年末調整とは?


2018/11/8

給与計算が不正確であると社員は会社に対して「不信感」を抱きます。やがて、その不信感は「不安」へと変わり、最終的には「モラル低下」につながります。そうなれば、「働き方改革」どころではないです。

★正確な給与計算は経営者の義務です!

年末調整は給与計算の集大成です。正確な年末調整をしてください。

年末調整とは?(勤務先が行う従業員の給与に対する税金の精算手続)

年末調整は、会社などから給与をもらっている人の年間を通しての給与に課税される税金の額を確定するために年末に行う手続です。自営業者や不動産を賃貸している人は自ら税金を計算し、それを確定申告して納付しなければなりません。それに対して年末調整の手続をするのは給与を支払っている会社などの勤務先です。サラリーマンは確定申告が不要で、自身で税金の計算をしなくてもいいといわれるのはこのためです。(わが国の税制では個人の税金は年度(暦年)単位で計算するという仕組みになっています。)

「給与をもらっている人」といえば、サラリーマン、それも正社員のように思われますが、パートやアルバイトの人も含まれます。また、会社の役員も給与をもらっていますので年末調整をしなければなりません。

給与をもらっている人は、毎月もらう給料、臨時にもらう賞与から税金を天引きされていますが、その税額は「仮の税額」です。最終的に確定した税額は1年が終わらなければ計算できないのです。その確定した税額と天引きしてきた仮の税額を精算するのが年末調整です。

源泉徴収とは?(会社は必ず源泉徴収義務者となる)

人を雇って給与を支払う者は、給与を支払う都度、支払金額に応じた所得税と復興特別所得税(いずれも国税)を給与から天引きしなければなりません。このことを源泉徴収義務といい、源泉徴収義務者は源泉徴収した税金を税務署に納めなければなりません。給与のほか税理士、弁護士、司法書士などに支払う報酬からも源泉徴収をしなければなりません。

個人(個人事業者や家主)は人を雇って給与を支払わなければ源泉徴収義務者とはなりません。源泉徴収義務者でなければ、給与以外の税理士、弁護士、司法書士などの報酬を支払ったとしても源泉徴収をする必要はありません。

源泉徴収しなければならない支払いは法律で定められています。その典型は上記の給与と税理士や弁護士の報酬です。源泉徴収義務者が法律で定められている支払いをしたならば、必ず源泉徴収をしなければなりません。支払いの相手先の意思とは関係ないのです。

源泉徴収と年末調整は国税の手続

忘れてはならないのは、源泉徴収と年末調整は国税である所得税(含む復興特別所得税、以下同じ)に関する手続であるということです。年末調整で確定するのは国税である所得税です。給与をもらっている人は地方税である住民税(都道府県民税と市町村民税)も納税しなければなりません。この住民税の納税は「特別徴収」という方法で行われます。

住民税(地方税)の特別徴収

住民税は給与をもらう人の住所地の市町村が税額を計算し、その税額を勤務先に通知します。勤務先はその通知された税額を給与から天引きしなければなりません。これを「特別徴収」といいます。国税である所得税は給与から概算で天引きし年末調整で税額を確定するのに対して、住民税はあらかじめ確定した税額を天引きするのです。

「勤務先はどうやってその税額を知るのか?」

勤務先は所得税(国税)の確定手続である年末調整の結果を、給与をもらう人の住所地の市町村に報告する義務があります。市町村はこの報告された年間給与総額などを基に住民税を計算するのです。(住民税は1年遅れて課税されます。)

【国税庁作成】年末調整のしかた(年末調整の公式マニュアル)
国税庁がこのような手引きを発行しています。いわば、年末調整の「公式マニュアル」です。ネット上で情報を収集するのもいいですが、まずはこれをお読みになることをお薦めいたします。

年末調整をしなかったら

年末調整の大切さは、年末調整が必要であるのに年末調整をしなくなって初めて気がつきます。ローンの申込み、各種公的申請(医療、福祉、教育など)の際、「あなたの所得がわかりませんので・・・」と告げられたときの衝撃は相当なものです。自らの存在を否定されたのですから。経営者は社員を路頭に迷わせてはいけません。

年末調整をしなければ年間給与収入に対する税額が確定しません。ですから、年末調整は必ずしなければなりません。給料や賞与からの源泉徴収は適当にするのではなく、「源泉徴収税額表」という税法が定めるルールに基づいて計算しますが、どうしても次のように最終的な税額とは隔たりが生じます。

◆扶養親族の増減
扶養親族の数が多いほうが税金は少なくなります。配偶者や子など扶養親族数の判定は年末時点でおこないます。給料や賞与から源泉徴収したときと年末で扶養親族数が違えば、源泉徴収した税額と最終的な税額に違いが生じます。

◆年末調整でしか考慮しないこと
生命保険や地震保険に加入している、住宅ローンがある人は税金が少なくなります。これらは年末調整でしか考慮しません。

やはり、給料や賞与からの源泉徴収だけでは不完全で、年末調整をしなければ最終的な税額は確定しないのです。

年末調整は国税である所得税の精算手続ですが、それは同時に地方税である住民税(都道府県民税+市町村民税)の手続でもあります。年末調整の結果は、給与をもらっている人の住所地の市町村に報告され、住民税はそれを基に市町村が計算します。年末調整をしなければ、この流れが途中で絶たれてしまいます。

年末調整をしなくてもよい人(確定申告で税額を精算する)

◆退職者(年末に勤務していない人)

年度の途中で退職した人は退職した勤務先で年末調整をしません。年末にその勤務先に在籍していないからです。しかし、退職し再就職した人は次の勤務先で年末調整をしなければなりません。年末調整をしなくてよいのは、年末にどこにも勤務先がない人だけです。このような人は、自営業者と同じように自身で確定申告をして税額を確定しなければなりません。

◆2か所以上から給与をもらっている人(年末調整は1か所の勤務先でしかできない)

同時に2か所以上から給与をもらっている人は、そのうち1か所でしか年末調整ができません。給与の税額は、全ての給与を合計しなければ計算できません。ですから、このような人は確定申告でこの計算をしなければならないのです。

年末調整も確定申告も必要な場合(確定申告でのみ考慮される事項、給与以外の収入)

おなじみの医療費控除、住宅ローン控除(初年度)は年末調整ではできません。自身で確定申告をしなければなりません。また、給与以外の所得がある、例えば、不動産を賃貸している、不動産を売却した場合にも確定申告が必要です。年末調整は給与のみの税額計算手続です。

所得と所得税(基本は申告納税制)

わが国には様々な税があり、会社などの法人と個人が納税義務を負っています。会社などの法人の所得である利益には法人税という法人固有の税が課税されます。多くの個人が納税義務を負っているのは所得税(国税)です。所得税は文字通り所得に課税される税です。所得税は個人の種々雑多な所得の全てに対して課税されます。

給与収入は給与所得として所得税が課税されます。給与所得の大部分が年末調整という手続で課税が完結します。しかし、年末調整という枠に収まらず、確定申告という申告手続を必要とする場合もあります。わが国の所得税は申告納税制を基本としています。申告は自主的に行わなければなりません。給与所得しかない人であっても年末調整だけで課税が完結せず、自主的な申告をしなければならないこともあるので注意が必要です。