勘定科目のルール


2017/9/12

勘定科目の決定にあたってのルールを確立する

勘定科目を決めなければ仕訳ができません。仕訳ができなければ試算表も決算書も作成できません。勘定科目をスムーズに、しかも正確に決定することは経理業務(試算表と決算書の作成)の効率性と正確性を左右します。勘定科目の決定が滞らないようにするためには、勘定科目についてのルールを確立しておく必要があります。

同一の取引については以後も同一の勘定科目を使用する

勘定科目を決めるにあたって、候補となる勘定科目が複数存在する場合があります。例えば、ガソリン代です。旅費交通費、消耗品費、車両費いずれでもよいのですが、一度用いた場合は以後も同一の勘定科目で処理します。そうでないと事業年度や月ごとの比較ができないからです。

同じ取引であっても勘定科目が異なる場合があるのです。経理担当者で転職してきた人は戸惑うかもしれませんが「郷に入りては・・・」と割り切らなければなりません。

必要に応じて勘定科目の新設、廃止・統合をする

新たな取引、今までは金額が少なく適当な勘定科目に含めていた取引の金額が多額となった場合には勘定科目の新設をしてください。反対の場合は勘定科目の廃止・統合をしてください。なお、この場合上記「同一の取引については以後も同一の勘定科目を使用する」が守られなくてもしかたありません。

できるだけ特殊な業界用語や略称を勘定科目として用いない

会計ソフトの既存の勘定科目に適当な勘定科目が見当たらない場合があります。そのような場合は、独自の勘定科目を新設しなければなりません。その場合、特殊な業界用語や略称は外部第三者が理解に苦しみますので、他の表現が見つからない場合以外は避けます。

勘定科目の意図的誤りは重加算税の対象となる

「費用であることに違いはないのだから・・・」といって、勘定科目を適当に決めてしまうことがあります。しかし、仮装隠蔽(ごまかしたり隠したりすること)の意図をもって勘定科目を誤るのは重加算税の対象となります。例えば、交際費や寄附金(いずれも損金算入が制限されている)を全く違う勘定科目に含めるなどです。加算税とは追徴税額に上乗せされる罰則的な税金です。重加算税とは最も重い加算税で本税の35%です。

仮受金と仮払金は早期に解消する

どうしても勘定科目が決まらない場合には仮受金と仮払金でその場をしのぐしかありません。そうでなければ他の作業も滞るからです。仮受金とは訳の分からない入金があったということです。仮払金とは訳の分からない支払い、内容は後日確定する支払いということです。仮受金や仮払金という勘定科目を残したまま決算はできません。

試算表(内部管理用)の勘定科目と決算書(外部報告用)の勘定科目はできるだけ統一する

内部管理用である試算表の勘定科目は詳細に細分化されており、名称もその会社独自のものもあります。一方、外部報告用である決算書の勘定科目は総括的で名称も一般的となっています。

そこで、両者が一致しないこともあるのです。その場合は「組替表」を作成し内部勘定科目と外部勘定科目の関連を税務署や金融機関などの第三者に説明できるようにしておかなければなりません。税務署には決算書を提出しますが、税務調査の際に必ず調査の対象とされる総勘定元帳は試算表の勘定科目で作成されています。金融機関にも「月次決算」として試算表を提出することがあります。だから、組替表(対応関係が説明できる表)が必要なのです。

消費税による区分

勘定科目を決めるにあたっては消費税の扱いも考慮しなければなりません(消費税の免税事業者の場合は不要)。会社が税務署に納める消費税は、「販売の際に受け取った消費税」から「仕入代金や諸経費を支払う際に支払った消費税」を差し引いた金額です。様々な勘定科目がこの計算に関わっていて、会計ソフトも消費税に関する設定があり消費税の計算ができるようになっています。

難しいのは、同一の勘定科目でも消費税の扱いが(課税対象になるか否かが)異なる場合があるということです。例えば、交通費の場合、国内は課税対象、国外は対象外です。このような消費税の扱いを仕訳つまり勘定科目を決定する段階でしておく必要があります。特に消費税の申告を原則課税にしている場合は大部分の勘定科目がこの計算に関連してきますのでこの区分が大切です。なお、簡易課税の場合には消費税の対象は収益勘定が中心となりますので比較的簡単です。

