償却資産(平成21年度)

2008年12月29日(月)

 

【参考】大阪市の(平成21年度)「償却資産(固定資産税)の申告の手引」

http://www.zaisei.city.osaka.jp/index.cfm/6,73,24,58,html

 

 

1 償却資産とは

 

聞きなれない言葉かもしれませんが、「固定資産税」と聞けばお分かりいただけるかと思います。固定資産税は「各市区町村」が次のもの(固定資産)に課税します。

 

(1)土地(納税義務者は土地登記簿または土地補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者)

田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地

 

(2)家屋(納税義務者は建物登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者)

住宅、店舗、工場、倉庫、その他の建物

 

(3)償却資産土地および家屋以外の「事業用資産」。納税義務者は償却資産課税台帳に所有者として登録されている者)

 

いずれも、その年の1月1日現在における資産の所有者(償却資産の場合には事業をしている者)が納税義務者となります。(1)土地と(2)家屋は、登記簿上で所有者が判明しますので原則として申告の必要がありませんが、償却資産については所有者自らが1月末までに申告しなければなりません。

 

12月になれば、償却資産の所在地の市区町村(注)から「償却資産申告書」が送付されてくるはずです。「対象となる資産」、「申告書記入方法」、「課税標準額」、「税率」、「免税点」などを詳細に解説した冊子が同封されていると思います。これを参考にすれば、素人でも申告書は容易に作成できます。

提出がない場合には後日執拗な催促があります。「償却資産」は年末調整の陰に隠れてつい忘れがちです。くれぐれも、ご注意ください。

 

(注)償却資産はそれが所在する市区町村ごとに申告します(課税されます)。ですから、その申告も会社全体で行うのではなく、本社、支店、営業所、工場などの市区町村別(償却資産の所在地別)に行う必要があります。そんなことから、会社全体としては免税点を超えていても市区町村ごとでは免税点を超えないということもあります。

 

「経済のソフト化」が進む中、免税(課税標準額150万円未満)の企業が増えています。そんなことから世間全体が償却資産に関心がなく、申告が必要な場合であっても無知から償却資産の申告を忘れがちです。

また、案外多いのは償却資産の「減少の申告」を忘れているということです。除却あるいは売却した、他の市区町村へ移転した資産が償却資産課税台帳に登録されたままの状態で課税の対象となっていることがあります。このままでは、余分な税金を払わなければならないことになってしまいます。多くの市区町村は、前年度に申告している場合、申告書に前年度の償却資産課税台帳の内容を同封しています。一度チェックしてみることです。

 

最近台頭が目立つ「SOHOやネットビジネス」では、ほとんどの場合、免税となるでしょう。自分一人だけの「パソコン」、「椅子・机(豪華な応接セットは無い)」程度では、まずは免税だからです。(自動車は特定のものを除いて償却資産ではありません(通常は自動車税が課税されます)。)

最近、地域密着の「パソコンスクール」が増えてきましたが償却資産については注意が必要です。パソコン20台ならば課税されてくるでしょう(1台20万円程度として)。

 

市区町村によっては、償却資産の申告書を送ってこない場合もあります。申告書を送付する時期である年末に先立って、秋ごろに簡易な書面で「当年中に新規取得と除却などがないか」について質問し、該当事項がある場合にのみ申告書を送付していることがあるからです。(当然、この回答はありのままにしなければなりません。)

新規事業者(特に法人)の場合、ほとんどの市区町村が申告書を送付してきます。送付されてこないのは、開業届を提出していない場合と考えられます。「申告書の書き方がわからない」、「知らなかった」、「何もいわれなかった」が通用しないのは、どの税金も同じです。

 

 

  償却資産の具体例

 

