年末調整を始めるその前に!

 

年末調整をするには、あらかじめ一定の資料を用意しておかなければなりません。また、税務署に所定の届けをしておく必要もあります。税務署が配布している年末調整の公式マニュアル(?)である「年末調整のしかた」は必ず入手しておきましょう。

 

1 給与台帳はありますか?

 

年末調整は各従業員(役員も含みます)の1年間の給料と賞与についての所得税を確定するための手続ですが、その前提として給与台帳が用意されていなければなりません。給与台帳とは各従業員が受け取った給料と賞与の記録です。給与台帳は給料と賞与を支給した回数ごとに次の項目を記録していきます。

 

●総支給額

基本給、諸手当など

●控除項目

所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料など

●課税所得額

総支給額(非課税の通勤手当などを除く)−(社会保険料+雇用保険料)のことです。これを記載しておくと源泉徴収する所得税を計算するのに便利です。

●差引支給額

いわゆる手取りです。

 

給与台帳は所得税の計算期間に合わせるために暦年単位で作成します。そして、上記の記載項目ごとに年間(1月から12月まで)の合計額を集計します。総支給額(非課税となる通勤手当などを除く)の年間合計が年末調整で(年間を通して)課税される給与、所得税は源泉徴収した年間合計、社会保険料と雇用保険料は社会保険料控除の計算につながります。

 

【給与明細の控】

給与明細とは給料や賞与を支給する際に各従業員に手渡す給料や賞与の計算根拠についての明細です。記載される項目は上記の給与台帳と同じです。中小零細企業の場合には給与台帳はなく、給与明細の控しか残っておらず年末調整のときに税務署が配布している「源泉徴収簿」に給与明細の数値を転記していることが多いです(税理士に依頼している場合には給与明細の控を渡します)。給与台帳は税金計算のためだけでなく、社会労働保険計算においても必要ですので、どんなに従業員が少なくても必ず作成しておかなければなりません。

 

★社長一人の会社でも給与台帳は必要です!

社長一人の会社の場合、給与台帳はおろか給与明細さえ作成していないことがあります。しかし、給与台帳は必ず作成しておいてください。給与台帳は源泉徴収や年末調整の税務関連手続だけでなく社会保険計算においても必要です。特に役員報酬の減額に伴って社会保険料の「等級が下がる」場合には、年金事務所は役員報酬についての給与台帳の提出を求めてきますので、その際に慌てずに済むためにもあらかじめ作成しておかなければなりません。

 

2 表計算ソフトで給与台帳を作成する

 

給与計算ソフトを使用している場合には給与台帳は自動的に作成され、さらには年末調整の計算も給与計算ソフトが自動的にしてくれます。給与計算ソフトを使用していない場合(従業員数が少ない場合)には自身で給与台帳を作成しなければなりませんが、給与台帳を表計算ソフト(エクセルなど)で作成する場合の注意点は次のとおりです。

 

■「各従業員」の各項目について「年間合計」を算出しておく

 

総支給額(非課税となる通勤手当などを除く)の年間合計が課税される給与、所得税は源泉徴収した年間合計、社会保険料と雇用保険料は社会保険料控除の計算につながります。ここまでできていれば、後は税務署が配布している「源泉徴収簿」の年間「合計欄」に数値を転記すれば年末調整が行えます。給与所得控除、扶養控除、税率、税額などは手動で行うことになります。表計算ソフトに「算式」を入力するのはあまりにも面倒だからです。

 

■「全従業員分」の各項目について「月合計」を算出しておく

 

この計算をしておけば、毎月の源泉所得税の納付税額の計算(納付書の作成)、給与の支払に関しての仕訳のときに大変便利です。納付書の作成は当然として、給与の仕訳についても全従業員分を合計して行うからです。

 

★市販の給与台帳(手書きの給与台帳)

パソコンが普及する前には市販されている給与台帳(手書きの給与台帳)を使用していることが多かったです。これは現在でも販売されており、手書きであることから極めて「アナログ」ですが給与計算の仕組み(源泉徴収、社会保険料計算、年末調整など)を理解するには大変役立つ「優れもの」です。ですから、いきなり表計算ソフトで給与台帳を作成するのではなく、1年間は市販の給与台帳で給与計算についての知識を習得し翌年から表計算ソフトで給与台帳を作成するのもよいと思います。

