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1.税理士になるには
正直いいまして「税理士になるための関門」が、税理士ひいては税務行政に対する一般からの不信感を招いていま
す。税理士になるための方法は次のとおりです。
(1)税理士試験(国家試験)に合格する
税と会計に関する全5科目(必須科目と選択科目)の試験に合格する必要があります。ただし、5科目同時に合格する
必要はなく無期限に1科目ずつ合計5科目に合格してもかまいません。
(2)税務関連役所に一定期間勤務する
大半の納税者は、税理士=税務署OBと認識しているかもしれません。
(3)公認会計士あるいは弁護士の資格を取得する
公認会計士あるいは弁護士は、税理士登録(税理士会に入会)することにより税理士業務を行えます。
(1)が、税理士になるための「原則」かもしれません。しかし、「特定の税ををまったく知らない(試験科目に偏りがあ
る)」、「昔の税法しか知らない(無期限の科目別合格)」者でも税理士になることができます(これは(2)(3)も同じです が)。
(2)は、税務行政についての豊富な実務経験を認めているのですが、「役人の天下り」の弊害はいまさらいうまでもな
いことです。
(3)は、まさに「大は小を兼ねる」です。ある意味で、税は会計(公認会計士)や法律(弁護士)の一部です。
税というものは、大変広範囲に及びます。そんなことから、すべての税を熟知した税理士などは存在しないのが実情で
す。
ただし、個人・法人事業者の申告は大変スタンダードで、どの税理士に依頼しても「税額」はあまり変わりないと思いま
す。
税理士よって違いが出るのは業務内容、すなわち申告書作成にいたるまでのプロセスです。
申告書を作成するには、領収書などの基礎資料の入手・整理・保存、記帳、試算表作成というプロセスを経なければな
りません。このプロセスについてのアドバイスや説明、さらには税以外の経営全般を業務対象としているかどうかは、 税理士により相当違いがあります。
「とにかく私に任せてください」、「少しでもお役に立ちたいです」、「申告書に判を押すだけ」など、税理士のタイプはまち
まちです。
2.税理士の仕事
税理士はあらゆる税の専門家です。税の専門家として税務相談や申告書の作成のみならず、税に関するあらゆる業
務(税務調査の立会い、税務署に対する異議申立てなど)を行います。
3.税理士は税務署の味方(下請け)?
税理士法第1条には、「税理士は税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に
そって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とす る。」と規定されています。
この条文を読めば、税理士が税務署の下請けではないことは明らかです。ただし、税金に関する法律(いわゆる税法)
に従わなければならないことは当然で、納税者のわがままを全てかなえてくれるわけではありません。
4.税理士の報酬
各税理士が独自に報酬を定めています。依頼するにあたっては、数人の税理士に報酬の見積りを依頼し納得のいく報
酬金額を把握する必要があります。
(ご注意)
2002年3月31日をもって、従来は各地区税理士会で定められていた「報酬規定」が廃止されました。いわゆる「自由
化」の流れによるもので、ある意味で当然といえるでしょう。
つい、「自由化=低価格化」と考えがちですが、本当にそうなのでしょうか。
どのようなサービスや商品にも様々な構成要素があり、その構成要素に応じて価格が決ります。そして、需要者には
「満足」を、供給者には「利益」をもたらさなければなりません。そうでなければ、その商品やサービスは存続することは できません。もし、従来の「報酬規定」にこのメカニズムが作用していないとすれば廃止は当然です。
この不況下、「自由化になったので従来の半額にしてほしい」はもっともな考えかもしれません。しかし、多くの中小零細
企業は、税理士の提供するサービスの内容についてあまり知らないのが実情です。「報酬規定」が廃止されたのを機 に、依頼者と税理士がそのサービス内容について話し合うことが、まずは必要ではないでしょうか。
供給者のサービスや商品についての「説明」と、需要者のそれに対する「理解」。「自由化」の大前提ではないでしょう
か。
5.財務会計ソフトの普及
税理士は税の専門家ですが、実際は記帳代行(領収書の整理、振替伝票の起票、総勘定元帳の作成)を主たる業務
としています。
最近、急速に財務会計ソフトが普及し、記帳代行業務に安住してきた税理士は大幅な顧客減を余儀なくされています。
当事務所のお客様も、大半がパソコンをお持ちになられています。そこで、いつも話題になるのが財務会計ソフトです。
「もうこれで、税理士業界もおしまいですね」といわれることもあります。確かにそのとおりかもしれません。
会社によっては、完璧に基礎資料が作成できており、直ちに財務会計ソフトを導入できる状態の場合もあるからです。
このような会社にとっては、税理士報酬の大半が「入力代行料+帳票出力料=コンピューター利用料」です。コンピュ ーターが高価な時代は、これでも税理士業務は成り立ちました。しかし、パソコンが低価格化した現在では、この方法 は明らかに時代遅れです。
問題は、基礎資料も不十分で、会計知識もあまりない会社です。
