現金管理


2018/3/26

現金の管理をしても、それだけで決算書を作成することはできません。しかし、現金はあらゆる取引(帳簿に記録する対象)の出入口です。現金と無関係と思われる取引は、現金との「距離」があるだけです。

取引というのは複数が関連しており、そのどれかが現金の出入りです。現金の出入りという事実は一度しかありません。この確かな事実を確実に記録することにより、帳簿の信頼性は増すのです。

会社は株主から現金で出資を受け、経営者の任務はその現金を増やして株主に配当することです。ですから、現金の出入りの記録は1円たりとも間違ってはいけないのです。

現金出納帳(金銭出納帳とも呼ばれる)

現金出納帳とは、会社が保有している現金(硬貨と紙幣)の増減(日付、金額、内容)と結果としての残高を記録する帳簿です。事業活動の結果の多くは現金の動きとして表れますので、この帳簿を正確に作成することは非常に重要なことです。

資産の原形は現金です。会社の設立時には現金が出資され、それが事業のために投下され、再び現金となって回収されます。会社は現金を増やすために活動しているのですから。現金の記録をすることは当然のことです。

複式簿記においては取引を仕訳として記録し、それを分類集計して決算書を作成します。取引には現金の出入りを伴わないものもありますが、その取引の前後では現金の出入りがあります。ですから、現金出納帳は様々な取引の根源なのです。

中小零細企業では、現金の管理がずさんで現金が特定の場所に保管されていないことがあり、現金出納帳の残高と実際の現金残高を照合できないことがあります。また、代表者がポケットマネーで事業関連の支出を立て替え払いすることもありますので、現金出納帳に表れない出金があります。

簡単なように思えて、いざ作成してみると様々な疑問が生じてくるのがこの現金出納帳です。「残高がおかしい?」「何かが抜けているようだ?」といった具合です。

現金の保管場所を決める(現金管理のスタート)

現金管理のスタートは現金(硬貨と紙幣)の保管場所を決めるということです。いうまでもなく、現金は盗難にあった場合の被害物の典型です。ですから、現金は盗難にあいにくい、施錠のされたロッカーなどに保管しておきます。また、現金の保管場所は1か所であることが望まれます。保管場所が多いと管理が大変だからです。現金出納帳は保管場所ごとに作成しますので、保管場所が複数の場合には現金出納帳も複数になります。

現金の保管場所を決めたならば、次は入金方法についてのルールを決めなければなりません。現金の入金回数や経路が多すぎると現金管理が複雑になります。ですから、「預金口座からの引き出しは月1回!」、「現金回収した売上代金は直ちに預金へ入金する!(現金として持たない)」といった「鉄則」や「掟」を作ることです。

出金は、「少額な経費の支払い」、「業者の集金」、「従業員の旅費などの精算」に大別されます。いずれの場合においても大切なことは、領収書など、出金の事実を証明する書類を入手するということです。出金の事実とは、「出金日」「出金額」「出金の相手先」「出金の目的(何に使ったか)」です。

個々の入出金は現金出納帳(金銭出納帳)に記録します。「4月4日、A銀行から〇〇円引出し」、「4月5日、B商店に△△円支払い」、「4月6日、社員Cの旅費精算◇◇円」といった具合に日付順に記録していきます。この記録は入出金の都度、速やかに行わなければなりません。

現金出納帳に入出金の記録をしていけば、結果として特定時点の残高(入金−出金)を算出することができます。この残高が実際の現金の合計額に一致しなければならないことは当然です。この一致を確かめる作業は、毎日しなければなりません。そのためには、現金出納帳も毎日記帳しなければなりません。「領収書を残しておいて後から・・・」ではだめなのです。

もうひとつ大切なことがあります。現金の管理者を決めるということです。現金の保管と入出金、現金出納帳の記帳(含む領収書などの入手と保存)をする人です。保管と記帳は別人が行うことが望まれますが(大企業ではそうしています)、ひとりに担当させて、定期的に誰かが点検するという方式でもいい場合もあります。

現金出納帳の残高がおかしい?

◆マイナスとなる場合(社長借入金)

入金欄の記帳漏れが考えられます。まずは、銀行預金からの引出し(手元に現金としておいている)と売上代金の現金回収(預金に預けていない)の記帳を確認します。それでも現金がマイナスとなる場合は、「社長(代表者)借入金」の有無を確認します。中小零細企業では会社の資金が不足した場合、社長(代表者)が会社に個人の資金を提供するのが普通です。この社長借入金の入金処理を現金出納帳でしていない場合は、金銭出納帳の残高がマイナスとなる場合があります。

出金欄が二重記入などで過大になっている場合もマイナス残高になります。入念にチェックしてください。

◆考えられないほどプラスとなる場合(社長貸付金)

出金欄の記帳漏れが考えられます。現金出納帳の記帳は毎日行うのが原則です。しかし、現実には1か月分程度をまとめて記帳することがあります。領収書がすべてそろっている場合は問題ないのですが、領収書がすべてそろっていない状態で金銭出納帳を記帳すると残高が異常なほどプラスになることもあります。

入金欄が二重記入などで過大になっている場合も要チェックであることはいうまでもありません。

社長貸付金を記帳していない場合も問題が生じます。社長貸付金とは、社長(代表者)に対する資金の使途が明らかでない出金です。これについては、出金時に現金出納帳に記帳をして、後日返金を受けるか、使途を明らかにする(社長貸付金を他の勘定科目に振り替える)かしなければなりません。

現金と預金の違い(現金と預金の帳簿は分ける)

世間一般では現金と預金は同じです。貨幣としての価値が等しく、同じものを買えるからです。しかし、複式簿記においては現金と預金は別々に帳簿を作成します。

預金を引き出して手持ちの現金(貨幣と硬貨)にした場合、帳簿に記録しなければなりません。預金が減って現金が増えるからです。手持ちの現金を預金に預けた場合には現金が減って預金が増えます。

現金と預金では管理の仕方が全く違います。預金には預金通帳という確かな手掛かりがありますが、現金にはありません。ですから、上記のような管理をしていなければ、収拾がつかなくなります。

預金出納帳(銀行帳とも呼ばれる)

金融機関で開設している預金口座の増減(日付、金額、内容)と結果としての残高を記録する帳簿です。現代社会において預金口座を利用しない事業などまずはありません。事業活動の結果である貨幣の動きのほとんどは預金口座で生じますので、この帳簿を正確に作成することは非常に重要なことです。なお、この預金出納帳は預金口座ごとに作成します。

通帳があれば預金出納帳は無用に思えるかもしれませんが、通帳では入出金の額しか記載されていない行があるので、これについて預金出納帳で入出金の内容を明らかにしておく必要があるのです。

現金及び預金という勘定科目

決算書においては、現金と預金を合計して「現金及び預金」という勘定科目で一括して表示することがあります。これは、現金預金とも貨幣の蓄積であり、支払の手段であることから、決算書の利用者にとっては等しい性格であるので一括して表示するほうが合理的であるからです。

しかし、上記のとおり現金と預金では管理の仕方が全く異なりますので、決算書を作成するまでの段階では、現金と預金という勘定科目に分けるのです。