年末調整と確定申告の違いと関係

年末調整と確定申告の「違い」と「関係」が分からないという人が非常に多いです。

ともに、所得税に関する手続です。一見、重複しているように思えます。

 

 

年末調整は「給与所得」に関する所得税額を計算する手続であるのに対して、確定申告は「全ての所得」に関する所得税額を計算する手続です。より厳密にいえば、年末調整は1ヶ所からの給与(年度中に転職している場合には転職前後の給与合計)についての所得税額を計算する手続であるのに対して、確定申告は1ヶ所からの給与とそれ以外の所得(給与所得のほか事業所得、不動産所得など全ての種類の所得)がある人がその全ての所得に関する所得税額を計算する手続です(当然、給与所得ゼロという人もいます)。

 

わが国の所得税は1年間の「すべての所得に対して課税すること」になっています。要するに、複数から給与をもらっている人、給与所得以外に所得がある人にとって年末調整は一部分の所得についての仮の税額計算にすぎないのです。年末調整では選択した1ヶ所からの給与が「すべての所得であるとの前提」で所得税を計算することから、その人のすべての所得についての所得税を計算できないのです。なお、すでに給与から源泉徴収されている所得税は、確定申告によって計算した税額(その人の最終的なすべて所得についての所得税額)から差し引けます。要するに、二重に課税はされないのです。

 

 

1ヶ所からの給与所得しかないのに年末調整も確定申告も必要な人

 

1ヶ所からの給与所得しかない人は、年末調整だけで所得税額が確定しますので確定申告の必要がありません。

 

しかし、以上では説明しきれない次のような立場の人は悩んでしまいます。

 

●医療費控除や住宅借入金等特別控除(初年度のみ)を受ける人

多くの人が知っていると思います。1ヶ所からの給与しかない人であっても自らが確定申告をしなければなりません。会社は手続をしてくれませんよ!

 

●年末調整をしていない人

年末調整は年末に勤務している人しか受けられません。1ヶ所からの給与しかない人であっても、年末に勤務していなければ年末調整による所得税額の精算が済んでいないわけですから、自ら確定申告をしなければなりません。

 

●年末調整に間違いがある場合

年末調整を受けていても、「社会保険料控除を忘れていた(扶養親族分を負担した場合など)」「生命(地震)保険料控除を忘れていた」「勤務先の計算ミスをしていた」といった場合です。翌年の1月までに間違いが判明した場合には、勤務先が年末調整の再調整を行います。しかし、2月以降は自ら確定申告をするしかありません。

 

給与所得者で確定申告が必要となるケースの多くは、還付申告で税金が戻ってきます。自身は確定申告が必要であるのかを正確に「判定」しなければなりません。

 

積極的な人は、確定申告の時期に税務署へ源泉徴収票だけを持参して、「還付は受けられませんか?」との質問をしています。源泉徴収票での税額がゼロの人の中にもそのようの人がいるそうです(笑)。

 

 

確定申告をするので年末調整はしない

 

サラリーマンで、副収入があり確定申告が必要な人はこのように考えることが多いです。

 

■扶養控除等申告書を提出しない

扶養控除等申告書を提出することは、年末調整をするための要件です。提出していない場合には、毎月の給料からの源泉徴収が乙欄という大変高い税率になってしまいます。これを修正するには自らが確定申告をしなければなりません。

 

■扶養控除等申告書は提出し一部について自ら確定申告する

扶養控除等申告書を提出しないで乙欄で源泉徴収されるのは大変辛いことです。ですから、扶養控除等申告書は提出し、一部の所得控除(生命保険や地震保険など)と住宅借入金等特別控除を確定申告することで所得や税額の計算に反映するという方法によるべきです。

 

★確定申告さえしていれば源泉徴収はしなくてもよい?

 

この考えは認められません!

 

源泉徴収制度というのは、国家が確定申告に先立って税収を得る(税収を平準化する)ための手段ですので、源泉徴収の対象となる所得について源泉徴収を怠れば国家に損害を与えてしまうからです。

 

源泉徴収義務者や源泉徴収される人にとっては酷かもしれませんが、法律でこのように定められているのですから、税務署は「確定申告していようが源泉徴収漏れは許さない!」という姿勢を「絶対に」崩しません。

 

安易に「確定申告さえしていれば・・・」とは考えないでください。

 

 

会社(源泉徴収義務者)が確定申告書を作成・提出することはできるのか?

 

できません。他人の申告書を作成・提出することができるのは税理士だけです。ですから、従業員に頼まれても引き受けてはいけません。会社が契約している税理士に依頼はできますが、その依頼は、税理士と従業員との契約になりますので、税理士報酬も従業員負担になります。

 

 

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