勘定科目の正確性は経営分析の精度に影響する

自己資本比率、損益分岐点、回転期間、流動比率、各種利益率などの経営指標は、正確な勘定科目分類のみならず、流動と固定の区分、損益計算書の計算プロセスが正しく表示されていて初めて意味をなします。「最終の利益さえ・・・・」と、つい考えてしまいますが気をつけてください。

業種別の勘定科目体系と会計ソフト

業種によっては、業種に適した勘定科目の名称が確立されており、管轄の役所などに決算書を提出する場合にはそれに従わなければならないことがあります。また、会計ソフトもそのような業種にあらかじめ適応している場合もあります。

定期的に残高を検討する(貸借対照表勘定科目)

貸借対照表関係の勘定科目は「増加」と「減少」を積み重ね、結果として一定時点(月末や年度末)の「残高」を表します。この残高は預金残高ならば預金通帳、売掛金ならば未入金の請求書の控などと一致しなければなりません。しかし、一致させるのが困難なことも多く、最悪の場合「内容不明」な勘定科目残高が貸借対照表に計上されたままのこともあります。

当年度末の貸借対照表は、翌年度期首の貸借対照表となります。「内容不明」の勘定科目もそのまま繰越され、半永久的に「未解決」であることもめずらしくありません。貸借対照表関係の勘定科目については、増減を正確に捉え定期的に(試算表を作成する段階で)その残高の正確性を検証しておく必要があります。

補助勘定科目と補助簿の作成

預金、売掛金、買掛金、借入金など、出入りや内容の多い勘定科目については必要に応じて補助勘定科目を設定することが望まれます。そうすれば残高や中身を検討しやすくなります。また、会計ソフトの中で全てを処理するのではなく補助簿の活用も必要です。補助簿とは、試算表や決算書とは直結していないけれども、ある取引を詳細に記録した帳簿です。個々の得意先ごとの「売掛帳」、個々の手形の詳細を記録した「手形帳」などがこれに該当します。

会計ソフトと同じメーカーの販売管理ソフト(売上と仕入を管理する)や給与計算ソフトが会計ソフトと連動していることがあります。そのような場合は、何もかもを会計ソフトで処理するのではなく必要に応じてそのソフトを活用します。

勘定科目相互の関連性

勘定科目は必ず他の勘定科目と同時に変動します。なぜならば、仕訳は複数の勘定科目の組み合わせで行うからです。電車賃(旅費交通費)を現金で支払えば、旅費交通費は増えて現金は減ります。商品を掛売りすれば(代金の回収は後日)、売上が増えると同時に売掛金が増えます。このように相互に関連する勘定科目の組み合わせは多数あります。

相互に関連する勘定科目を知り定期的にチェックしておけば、異常な金額となっている場合、早期に勘定科目の間違いを発見することができます。

勘定科目をほかの期間や時点と比較する

勘定科目をほかの期間や時点と比較すると思いもよらない発見をすることがあります。損益計算書勘定科目は前期や月ごとの数値と比較してみます。前期比較をすれば前期と当期の事情の違いが浮き彫りになります。月ごとの比較をすれば、季節の特性が分かります。貸借対照表勘定科目は前期末や月末ごとに比較してみます。事業規模が不変であれば、売掛金や買掛金はあまり変動しません。多額の設備投資や借入金をしていれば、状況は様変わりしています。

勘定科目の修正(過去の事業年度は修正できない)

勘定科目を間違っていた場合には修正しなければなりません。間違った勘定科目の金額を減少させ、正しい勘定科目の金額を増加させます。この処理は、間違いを発見した時点の日付で行います。

なお、過去の事業年度の勘定科目に間違いがあっても修正することはできません。もう、過去の事業年度の決算は「株主総会で確定し」、税務署や金融機関へも報告しているからです。ただし、貸借対照表勘定科目で間違った勘定科目のまま繰り越されてきたものは、当事業年度(現在進行中の事業年度)の日付で修正しなければなりません。

勘定科目のルール(法律)

勘定科目に関してのルールは、法律としては全ての会社に適用される「会社法」、株式を公開している会社に適用される「金融商品取引法」があります。しかし、無数に、しかも日々変化する取引の結果が勘定科目であることから、その全てを法律で定めることはできないので各会社の判断で決めなければならない局面を避けられません。つまり、唯一絶対的に正しい勘定科目がないこともあるのです。その場合は慣習や常識で決めるしかないのです。