税務調査と帳簿


2018/3/26

会社に課税される法人税は決算書の利益を基に計算されます。決算書の利益が間違っていれば、法人税の計算も間違っているということです。ですから、税務調査では決算書の作成根拠である帳簿を調べるのです。

同じく会社に課税される消費税は、「消費税を受け取った取引」と「消費税を支払った取引」を帳簿の中から抽出してこの差額を納税します。消費税の納税額が正しいことを確認するには帳簿が必要なのです。

まずは総勘定元帳から!

税務調査では必ず総勘定元帳を調べられます。しかも、最初に調べられます。ですから、税務調査が行われる最初の日には、税務調査の対象期間の総勘定元帳をあらかじめ用意しておき、調査官の指示があったならば直ちに総勘定元帳を提示できるようにしておかなければなりません。

会社に課税される法人税は利益に課税されます。利益は決算書の損益計算書で算出されますが、その損益計算書の基となるのは総勘定元帳です。総勘定元帳は損益計算書を構成する各勘定科目の計算根拠です。売上や経費の中身を知るには総勘定元帳を調べなければなりません。

会社には消費税も課税されます。納税する消費税の計算は、総勘定元帳の中から「消費税を受け取った取引」と「消費税を支払った取引」を抽出し、そこから「受け取った消費税」と「支払った消費税」を計算し、前者から後者を差し引きすることにより行います。

このように、会社の税金と総勘定元帳とは密接な関係があるのです。ですから、税務調査においては、まずは総勘定元帳を調べられるのです。

●総勘定元帳に記載されていることは本当か?

●総勘定元帳に記載されるべき取引が漏れなく記載されているか?

このような観点から、調査官は総勘定元帳を次々に調べます。そして、さらに深く検討すべき事項を絞り込みます。

総勘定元帳を起点に補助簿を調べられる

総勘定元帳の記載は総括的、集約的であることから、さらに掘り下げた検討を行うには補助簿を調べなければなりません。例えば、総勘定元帳における売上が全得意先の月合計で計上されている場合には、補助簿である売掛帳でなければ得意先別の状況はわかりません。ですから、補助簿を調べるのです。

帳簿と基資料の照合

帳簿(総勘定元帳や補助簿)は会社が作成するものですから、会社に都合のよい記載をすることができます。虚偽の記載もできます。不都合を隠すこともできます。そこで、税務調査においては帳簿の基資料、それも会社以外の者が作成した外部資料との照合作業を行います。外部資料とは、預金通帳、領収書、請求書、契約書などです。

税務調査に先立って帳簿の間違いを修正しておくべきか?

修正しておく必要はありません。というよりも、修正できません。

税務調査は、申告書に添付した決算書の数値を基に行われます。もし、帳簿を修正した場合には申告書に添付した決算書の諸数値と帳簿が合わなくなります。そうなれば、調査は大混乱です!

決算と申告が終了した年度の帳簿はすでに締め切られています。締め切られた帳簿は、理由はどうであれ、すでに「歴史的事実」として動かすことはできないのです。これは、帳簿に記録されたことの正否や真偽ではなく、そのように帳簿に記録したという意味においてです。

複数の者で帳簿を作成している場合には、各人にこのことを徹底しておかなければなりません。中には、「我が身可愛さ」に自身の帳簿を正しい状態に訂正しておき、「私は不正なことはしていません」と主張する者が表れるからです。

★帳簿と決算書が修正できないということは申告書も修正できない(修正する必要がない)ということ?

申告書は修正しなければなりません。帳簿や決算書はそのままで、申告書は帳簿や決算書を正しい状態を前提に作成し直します。

★帳簿の「残高」が間違ったままでよいのか!

貸借対照表は間違いを放置しておくわけにはいきません。残高が翌事業年度に繰り越されるからです。貸借対照表勘定科目(資産、負債、資本)に関しては、「間違いが判明した年度の帳簿」で修正をします。

税務調査の通知を受けてから帳簿を作成すればよい?

申告は帳簿に基づかない(事後的に検証できない)数値で行い、税務調査の通知を受けてから帳簿を作成していることがあります。そもそも、申告は帳簿の記録(決算書)に基づいて行わなければなりませんので、申告後に作成した帳簿はその申告の基となった帳簿ではありません。

◆帳簿をいつ作成したかはわからない!?