 

3 給与計算ソフトが財務会計ソフトほど普及していない理由

 

給与計算ソフトは財務会計ソフトほど普及していません。その理由は、次のとおりです。

 

■給与計算ソフトは毎年の保守料金を支払ってバージョンアップしなければ使い物にならない

 

これが最大の原因でしょう。給与計算に関連する所得税、社会保険、労働保険の計算法規はほぼ毎年改正されます。ですから、これらの計算を目的とする給与計算ソフトは毎年バージョンアップしなければならない宿命にあるのです。多くのメーカーの保守料金は年額3万円程度です。従業員数名の会社にとってはとても負担できる金額ではありません。

 

■従業員ごとの設定が複雑(頻繁に設定の変更が必要)

 

従業員ごとの設定項目が非常に多いです。「氏名」「生年月日」「住所」「家族構成」「基本給」など、設定項目が多く、さらには頻繁にこれらが変更となりその都度設定を変更しなければなりません。この設定が間違っていれば、正確な給与計算ができないのは当然です。

 

■全従業員の給与計算について使用しなければならない

 

給与計算ソフトは、個々の従業員の税額や社会保険料などの計算だけでなく、会社としての源泉所得税の納税額や社会・労働保険料の納付額も計算できます。当然、「全社ベースの計算」を有効に行うには全従業員の給与計算を給与計算ソフトで行わなければなりません。つまり、短期間の雇用者であっても、わざわざ給与計算ソフトに登録しなければならないのです。

 

■たまにしか使わない

 

ですから、なかなか操作方法が習得できず、手作業よりも作業の効率が落ちてしまいます。キーボードを叩く度に、マウスでクリックする度に、エラーメッセージが表示されるようではどうにもなりません(笑)。

 

★給与計算ソフトを導入すべき事業規模など

パートやアルバイトなど、時給制で毎月の給料の額が変動する従業員が相当数いなければ採算がとれません。従業員数が少なく毎月の給料が定額の場合には、給与計算(含む年末調整や社会・労働保険料の計算)は手計算でするに限ります。

 

 

≪源泉徴収義務者になった場合の手続≫

 

法人(会社など)や個人が、従業員の給与(給料、賞与など)や税理士などに報酬を支払う場合、それらを支払う都度、支払金額に応じた所得税を差し引くことになっています。これを所得税の源泉徴収といい、所得税を差し引いて(源泉徴収して)税務署に納付する義務がある者を源泉徴収義務者といいます。どの時点で源泉徴収義務者になり、以後どのような手続が必要かについては次のとおりです。

 

■会社を設立した

 

設立の日に源泉徴収義務者になります。法的には源泉徴収が必要な給与や報酬を支払わない限り源泉徴収義務者にはなりません。しかし、実務上は会社設立と同時に源泉徴収義務者になったとして「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します(法人設立届出書と一緒に提出します)。会社は必ず役員報酬という給与を支払うからです。

 

「当分は給与(役員報酬)を払えない」場合であっても税務署へは「源泉徴収税額ゼロ」で報告をしなければなりません。これをしなければ税務署から連絡があります。「給与を払っているが源泉徴収する金額でない」場合も同じです。

 

会社を設立すれば源泉徴収(含む源泉徴収の状況を報告する義務)からは逃げられないのです!

 

■個人で事業を開始した

 

会社のように事業開始と同時に「給与支払事務所等の開設届出書」(源泉徴収義務者になったことの届け)を提出する必要はありません。会社のような役員報酬(給与)がないからです。源泉徴収義務者になるのは給与を払ったときからです。税理士報酬など源泉徴収の対象となる報酬の支払いのみでは源泉徴収義務者にはなりません。親族への専従者給与も給与として源泉徴収の対象ですので、これを支払えば源泉徴収義務者になります。

 

「常時二人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけ」に給与を払っている場合には源泉徴収義務者にはなりません。しかし、「家事使用人」などという前近代的な職業の人は今時ほとんどいないでしょう。なお、「専従者」「パート」「アルバイト」は家事使用人ではありません。

