消費税の負担(3/4)

 

築山公認会計士事務所

 

目次

 

 

≪申告と納付(消費税の申告・納付をする時期)≫

 

1 確定申告

 

課税期間の末日の翌日から2か月以内(個人事業者の場合には3か月以内)に、所轄の税務署に確定申告書を提出するとともに、納付すべき消費税額と地方消費税額を国に納付しなければなりません。(消費税=国税と地方消費税=地方税の申告は同一の申告用紙で行います。また、納付も同一の納付書で行います。つまり、地方消費税についても税務署が窓口となるということです。)

 

《課税資産の譲渡等のない課税期間は申告が不要》

消費税の課税事業者でも国内における課税資産の譲渡等がなく納付税額もないときは申告をする必要はありません。

《消費税の還付を受けるための申告》

課税期間において「受け取った消費税の合計額」<「支払った消費税の合計額」である、「受け取った消費税の合計額」−「支払った消費税の合計額」(この差額はプラスであるとして)<「中間申告による納付税額」である場合には確定申告において還付がされます。

《輸出業の申告》

輸出業の場合には消費税が免税ですので、輸出専業の場合には「受け取った消費税の合計額」はゼロで「支払った消費税の合計額」のみとなります。この場合も輸出業だけの特別な申告が必要となるのではなく、通常どおりに申告をして還付を受けます。

 

2 中間申告

 

直前の課税期間の消費税(国税部分)の年税額が48万円以下の場合には不要です。

 

直前の課税期間の年税額(以下Aとします)が48万円を超え400万円以下の場合には課税期間の6か月経過後の2か月以内に、Aの6か月相当分を納税します。

 

直前の課税期間の年税額(以下Bとします)が400万円を超え4800万円以下の場合には、課税期間の3か月経過後の2か月以内にBの3か月相当分を納税します。さらに、課税期間の6か月経過後の2か月以内にBの3か月相当分を納税し、9か月経過後の2か月以内にBの3か月相当分を納税します。

 

直前の課税期間の年税額が4800万円を超える場合には、年11回の中間申告による納付が必要となります。

 

中間申告により納税した税額は、上記1の確定申告による納付額から差引くことができます。また、中間申告を上記のような直前課税期間の年税額を基準にして行うこと(見込み数値)に代えて、「仮決算」(その期間の実額)により行うこともできます(前課税期間よりも最終的な納付税額が少なくなると見込まれる場合や、実額数値が見込み数値よりも少ない場合には、資金負担が軽減されます)。

 

《中間申告書の様式》

「仮決算」による場合には確定申告と同じ様式ですが、「直前課税期間の年税額を基準」とする場合には様式が異なります。この様式の申告書は中間申告の期限が近づいてくると税務署から送付されてきます。そして、その申告書用紙には申告数値(納税額など)が印字されていますので、納税者側では計算や記入の必要はなく署名押印して提出するだけです。

《中間申告書を提出しなかった場合》

「直前課税期間の年税額を基準」とする申告書の提出があったとみなされます。つまり、中間申告の期限後に「仮決算」による申告はできないということです。

《法人税の中間申告の方法とは無関係》

法人税(事業税、都道府県民税、市民税)についても消費税同様に中間申告が必要な場合があり、その方法は消費税同様に前年数値を基準とする方法と仮決算による方法があります。法人税、消費税ともに中間申告が必要な場合、両者の申告方法を統一する必要はなく、片方は前年数値を基準にし、もう片方は仮決算によってもかまいません。

《個人事業者の中間申告の期限》

確定申告は暦年終了から3か月以内ですが、中間申告は対象期間の終了から2か月以内ですのでご注意ください。

《中間申告で還付は受けられない》

ご注意ください。早期に還付を受けたい場合には、下記の「3 課税期間の短縮」を選択してください。

 

3 課税期間の短縮

 