そのとおりかもしれませんが、申告数値に合わせて事後的に作成した帳簿は矛盾点だらけになります。記憶が確かなうちに作成してこそ帳簿の正確性は確保されるのです。

◆大切なのは申告数値の算出プロセス

帳簿を作成せずに申告してしまった以上は、後になってから形式的な帳簿を作成してもどうにもなりません。ただし、帳簿がないからといっても申告数値に全く根拠がないという訳ではないでしょうから、調査に当たってはその根拠を提示することです。

税務調査で売上計上漏れが発見される理由(売上は税務調査の重点的調査事項)

税務調査で必ずといってよいほど調べられるのは「売上」です。税務調査の対象年度分の売上が、「漏れなく計上されているか」を調べられます。また、多くの納税者はこれが重点的調査項目であることは認識しています。にもかかわらず調査終了後、「どうして見つかったんだ・・・」とか「なかなか優秀な調査官だな・・・」などといってうなだれます。

調査官は売上計上漏れを発見するため次のような点を検討します。これは、どの調査官であっても同じです。

◆未入金分

事業年度中に未入金の部分も売上計上しなければならないことがあります。すでに、事業年度中に販売(出荷や納品)あるいはサービス提供が終了している部分です。

この部分の売上計上漏れを発見する第一の手法は、請求書と売上計上記録(総勘定元帳や売掛帳など)との照合作業です。事業年度中の日付で請求書が発行されているのに、「どうして売上計上されていないのですか?」と迫ってきます。

次に、調査対象年度の翌年度の預金通帳です。特に、年度終了月の翌月の通帳です。翌月中旬日頃までの入金は、通常は前年度の未入金の売上(前年度に販売やサービス提供が済んでいる)と考えられます。この件に関して、「どうして調査対象期間外の通帳を調べるのだ!?」といって反論する納税者がいます。しかし、この点は調査の通知の時点でも告げられていますので反論はできません。

◆請求書と預金通帳

売上には必ず入金が伴います。ですから、預金通帳と売上計上記録(総勘定元帳や売掛帳など)との照合作業をすれば計上漏れの有無は発見できます。通帳では入金されているのに、売上計上されていないのはおかしいです。

◆領収書の控

現金回収分は領収書の控と売上計上記録(総勘定元帳や売掛帳など)との照合作業をすれば計上漏れ分を発見することができます。

◆仕入との関係

仕入(売上原価)との関係も調べられます。年度中にAという商品を仕入れ(仕入計上記録あり)、Bという得意先に納品しているのにBに対しての売上計上がされていないのはおかしいです。

◆事業外の預金通帳

あまりにも売上計上記録が不正確な場合には、事業外の預金通帳にも調査対象が広げられます。代表者の私的な預金口座や家族の預金口座に、売上代金と同じあるいは近似する入金がある場合には、「これ、この分の入金でしょ?」と迫ってきます。

◆得意先への反面調査

これも売上計上記録が不正確な場合に行われます。調査官が得意先に赴き、調査対象納税者との取引状況を調査し、その結果を売上計上記録と照合するのです。得意先に「あなたからこれだけ買いました」といわれれば、その分は売上として認めるしかありません。

反面調査は、まさに税務署の「伝家の宝刀」です。

◆税務署独自の調査網

初めての税務調査では上記の調査手法で「次々と」売上計上漏れが発見されますが、納税者も「学習」をしますので2回目以降の税務調査では計上漏れ件数が激減します。そこで、税務署はより巧妙な(悪質な)売上計上漏れ(所得隠し)に対処するため、独自の調査網を使って売上計上漏れを発見しなければならないのです。

仕入については売上との対応関係をチェックされる

売上と仕入は対応関係にあります。仕入のうち売上と対応関係にある部分を「売上原価」といいます。仕入から売上原価を差し引いた部分は、「在庫」として費用から除外して翌事業年度に繰り越さなければなりません。

税務調査においては、買掛帳などから仕入の金額が正しいことを確認した後、仕入を売上原価と在庫に正しく区分しているかを確認されます。この区分において大事なのが、年度末の在庫のカウント作業である「実地棚卸」です。実施棚卸の結果は棚卸表として保存しておかなければなりません。調査では、必ずこの棚卸作業を確認されます。

経費については出金の事実と内容(売上と並ぶ重点的調査項目)

経費は売上と並ぶ重点的調査項目です。経費に関しては、出金の事実と内容を確認し、最終的にその出金が会社の経費であるかを調べられます。

出金の事実は、領収書や預金通帳から金額とその相手先を調べられます。特定の相手に出金がされていることが確認できても、支出の内容や目的を確かめなければ経費として認めることができません。税務署は、領収書の摘要欄(何を買ったか)、総勘定元帳の摘要(何のため)、経営者や経理担当者に対するヒヤリングから得られた状況などをもとに総合的に判断して、「経費性」を調べます。