贈与税の実際

 

贈与税の概略

 

 

1 税務署の着眼点

 

突発的に納税義務が発生することが多い相続税に対して、贈与税は計画的行動の結果として納税義務が生じることが通常です(無知な行動の結果であることもあります)。つまり、将来の相続税の軽減を目的に生前贈与を行うことが多いことから、税務署は預金、動産、不動産などの名義変更や実質的な所有者の変動を注視しています。また、被相続人の死の直前には、相続人が被相続人の財産を管理し場合によっては名義変更していることが多いという経験則から、このような資産の移転については特に注視しています。

 

2 税務調査

 

相続(人の死)という客観的理由から納税義務が生じる相続税とは異なり、贈与税では「贈与についての事実認定(時期や金額)」について、税務署と納税者側でいわゆる「見解の相違」が生じることがしばしばあります。しかし、下記のような出来事が生じたときは、かなりの確率で贈与が行われており、かつ贈与についての客観的事実関係が残りやすいですので、税務署からの問い合わせには十分備えておく必要があります。

 

●若くして住宅や高級外車を購入した(誰かから贈与を受けているのでは)

●土地売却や退職により多額の資金を手にした(誰かに贈与をしているのでは)

●事業のために多額の資金を調達した(誰かから贈与を受けているのでは)

●相続が発生した(生前贈与があるのでは)

 

 

《よくある贈与税に関するトラブル》

 

贈与になっていなかった・・・

(遅れて贈与税が課税される)

 

「親の預金を形式的に子の名義にした」がその典型例です。つまり、名義が子に変わっているだけで名義変更後も引き続き親がその預金を管理している場合です。これでは贈与したことにはなりません。なぜならば、贈与は「あげましょう!」と「ちょうだいいたします!」であるからです。当然、名義変更した時点で贈与税は課税されませんが、最終的には下記のとおりに課税されることになります。

 

■どこかでまとめて贈与税が課税される。

上記の例でいえば、子がこの預金を自由に使えるようになった時点で贈与となり、子に贈与税が課税されます。例えば、子が生まれてから毎年100万円ずつ親から子へ名義変更し、子が20歳になったときに名実ともに子の預金にした(子が自由に使えるようにした)場合には2000万円の贈与になります。

 

■相続税が課税される。

上記の例で、子が預金の名義が自分に変更されていることを知らないまま親が死亡した場合には、その預金は相続税の対象になります。

 

親が所有する家屋に子の資金で増築をした場合

(子から親への贈与になってしまいます)

 

よく行われる方法です。このようなことが行われる背後には「親は土地と家屋を持っているがこれ以上増築する資金がない(無職なので融資が受けられない)」、「子には土地や家屋はないが増築する資金がある(確かな収入があるので融資が受けられる)」という事情があります。また、多くの場合は建築業者や金融機関がこの方法をすすめます。

 

このような増築が行われた場合、増築部分の所有権は親が取得することになり「子から親へ」の贈与であることから金額によっては親が贈与税を納めなければなりません。このような事態を避けるためには、増築前は親のみの所有権となっていた家屋を、増築前の家屋の価値(従来から親が有していた価値)と増築代金(新たに子が付け加えた価値)の比率で所有権を登記(共有登記)しておく必要があります。

 

【建築業者や金融機関はそんなこと教えてくれなかった!】

当たり前です!!彼らは税理士ではありませんから、そのようなアドバイスをすることはできません(税金についての相談には税理士資格がない限り応じることはできません)。しかし、ほとんどの業者は「贈与税には気を付けてくださいね。必ず税務署か税理士に相談してくださいよ」とは伝えているはずです。そのサイン(忠告)に気が付かなかっただけです。

【業者専属の税理士は何もいっていなかった!】

業者によっては、特定の税理士と契約をして顧客の税務相談の対応をさせていることがあります。しかし、その税理士は貴方が正式に依頼した税理士ではありませんので最後まで面倒を見てくれるはずがありません。

 

不動産を贈与しても登記をしなければ・・・

 

何時贈与が行われたかによって、どの年に贈与税の申告をしなければならないかが決まってきます。「書面による贈与」は「その契約の効力が発生した時」、「書面によらない(口約束による)贈与」は「その履行の時」に贈与が行われたことになります。

 

不動産の場合、贈与が行われても物件の外見に変化がないことも多く(親が子に贈与した住宅に子が贈与の前後を通して住んでいる場合など)、税務署が贈与の事実を把握することは容易ではありません。そこで、不動産の贈与に関しては形式的な契約書や外見が整っていても、登記が遅れていることの合理的な理由がない限り「登記があった時」に贈与が行われたものとして扱われます。つまり、「不動産の贈与があっても登記をしなければ(遅らせれば)贈与税の申告は必要ない!(7年経過すれば時効だ!贈与税は払わなくてよい!)」は通用しないということです。

 

 

相続税の実際

このページとともにご覧ください。

 

 

 

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