現行消費税法の問題点

悪法も法なり・・・

 

 

1 消費税の負担者と納税義務者(消費税法という法律)

 

国会議員選挙になると決まって消費税についての論争が活発化します。しかし、論争のほとんどが「税率アップの是非や時期」「消費税の使い道」についてであり、わが国の「消費税の仕組みとその問題点」についての論争は非常に少ないように思います。

 

●(納税義務者)消費税法第5条第1項

事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

 

「事業者が譲渡した場合に課税される?」とは、スーパー、コンビニ、ネットショップなどが販売する際に代金に含めた消費税を税務署に納めなければならないということです。ここで忘れてはならないのは消費税が間接税であるということです。間接税とは、税の負担者と納税義務者が異なる税です。消費税が間接税であるならばその負担者は消費者ですので、「消費税率アップは中小零細企業の資金繰りを圧迫する」といった主張は的外れということになります。しかし、この税の負担関係の「理論と現実のギャップ」が消費税(間接税)の難しいところなのです。

 

●(仕入れに係る消費税額の控除)消費税法第30条第1項

事業者(・・・・・)が、国内において行う課税仕入れ・・・・・については、・・・・・課税標準額に対する消費税額(・・・・・)から、・・・・・課税仕入れに係る消費税額(・・・・・)・・・・・の合計額を控除する。

 

スーパー、コンビニ、ネットショップなどで買い物をする一般消費者からすれば、消費税は一般消費者しか支払っていないように感じるかもしれませんが、事業者間の売買においても消費税は生じるのです。「課税仕入れに係る消費税額」とは事業者が仕入れる際に支払う消費税です。「課税標準額に対する消費税額」とは事業者が販売の際に受け取る消費税です。上記の条文の意味は、事業者は「課税標準額に対する消費税額」(受け取る消費税)から「課税仕入れに係る消費税額」(支払う消費税)を差し引いて納税するということです。わが国の消費税は、流通過程での税の累積を排除し、一般消費者の税負担を軽くする方式を採用しているのです。

 

★現実は消費税法の想定どおりに動いていない

 

広く国民に負担を求める消費税の仕組みは素晴らしいかもしれません。しかし、問題は消費税法の想定どおりに現実が動いていないということです。

 

【消費税法第1条】この法律は、消費税について、課税の対象、納税義務者、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。

 

消費税法という法律では「これだけしか」定めていないのです。消費税率アップは国民の負担増加(アップした税率の分だけ生活費が増える)ではなく、税率アップ分は(本体価格の)値下げによってスーパーやコンビニの負担になることもあるのです。下請企業には消費税率アップ分が元請から支払われないこともあるのです。

 

★消費税の本質が守られるような制度設計が必要です!

 

現状の消費税法だけではどうにもなりません。「消費税を取らない」「消費税は払わない」、こんなことが簡単にできるからです。税率をアップした「しわ寄せ」が特定の人達にゆく場合もあるのです。消費税法では、消費税の受け払いがされたと「みなしている」にすぎないのです。わが国には消費税に関する法律は消費税法という「納税に関する事務(計算)手続!」を定めたものしかありません。しかし、それを超えた次元での議論と制度設計が必要なのです。

 

2 消費税率アップに賛成する人は・・・

 

現段階において消費税率アップについての国民の賛否はほぼ半々といったところでしょう。

 

■消費税率アップに賛成するのは所得水準の高い人?

消費税率アップに賛成する人の多くは所得水準の高い人だと思います。所得水準の高い人は「所得税で取られるか、消費税で取られるか」と割り切ることもできますし、「消費税率がアップすれば必需品以外の購入は極力抑える」という選択肢があります。所得水準の低い人、極端にいえば所得税の納税をしていない人が消費税率アップに賛成するはずがありません。税負担が増えるだけだからです。

 

■消費税率アップに反対するのは共産党だけ?

消費税率アップに反対するのは共産党支持者(少数派、特殊な考えを持った人)であると決めつけてしまう傾向があるようです。現行の消費税法の致命的欠陥、つまり、「取引段階で消費税の転嫁が正当になされていない(国は転嫁について一切の保証をしてくれない)」「消費税においても所得税や法人税同様に悪質な不正申告が多発している(消費税の受払いに関する証拠を偽造できる)」という現実を知っている人であれば消費税率アップに反対するのが当然だと思います。

 

■税理士で消費税率アップに賛成する人

税理士でも消費税率アップに賛成する人がいます。税理士ならば、上記の消費税法の致命的欠陥はいやというほど知っていると思います。「欠陥の改善を条件として」の消費税率アップへの賛成ならばよいとして、それを抜きにして賛成するとすれば、そのような税理士は「納税者(国民)の敵」であるとしかいいようがありません。

 

★累進税率=社会主義?

このように考える人も多いようですが、累進税率(直接税中心の税制)は「困ったときはお互い様」というごく自然の「善意」によっているのです。このような善意のない国には夢も希望も未来もありません。もっとも、働く意思のない者までも救済してはいけないのは当然として、高額納税者を敬うとともに、誰もが高額納税者を目指すような風土を醸成するための教育が必要であると思います。

 

 

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