試算表(財政状態とは)1/7

2003年1月4日公開 第1回更新2005年9月7日

第2回更新2007年7月11日

 

築山公認会計士事務所

作成者 公認会計士 築山 哲

 

 

■目次■

 

1/7(このページ)≪財政状態(貸借対照表)とは≫≪資金の流れと貸借対照表≫≪貸借対照表の様式≫

2/7≪現金≫

3/7≪預金≫

4/7≪売掛金≫≪受取手形≫

5/7≪棚卸資産≫≪固定資産≫

6/7≪買掛金≫≪支払手形≫≪借入金≫≪資本金≫≪利益≫

7/7≪貸借対照表のどこを見ればよいのか?≫≪財政状態の今日的意義≫

純資産?

 

 

このページとともにご覧ください。

試算表(その仕組み)

試算表(業績の把握)


 

 

≪財政状態(貸借対照表)とは≫

 

「貸借対照表は企業の一定時点(事業年度末)における財政状態、つまり、企業が保有運用(支払手段、換金できる)あるいは投下している(将来の収益となる)資産と、その資産を得るために要した資金の調達方法(調達先)である負債(返済が必要)と資本(返済が不要)を表示する決算書の一部である」

多くの人は、一度くらいはこのような説明を読んだり聞いたりしたことがあると思います。しかし、実際に自社や上場企業などの貸借対照表を見てもこの説明の意味がさっぱり理解できません。「資産」や「負債」の中には、世間一般の常識からして「資産」や「負債」とは考えられない項目があります。また、正味財産としての「資本」は手に取れるものではありません。

それではなぜ、重要な決算書の一つである貸借対照表がこんなにも常識的感覚とはかけ離れているのでしょうか。それは、貸借対照表が現行の企業会計のルールの中で作成されており、企業会計のルールを知らなければ貸借対照表やその背後を理解できないからです。

 

企業会計のルールには様々なものがあり、また日々変化しています。しかし、貸借対照表を理解するうえで次のルールは最低限理解しておく必要があります。

 

1 発生主義会計

 

 現行の企業会計は、費用収益を入出金にかかわらず計上する発生主義会計を採用しています。発生主義会計においては、支払・貯蓄手段である現金預金、換金性のある有価証券や不動産のみならず、将来の費用となる支出や将来収益となって回収される販売代金も資産とされます。さらには、たとえ支出がない場合であっても、将来に支払うべき金額の一部を負債として認識します。

 

2 複式簿記

 

 資産や負債、その差額としての資本は帳簿によらなくとも、その実際残高から集計可能です。しかし、現行企業会計においては、フローである損益とストックである資産・負債を同時に捉えなければならず、その記録技術として複式簿記を採用しています。

 

3 企業の継続性

 

 企業は継続することが前提となります。つまり、企業が継続する限りは、一定時点においての資産の即時の換金価値は第一義的なものではありません。将来の収益獲得可能性がある限り、収益を獲得可能な金額で資産の額が決定されます。また、投下された資金で未消費のものはその投下金額でもって資産としての額が決定されます。

 

4 清算価値

 

 貸借対照表の資産と負債の差額である資本が、企業の清算価値を意味するのではありません。つまり、貸借対照表作成時点で企業活動を停止したとしても、資本相当のキャッシュが残るわけではありません。これが、上記1の「発生主義会計」や2の「企業の継続性」に基づくことはいうまでもありません。

 

5 資本という概念

 

 大変難解な概念です。企業会計において資本とは、次の意味で用いられます。

 

(1)株主からの出資

  会社を設立するには株主からの出資が必要です。資本とは、この株主からの出資を意味し「資本金」として表示します。つまり、資本金は株主からの出資という「過去の記録」にほかなりません。株主からの出資の原始的形態は「現金と預金」ですが、企業が活動を行うにつれて様々な内容の資産に変貌します。また、場合によっては費用や損失として消滅し貸借対照表から姿を消してしまうこともあります。

 

(2)正味財産

 資産マイナス負債の差額として捉えます。株主からの出資が増殖しているならば、正味財産は当初出資金額である「資本金」を上回ります。その上回る金額は「利益」に他なりません。

 

(3)株主の持分(企業価値)

資本は資産から返済を要する負債を差引いたものであることから、会社のオーナーである株主の持分(企業価値)であるともいわれます。

 

 

≪資金の流れと貸借対照表≫

 

企業は、「資金調達」、「資金投下」、「資金回収」、「資金の再投下」というサイクルを「無数に」、「絶え間なく」繰り返しています。貸借対照表はこのサイクルの「一定時点」の表現にほかなりません。

この個々のサイクルが、貸借対照表にどのように反映されるかを説明すると次のようになります。

 

1 資金の調達

 

(1)設立時の資金調達

 会社設立時の資金調達は株主から行います。当初資金調達した資金は現金(預金)です。たとえば、設立時に300万円調達した時点では調達源泉としての資本は300万円(勘定科目は資本金)、運用形態としての資産は300万円です(勘定科目は現金預金)。

 

(2)融資による資金調達

 金融機関などから融資により資金調達した場合も、当初資金調達した資金は現金(預金)です。たとえば、300万円調達した時点では調達源泉としての負債は300万円(勘定科目は借入金)、運用形態としての資産は300万円です(勘定科目は現金預金)。

