源泉徴収のしかた

 

年末調整の前段階である給与を支払った際の源泉徴収について説明しておきます。 

 

1 給与所得の源泉徴収税額表

 

所得税額は所得が増えるに従って多くなります。また、所得が同じであれば扶養親族(配偶者や子など)が多いほど所得税額は少なくなります。源泉徴収税額表では、この所得税の仕組みに従って毎月の給料から徴収すべき所得税額を決めています。

 

●その月の社会保険料等控除後の給与等の金額

所得税は収入の全額に課税されるのではなく、そこから一定額を差し引いた金額に課税されます。このように収入から一定額を差し引くことを「控除(こうじょ)」といいます。給料から天引きされている「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」は給料という収入から控除されます。そこで、源泉徴収税額表では「社会保険料等控除後」の給与等の金額に基づいて源泉徴収する税額を定めているのです。

 

●非課税の通勤手当

サラリーマンが会社から支給される通勤手当の内一定額には所得税が課税されません。ですから、「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算にあたってはこれを除かなければならないのです。

 

●扶養親族数の変動

扶養親族数が変動する場合があります。数に変動があった場合には、変動のあった月からの「扶養親族等の数」によります。

 

●甲欄と乙欄

乙欄は他に本職としての給料がある人です。その人は他では甲欄で源泉徴収されます。

 

★源泉徴収税額表では考慮されていないこと

上記のとおり源泉徴収税額表では、社会保険料(健康保険料など)を控除した額で所得税額を算出していますが、給料から控除されるのはこれだけではありません。生命保険料・地震保険料、医療費、寄附金なども控除しなければなりません。これらは、年末調整(特定の職場での年間税額の精算手続)あるいは確定申告で行います。要するに、源泉徴収税額表では仮の税額を算出しているに過ぎないのです。

 

2 税金を預るということの意味

 

源泉徴収というのは、給料などを支払う者が、支払いの際に支払額から一定額を差し引いて、その差し引いた税額を税務署に納付するものです。源泉徴収義務者(支払う者)には事務手数が生じますが、資金的な負担は生じません。

 

●いつ納付するのか?

源泉徴収をした月の翌月10日までです。ただし、従業員数が10人未満の源泉徴収義務者の場合、半年ごと(1月分から6月分、7月分から12月分という区切り)に納付することができます(ただし、給料や税理士報酬に関しての源泉徴収税額に限られる)。

 

●預った税金の保管方法?

特に定められた方法はありません。「専用の預金口座を設け・・・」が望まれますが、通常の資金と区分していない場合がほとんどです。

 

★入金もないのに「預った」?

 

これが源泉徴収の大変なところです。「なぜ、従業員の税金を会社が負担しなければならないのだ?」という疑問(不満)を抱く経営者が現れる理由です。

 

給料の総額100−源泉徴収税額5=給料の支払い95

 

この場合、多くの源泉徴収義務者の認識は「今月の給料は95」であり、「5(源泉徴収税額)は預っている税金=いずれ税務署に納めなければならない」という認識ができないものです。

 

★100支払って直ちに5預った(5は税務署に納めなければならない)

 

このように考えることです。そして、理想はこの5を別途保管しておくということです。

 

3 源泉徴収を忘れていた場合の対処

 

自身が源泉徴収義務者であることに気がついた時点ですでに源泉徴収漏れがあったということは多いです。この場合の対処は次のようにします。

 

●年度【注】途中で源泉徴収漏れに気がついた場合

例えば、3月から5月まで源泉徴収を忘れていたことを6月になってから気がついた場合です。この場合、まずは、3月から5月のそれぞれの給料から源泉徴収すべき税額を算出します。そして、6月以降の給料から差し引くか、給料の支払いとは別に徴収します。当然、このようにして徴収した税額は納付しなければなりません。

 

●年度【注】が終わってから気がついた場合

年度が終わってから源泉徴収漏れに気がついた場合には、(A)源泉徴収漏れとなっていた月ごとの給料から源泉徴収すべき額を算出するとともに、(B)年末調整を行った結果としての過不足税額を計算しなければなりません。納付すべき税額は(A)の合計−(B)です。

 

【注】年度とは?

