試算表と決算書


2018/8/30



勘定科目は、仕訳で分類し、総勘定元帳に転記され、その集計数値が試算表と決算書に配列されます。ここで、試算表と決算書について簡単に説明しておきます。

簿記の教科書の試算表(決算書が作成されるメカニズム)

簿記の教科書では「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の三種類の試算表が紹介されています。それぞれに勘定科目が羅列され、勘定科目ごとの累計や残高が記載されると共に、全ての勘定科目の累計や残高の合計数値が記載されています。

それぞれの試算表は、仕訳の借方と貸方の金額が一致していること、仕訳から総勘定元帳への転記と集計が正しいかを確認するために作成します。仕訳の貸借が一致していない、仕訳の総勘定元帳への転記や総勘定元帳の集計のどこかに問題があれば試算表の借方と貸方は、合計、残高とも一致しません。

さらに、簿記の教科書では試算表は簿記会計の終着点である決算書(貸借対照表と損益計算書)作成のスタート地点であることを説明しています。試算表に決算仕訳を加え、各勘定科目を貸借対照表と損益計算書に振り分けるのです。この作業をする表は「精算表」と呼ばれています。

試算表と精算表は「分類(仕訳)」「集計(総勘定元帳)」「整理・集約(試算表)」「決算」という簿記一巡の作業が正しく行われているかを検証するためにあるのです。この一連のプロセス、「特定の仕訳がどのように試算表に反映されるのか?」「試算表の状況から仕訳や総勘定元帳はどのようになっているか?」が理解できないと、決算書が作成されるメカニズムが理解できません。簿記の教科書の試算表と精算表は経理(会計)を志す人ならば必ず理解しておかなければならないのです。

会計ソフトの試算表(月次決算)

現在では会計ソフトで試算表を作成することが当たり前になっています。会計ソフトでは貸借が一致しない仕訳の入力を受け付けません。入力された仕訳の勘定科目ごとの集計、勘定科目の配列や集約のミスは考えられません。簿記の教科書の作業は会計ソフトがしてくれるのです。

会計ソフトにも試算表と称する帳票がありますが、会計ソフトの試算表は簿記のプロセスの正しさを検証するものではなく、作成された数値を活用するためのものです。ですから、簿記の教科書のような形式ではなくすでに貸借対照表と損益計算書に分かれています。試算表というよりも決算書です。試算表は月ごとに作成しますので、会計ソフトの試算表は月ごとの決算書であるといえます(月次決算)。

会計ソフトでは、簿記の教科書の試算表はブラックボックスになっているのです。

事業年度ごとの決算書は外部報告用(法律で様式が定められている)

会社は事業年度が終了したならば、決算書(貸借対照表と損益計算書)を作成し、これを株主に報告しなければなりません。試算表が会社内部で利用するものであるのに対して、決算書は外部報告用(株主および債権者への報告用)です。決算書は試算表をスタートに会社法という法律に従って作成します(株式を公開し証券取引所などで売買できるようにしている会社は金融商品取引法にも従わなければならない)。法律ですので所定の様式が定められています。内部管理用の試算表の勘定科目が会社独自の名称で細分化されているのに対して、決算書では一般的な名称に集約されている勘定科目もあります。

貸借対照表は一定時点(事業年度末)

貸借対照表は「一定時点の残高」です。平成29年4月1日から平成30年3月31日が事業年度の貸借対照表の勘定科目は、平成30年3月31日の残高であるということです。

A事業年度初めの残高
B平成29年4月1日から平成30年3月31日の増加
C平成29年4月1日から平成30年3月31日の減少
D事業年度末(平成29年3月31日)の残高

A+B−C=D(勘定科目の金額)ということです。

現金ならば事業年度末の硬貨と紙幣の合計額、預金ならば事業年度末の預金通帳の残高、借入金ならば未返済金額ということです。これらはいずれも、上記のA+B−C=Dという算式から導かれるのです。

損益計算書は一定期間(事業年度トータル)

損益計算書は「一定期間の累計額」です。平成29年4月1日から平成30年3月31日が事業年度の損益計算書の勘定科目は、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの累計額(数字の積上げ)ということです。売上であれば事業年度トータルの金額です。