 

2 資金の投下

 

 企業が調達した資金は、財貨や用役に投下されます。

 

(1)商品の購入

商品を購入すれば、現金預金という資産勘定から商品という資産勘定に振り替わります。(記帳上は、商品の購入時点で仕入高という費用勘定で処理し、貸借対照表作成時点の未販売金額を商品という資産勘定に振替えます。)

 

(2)設備投資

 設備を購入すれば、現金預金という資産勘定から建物、機械装置などの資産勘定に振り替わります。

 

(3)人件費や諸経費の支払い

 人件費や諸経費を支払えば、現金預金という資産勘定が消滅します。(ただし、人件費や諸経費は収益獲得を目的として行われるのであり、やがて貸借対照表には人件費や諸経費の支払いの成果として獲得した資産が計上されます。)

 

3 資金の回収

 

上記2の資金投下は、収益を獲得すること(投下資金<回収資金)を目的として行われます。収益の獲得(資金の回収)は貸借対照表に次のとおり表れます。

 

(1)商品の販売

 商品という資産勘定が減少するとともに、現金預金という資産勘定が増加します。いわゆる掛売りの場合には、売掛金という資産勘定が増加します。

 

(2)販売代金の回収

 売掛金という資産勘定が減少するとともに、現金預金という資産勘定が増加します。

 

(3)設備資金、人件費、諸経費の回収

 設備資金は減価償却という手続により順次費用化します(貸借対照表から減額します)。商品の販売代金で減価償却費、人件費、諸経費を回収しなければならないのは当然です。

 

4 資金の再投下

 

新たに資金調達しない限り、あるいは負債の返済と株主への返金である減資をしない限りは、借入金勘定と資本金勘定は変動しません。ただし、投下資金に利益を付加して回収している限りは、資本は増加し続けます。

 

《測定と評価》

会計の世界においては帳簿に記録する金額を決めることを「測定」といいます。また、一度測定した金額を再検討することを「評価」といいます。貸借対照表における測定と評価の方法は各項目によって異なってきます。

【資産】

●現金預金

評価や測定の問題は生じません。

●売掛金

相手先と取り決めた回収予定額で測定しますが、回収不能部分については差し引きして評価しなければならないことがあります。

●商品

購入した金額で測定しますが、価値が下落している場合(販売しても利益を生まない、販売さえできない場合)には評価しなければなりません。

●建物や機械など

購入した金額で測定しますが、一定部分は減額し費用としなければなりません(この費用とする手続を減価償却といいます)。

●株式

 購入した金額で測定しますが、短期での売却益狙いで保有している分については、いわゆる時価(市場価格)で評価しなければなりません。

【負債】

負債については取引先と取り決めた支払うべき額で測定します。そして、企業が継続している限りは支払うべき額は不変ですので評価の問題は生じません。いわゆる引当金(将来の支払い)については見積りにより計上されます。

【資本】

資本は「資産−負債」として算出されますので、測定や評価の問題は生じません。(資産や負債の測定や評価の結果として算出されます。)

 

《時価会計、減損会計》

上記の《測定と評価》のとおり、資産と負債の測定や評価の方法によって利益は変動してきます。売掛金や株式についての評価(時価会計)、建物や機械などの早期費用処理(減損会計)、近年は世間一般でも話題となっております。

 

《資本剰余金と利益剰余金》

資本は次のとおりに分類されます。

●資本金

株主からの出資のことです。

●資本剰余金

資本から資本金と利益剰余金(利益)を差し引いた金額をいいます。典型は株主からの出資のうち資本金としなかった部分である資本準備金です。

●利益剰余金(利益)

利益剰余金のうち一定金額は利益準備金としなければなりません。

 

 

≪貸借対照表の様式≫

 

このページでの貸借対照表あるいは試算表は、多くの財務会計ソフトで採用されている次の様式を前提とします。一般に試算表(月次決算)という場合はこのような様式を指します。

 

資産の部

 勘定科目

前月繰越

当月借方

当月貸方

当月残高

現金預金

 

 

 

 

 現金

 

 

 

 

 当座預金

 

 

 

 

売上債権

 

 

 

 

 売掛金

 

 

 

 

 受取手形

 

 

 

 

棚卸資産

 

 

 

 

 商品

 

 

 

 

 製品

 

 

 

 

流動資産合計

 

 

 

 

有形固定資産

 

 

 

 

 工具器具備品

 

 

 

 

 車両運搬具

 

 

 

 

固定資産合計

 

 

 

 

資産合計

 

 

 

 

 

負債の部 純資産の部(以前は資本の部と呼んでいた)

 勘定科目

前月繰越

当月借方

当月貸方

当月残高

仕入債務

 

 

 

 

 買掛金

 

 

 

 

 支払手形

 

 

 

 

その他流動負債

 

 

 

 

 短期借入金

 

 

 

 

 預り金

 

 

 

 

流動負債合計

 

 

 

 

固定負債

 

 

 

 

 長期借入金

 

 

 

 

固定負債合計

 

 

 

 

負債合計

 

 

 

 

資本金

 

 

 

 

当期未処分利益

 

 

 

 

(うち当期利益)

 

 

 

 

純資産合計

 

 

 

 

負債純資産合計

 

 

 

 

 

 

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