収益・費用2


2020/1/8

販売費及び一般管理費まではこちらご覧ください。

《営業外収益》

営業外収益の「営業外」とは本業以外ということです。本業とは仕入れて(製造業の場合は作って)売る(そのための事務作業を含む)ことです。資金調達と資産運用は本業ではありません。

受取利息
預金、公社債、貸付金などの利息がこれです。利息からは一定割合の所得税が源泉徴収されますが、受取利息として計上されるのは源泉徴収される前の金額です。源泉徴収された額は費用として(法人税、住民税及び事業税として)計上します。
受取配当金
株式、出資金などの配当がこれです。配当からは一定割合の所得税が源泉徴収されますが、受取配当金として計上されるのは源泉徴収される前の金額です。源泉徴収された額は費用として(法人税、住民税及び事業税として)計上します。
仕入割引
仕入代金を早期に支払ったことによる対価ですが、実務上、仕入値引きとの区分が困難な場合があります。
その他(勘定科目を新設)
社内に設置している自販機収入、不要品(パソコンや作業屑など)の売却収入、車両の売却収入(定期的な買換え)、保険金の受取り、補助金の受取り、賠償金の受取りは適当な勘定科目を新設して営業外収益に計上します。
雑収入
本業以外の収益で、既存の勘定科目(受取利息、受取配当金など)もなく、勘定科目を新設するほど重要性がないものをいいます。

《営業外費用》

ここでの「営業外」とは営業外収益の「営業外」と同じ意味です。

支払利息
借入金の利息です。
割引料
手形を割引いたときの割引料です。
売上割引
売上代金を早期に支払ってもらったことの対価ですが、実務上、売上値引きとの区分が困難な場合があります。
その他(勘定科目を新設)
盗難損失、損害賠償金などは適当な勘定科目を新設して営業外費用に計上します。
雑損失
本業以外の費用で、既存の勘定科目(支払利息、割引料など)もなく、勘定科目を新設するほど重要性がないものをいいます。

《特別利益》

突発的で多額の収益は特別利益に計上します。上場企業の決算では特別利益が計上されて話題になることがあります。特別利益を計上し、損失の穴埋めをして窮地を凌ぐのです。

固定資産売却益
固定資産の売却による利益です。特に土地や建物を売却した際はこの勘定科目が多額に生じます。
前期損益修正益
前期の決算数値に誤りがあり利益が増加する場合、この勘定科目を用います。
(例)売上の計上漏れがあった。減価償却が過大であった。

《特別損失》

特別損失も上場企業の決算で話題になります。資産運用の失敗、工場や店舗の閉鎖による多額の除却、リストラによる多額の退職金などが特別損失に計上されます。

固定資産売却損
固定資産の売却による損失です。特に土地や建物を売却した際はこの勘定科目が多額に生じます。
前期損益修正損
前期の決算数値に誤りがあり利益が減少する場合、この勘定科目を用います。
(例)仕入の計上漏れがあった。減価償却が過少であった。

《法人税、住民税及び事業税》
法人税、住民税、事業税は利益に対して課税されますので、当期利益の下に「法人税、住民税及び事業税」として表示します。

≪製造原価報告書関連の勘定科目(製造業のみ)≫

製造原価を計算するには、会社全体で生じた費用の中から製造に要した「製造費用」を抽出しなければなりません。製造活動をしている会社いわゆるメーカーは、会社の中を大まかに「製造部門(工場)」「営業部門(営業所)」「事務・管理部門(本社)」に分けることができます。製造費用とは製造部門で生じる費用のことです。

製造原価は製造費用のうち完成した部分です。完成していない部分は仕掛品として翌事業年度に繰り越します。製造原価のうち販売されていない部分は製品として翌事業年度に繰り越します。

製造費用−年度末の仕掛品=製造原価
製造原価−年度末の製品=売上原価

ということです。前年度末(当年度初め)の仕掛品と製品を考慮すれば次のとおりです。

年度初めの仕掛品+製造費用−年度末の仕掛品=製造原価
年度初めの製品+製造原価−年度末の製品=売上原価

製造原価の勘定科目は次のとおりです。「営業部門(営業所)」「事務・管理部門(本社)」と同じ物やサービスは勘定科目の名称も同じです。製造費用は、「材料費」「労務費」「製造経費」に区分して配列します。

《材料費》
商品の売上原価と考え方は同じです。ただし、完成品を外部から仕入れる商品と違って社内で加工され(形状や性質を変えて)販売される点が異なります。
期首材料棚卸高、材料仕入高、仕入値引、仕入戻し、期末材料棚卸高

《労務費》
「営業部門(営業所)」「事務・管理部門(本社)」と名称・内容は同じですが、「製造部門(工場)」で発生する人件費です。
役員報酬、給料手当、賞与、雑給、退職金、法定福利費、福利厚生費

