利益と法人税10/11

法人税の税率は?法人税はいつ納める?申告に必要な帳簿?法人税以外も取られる?

 

築山公認会計士事務所

 

目次

 

 

≪法人税率≫

 

1 資本金1億円以下の会社

 

(1)年間所得800万円以下の部分

15%

 

(2)年間所得800万円超の部分

25.5%

 

2 資本金1億円超の会社

 

 25.5%

 

《同族会社の留保金に対する特別税率》

 同族会社は利益を内部に留保して(配当や役員給与を抑えて)、同族関係にある株主や役員に法人税よりも税率の高い所得税が課税されることを回避する傾向にあります。そこで、個人事業者との公平を図るため同族会社のうち「特定同族会社」については一定の内部留保に対し通常の法人税のほかに特別の法人税を課しています。

 

《税額控除》

上記1の税率により計算した法人税額から、さらに次のものを税額控除として差引くことができます。

●利子・配当について源泉徴収された所得税

●外国政府に納付する法人税(外国税額控除)

●仮装経理に基づく過大申告の更正にともなう法人税額

 

《復興特別法人税》

平成24年4月1日から平成26年3月31日までに開始した事業年度は法人税額の10%を納めなければなりません。

 

《地方法人税》

平成26年10月1日以後開始する事業年度から、法人税を納める義務のある会社は法人税額に4.4%を乗じた地方法人税も納めなければなりません。

 

 

≪法人税の申告≫

 

1 中間申告

 

(1)前年の実績による中間申告

 事業年度が6か月を超える会社は、事業年度開始から6か月を経過した日から2か月以内に、以下の税額で中間申告書を提出する必要があります。

前事業年度の法人税額×(6÷前事業年度の月数)

 

(2)中間仮決算による中間申告

上記(1)の方法に代えて、中間仮決算による実績値によって中間申告書を提出することもできます。

 

《中間申告が不要な場合》

 上記(1)の方法で計算した税額が10万円以下の場合

 

2 確定申告

 

 事業年度終了の翌日から2か月以内に確定申告書を提出する必要があります。(中間申告により納付した税額は差引くことができます。)

 

3 修正申告

 

提出した申告書に、提出期限後になって誤りを発見し税額が増加することとなる場合には、修正申告をしなければなりません(ほとんどの場合、修正申告は税務調査などによる税務署の指摘により行われます)。なお、修正申告をしなければならない期間は、提出期限から7年以内です(それ以降になって過去の税額が過少であることに気がついても納税の必要はないということです)。

 

(1)修正事項の類型

●修正事業年度では所得に加算されるけれども翌事業年度以降に所得から減算されるもの

 (例)修正事業年度に売上計上が漏れていたが翌事業年度に計上している(いわゆる売上の期ズレ)。

●修正事業年度に所得に加算されてそれで終わるもの

 (例)交際費となるべきものを全額損金の額に算入していた。

 

(2)修正申告と決算書の関係

修正申告がなされても決算書は不変です。なぜならば、決算は法人税法によるのではなく会社法に基づいて行われるからです。

 

4 更正の請求

 

提出した申告書に、提出期限後になって誤りを発見し税額が減少することとなる場合には、更正の請求ができます。ただし、更正の請求ができるのは提出期限から5年以内です。

 

5 更正

 

上記3による修正申告(税額を増加させる)が納税者の意思により自主的に行われるのに対して、更正は税務署が強制的に申告した税額を増加させることをいいます。更正が行われるのは、税務署の指摘にもかかわらず納税者が修正申告に応じない場合であるのが実情です。(申告した税額が多い場合には税務署は税額を減少させることもできますが(減額更正)これが行われるのはまれです。)

 

6 決定

 

申告書の提出がない場合に、税務署が税額を確定することをいいます。

 

 

≪法人税と帳簿≫

 

前述のとおり、法人税の計算は会社が決算を行っていることを大前提としています。いうまでもなく、決算は日々の取引を帳簿に記帳した結果として行われます。そうであれば、法人税法においては帳簿についての定めは不要のはずです。しかし、法人税法においては、申告納税制度が適正に機能するために下記のとおり帳簿についてのルールを設けています。(すべての会社に適用される会社法において帳簿についての規定がいくつかありますが、あまり具体的ではありません。)

 

1 青色申告の場合

 

会社が青色申告をする場合には、下記のとおり一定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、それを保存なければなりません。(青色申告には欠損金の繰越控除をはじめとした、白色申告にはない特典があります。)

 

●資産、負債および資本に影響を及ぼす一切の取引について、複式簿記の原則に従って整然かつ明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行う必要があります。

●取引に関する帳簿は、すべての取引を借方と貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)、すべての取引を勘定科目別に分類する帳簿(総勘定元帳)、その他必要な帳簿を備えなければなりません。

●仕訳帳は取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目と金額を記録しなければなりません。

●総勘定元帳は勘定科目ごとに、記載の年月日、相手勘定科目、金額を記録しなければなりません。

 

2 白色申告の場合

 

現金出納帳その他の必要な帳簿を備え、その取引に関する事項を整然かつ明瞭に記録し、それに基づいて決算を行わなければなりません。青色申告の場合のように、複式簿記による記録は必要ありません。しかし、決算書には損益科目以外に資産負債資本科目も含まれることから、実際には複式簿記による必要があります。(会社の場合、ほとんどが青色申告を選択しています。決算書(損益計算書と貸借対照表)を作成するには複式簿記によらなければならず、青色申告と白色申告で記帳の労力に違いがないからです。)

 

 

≪住民税の計算≫

 

1 道府県民税(東京都税)

 

(1)均等割

所得の有無にかかわらず、会社の資本金と人数により年額2万円から80万円課税されます。

 

(2)法人税割

 法人税額に対して5〜6%課税されます。

 

2 事業税(都道府県)

 

資本金が1億円以下の会社は、法人税法により計算された所得に対して以下の所得金額の区分に対して課税されます(平成26年10月1日以後開始する事業年度は右側の税率です)。

●年間所得400万円以下の金額(2.7%、3.4%)

●年間所得400万円超800万円以下の金額(4.0%、5.1%)

●年間所得800万円を超える金額(5.3%、6.7%)

 

資本金が1億円を超える会社は、付加価値、資本、所得に応じて課税されます(いわゆる外形標準課税)。

 

3 市町村民税(特別区税)

 

(1)均等割

所得の有無にかかわらず、会社の資本金と人数により年額5万円から300万円課税されます。

 

(2)法人税割

法人税額に対して12.3〜14.7%課税されます。

 

《複数の道府県や市町村に事業所(支店や営業所など)がある場合》

 各道府県と市町村で均等割が課税されます。事業税と法人税割額については、本店、支店、営業所の人数で道府県や市町村に配分します。

 

《地方法人特別税》

上記2で計算された事業税額の81%(資本金が1億円を超える会社は所得に応じた事業税額の148%)が課税されます。平成26年10月1日以後開始する事業年度は67.4%になります(資本金が1億円を超える会社は所得に応じた事業税額の43.2%)。

 

 

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