勘違いされていませんか?
所得、消費、資産
事業所得の計算
2006年12月28日現在
大阪市北区与力町1−5
築山公認会計士事務所・築山哲税理士事務所
税法の条文は精密、複雑、詳細、難解であることから、専門家といえどもこれを読むのは苦痛で、つい解説書などの安易な解決方法に頼ってしまいます(解説書でも難解です)。わが国は租税法律主義であることから、租税を課すには法律の定めが必要です。また、租税の計算についての条件が同一の納税者は、いずれの税額も等しくならなければ平等とはいえません。そんなことから、税法が大雑把で税務署や納税者の好き勝手な解釈が入り込むようでは困ります。税法の条文が、精密、複雑、詳細で、難解になるのは仕方のないことです。
所得税の中で極めて難解、というよりも様々な場面で用いられる用語が「所得」です。確定申告書の作成にあたり、事業所得者に限っていえば、次のとおりの「所得」に出くわします。
1 事業所得
わが国の所得税法においては、所得を10種類に区分しています。事業所得はその中のひとつであり、事業という性格から、「収入(青色申告決算書の売上(収入)金額、収支内訳書の売上(収入)金額、申告書B第1表の収入金額等の一部分)」から「必要経費(青色申告決算書の売上原価・経費・各種引当金準備金等、収支内訳書の売上原価・経費・専従者控除)」を差し引いて計算します(申告書B第1表の所得金額の一部分)。
2 総所得金額
わが国の所得税法は、すべての所得を総合して(合計して)それに累進税率を乗じて税額を計算することを原則としています(申告書B第1表の所得金額の合計欄)。事業所得、給与所得などはこの中に含まれます。
3 合計所得金額
総所得金額に総合課税の対象とならなかった所得(退職所得や土地建物等の譲渡所得など)を加算した金額です。配偶者控除や扶養控除の要件である、配偶者や扶養親族の所得金額はこれによります。つまり、配偶者や扶養親族の給与所得(総所得金額)がゼロであっても、退職所得や土地建物等の譲渡所得などを考慮すれば(合計所得金額で考えれば)、配偶者控除や扶養控除ができないこともあるということです。
4 所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除など)
所得税は所得(収入−必要経費)に課税されますが、ここからさらにいくつかの種類の控除(差し引くこと)が認められています(申告書B第1表の所得から差し引かれる金額の合計欄)。
5 課税される所得金額
上記2(場合によっては3)から4を差し引いた金額です(申告書B第1表の課税される所得金額)
≪倹約家と浪費家≫
1 所得税と消費
一般に消費とは、ある人が物やサービスを消耗や利用することです。消費の中には、事業所得の計算における必要経費となるものと、必要経費とならないものがあります。事業所得は、収入からそれを得るための必要経費を差し引いた金額です。事業所得者が必要経費以外に行う消費(私生活での消費)は、事業所得の計算にあたっては考慮されません。ただし、配偶者控除、扶養控除、住宅取得借入金等控除などを通して所得税額の計算に当たって、定められた一定額(実際の消費よりもはるかに少ない)が反映されます。
まったく同じ事業でまったく同じの収入(事業所得における売上げ)の事業所得者が二人いて、一方は「倹約家」(必要な消費も極力抑える)、もう一方が「浪費家」(必要以上の消費をする。例えば、見栄のみで仕事もないのに人を雇い、立派な事務所を借りるなどする)であったとしたら、倹約家のほうが所得税は多くなります。
【必要経費】必要経費は、真に事業に必要であれば無制限(特定のものを除いて税法上具体的な上限はありません)に認められます。
2 消費税
消費税は、広く公平に消費に課税されます。そんなことから、浪費家は多くの「消費税を支払う」ことになります。一方、倹約家は多くの消費税を払いませんが、事業者としての「消費税の納税は多く」なります(事業者が納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた金額です)。
3 消費と資産(死後の税金=相続税)
消費を抑えれば資産が残ります。資産の原形は現金です。不動産や株式なども資産です。人が資産を残して死亡した場合には、その親族などに相続税が課税されます。倹約家の親族などの相続税が多くなることはいうまでもありません。
以上が、わが国の個人に関する税金の大枠です。
倹約家と浪費家のどちらが有意義な人生であるかは、人それぞれの価値観などに左右されるでしょう。しかし、一般に、所得税の確定申告の時期に悩みが多いのは倹約家でしょう。なお、浪費家も油断は禁物です。
★倹約家の「落とし穴!!」★
「あれだけ『努力!』して出費を抑えてきたんだ。『努力!』すれば、必ず税金は減る!!」