《製造経費》
(1)工場独自の経費
外注加工費
加工作業を外部業者(雇用関係のない者)に委託した場合の費用をいいます。厳密には加工賃だけですが、材料、消耗品代を含めて請求してくる場合があり、実務上は材料仕入との区分が困難な場合があります。
動力費
工場では機械用の電力、燃料、水道料が特別に発生することがありますので、通常の水道光熱費と区分する場合があります。
(2)「営業部門(営業所)」「事務・管理部門(本社)」と名称・内容は同じですが、工場で発生する経費
交際費、会議費、旅費交通費、通信費、消耗品費、事務用品費、修繕費、水道光熱費、新聞図書費、諸会費、支払手数料、車両費、リース料、保険料、寄付金、研究開発費、減価償却費、地代家賃、賃借料、租税公課、雑費

《仕掛品》
期首仕掛品
前期から繰越されてきた仕掛品です。計算上は、ひとまず当期の費用とします。
期首半製品
前期から繰越されてきた半製品です。計算上は、ひとまず当期の費用とします。
期末仕掛品
期末に製造途上にあるので、翌期へ繰越します。
期末半製品
期末に製造途上にあるので、翌期へ繰越します。

製造費用を把握するのが難しい場合もあります。「製造部門(工場)」「営業部門(営業所)」「事務・管理部門(本社)」という部門の区別が明確でないことや、複数の部門に共通して費用が生じることがあるからです。

同一の建物の中に全部門があり、それぞれの配置が曖昧な場合は特定の費用、例えば水道光熱費や建物の減価償却費の各部門への配分が容易ではありません。全部門の建物が別れていても、会社全体の業務をする者の人件費(役員や管理部門の特定人員)の各部門への配分は簡単ではありません。

このような事情から、事務能力の低い中小零細企業では製造費用・製造原価の把握は正確にされていないのが実情です。

損益計算書の不思議?

★総額と純額

損益計算書においては収益と費用は「総額」で表示することがルールとなっています。どういうことかというと、収益と費用を相殺した結果としての「利益だけ」を表示するのではなく、収益と費用を対比させて、その差引きとして利益を計算するということです。売上高と売上原価を対比させて売上総利益を計算する。そこから販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を計算するといった具合です。

ところが損益計算書では、この総額での表示というルールに基づいていない部分もあります。収益と費用を相殺して、「収益>費用」であれば「・・・益」などの勘定科目で、「収益<費用」であれば「・・・損」などの勘定科目で表示していることがあります。このような方法を総額に対して「純額」といいます。

★純額による表示の例

○有価証券の売却
譲渡収入から簿価(取得価額)を差し引いた額を有価証券売却益あるいは有価証券売却損として表示します。譲渡収入を有価証券売却収益などの収益としての勘定科目、簿価を有価証券売却原価などの費用としての勘定科目として総額で計上することはありません。

○有形固定資産の売却
譲渡収入から簿価(取得価額−減価償却累計額)を差し引いた額を、売却したのが建物であれば建物売却益あるいは建物売却損として表示します。譲渡収入を建物売却収益などの収益としての勘定科目、簿価を建物売却原価などの費用としての勘定科目として総額で計上することはありません。

★純額で表示されていることが数多くある

収益と費用は総額で表示することが原則ですが、それは損益計算書の大部分を占める「売上」「売上原価」「販売費及び一般管理費」においての原則であり、それ以下の営業外収益と営業外費用、特別利益と特別損失の計算においては収益と費用が純額で表示されているケースが数多くあります。

「株を売った収入は?」「不動産(土地と建物)を売った収入は?」、このような疑問を抱く損益計算書の読者が非常に多いです。

★特別利益の中に収益が?

特別利益は経常利益の次に表示されますが、これに属する多くの勘定科目が純額で計算されています。土地や建物の売却益がその典型です。その意味で、特別利益の各項目は「収益−費用=利益」ですので特別利益という名称に納得できます。

ところが特別利益の中には収益と呼べる項目が計上されることもあります。補助金、保険金、損害賠償金の受取りがそれです(これらが比較的少額で経常的に生じる場合には営業外収益に計上することもある)。

★特別損失の中に費用が?

特別利益の次に特別損失が表示されますが、これも純額で計算されている勘定科目が多いです。しかし、特別退職金(リストラにより多額に生じる退職金)や損害賠償金の支払いなど、費用と呼べる勘定科目もあります。

★雑収入なのに収益(慣れるしかありません)

営業外収益の中に雑収入という勘定科目があります。これは、本業以外の収益で、既存の勘定科目(受取利息、受取配当金など)もなく、新たな勘定科目を新設するほど重要性がないものをいいます。「収入」という名称ですが収益です。収益ですので入金がない部分も計上しなければなりません。

勘定科目の名称については、理論や原則では理解できないものがいくつもあります。これらについては「言葉」ですので慣れるしかないのです。理屈で考えてもどうにもなりません。