(1)償却資産の種類と具体例

【建物・建物付属設備】「家屋」ですので償却資産ではありません。

【構築物】広告塔、駐車設備、門、塀、煙突、庭園、緑化施設、外溝工事、内部造作など

【機械及び装置】各種製造加工機械、機械式駐車設備、印刷機械、土木建設機械など

【船舶】ボート、釣船、漁船、遊覧船など

【航空機】飛行機、ヘリコプター、グライダーなど

【車両運搬具】大型特殊時自動車(分類番号が「0、00〜09および000〜099」、「9、90〜99および990〜999」の車両)、各種運搬車など

【工具、器具及び備品】パソコン、LAN設備、医療用機器、歯科診療用ユニット、理容・美容器具、看板、ネオンサイン、厨房機器および用品、冷凍・冷蔵庫、机・椅子、ロッカー、応接セット、陳列ケース、ガス湯沸器等ガス機器、テレビ等映像音楽機器、放送機器、室内装飾品、じゅうたん、カーテン、コピー機、レジスター、光学機器、遊戯機器、自動販売機など

 

(2)勘定科目と償却資産

どのような勘定科目で処理しているかは償却資産の対象となるかどうかとは無関係です。つまり、「構築物」や「機械」を「建物」に含めていたとしても、それらはあくまでも「償却資産」ということです。

 

(3)建築設備の家屋と償却資産の区分

建築設備とは電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、消火設備、運搬設備など家屋と一体になって家屋の効用を高めるための設備です。このうち償却資産となるのは、独立した機器としての性格の強いもの、特定の生産業務の用に供されるもの、単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられているものです。

【具体例】(実際には、家屋との区分が困難なものもあります。)

電話・・・交換機、電源装置などは償却資産で、配線や配管は家屋となります。

空調・・・ルームエアコンは償却資産で、家屋と一体型の空調機は家屋となります。

消火・・・ホースおよびノズル、消火器は償却資産で、消火栓は家屋となります。

運搬・・・ベルトコンベアは償却資産で、家屋と一体の運搬機は家屋となります。

 

(4)賃貸ビルなどに附加された「内装」と「附帯設備」

いわゆるテナントが自身の費用での附加施工、譲渡などによって取得した内部造作などは、テナントが償却資産として申告しなければなりません。

【具体例】(内装)天井、床、間仕切りなど(附帯設備)電気、ガス、給排水、空調設備など

 

(5)償却資産を他に賃貸している場合

このような場合は、所有者(貸している者)が償却資産の申告をしなければなりません。

 

経済のソフト化やSOHOといっても、償却資産にまったく無縁ではないようです。

 

 

3 法人税や所得税における減価償却資産との違い

 

●建物や付属設備は除かれます。

●建設仮勘定で処理されている資産も償却資産に含まれます(法人税や所得税では減価償却できません)。

●償却済みの資産も償却資産に含まれます(法人税や所得税では減価償却できません)。

●遊休資産も償却資産に含まれます(法人税や所得税では減価償却できません)。

●未稼働資産も償却資産に含まれます(法人税や所得税では減価償却できません)。

●特別償却、割増償却、圧縮記帳は行わなかったという扱いになります。

法人税・所得税の減価償却制度が大幅に見直され「新定率法」や「償却限度額の廃止」がなされましたが、償却資産については従来と同様の方法(耐用年数に応じた減価率)で評価がされます。

 

 

  申告が不要な資産

 

●使用可能期間が1年未満または1個(または1組)当たりの取得価額が10万円未満で、税務会計上一時に損金または必要経費に算入されたもの(購入年度に購入金額の全額が費用処理されるもの)

●1個(または1組)当たりの取得価額が10万円以上20万円未満の償却資産で、税務会計上3年間で一括して損金または必要経費に算入されたもの(3年間に毎年均等額を償却する方法)

●商品、貯蔵品

●無形減価償却資産(ソフトウェア(平成12年4月1日以降取得分)、特許権など)

●自動車税または軽自動車税の課税対象となる自動車など

●生物(観賞用、興行用のものは申告対象)、立木、果樹

●書画骨董(複製などは除く)

 