CAD(設計ソフト)は設計の知識と技能、デザインソフトはデザインのセンス、ホームページ作成ソフトはHTMLの知識
をそれぞれ必要とします。それと同じように、財務会計ソフトは簿記会計の知識を前提としています。
「税理士はお客さんに逃げられたくないから、財務会計ソフトの説明をしない」といわれます。財務会計ソフトの操作方
法だけでしたら短期間(数時間)で説明することができます。しかし、その前提となる簿記会計の知識までを短時間で説 明することは容易ではありません。事業者の税務申告の前提となる記帳と決算が、複式簿記以外の簡易な方法にでも ならない限り、代行業としての税理士業は市場規模こそ縮小しても存続は可能です。
なお、法律が複式簿記を採用しているのは、なにも税理士業界を保護するためではありません。世界標準の最も妥当
な記帳方法だからです。商人(会社と個人事業者)は複式簿記をマスターする義務があるのです。マスターできない場 合は、アウトソーシングするしかありません。
6.事業者と税理士
事業を営んでいる以上、「税」を避けて通ることはできません。
申告納税制度を採用するわが国において、申告は納税者(企業、個人)自身で行わなければなりません。税理士は納
税者の代行をするにすぎません。納税者自身で申告ができる場合は税理士に依頼する必要などありません。
ただし、税務申告は大変煩雑でまた専門的部分が多く、税理士に依頼することが企業経営上効率的かと思います。
(注)ほとんどの税務申告書や届出書に「税理士署名・押印欄」があるかと思いますが、この欄が空白でも各役所は申
告書を受け付けてくれます。
7.個人と税理士
6.の事業者と税理士の関係と同じです。
問題は費用対効果です。事業者はほとんどの場合に税理士報酬は経費となりますが、まったくの個人(サラリーマンの
相続、贈与、土地売買など)は経費となる場合が限られています。そんなことから、個人納税者は税理士への依頼を敬 遠する傾向にあります。
税理士に依頼するかどうかは納税者の自由ですが、くれぐれも「ニセ税理士」にだけはご注意ください。
8.無料相談所
所得税の確定申告の時期になれば、各地域で税理士会主催の「無料税務相談所」が開催されます。これは、税理士
の社会的使命から行われるもので相談料は無料です。
しかし、相談のみであり、申告書を作成したり記帳を代行してはくれません。また、相談に応じてもらえるのは一定水準
の所得以下の納税者に限られている場合もあります。
無料相談は、税理士に税務についての無償独占が認められていることを根拠に行われています(非税理士による無償
による税務を防止する)。無料相談は税理士の使命であるとともに権利でもあるのです。
9.起業と税理士
起業した段階から税はついて回ります。起業後すかさず、できれば起業を考えた段階から税理士と顔合わせだけは済
ませておかなければなりません。(単なる友人知人としての関係ではなく、「ビジネスとしての関係=有償による依頼」が 必要です。)
10.税理士と会計
税理士は税の専門家であると同時に会計の専門家でもあります。ここに会計とは、記帳や決算など税務に関して付随
して行う業務です。
なお、税理士は金融商品取引法(株式公開企業)や会社法(一定規模以上)で定められている会計監査を行うことはで
きません。これを行うのは「公認会計士」です。
税理士は、公認会計士試験に合格しない限り公認会計士業務を行えません。
11.相続贈与と税理士
相続や贈与の結果として多額の税金が課税されることがあります。
1980年代後半のバブル期には多くの億万長者が出現し、「相続破産」、「相続対策」などの言葉が流行し、相続税の
知識も一般教養のひとつとなりました。
昨今では、相続(税)への関心もすっかり薄れてきましたが、決して油断はできません。
(1)相続税が課税される財産
(2)(1)の評価方法
(3)相続税の計算における各種特例
(4)生前贈与が相続税に与える影響
以上はかなり専門的です。
また、遺産分割、遺産分割後の各種手続(名義書換)などは、相続税課税の有無にかかわらず発生する問題です。
「うちは貧乏だから」と、たかをくくらずに慎重に行動しなければなりません。
一般に相続が発生すると税務署から逃げようとする傾向にあります。しかし、税務署は相続発生の事実は当然として、
相続財産の内容をかなりの部分まで把握しています。覚悟を決めて最良の方法で申告することです。
12.税理士の今後
「税理士は税金を安くしてくれる人」、「不景気で赤字だから税理士さんは必要ない」。いずれも納税者の本音でしょう。
税理士は、高度成長期には税務署に対する「用心棒」として、1980年代後半のバブル期には「相続コンサルタント」と
して活躍してきましたが、もはやその出番がなくなったといっても過言ではありません。
「税務署に対する顔」は幻想に過ぎませんし、「節税」にも限度があります。
「税金に関する代行業」が税理士の真の姿なのです。
これからの時代は、税理士と「下心」を持って付き合ってはいけません。正確、公正、適法な「税金に関する代行」をし
てくれるのが税理士と考えなければなりません。これ以上のことを税理士に期待するのは間違いで、その期待は必ず 裏切られ、場合によっては大きな災難を招くとお考えください。
1980年代後半のバブル崩壊後の低成長経済は、税理士の機能を正常化しているといえます。
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