損益計算書の勘定科目は、貸借対照表の勘定科目のように「目に見える」とか「手に取れる」ものではありません。例えば、売上でしたらその代金はすでに何かに使ってしまっています。仕入でしたら、すでに販売して手元にない商品が大部分です。

流動と固定(資産と負債の配列のルール)

貸借対照表の資産と負債は、それぞれ流動性のある勘定科目を上部に固定的な勘定科目をその下に配置するというルールになっています。ここでの流動と固定という言葉は簿記会計における独特の意味ですので注意が必要です(下記の流動資産と流動負債で説明)。

流動資産

流動資産とは次のような資産をいいます。

●通常の営業サイクルの途上にある資産
通常の営業サイクルとは「仕入→製造→販売→代金回収」のことです。このサイクルにある資産としては、「商品」「原材料」「製品」「売掛金」「現金」「普通預金」などがあります。

●事業年度末の翌日から数えて1年以内に現金となる資産
「貸付金」の内この期間内に回収されるものは流動資産です。株式などの「有価証券」で短期の売却益を得ることを目的としているものは流動資産です。

「流動」と聞くと「軽くて」「はかない」感じで、「あぶく銭」を連想しますが、ここでの流動とはこういう意味です。貸借対照表では、まずはこの流動資産を左側の上部に配置して表示することがルールになっています。

固定資産

固定資産とは流動資産以外の資産です。貸借対照表では流動資産の下に配列します。「固定」と聞けば、「確かな資産」のように聞こえます。不動産(土地や建物)は固定資産です。賃貸している場合には収益を生みますし、保有期間中に値上がり益も生じます。しかし、固定資産の中には換金が難しいものもあります。非公開の株式がそうです。売掛金は基本的には流動資産ですが、回収が難航している場合は固定資産になる場合もあります。

流動負債

流動負債とは次のような負債をいいます。

●通常の営業サイクルの途上にある負債
通常の営業サイクルとは「仕入→製造→販売→代金回収」のことです。このサイクルにある負債としては、「買掛金(仕入代金)」「支払手形(仕入代金)」「未払金(諸経費の代金)」などがあります。

●事業年度末の翌日から数えて1年以内に支払わなければならない負債
「借入金」の内この期間内に返済しなければならないものは流動負債です。

固定負債

固定負債とは流動負債以外の負債です。返済期限が事業年度末の翌日から数えて1年を超える借入金は固定負債ですが、いずれ1年以内となったならば流動負債としなければなりません。

資本金と純資産

「資本金」とは、設立当初の出資金額および設立後の追加出資金額のことで登記事項とされています。会社の財産は資本金ではなく「純資産」で考えなければなりません。資本金は株主から出資があったという「過去の事実」にすぎず、資本金相当額の財産(現金や預金など)を会社が保有しているということではないからです。純資産の「純」は、資産−負債の差引きであるという意味です。

会社の設立当初は純資産と資本金は一致します。設立当初は、出資された資本金相当額の現金(預金)という資産しかありません。ですから、資産(現金)=純資産=資本金となります。会社が活動するにつれてこの関係は様々に変化してゆきます。

純資産が増えているパターン(資本金は50)
(その1)資産60=純資産60(資本金50)
(その2)資産100−負債40=純資産60(資本金50)
(その3)資産110−負債50=純資産60(資本金50)

純資産は不変のパターン(資本金は50)
(その1)資産50=純資産50(資本金50)
(その2)資産100−負債50=純資産50(資本金50)
(その3)資産90−負債40=純資産50(資本金50)

純資産が減っているパターン(資本金は50)
(その1)資産40=純資産40(資本金50)
(その2)資産100−負債60=純資産40(資本金50)
(その3)資産90−負債50=純資産40(資本金50)

上記の例で純資産を変動させた原因は、その期間の「利益=収益−費用」にほかなりません。ある期間に利益が生じているということは、その期間に純資産が増加しているということです(利益がマイナスの場合には純資産が減っている)。

利益の段階的計算

利益は「収益−費用」として計算されますが、収益と費用には様々な勘定科目があります。損益計算書では、収益と費用に関する勘定科目を一定の順序で配列し、次のように段階的に利益を算出するという仕組みになっています。ある収益からある費用が差し引かれたと思えば、また別の収益が表示されるので非常にややこしいです。また、「営業」「営業外」「経常」「特別」などには「簿記会計独自」の意味があるので注意が必要です。