仕入先は押しと粘りで値引き応じますが、税務署はそうはいきません。
★浪費家の「落とし穴!!」★
「金がないので、税金は払わなくていいんだ!!」
事業にも無関係で私生活においても無駄としかいえない出費(単なる友人との派手な遊興費など)は、
税金の計算にあたって考慮されません。
確定申告の期限が迫ってくると、つい我を失ってしまいます。思いもよらぬ勘違いをしていないか、大局的な観点から再度点検されることをおすすめいたします。
すでに、確定申告書を提出している場合であっても、3月15日まででしたら再度提出できます(後から提出した申告書が最終分として扱われます)。なお、3月15日を過ぎれば、「修正申告(税額の増加)」や「更正の請求(税額の減少)」となりますので手続は複雑になります(修正申告は税務調査の結果として行われるのが通常です)。
《年末に預金や現金を多く持っていれば所得も多いということ?》
多くの人が抱く疑問です。この件については、次の二通りに分けて考える必要があります。
(1)1年間の事業の結果(儲け)として年度末に預金や現金を多額に持っている
当然、所得が多いので所得税も多額になります。しかし、年度末までに入金は済み、支払いは翌年となった場合、年度末に事業用資金を金融機関などから調達した場合なども預金や現金を多額に持つことになりますが、この分についてはすべてが所得税の対象とはなりません。前者については、入金(売上高)と翌年の支払い予定額(仕入高=買掛金)の差額が所得税の対象となり、後者については所得税の対象とはなりません。
(2)事業以外の結果として年度末に多額の預金や現金を持っている
相続や贈与によって財産を得た場合がこれに該当します。所得税は課税されませんが、相続や贈与の額によっては相続税や贈与税が課税されます。(給与、譲渡など事業以外の所得があり結果として預金や現金を持っている場合には所得税が課税されます。)
●1年間の所得=1年間の収入−その収入を得るための1年間の支出(必要経費)は、1年間の入金(預金や現金の増加)−1年間の出金(預金や現金の減少)とは一致しないのが通常
●「収入」と「収入を得るための支出(必要経費)」については税法というルールが存在する(何が収入と支出であるか、どの年の収入と支出になるか)
以上の2点が理解できない(受け入れたくない)場合には、確定申告にあたって相当苦労すると考えてください。税務署とトラブルを起こしても税理士は助けてくれません。さらに、同業者に相談しても「ワッハハハ・・・・。笑わしてくれるじゃないか。お前、そんなことも知らなかったのか。事業をするなんて10年早いぞ!!おとなしくサラリーマンでもやってろよ」と笑われるだけです。
≪念のために・・・≫
ごくまれに、以下について、とんでもない処理をされている方がいらっしゃいますので、念のために説明させていただきます。
1 事業主(事業所得者)の取り分=課税の対象
「収入−必要経費」として計算します(現実に事業用の財布から私生活用の財布に移動させたかは無関係です)。必要経費は仕入代金、事務所家賃、従業員の給与などです。会社の場合には、損金(必要経費に相当します)に事業主(代表取締役)の取り分が役員給与として含まれます。そんなことから、よそ(会社)につられて必要経費に事業主の取り分を含めている方がいらっしゃいます。この計算でしたら、事業所得は異常に少なくなると思います。(なお、会社の場合には役員給与に所得税が課税されます。)
以上から、事業所得がゼロに近いあるいはマイナスということは、そうそうではありえないということになります。特に、数年間その状態が続くということは、もともと余程の貯金があるか、借金を積み重ねているということです。
「よそ(会社)も赤字だから」につられてはいけません。
上記の《年末に預金や現金を多く持っていれば所得も多いということ?》をさらに複雑にしているのが、この「事業主の取り分」の処理です。「1年間の所得=1年間の収入−その収入を得るための1年間の支出(事業主の取り分≒生活費は含まない)」となるということです。
2 借金の返済
事業所得者は経営が苦しいときに借金でしのぐ場合があります。つまり、借金して必要経費の支払いをすることがあります。ここまではご理解いただけると思います。問題は借金の返済です。返済すればお金が出てゆきます。そこで、「これは必要経費だ」と考えてしまう人がいます。借金相当の必要経費はすでに差し引いているのですから、返済額相当を必要経費にすれば、必要経費の二重計上になります。「実際、金がなくなるではないか!!」と憤慨されるかもしれません。
お金の出入りで収入と必要経費を計算されるならば、なぜ、「借金したときに収入としないのですか?借金したときにはお金が入ってくるではないですか?」。(利息は必要経費となります。)
3 生命保険料は必要経費??