納税者は課税期間の短縮を選択することができます(通常は1年のところを1か月あるいは3か月を課税期間とすることができます)。短縮することを選択した場合には、個人事業者の場合には1月を開始とする1か月(毎月)あるいは3か月(1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月)を、法人の場合には事業年度開始以後の1か月あるいは3か月間に区分した各期間が課税期間となります。(消費税の還付が恒常化している輸出業者などは、課税期間の短縮を選択していることが通常です。)なお、課税期間の短縮を選択した場合には、2年間は継続して適用することが必要です。

 

《安易に課税期間の短縮を選択すると事務処理が大変!!(課税期間の短縮と中間申告は全然違います)》

課税期間を短縮した場合の申告は中間申告と同じように思えるかもしれませんが、前課税期間の税額に基づいて税額を算出することを選択できる中間申告(上記2)と違って、短縮した課税期間ごとに納税する消費税を実額に基づいて計算しなければなりません。つまり、一年に12回あるいは4回の「待ったなし」の決算が必要であるということです(事務処理が迅速かつ正確でない大変です)。

 

 

≪消費税の各種届出≫

 

法人税や所得税同様に、消費税においても書面による各種届出が必要となります。各種届出の漏れや遅れは、せっかくの税務上の特典が受けられなくなることにつながります。いずれの届出も、その用紙の記入は極めて簡単です。用紙は、税務署で配付しているもののほか、国税庁のホームページ(タックスアンサー)からダウンロードしたものを使用することもできます。

以下に、主要な届出を挙げておきます。

 

  消費税の課税事業者となったことの届出(消費税課税事業者届出書)

 

基準期間における課税売上高が1000万円を超えたことにより課税事業者となる場合の届出です。課税事業者となることが判ったならば、速やかに届け出る必要があります。例えば、平成22年1月1日から平成22年12月31日を事業年度とする会社が、その事業年度の決算作業を行う過程(平成23年の1、2月頃)において、課税売上高が1000万円を超えるということが判ったならば、速やかに届け出なければなりません。

 

《この届出をしなければ課税事業者とはならない(消費税を納税しなくても済む)?》

そんなことはありません。この届出がなくとも、納税義務があれば消費税を納税しなければなりません。税務署は決算書などから、新たな課税事業者の存在を把握し、この届出が必要であれば用紙をその事業者に送付しています。なお、実質的には、この届出は税務署が課税事業者を把握し申告書の用紙を送付するためにあるといえます。

《消費税の新設法人に該当する場合》

基準期間がない事業年度の開始の日における資本の金額が1000万円以上である会社は、第1期から消費税の課税事業者となりますので、設立と同時にこの届出をする必要があります。ただし、「法人設立届出書」に消費税の新設法人に該当する旨及び所定の記載事項を記載して提出した場合には、この届出は不要です。

 

  消費税の納税義務者でなくなったことの届出(消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書)

 

上記1の反対の届出です。なお、この届出をしないからといって、免税事業者でありながら消費税の納税をしなければならないことにはならないのは、上記1と同じ理屈です。

 

  簡易課税を選択することの届出(消費税簡易課税制度選択届出書)

 

簡易課税制度を選択しようとする場合の届出で、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に届け出る必要があります。なお、この届出をしていても、基準期間における課税売上高が5000万円を超えていれば、簡易課税を適用することはできません。

 

  簡易課税の選択をやめることの届出(消費税簡易課税制度選択不適用届出書)

 

簡易課税の選択をやめようとする場合の届出で、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに届け出る必要があります。なお、この届出をしない限りは、基準期間における課税売上高が5000万円以下であれば、簡易課税を適用しなければなりません。

 

《簡易課税の届出は、いつまでも生きている!!》

簡易課税の届出は、簡易課税をやめる届出を提出しない限りは永久に有効です(消費税法が現行どおりである限り)。たとえば、消費税の課税事業者になった当初は簡易課税を適用していて、その後事業規模が拡大し簡易課税が適用できなくなっても簡易課税をやめる届出をしていない限り簡易課税の届出は有効なままです。その後、事業規模が縮小し簡易課税を適用できる課税売上高になったならば、再び簡易課税を適用しなければなりません。

