土地建物等の譲渡をした場合の所得税(2/4)
土地建物等の譲渡をした場合の課税上の特例と申告
3 特例
居住用財産やその他の土地建物等を、買換えたり、交換したり、収用された場合には普通の売買と同じようにその譲渡所得に所得税が課税されます。しかし、これらのうち一定の条件を満たすものについてはその必要性や実質に着目して、譲渡所得がなかったものとしたり、軽減したりして通常の譲渡よりも有利に扱う特例が設けられています。
(1)土地建物等の固定資産を交換した場合
(適用がある場合)
●同種類の固定資産(土地建物等)の交換であること
●交換譲渡資産も交換取得資産も双方が1年以上所有していたものであること
●双方とも交換目的のために取得したものでないこと
●交換取得資産は交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同じ用途に供すること
●交換差金(交換価格を調整するための金銭)は交換資産のいずれか多いほうの金額の20%以内であること
(所得の計算のしかた)
●交換差金を受けない場合、交換譲渡資産とともに交換差金を支払った場合(交換譲渡資産の時価が取得資産の時価以下の場合)には、譲渡はなかったものとされる
●20%以内の交換差金を受け取った場合は、交換譲渡資産のうち交換差金に相当する部分だけ譲渡があったとして課税される
(2)居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除
(適用がある場合)
●現に自分の居住の用に供している家屋(あるいは家屋とその敷地)を、居住の用に供さなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、自分と特別の関係のない人に譲渡した場合
●この特例の適用を受けた年の翌年および翌々年の譲渡については適用されないほか、居住用財産の買換えや交換の特例と重複適用はできない
(所得の計算のしかた)
譲渡所得から3000万円が特別控除される。
(3)相続等により取得した居住用財産を買換えた場合(平成19年4月1日以降に行う譲渡からはこの特例は廃止)
(適用がある場合)
●その年の1月1日現在で所有期間が10年超の居住用財産(父母または祖父母が居住の用に供していたもので、これらの者から相続または遺贈によって取得したものに限る)で、居住期間が30年以上のものであること
●譲渡の年の前後を含む3年間に別の居住用財産を取得し、所定の期限までに自己の居住の用に供した場合
●居住用財産の3000万円特別控除(上記(2))との重複適用はできない
(所得の計算のしかた)
●譲渡資産の譲渡価額(A)≦買換資産の取得価額(B)のときは課税されない
●(A)>(B)のときは差額にだけ課税される
(4)相続等により取得した居住用資産を交換した場合(平成19年4月1日以降に行う譲渡からはこの特例は廃止)
(適用がある場合)
●上記(3)の居住用財産を、別の居住用財産と交換した場合
●上記(3)の居住用財産を、居住用以外の資産と交換し交換差金を得て、それをもって新たに居住用財産を得た場合
●上記(2)の3000万円の特別控除や他の交換の特例との重複適用はできない
(所得の計算のしかた)
●交換により譲渡した資産の時価(A)≦交換により取得した資産の時価(B)のときは課税されない
●(A)>(B)のとき(交換差金あり)は差額にだけ課税される
(5)特定の居住用財産を買換え(交換)た場合
(適用がある場合)
●平成21年12月31日までの間の譲渡であること
●譲渡の年の1月1日現在で所有期間が10年超、居住期間が10年以上であること
●譲渡の年の前後を含む3年間に自己の特定の居住用財産を取得し所定の期限までに居住すること
●居住用財産の3000万円特別控除(上記(2))との重複適用はできない
(所得の計算のしかた)
●譲渡資産の譲渡価額(A)≦買換資産の取得価額(B)のときは課税されない
●(A)>(B)のときは差額にだけ課税される
(6)特定の事業用資産を買換えた場合
(適用がある場合)
●平成20年12月31日までの特定の地域内にある一定の事業用土地建物等の譲渡であること
●一定期間内に特定の地域内にある土地建物等を取得して、取得の日から1年以内に事業の用に供した場合
(所得の計算のしかた)
●譲渡資産の譲渡価額(A)≦買換資産の取得価額(B)のとき
譲渡益=(A)×20%−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%
●(A)>(B)のとき
