平成18年から会社制度が大きく変わりました。

 

過去に大学の授業や仕事で会社法(会社制度)に触れたことがある人ならば、現在、ネット上で飛び交っている情報や書物の内容に驚かれることだと思います。平成18年から抜本的に改正された会社法が施行されているのです。この改正は、従来の会社制度における「常識」「モラル」「精神」が全く通用しなくなるほどの改正でした。

 

最低資本金規制が廃止されました。

 

改正前は最低資本金規制(株式会社1000万円、有限会社300万円)が存在し、設立に際して最低資本金額を用意しなければなりませんでした。

 

●「資本金」は、株主からの会社に対する出資額(過去形)でその金額の登記が義務づけられています。

●「資本」は一定時点の資産(預貯金や不動産など)マイナス負債(銀行借入や未払いの仕入代金など)で、当初出資額である資本金と一致しないのが通常です(資本は、純資産、正味財産、株主持分などと呼ばれることもあります)。

●決算書において資本は、資本金プラス累積利益(累積損失)として表示されます。

●資本が資本金を下回っても法的な罰則はありません(ただし、配当はできません)。

 

会社の「資本金」や「資本」は、預金証書や株券のように手に取れるものではありません。また、素人が「資本金」や「資本」の意味を理解することは容易ではありません。

にもかかわらず、会社において「資本金」や「資本」が重視されているのはなぜでしょうか?それは、株式会社が「有限責任」であるからです。有限責任とは、株主がその出資額を限度として責任を負うことをいいます。たとえば、ある会社の出資額(資本金)が500万円で、めぼしい資産は残らず1000万円の負債のみ残して倒産した場合、出資者は500万円を限度として責任を負えばすみます。このような場合、倒産するまでに出資した500万円は使い果たしてしまっていることが通常でしょうが、出資者はそれ以上失うことはありません。負債の相手方である融資してくれている金融機関や仕入業者はもはや回収するすべがないということです(出資者に責任追及できないということです)。

 

会社の資本金は多ければ多いほど対外的な信用が増します。このことは、年商(1事業年度の売上高)とコスト(仕入代金や人件費などの諸経費)が同一の会社が利益ゼロ(収支トントン)で成り立っていたのが、徐々に赤字化した場合のことを考えていただければより実感が湧くと思います。当然、資本金が多い会社のほうが倒産するまでの期間が長くなるということです。

 

《これから会社を設立する場合には、資本金はできるだけ多くすべきか?》

必要な額にしてください。このようにできることが、改正会社法の素晴らしい点であると思います。

経済的・経営的観点からすれば、資本金は次のような使途となる性質ものであります。

(1)事業としての最低限の機能と体裁を備えるため資金

事務所の敷金・保証金、机・椅子の購入代金などがこれに相当します。

(2)創業当初の運転資金

事業は仕入(出金)が先行してから売上(入金)があることが通常です。当初の仕入代金は資本金から賄う必要があります。

(3)不時の蓄え

事業に浮き沈みは付き物です。不時に備えて一定の蓄えをしておく必要があります。

上記(1)〜(3)の必要額は、それぞれの事情によって異なってくると思います。

 

有限会社が設立できなくなりました。

 

株式会社も有限会社も共に出資者の責任は有限でその性質が似ていることから、有限会社制度は株式会社制度に統合されました。つまり、従来の有限会社とほぼ同様の株式会社(役員は取締役1名)を設立運営することが可能となり、有限会社は不要となったのです。。なお、改正法施行前からある有限会社は、特別な手続をすることなくそのまま営業活動を行えます(社名としても有限会社の文字を用いることができます)。

 

機関の設計(取締役の人数、監査役の設置)を柔軟に行えるようになりました。

 

従来の株式会社では取締役3名、監査役1名が最低必要でしたが、改正後は「取締役1名で監査役はなし」といった方法が認められるようになりました。改正前は、最低役員数をクリアーできず有限会社(取締役1名でも可)を選択していたのが実情です。

 

《役員(取締役と監査役)の任期を最長10年とすることができる》

取締役2年ごと、監査役4年ごとの形式的な選任と手続(登記)が小規模な株式会社にとっては手続が煩わしく費用負担も生じたのですが、改正後は取締役・監査役ともに任期を最長10年とできることから大幅に省力化されました。

 

 

改正会社法は起業を促進したか? 

そんなことはないと思います。事業を開始し維持発展させてゆくには、顧客、顧客の要望に応えられる技術・ノウハウ、そしてなによりも資金が必要不可欠です。改正会社法は、事業を行うための権利義務の主体である会社という「器」を、改正前よりも容易に設立・維持・運営できるように改正したにすぎません。顧客、技術・ノウハウ、資金が備わっていない「器」を手に入れたところでどうにもなりません。

 

会社の信用は自身で築かなければならない! 

従来の会社法には、形式的で無意味な規定が数多くありました。しかし、形式的で無意味な規定を守れるということが、ステイタスや信用につながっていたともいえます。今後は、資本金や役員数などを必要に応じて決めることができます。「法律に従って会社を設立し、法律に従って運営している」だけではステイタスにも信用にもなりません。「やはり、あそこは会社組織にしているだけのことはある」と周囲に印象を与える会社運営をしてゆく必要があると思います。

 

会社(法人)=組織(人の集まり)という固定観念の打破! 

「実際は個人商店のくせに」などと小規模な会社を蔑む風潮があります。しかし、会社は事業における権利義務の主体であって、その規模の大小は無関係です。事業主の私生活とは切り離された会社で事業を行うことに様々な合理性があるのではないでしょうか。

 

 

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