相続税の概略(2/4)

相続税が課税されない財産

 

目次

 

 

6 相続税が課税されない財産

 

相続税が課税されない財産、つまり相続税の計算から除外できる財産もあります。しかし、その範囲は意外に少ないです。ですから、相続税を「財産の種類」のみで節税することはできないということです・・・

 

相続税は、相続や遺贈によって取得したすべての財産が課税の対象となります。しかし、相続や遺贈によって取得した財産の中にはその財産の性質、社会政策的見地、国民感情などから課税の対象とすることが適当でない財産があり、相続税が非課税とされるものがあります。

 

(1)皇室経済法の規定によって皇位とともに皇嗣が受けた物

 

(2)墓地、霊廟、仏壇、仏具など

 

(3)公益事業を行う人などが相続や遺贈によって取得した財産で、その公益事業の用に供することが確実なもの

 

(4)心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権

 

(5)相続人が受け取った生命保険金等のうち一定の金額(500万円×法定相続人の数)

被相続人の死亡により受け取る保険金、いわゆる「死亡保険金」で、被相続人が負担した保険料に対応する部分については保険金の受取人が相続によって取得したとみなされます(上記3.相続税の課税される財産−その2/4(相続や遺贈によって取得したと「みなされる」財産(1)参照)。保険金が遺族(相続人)の今後の生活の糧であることを考慮して一定金額までを非課税としているのです。(保険料の負担者が被相続人以外である場合=相続により取得したとみなされる保険金でない場合には相続税以外の税が課税されますので、当然この規定の適用はありません。)

 

(6)相続人が受け取った退職手当金等のうち一定の金額(500万円×法定相続人の数)

被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金など(支給の基準が被相続人の勤務期間や職務内容に基づいている)で、その死亡により支給を受けたもので、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは相続により取得した財産とみなされます(上記3.相続税の課税される財産−その2/4(相続や遺贈によって取得したと「みなされる」財産(2)参照)。この退職手当等は、遺族(相続人)の今後の生活の糧であることから上記(5)同様に一定金額までが非課税とされています。(相続により取得したとみなされる退職手当等でない場合には相続税以外の税が課税されますので、当然この規定の適用はありません。)

 

(7)相続財産などを申告期限までに国などに寄付した場合におけるその寄付財産

 

(8)相続財産に属する金銭を申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合におけるその金銭

 

(9)相続税の申告期限前に災害により被害を受けた相続財産

 

《生命保険による相続税対策》

生命保険の第一の目的は遺族の生活保障ですが、生命保険は相続税の納税資金としても活用できます。相続財産の多くが換金不能(非公開株式など)、換金してはならない(居住用あるいは事業用不動産など)場合には、納税資金の捻出に四苦八苦すること、場合によってはやむを得ず相続財産を手放さなければならないことがあるからです。そこで、生前に財産の一部を生命保険としておく(保険料を支払っておく)ことでこのような事態が回避されます。さらに、上記のとおり死亡保険金については一定金額までが非課税となりので、まさに一石二鳥です。

相続開始後遺産分割が済むまでは、被相続人の銀行預金口座からは引き出すことはできないことから(引き出せないことありませんが、相当手間がかかる手続が必要です)、同居している配偶者などは生活資金の確保に困ることがあります(銀行預金以外の財産も遺産分割が整うまでは相続人間のトラブル回避のためには換金しないほうが無難です)。しかし、生命保険があれば遺族に保険金が手渡されることからこのような事態が回避されます。

【保険の当事者の変更には要注意!!】保険の契約者、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人が誰であるかによって、課税関係が大きく異なってきます。保険会社が契約時に薦めた方法は節税となっても、その後保険の当事者を変更することにより、とんでもない課税関係に変わってしまうこともあります。保険会社は、当事者の変更にあたって課税関係の変動を考慮しない場合が通常ですので注意が必要です。

 

 

7 相続税が課税される財産から差し引ける債務と葬式費用

 

マイナスの財産もあります。借金ですよ!当然、マイナスの財産はプラスの財産から差し引いて相続税を計算することができます。

 

(1)相続開始のときに現に存する被相続人の債務で確実と認められるもの

借入金、未払金、公租公課(所得税、相続税、贈与税など)などがこれに該当します。ただし、相続税が非課税となっている財産(上記「6.相続税の課税されない財産」参照)の取得、維持、管理のための債務については差し引くことはできません。

 

(2)被相続人の葬式費用

●葬式、埋葬、火葬、納骨などに要した費用

●葬式に際して施与した金品に要した費用

●葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うと認められるもの

●死体の捜索、死体や遺骨の運搬に要した費用

 香典返戻費用、墓碑や墓地の買入費用または墓地の借入料、初七日その他法会のための費用、医学上又は裁判上の特別の処置のための費用は葬式費用ではありませんので差し引くことはできません。

 

《被相続人の死亡した年度の所得税の確定申告》

所得税の納税義務者が死亡したときは、その相続人が死亡した人に代わって死亡した人の所得税の確定申告をしなければなりません。この場合の申告・納税期限は通常の確定申告とは異なり、相続のあったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。納税した所得税を相続税が課税される財産から差し引けるということはいうまでもないことです。(所得税の納税が必要な場合には住民税の納税も必要となることが通常ですので、これについても差し引けます。)

 

《保証債務(被相続人が誰かの保証人になっている場合)》

控除することはできません。なぜならば、代位弁済(債務者に代わって債権者に弁済すること)したとしても債務者に対して「求償すること」(弁済した金額を債務者に請求すること)ができるからです。しかし、債務者への求償が困難である場合には、状況に応じて一定割合(最大100%)を債務として差し引くことができます。

 

《連帯債務(被相続人が誰かと連帯して債務を負っている場合)》

被相続人の負担すべき金額が明らかな場合には、その金額を差し引くことができます。

 

《社葬の費用》

会社が負担したのですから相続税の計算にあたって差し引くことはできません。

 

 

8 人によって課税される財産の範囲に違いがある

 

住所が国内か国外かによって課税される範囲が異なってくることは多くの税に共通することです。しかし、税負担を減らすためだけの見せかけの住所には厳しい規制がされています。また、10年以上前までは、住所も財産も「短期的・形式的に海外に移せば」という方法がまかり通っていましたが、現在では完全に封じされています。

 

(1)相続や遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所のある人→居住無制限納税義務者

取得した財産のすべて(相続時精算課税の適用を受ける財産を含む)に課税されます。

 

(2)相続や遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所のない人で、次の二つの要件のいずれかに該当する人→非居住無制限納税義務者

●日本国籍を有し、その人または被相続人が、相続開始前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある

●日本国籍を有しないが、被相続人が相続開始時に日本国内に住所を有していた

取得した財産のすべて(相続時精算課税の適用を受ける財産を含む)に課税されます。

 

(3)相続や遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所のない人(上記(2)に該当する場合を除く)→制限納税義務者

取得した財産のうち日本国内にあるものの合計額(相続時精算課税の適用を受ける財産を含む)に課税されます。

 

(4)相続時精算課税の適用を受ける財産のみを取得した人(上記(1)(2)(3)に該当する人を除く)→特定納税義務者

相続時精算課税の適用を受ける財産の合計額に課税されます。

 

《住所とは?》

住所とはその人の生活の本拠をいいます(住民票といった形式により判定されるのではありません)。

 

《財産の所在(国内か?国外か?)》

財産ごとに、例えば次のように定められています。

●動産、不動産→その所在

●預貯金→その受入をした金融機関の営業所または事業所の所在

●保険金→その契約をした保険会社の本店または主たる事務所の所在地