 

5 申告書の提出期限

 

平成21年2月2日(月)にまでに提出しなければなりません(本来は1月31日ですが、平成21年は1月31日が土曜日のため)。

 

 

6 償却資産の評価額

 

年数が経つにつれて評価額は下がります。(計算は市区町村が行います。)

 

●前年中に取得したもの(平成20年1月2日から平成21年1月1日までに取得したもの)

取得価額×(1−耐用年数に応ずる減価率×1/2)

 

●前年前に取得したもの(平成20年1月1日以前に取得したもの)

前年度の評価額×(1−耐用年数に応ずる減価率)

以降、毎年この方法により計算し取得価額の5%(法人税や所得税と異なります)まで減価します。

 

 

7 税率

 

償却資産課税台帳に登録された資産の価格(上記5の合計額)に各市区町村が条例で定める税率(標準税率100分の1.4、制限税率100分の2.1)を適用することによって算出します。

 

 

8 納期限

 

4、7、12、2月中において各市区町村が条例で定める日とされています(分割して納付しますが一括しての納付もできます)。なお、納税すべき金額の通知と納付書は納期が近づくと各市区町村から送付されてきます。要するに、納税義務者は新たに購入した償却資産の名称、取得年月日、取得価額、耐用年数、除却・滅失・移転した償却資産を申告するだけでよいということです。

 

 

《固定資産課税台帳》

土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳、償却資産課税台帳の五種類からなります。土地課税台帳と家屋課税台帳は登記簿からそのまま名義人、地目、地積などが転載されますが、登記簿にない土地や家屋についてはそれぞれ土地補充課税台帳と家屋補充課税台帳に登録されます。償却資産については登記がないために、その所有者が申告することによって償却資産課税台帳に登録されます。

 

《固定資産台帳(減価償却資産の内訳)との関係》

法人税や所得税の申告書には、固定資産台帳(減価償却資産の内訳)を添付します。償却資産はこの内容と矛盾してはいけないのは当然ですが、両者が完全に一致するものでないことは、以上の説明でご理解いただけるかと思います。対象となる資産の範囲、計算をする時点が異なるからです。

 

《少額減価償却資産(取得価額10万円以上30万円未満)の処理》

特定の事業者(資本の額が1億円以下の青色申告法人など)が取得した少額減価償却資産(取得価額30万円未満)は、法人税や所得税の計算においては取得した年度に取得価額全額を損金や必要経費とできますが(固定資産台帳には残らない)、償却資産においては申告の対象としなければなりません。(取得価額が10万円以上20万円未満の償却資産で、一括償却資産として3年間の均等償却をしたものについては対象とはなりません。)

 

《リースやレンタルで使用している資産》

「リースやレンタル」の場合には償却資産の対象とはなりません。なぜならば、償却資産についての固定資産税は「所有者」に納税義務があるからです。

 

《償却資産の調査》

市区町村の職員がこまめに巡回している模様です。巡回の結果、「怪しい」と判断した場合には詳細に調査をするようです。 

 

 

≪平成21年度の留意点≫

 

■平成20年の耐用年数の改正(法人税と所得税)

 

平成20年の税制改正で機械装置を中心に耐用年数の改正が行われ、平成20年4月1日以降開始する年度から以後取得する資産だけでなく既存の資産についても適用されています。これは償却資産についても適用されますが、そのためには資産の所有者自らが申告しなければなりません。この申告の方法は市区町村によって異なりますが、市区町村の作成する前年以前に申告した資産の一覧表(申告書に同封されていることが通常)に改正後の耐用年数を書き込むことによって行うことが通常のようです。

 

■リース資産

 

法人税や所得税では平成20年4月1日以降に締結したリース契約のうち所有権移転外ファイナンスリースと呼ばれるものは原則として資産計上して減価償却することになりました。しかし、償却資産においては資産として申告する必要はありません(リース会社が償却資産として申告します)。

 

 

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