譲渡益=(A)−(B)×80%−(取得費用+譲渡費用)×((A)−(B)×80%)÷(A)
(7)特定の事業用資産を交換した場合
(適用がある場合)
●平成20年12月31日までに特定の事業用資産を交換した場合
●交換譲渡資産と交換取得資産の組み合わせは、上記(6)の特定事業用資産を買換えた場合と同じ
(所得の計算のしかた)
●交換により譲渡した資産の譲渡価額(A)≦交換により取得した資産の取得価額(B)のとき
譲渡益=(A)×20%−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%
●(A)>(B)のとき
譲渡益=(A)−(B)×80%−(取得費用+譲渡費用)×((A)−(B)×80%)÷(A)
(8)相続税が課税された財産を譲渡した場合
(適用がある場合)
相続税の申告期限後3年以内に譲渡した場合に限る
(所得の計算のしかた)
●土地等の譲渡である場合
その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされた土地等の価額の合計額÷(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)
●土地等以外の譲渡である場合
その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされた譲渡資産の価額÷(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)
(9)相続税を相続財産で物納した場合
(適用がある場合)
自分の相続税を納めるために相続した財産を物納した場合
(所得の計算のしかた)
譲渡がなかったものとされる。ただし、相続税額を超える価額の財産による物納があった場合に還付される金額(過誤納金)については、通常の資産の譲渡として課税される。
(10)保証債務の履行にともなう求償権の行使不能
保証人としての地位に基づき保証債務を履行した場合には、主たる債務者に対して求償することができます。保証債務を履行するために土地建物等を譲渡し、主たる債務者に求償権を行使することが不能となった場合には、その行使不能の部分について譲渡所得の金額の計算上なかったものとされます。
4 譲渡損失などが生じた場合の計算
(1)譲渡損失とは
譲渡損失とは、収入金額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額がマイナスとなる場合の金額のことをいいます。当然、所得税は課税されません。
(2)譲渡損失と他の所得との損益通算
土地建物等の譲渡所得の損失は、居住用財産の買換えに伴う譲渡損失(買換え後に住宅ローンがある)、特定居住用財産の譲渡損失(買換え前住宅ローンがある)を除いて他の所得とは損益通算できません。また、他の所得が損失であっても土地建物等の譲渡所得からは控除することはできません。(以前は損益通算ができましたが平成16年からは認められなくなりました。)
《資産が損害(地震、火災など)を受けた場合》
●事業用資産の場合
事業所得や不動産所得の計算において「必要経費」(保険金や損害賠償金で補填された部分は除く)とすることができます。なお、その年度の事業所得や不動産所得から差し引けない場合には、青色申告者でなくとも翌年以降3年間の繰越控除が認められます。
●非事業用資産の場合
損害額(保険金や損害賠償金で補填された部分は除く)が、その年度の各種所得の合計額の1割を超えている金額、あるいは5万円を超えている金額のいずれか多い金額を「雑損控除」として所得の合計額から控除します。なお、その年分の所得で控除しきれないときは、翌年以降3年間の繰越控除が認められます。
《譲渡代金の貸倒れ》
譲渡代金の全部もしくは一部が回収できなくなった場合には、その回収できなくなった金額に対応する所得は、譲渡所得の計算上なかったものとされます。なお、譲渡所得の申告後に回収できなくなったときには、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に「更正の請求」をして譲渡があった年分の所得税の減額更正を受けることができます。
5 申告と納税
(1)提出先と申告期限
納税者の住所地を管轄する税務署に、2月16日から3月15日までの間に提出しなければなりません。
(2)特例の適用を受ける場合
上記3の特例を受ける場合には、特例の適用を受ける旨と所定の書類を提出しなければなりません。なお、特例の結果、税額がゼロとなる場合であっても申告書を提出する必要があります。