 

  課税事業者になることを選択することの届出(消費税課税事業者選択届出書)

 

免税事業者が課税事業者になることを選択する場合の届出です。適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に届け出る必要があります。

 

 

≪消費税の帳簿(納税する消費税の計算作業)≫

 

課税期間の課税標準額に対する消費税額(受け取った消費税)や仕入税額控除(支払った消費税)の計算は、一定の規則にしたがって漏れなく正確に行わなければなりません。一般的にこの作業は、決算書作成と並行して行います。決算書作成のためには、複式簿記により取引を勘定科目ごとに分類集計しますが、その際に各取引についての消費税に関する事項を記録しておき、決算書作成(試算表作成)と並行して課税標準額に対する消費税額(受け取った消費税)や仕入税額控除(支払った消費税)を計算します。

 

財務会計ソフトの場合には、入力画面に消費税についての選択項目があり、それを入力すれば、自動的に課税期間の課税標準額に対する消費税額(受け取った消費税)や仕入税額控除(支払った消費税)が計算され、納付すべき消費税額が算出されます。(現在市販されているほとんどの財務会計ソフトはこの機能を有しています。)

 

《インボイス方式と帳簿方式》

消費税の納税額を計算する方法には、相手先、取引額、税額などを別記したインボイス(税額票などの特別な法定の書類)から計算する「インボイス方式」と、帳簿から計算する「帳簿方式」とがあります。消費税が税収に占めるウエイトの高いEU諸国は「インボイス方式」、わが国は「帳簿方式」によっています。

《仕入税額控除の要件》

わが国の消費税が「帳簿方式」であるといっても、仕入税額控除を行うためには帳簿に金額の記載があるだけでなく、帳簿や請求書などにおいて、相手先の氏名(名称)、仕入年月日、取引内容と金額、その他を明記するなど、一定の要件を満たしている必要があります。

 

 

≪消費税の仕訳(決算書における消費税)≫

 

消費税の導入から約20年が経過したことから、店頭やカタログなどにおける消費税の表示についてはすっかりと方法が確立され一般の理解も得られています。(小売業(消費者への販売)においては、店頭、カタログなどに表示する価格は消費税額を含んだ「総額表示」とすることが義務付けられています。)しかし、経理処理(仕訳や総勘定元帳)となると戸惑うことがあります。

 

1 税抜処理

 

消費税が間接税であることからすれば合理的な方法です。税抜処理においては、受け取った消費税は「仮受消費税」、支払った消費税は「仮払消費税」とし、取引総額から区別して損益計算に影響しないようにします。納税金額は、仮受消費税と仮払消費税の差額となり、納税後は仮受消費税、仮払消費税ともゼロとなります。税抜処理においてはすべての取引を、本体と消費税に区分けしなければなりません。しかし、取引によっては消費税が区分されていない取引もあることから、納税義務者自らが区分する必要があり大変手間の掛かる方法であります。一般に、税抜処理は事務能力の高い会社が採用する方法です。

 

税抜処理も財務会計ソフトがあれば容易に行なえます。ほとんどの経理ソフトにおいて、「『税込入力』の『税抜出力』」ができるからです。しかし、すべての取引において根本から(受発注や入出金の時点から)消費税を区分けできていればよいのですが(区分けして考える習慣になっていればよいのですが)、そうでない場合は総勘定元帳や試算表(いずれも税抜き)と現実にギャップを感じてしまいます。例えば、交通費(電車賃など)は、現実の取引においては税込みで行われていますが、総勘定元帳や試算表では税抜きとなってしまいますので、実際よりも費用が少なく計上されているように感じます。

 

このような実情からすれば、一概に「税抜処理は合理的」ともいえないのかもしれません。さらに、消費者に対する(小売業における)価格表示は総額によること(税込み)が義務付けられています。そうであれば、小売業の決算書(試算表)においては、税込処理によるほうが合理的なのかもしれません。