●売上高(収益)−売上原価(費用)=売上総利益
売上高は本業の収益です。衣料品店でしたら衣料品の販売による収益です。売上原価はこの売上に対応する仕入です。売上総利益のことを粗利(あらり)とも呼びます。

●売上総利益−販売費及び一般管理費(費用)=営業利益
売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。販売費及び一般管理費とは、会社の営業活動や管理業務に関する費用で、給与、交通費、通信費、家賃、水道光熱費など内容は様々です。営業利益は「本業の利益」といわれます。営業利益の「営業」は世間一般での営業という意味とは異なります。

●営業利益+営業外収益(収益)−営業外費用(費用)=経常利益
営業利益に営業外収益と営業外費用を加減算した利益です。「経常」とは常に発生する性質であるということです。「営業外」とは「本業以外」ということです。営業外収益としては余裕資金の運用益である預金利息、株式配当金があります。営業外費用としては借入金の利息があります。簿記会計において資金調達活動や資金運用を「営業外=本業ではない」と考えます。

●経常利益+特別利益(収益)−特別損失(費用)=当期利益
経常利益に特別に発生した(経常ではない)収益と費用を加減算した利益です。収益なのに特別利益、費用なのに特別損失と呼びます。ややこしいです。

●当期利益−法人税等(費用)=税引後当期利益
当期利益から利益に課税される税金を差し引いた利益です。会社が儲けた利益の一部を国や地方に税金として納めた後の利益が最終的な利益ということです。配当はここから行います。

上記の売上総利益などがマイナスである場合には「・・・損失」として表示します。

製造原価(製造原価報告書)

製造業では製造原価を把握しなければなりません。製造原価を計算するには、費用の中から製造に要した製造費用を抽出しなければなりません。製造費用の代表例は、材料仕入、工場の人件費、工場の建物や機械の減価償却費、工場の水道光熱費です。製造原価は製造費用のうち完成した部分です。さらに、製造業における売上原価は製造原価のうち販売がされた部分です。

製造原価は損益計算書の一部(売上原価の計算)ですが、通常は製造原価報告書という損益計算書とは別の表を作成します。

損益計算書と貸借対照表の利益が一致する理由(簿記の教科書で必ず説明されている)

残高試算表において次の関係が成り立ちます。

(借方)資産の残高+費用の発生=(貸方)負債の残高+純資産の残高+収益の発生

これを展開してみます。

資産の残高−負債の残高−純資産の残高=収益の発生−費用の発生

等式の右辺はまさに「損益計算書」であり、算出されるのは「利益」です。

そうなると次のとおりの等式が成り立ちます。

資産の残高−負債の残高−純資産の残高=利益

さらに次のとおり展開できます。

資産の残高=負債の残高+純資産の残高+利益

これは「貸借対照表」にほかなりません。

簿記の教科書で、残高試算表を「収益と費用」、「資産と負債・純資産」に分割する図はこのことを説明しているのです。

「損益計算書と貸借対照表の利益がなぜ一致するのか?」、多くの人が抱く疑問です。しかし、これで謎が解けたのではないでしょうか。

株主資本等変動計算書

決算書の一部で、純資産の変動を表します。期首の純資産(資本金と利益剰余金など)がどのように変動して期末の純資産の金額になったかを明らかにします。純資産を変動させる第一の要素は利益ですが、資本金を増減させる増資や減資など様々な変動要素があります。

税込処理と税抜処理

消費税の処理によって試算表と決算書に表示される勘定科目の金額が異なってきます。取引の仕訳を、消費税を含む金額、つまり税込みで行えば消費税が関連する勘定科目(売上や仕入など)の金額は消費税を含んだ金額で表示されます。

一方、消費税を除く金額、つまり税抜きで行えば消費税が関連する勘定科目の金額は消費税を除いた金額、いわゆる本体価格で表示されます。消費税相当額は仮受消費税(売上など消費税を受け取る取引)と仮払消費税(仕入など消費税を支払う取引)に期間中の累計額が表示されます。なお、決算書においては仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を未払消費税として表示します(未収消費税になる場合もあります)。

なお、消費税の免税事業者は税込処理しか選択できません。