「年度」とは暦年、つまり1月から12月のことです。所得税という個人に課税される税金は暦年を年度としており、年度が終了すれば「年末調整」あるいは「確定申告」という手続によって税額を確定させます。

 

★従業員の理解

源泉徴収漏れがあった場合、過去にさかのぼって徴収しなければなりませんので、すでに給料を受け取っている従業員の理解を欠かすことができません。経営者(雇用者、源泉徴収義務者)としては自らのミスを率直に認めなければなりません。恥ずかしいかもしれませんが、仕方のないことです。

 

4 源泉徴収の計算が間違っていた!

 

▲先月の○○さんの源泉徴収が間違っていた!

 

あってはいけないことですが、このようなこともあります。

 

▲どうせ、年末調整で精算するから・・・

 

確かにそうかもしれませんが、そんな「ずさんな」ことでは従業員から不信感を抱かれてしまいます。また、源泉徴収税額が不足していれば延滞税や不納付加算税が課される場合もあります。

 

●間違って少なく源泉徴収していた場合

不足分をどこかの月でその月の分に加えて徴収します。給与明細にはその月の源泉徴収税額とは別に「○月分不足○○円」と明記しておきます。間違った月の給与台帳は訂正する必要はありません(間違ったという事実のまま残しておきます)。不足分は徴収した月の給与台帳に加算しておきます(前月以前の不足分であると明記しておきます)。納付は間違った月の分の「追加」として納付します。納付書の「月」は不足した月になります。つまり、不足した月の納付書は2枚になるということです。記載方法は税務署におたずねください。

 

●間違って多く源泉徴収していた場合

どこかの月で過大分をその月の分から減額して徴収します。給与明細にはその月の源泉徴収税額とは別に「○月分過大○○円返金」と明記しておきます。間違った月の給与台帳は訂正する必要はありません(間違ったという事実のまま残しておきます)。過大分は返金した月の給与台帳で減額しておきます(前月以前の過大分であると明記しておきます)。納付した過大分は、税務署に「源泉所得税の誤納額還付請求書」を提出すれば還付されます。

 

◆納期特例の場合

従業員からの不足分の徴収と過大分の返金は上記と同じです。税務署に対する納付は、半年(1月から6月および7月から12月)という区切りで正しい税額が納付されていれば問題はありません。例えば、3月の不足分を4月で追加徴収した場合、1月から6月という納付の区切りには影響はしません。しかし、6月分の不足を7月に追加徴収した場合には、1月から6月分として納付する税額に影響してきます。

 

◆すでに年末調整が終わっている(年末調整が間違っていた)

上記の説明は年末調整が終わっていないことを前提としていました。年末調整が終わっている場合は次のとおりです。不足する場合には追加で徴収し納付します。給与明細にはその月の源泉徴収税額とは別に「○年○月分過大○○円返金」と明記しておきます。給与台帳は不足していた年度の最終月分に不足額を加算しておきます。過大な場合には従業員自らが確定申告をします。この場合、給料を支払う源泉徴収義務者側では一切の処理が不要です。

 

5 納付書を入手する(普通は送付されてくる!)

 

源泉所得税の納付書は、「ごく普通に」していれば必要に応じて税務署から送付されてきます。

 

▲「ごく普通に」とは?

 

開業届(個人事業者の場合=個人事業の開業・廃業等届出書、会社の場合=法人設立届出書)をタイムリーに提出し、それと同時に給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(法人・個人共通の様式)を提出しているということです。

 

そうしておけば、上記の届けの直後に納付書が送付されてきます。また、年末調整の時期になれば(11月中旬以降)翌年分の納付書がまとめて送られてきます。(大阪国税管内の税務署ではこのようになっております。)

 

▲届けを忘れていた!?

 

至急税務署にいって、指示に従い納付書をもらってください。

 

その際、まずは届けを書いて提出するように指示されると思いますので印鑑(認印で可)を持参してください。また、法人(会社)の場合には、開業届に登記事項証明書と定款(ともに写しで可)の添付を求められますので、忘れずに用意してください。

 

 



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