総勘定元帳


2019/8/3

総勘定元帳は決算書と直結する大変重要な帳簿です。決算書は損益計算書(収益−費用=利益)と貸借対照表(資産=負債+資本)からなりますが、総勘定元帳は、これらの構成項目である勘定科目ごとの集計数値や残高を算出するプロセスとその内容を記録したものです。決算書の作成根拠ということです。

会計ソフトは総勘定元帳(決算書)の作成を主目的としている

会計ソフトの主たる機能は総勘定元帳と決算書の作成です。会計ソフトには、総勘定元帳と決算書の作成に必要な諸データを仕訳という形式にして、漏れなく、正確に入力しなければ正しい総勘定元帳と決算書は作成できません。会計ソフトを使いこなすには、仕訳から総勘定元帳と決算書が作成されるメカニズム(複式簿記の原理)を理解していなければならないのです。

総勘定元帳で様々な補助簿を集約する

総勘定元帳には様々な補助簿から情報が提供されそれが集約されます。総勘定元帳の記載は総括的ですので、それを補うために補助簿が必要です。補助簿は、総勘定元帳の作成単位である勘定科目を細分化する、総勘定元帳では集計されている金額の内訳を明らかにするものです。

総勘定元帳は複式簿記の主要な帳簿

総勘定元帳は仕訳の結果として作成されます。仕訳とは、複式簿記の記録の最小単位で、取引(現金や預金の動きが生じる出来事)を「収益」「費用」「資産」「負債」「資本」に分類するという作業です。総勘定元帳はこの作業の結果として作成されます。仕訳という作業の集積です。

仕訳は取引を両面から捕らえます。「費用の背後には資産の減少」「収益の背後には資産の増加が」といった具合です。取引は、二つの(厳密には二つ以上の)勘定科目の総勘定元帳に記録されるということです。

出納帳は総勘定元帳の一部である場合もある

現金管理のためには現金(金銭)出納帳が必要ですが、現金の保管場所が1か所で、現金出納帳もひとつしかない場合には、現金出納帳は総勘定元帳の現金勘定と同じになります。

預金出納帳(銀行帳)も、銀行預金口座がひとつの場合には、総勘定元帳の預金(普通預金など)勘定が預金出納帳(銀行帳)になります。

業種や業態によっては総勘定元帳が売掛帳と買掛帳に代わる場合もある

得意先が極めて少なく、その取引形態も単純な場合には、売掛帳は不要です。売掛金の変動と残高は総勘定元帳で行えば十分です。同じく、仕入先が極めて少なく、その取引形態も単純な場合には、買掛帳は不要です。買掛金の変動と残高は総勘定元帳で行えば十分です。

仕訳帳(伝票)

総勘定元帳は仕訳の結果として作成されますので、総勘定元帳の基となる記録として全ての仕訳の全貌を明らかにした仕訳帳が必要となります。会計ソフトでは仕訳帳が必ず作成されるようになっています。仕訳帳では、全ての仕訳が日付順に表示されます。

総勘定元帳の個々の記録には相手先勘定科目が記載されていることから、どのような仕訳が行われたかがわかる場合もあります。しかし、取引によっては仕訳帳をたどらなければ仕訳の全貌が理解できないものがあります。

仕訳帳は伝票と呼ばれるものと内容が同じです。伝票とは、会計ソフトの入力原票として仕訳形式で作成されるものですが、会計ソフトに直接入力する場合には伝票の作成を省略していることがあります。

摘要

仕訳をする際には、勘定科目と金額だけでなく、取引の内容を簡潔な文章で記録します。これを摘要といいます。会計ソフトに摘要を入力しておけば、総勘定元帳と仕訳帳にも摘要が表示されますので取引内容を理解するのに役立ちます。

消費税の処理には税抜処理と税込処理がある(いずれも利益は同じ)

取引を仕訳するに当たっては、消費税に関連する取引をどのように取り扱うかによって、税抜処理と税込処理の二つの方法があり、いずれかを選択しなければなりません。

◆税抜処理

取引に関する消費税額を抜いて、つまり、取引額を本体価格と消費税額に区別して仕訳するという方法です。消費税が間接税であることからすれば合理的な方法です。

税抜処理においては、受け取った消費税は「仮受消費税」、支払った消費税は「仮払消費税」とし、取引の金額から区別して仕訳をします。納税金額は、事業年度合計の仮受消費税と仮払消費税の差額となり、納税後は仮受消費税、仮払消費税ともゼロとなります。

税抜処理においては消費税に関連するすべての取引を、本体と消費税に区分けしなければなりません。しかし、相手先との価格決定の段階で消費税が区分されていない取引もあることから、納税義務者自らが区分する必要があり大変手間の掛かる方法であります。一般に、税抜処理は事務能力の高い会社が採用する方法です。

税抜処理も会計ソフトがあれば容易に行なえます。ほとんどの会計ソフトにおいて、「『税込入力』の『税抜出力』」ができるからです。しかし、価格表示が消費税込みでされている取引の場合、総勘定元帳や試算表(いずれも税抜き)と現実にギャップを感じてしまいます。例えば、交通費(電車賃など)は、現実の取引においては税込みで行われていますが、総勘定元帳や試算表では税抜きとなってしまいますので、実際よりも費用が少なく計上されているように感じます。

このような実情からすれば、一概に「税抜処理は合理的」ともいえないのかもしれません。

【設例】

年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1000
仮受消費税80
売掛金1080
仕入800
仮払消費税64
買掛金864

(2)損益計算書
売上1000
仕入800
利益200 

(3)貸借対照表
仮受消費税80から仮払消費税64を差し引いた16が未払消費税(納税する消費税)として表示されます。未払消費税は翌事業年度に納税した段階で消えます。

◆税込処理

消費税込みの取引額でもって仕訳をする方法です。収益には受け取った消費税が含まれ、費用には支払った消費税が含まれることから、消費税額が利益に影響します。しかし、最終的な納税額を費用として処理することにより、利益は税抜処理と同様の結果となります。

【設例】

上記、税抜処理の場合と同じく、年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1080
売掛金1080
仕入864
買掛金864
租税公課16→納税する消費税(80−64)

(2)損益計算書
売上1080
仕入864
租税公課16
利益200

最終的な利益は、税抜処理の場合と同じになります。租税公課(納税する消費税)は事業年度末には納税していませんので、相手勘定科目を未払消費税として計上します。未払消費税は翌事業年度に納税した段階で消えます。