛金は生じません。顧客がクレジット払いに関する手続に応じてくれた時点で、顧客に対する請求は無用となります。クレジットの場合、請求先はクレジット会社になります。

集金日と記帳日

集金したその日に記帳ができないことがあります。その場合であっても、売掛帳の日付は集金日にしなければなりません。そうでなければ、集金日と記帳日が締め日をまたぐ場合に入金済みの分が請求に含まれてしまいます。

帳簿以外に保存しなければならない資料

売上に関する帳簿は売掛帳ですが、それ以外に売上や売掛金に関する下記の資料を保存しておく必要があります。売掛帳の記載事項を証明するためです。

見積書
注文書
契約書
受領書(商品を引き渡した記録)
請求書控
領収書控
預金通帳

売上や売掛金は、販売活動のプロセスで生じるわけですから、「価格交渉」「注文」「契約」「出荷」「納品」「請求」「代金回収」の各プロセスの資料を保存しておく必要があるのです。