 

【設例】

年間売上高1050(内消費税50)、年間仕入高840(内消費税40)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)仕訳

売掛金   1050 / 売 上 高 1000

              仮受消費税   50

仕入高     800 / 買 掛 金  840

仮払消費税    40

仮受消費税    50 / 仮払消費税   40

              未払消費税   10→納税する消費税(50−40)

(2)損益計算書

売上高 1000

仕入高  800

利益   200 

 

2 税込処理

 

消費税を含む取引総額でもって仕訳する方法です。受け取った消費税は収益に含まれ、支払った消費税は費用に含まれることにより、利益に影響します。しかし、最終的な納税額を費用処理することにより、税抜処理と同様の結果となります。

 

【設例】

年間売上高1050(内消費税50)、年間仕入高840(内消費税40)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。上記、税抜処理の場合と同じです。

(1)仕訳

売掛金   1050 / 売 上 高 1050

仕入高    840 / 買 掛 金  840

租税公課    10 / 未払消費税   10→納税する消費税(50−40)

(2)損益計算書

売上高 1050

仕入高  840

租税公課  10

利益   200 

最終的な利益は、税抜処理の場合と同じになります。

 

 

≪損益計算書と消費税の計算≫

簡易課税を選択していない場合を前提としています。

 

実務上、消費税の計算は損益計算書をベースに行ないます。損益計算書の収益勘定科目からは受け取った消費税が、費用勘定科目からは支払った消費税が計算できます。税込処理の場合にはそれぞれの合計を4/105すれば計算できます。税抜処理の場合にはそれぞれに仮受消費税と仮払消費税を加算して4/105として計算します。

この作業は表計算ソフトを活用すれば簡単にできます。特定の列に損益計算書の勘定科目と金額をそのまま入力し、勘定科目を課税、非課税、免税などといった具合に分類し、それぞれを集計すれば課税標準額に対する消費税額や仕入税額控除を算出することができます。

しかし、損益計算書のみからでは導けない、あるいは損益計算書を加工しなければ、消費税の計算ができないことがあります。

 

1 固定資産の購入

 

建物、機械などの固定資産の購入は課税仕入れですので、購入した課税期間において、受け取った消費税(課税標準額に対する消費税額)からその固定資産の購入価額の「全額」について支払った消費税を差し引くこと(仕入税額控除)ができます。

損益計算書においては固定資産は購入した事業年度に全額が費用として表れるのではなく、貸借対照表に資産計上され、複数事業年度にわたる減価償却を実施することによって損益計算書に減価償却費という費用として表れます。したがって、損益計算書の減価償却費は購入した固定資産の全ての消費税ではないので、消費税の計算にあたっては固定資産については貸借対照表などから数値を引っ張ってくるしかありません。

 

2 棚卸資産(商品、製品など)

 

損益計算書において、商品などの購入代金は仕入高として表われます。仕入高のうち事業年度末に残っている在庫については、損益計算書から期末棚卸高として差し引くと共に、貸借対照表に棚卸資産として計上しなければなりません。

商品などの購入は課税仕入れですので、購入した課税期間において、受け取った消費税(課税標準額に対する消費税額)からその購入価額の「全額」に対して支払った消費税を差し引くこと(仕入税額控除)ができます。損益計算書における費用は当期仕入高に期首と期末の在庫を加算減算した金額ですが、消費税の計算においては当期仕入高のみで計算するということです。

 

3 海外出張の運賃

 

海外出張旅費は次のとおりに分類できます。

(1)国内の自宅や会社から国内の空港などまでの運賃

(2)国内の空港などから海外の空港などまでの運賃

(3)海外での運賃

(4)海外の空港などから国内の空港などまでの運賃

(5)国内の空港などから自宅や会社までの運賃

課税仕入れに該当するのは(1)と(5)のみです。損益計算書の勘定科目でこれらの区分ができていない場合には、総勘定元帳や領収書から個々に集計するしかありません。

 

 

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