事業主が私的な目的(自身や遺族の保障のためなど)で支払った生命保険料は、必要経費とはなりません。その一部が所得控除の対象となるだけです。最近では生命保険による節税もかなり下火となりましたが、まだまだ「生命保険は節税になる」、「生命保険は事業の経費になる」などの固定観念が根強く残っています。確かに、会社の場合には一定条件を満たせば経費にできます。しかし、個人事業者の場合には、所得控除としてしか差し引くことができません。
4 社会保険料と医療費は必要経費??
これらについても、3の生命保険料と同じような理由から必要経費として処理している人がいます。申告書において引算する場所が違いますのでくれぐれもご注意ください。
《計算例》
手持ち資金の額と所得金額は無関係
以下、いずれの場合も事業所得は500万円と等しくなりますが、年度末の財産(預金)は異なります。これは、所得とは「年間の儲け」であり、その儲けが、「入金されているかどうか」、「儲けを生むための必要経費を支払済みであるか」、「儲けをどのように使ったか=私生活の水準」とは無関係ということです。
以下はほんの一例であり、もっと複雑な(戸惑う)ケースもあります。「泥沼」にはまってしまった場合には、できるだけ早く税務署や税理士に相談されることをおすすめいたします。
【例1】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに全額回収)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−事業主の生活費360万円=440万円となります。
【例2】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末に200万円の未回収あり)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
事業所得は収入1000万円(未回収部分も収入となります)−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−年度末未回収200万円−事業主の生活費360万円=240万円となります。
【例3】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに全額回収)
●必要経費500万円(固定資産や在庫=費用の繰延べはなし。年度末に100万円の未払いあり)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円+必要経費の未払い部分100万円−事業主の生活費360万円=540万円となります。
【例4】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに全額回収)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において300万円消費し、60万円預金とした)
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−事業主の生活費360万円+私生活上の預金の増加60万円=500万円となります。
【例5】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに全額回収)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
●年末に翌年の事業拡大のため借金300万円をした(年末時点では事業に投下していない)
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−事業主の生活費360万円+借金300万円=740万円となります。
【例6】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに全額回収)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
●年末に競馬で140万円負けた
●年末に友人(事業とは無関係)と派手に飲み歩き100万円使った
●年末に友人(事業とは無関係)に200万円貸してやった
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−事業主の生活費360万円−競馬の損140万円−飲み代100万円−友人に貸した200万円=ゼロ!!(一文無し)となります。(競馬の損と飲み代がもっと多ければ、借金しないとやっていけません。友人に貸したお金が返ってこなければ大変です。しかし、その場合も事業所得は500万円です。)
【例7】
●昨年元手300万円の預金(全財産)で事業を開始
●収入1000万円(年末までに一切の回収なし)
●必要経費500万円(年末までに全額支払い済みで、固定資産や在庫=費用の繰延べはなし)
●事業主の生活費360万円(全額私生活において消費している=預金をしていない)
事業所得は収入1000万円−必要経費500万円=500万円となります。なお、年度末の預金(余裕資金は手元に置かないとして)は、300万円(当初の元手)+事業所得500万円−未回収の収入1000万円−事業主の生活費360万円=マイナス560万円となります(借金しないとやっていけません)。業種によってはこのようなことも起こりますが、確定申告の時点で入金されていれば納税はできます。
税務署は申告書を受け付けた(今まで税務署に指摘されたことがない)!!
税務調査は忘れたころにやってきます・・・
「秘策!!」とお考えの場合には、
まずはこちらをどうぞ。
訳のわからないことをいうな。俺は俺のやり方を貫く!!
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