 

 

≪扶養控除等申告書、保険料控除申告書が足りない(書き損じた)≫

 

●申告書の部数が足りない

税務署は前年に年末調整をした人数分(法定調書合計表から判明)しか申告書を送付してくれませんので、今年になって人数が増えている場合には送付された部数では不足します。

 

●申告書の記入欄が足りない

扶養親族や保険料の記入欄が不足することもあります。このような場合にはその続きを新たな申告書に記入します。

 

●申告書を書き損じた

年に一度の慣れない作業ですからこのようなこともあります。新しい申告書に記入してください。

 

申告書は下記の国税庁のサイトから入手できます。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_05.htm

 

 

≪源泉徴収事務必携≫

 

源泉徴収をしなければならないことはわかっているけれども、どこから手を着けてよいのかさっぱりわからないという方が多いです。

 

■税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する

 

面倒でも、どんなに忙しくても、まずは税務署に行ってこれを提出するのが源泉徴収事務のスタートです。この届けの用紙はわずか1枚で、税務署員に教えてもらえば数分で記入できます。なお、届けの用紙には押印が必要ですので認印でかまいませんから必ず持参してください。

 

この届けを提出していなければ、年末調整の時期になっても年末調整(源泉徴収)に必要な資料一式が郵送されてきません。そして、「税務署から何の連絡もなかったので源泉徴収も年末調整もしなかった・・・」という見苦しい言い訳をする羽目になってしまいます。

 

■「源泉徴収のしかた」というパンフレットをもらう

 

無料です。約30ページで源泉徴収の要領が大変わかりやすく説明されています。各人から源泉徴収する税額の計算方法、納付すべき税額、年末調整などについて詳しく説明されています。源泉徴収を理解するにはまずはこれを読む必要があります。

 

■「源泉徴収税額表」をもらう

 

これも非常に大切です。各人の給料や賞与から源泉徴収すべき税額を、給料や賞与の額および扶養親族の人数から定めた表です。これがなければ源泉徴収はできません。

 

■「納付書(所得税徴収高計算書)」をもらう

 

あらゆる税は所定の納付書で納付をします。源泉所得税(給与などから源泉徴収した所得税)についても同じです。

 

★創業以来まったく源泉徴収をしていない

まずは給与支払事務所等の開設届出書を提出しなければなりません。「開設した年月日」は過去にさかのぼります。後は税務署の指示に従ってください。

 

 

≪給与(所得)=給料+賞与?≫

 

世間一般では、「給料=毎月もらう」「賞与(ボーナス)=夏と冬など臨時にもらう」でしょう。そして、給料と賞与を合計したものを「年収」といいます。

 

所得税法(個人の所得に課税される所得税に関する法律)では次のように規定しています。

 

【所得税法第28条】給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

 

「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」には給与所得として所得税が課税されるということです。また、「これらの性質を有する給与」ですので「名目」は問わないということです。ほとんどの会社などでは、給料は基本給+諸手当(役職手当、家族手当、残業手当、通勤手当など)といった具合に細分化されています。所得税において大切なことは「何が給与所得であるか」なのですが、これに関しては判断が難しい場合もあります。

 

●給与所得か?その他の所得か?

所得税においては所得を10種類に分類していますが、ある収入が「どの所得に分類されるか」によって所得の計算が、つまり税額が異なってきます。

 

●非課税となる給与所得

給与所得ではあるけれども非課税になるものもあります。たとえば、いわゆる通勤手当のうちの一定額は非課税です。

 

●年末調整はすべての給与所得が対象です

年末調整は、ある人が勤務先からもらう給料、賞与、手当などの内、給与所得に該当するものを対象とします。要するに、これらの年間合計額に対する所得税額を計算し、給料や賞与などから源泉徴収された所得税額の合計との差額を精算する手続が年末調整なのです。

 

●サラリーマンが会社からもらうのはすべてが給与所得?

そんなことはありません。退職金は退職所得です。勤務している会社の株を持っている従業員が会社から受け取る配当金は配当所得です。当然、これらは年末調整の対象ではありません。

 

 

源泉徴収のしかた

年末調整の前段階である給与を支払った際の源泉徴収について説明しております。

 

 



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