(内容)2013年6月14日現在

 

 

資本金がなくなれば会社の活動が法的に認められなくなる

 

資本金に関する相談は尽きることがありませんが、一番深刻な(?)相談はこれです。しかし、心配はご無用です!

 

資本金とは株主から会社に出資された金額のことです。設立時の金銭(現金あるいは預金)による出資の場合、当初は出資相当額、例えば500万円の金銭が存在します。しかし、この500万円を使い果たしてしまうこともあります。このような状態になると会社の活動が法的(会社法)に認められなくなるのではと考える人が少なからずいます。

 

●資本金は出資されたという「過去の出来事」でしかありません

●法的に資本金相当額の金銭を保有しなければならないという「義務」はありません

 

このことを理解してください。

 

★資本金を使い果たしても会社がつぶれない理由

 

様々なことが考えられますが、次のようなケースが考えられます。

 

○出資相当額の現金が他の資産に姿を変えている

例えば、売掛金(販売代金の未回収部分)、有価証券や土地などの投資資産です。資産は一定時点でとらえますので、一定時点では現金はなくても、時の経過により現金が増えることもあります。売掛金ならば回収により、投資資産ならば売却により「現金化」されます。

 

○借入金で資金を調達

 会社が資金調達する方法は、株主からの出資(資本金)と金融機関などからの融資(借入金)という2つの方法があります。資本金で足りなければ借入金で調達すればよいのです。

 

★しかし、資本金相当額の財産を維持することは非常に大切です(引退するとき=会社を清算するとき悲しいですよ!)

 

会社の財産は「資産‐負債」として計算されます。資産は現金に換えることができます。負債はその現金から支払います。そうして残るのが会社の財産です。

 

会社を清算するとき、この財産は株主に払い戻されます(残余財産として分配されます)。株主の出資額が500万円で、払い戻された財産(現金)が600万円ならば、株主にとってこの「投資」は成功であったといえます。500万円が600万円に増えたからです(途中で配当があったとすればもっと儲かったことになります)。

 

いかがですか?

 

「資本金」「資産」「負債」「財産」「現金」の意味、自身(会社代表兼株主)がどのように対応していくべきかが見えてきたのではないでしょうか?

  

●純資産

貸借対照表をご覧いただくと「純資産の部」というのがあると思います。この合計額は、「資産の部」と「負債の部」の合計額の差額にほかなりません。また、純資産の部には株主が出資した資本金の額が記載されています。純資産の部は資本金に創業来の利益(損失)を加算(減算)した金額になります。

 

●赤字(収益‐費用=利益がマイナス)になると活動ができなくなる

これも資本金と同じく、そんな心配は無用です。ただし、赤字の結果としての資金不足を補うことができなければなりません(増資や金融機関などからの融資)。

 

 

資本金(純資産)の変化

 

資本金(純資産)は簿記会計の中でも特に理解しにくい概念ですが、株式会社という制度(仕組み)を理解し、会社の設立時からの資金の動きを把握していけばそんなに難しいことではありません。

 

●設立時に株主が出資した資金(現金)が資本金にほかなりません

 

株式会社(以下では会社といいます)の設立時には今後の会社運営に必要な資金を株主が出資します。資本金はこの株主から出資された金額にほかなりません。「出資された・・・」ですので「過去形」です。この「過去」というのが非常に重要です。

 

●会社が活動すれば出資された資金(現金)と資本金が一致しなくなる

 

例えば、資本金1000万円で設立された会社は、設立当初は1000万円の資金(現金)を保有しています。しかし、設立して直ぐに事務所を借りるために家主に保証金を支払い、さらに机・椅子・電話機などを購入すれば、もはや「資本金=出資された資金(現金)」という関係は成り立たなくなります。

 

●なぜ「資本金」は不変なのか?(資本金は重要な目標値です!)

 

ここからが難しいのです。「なぜ『資本金』は不変なのか?」、決算書を見ると真っ先に浮かぶ疑問です。資本金とは、会社が運営の必要に応じて「自由に決める」「器の大きさ」で、この器は「維持すべき」ですし、また、決算書や登記を通じて「公表しなければ」なりません。資本金は固定された目標値なのです。

 

●純資産(設立時は資本金に一致)

 

純資産とは「資産−負債」のことです。設立当初は負債(借金や仕入代金の未払である買掛金など)がありませんので、資産=出資された資金(現金)=純資産=資本金という関係が成り立ちます。しかし、会社が活動するにつれてこの関係が成り立たなくなります。

 

●資本金と純資産を比較する(両者の差額は利益です)

 

決算書(貸借対照表)はこういう構造になっています。純資産を「資産−負債」で計算し、そこに資本金をはめ込んでいるのです(比較しているのです)。純資産と資本金の差額は利益です。利益とは収益(純資産が増える)−費用(純資産が減る)です。純資産>資本金であれば利益が生じているのです。反対の場合には損失(マイナスの利益)です。

 

 

どれだけの現金・預金を保有していればよいのか?

 

いつでも使うことができる現金・預金は多いほどよいのはいうまでもありません。一般的には翌月の運転資金(仕入代金・従業員の給料・家賃や水道光熱費などの諸経費の支払い)に困ることがなければよいとされています。いわゆる自転車操業になってはいけないのです。

 

●資本金との関連

 「資本金相当額の現金・預金を保有しなければならない」と考えている人が多いですが、そんなことはありません。資本金は投資して利益を乗せて回収しなければならないのです。会社というのは常に「投資の途上」にありますので、資本金として出資された現金・預金は投資した資産(在庫や設備)や投資を回収する過程の資産(売上債権)に変化しているのです。

 

●現金・預金を増やす方法(税金に注意!)

 「出資(資本金)」「借りる(借入金)」「遊休(余裕)資産の売却」などがありますが、やはり基本は「本業の収益−費用」です。なお、現金・預金を増やす過程で法人税や消費税の課税が生じることがありますので注意が必要です。

 

●現金・預金と税金

 「現金・預金」を多く保有していると税金が課税されると考えている人が多いです。わが国の税制で「現金・預金そのもの」に課税するという税はありません。「預金から生じる利息」「現金・預金が増える原因としての利益」には課税されますが、これらの税金を差し引いた結果としての「現金・預金」には課税しないのです。

 

 

「事業年度ごとの利益」と「創業来の利益」

 

利益は「事業年度ごと」に「収益−費用」として計算します。損益計算書の末尾に表示される「当期利益」がそれです。創業来の利益は、創業来の各事業年度の利益を合計すれば計算できますが、貸借対照表の純資産の部で資本金の下に「利益剰余金」として表示されます。創業当初は純資産=資本金ですが、利益を出せば当初の資本金は増殖します。

 

★毎事業年度黒字であるのが経営の基本です!

 

収益>費用(黒字)でなければ、いずれ企業は消滅します。1年という事業年度単位では成果を測ることができない特殊な業種(医薬品の研究開発、造船などの大口工事など)は別として、1年というサイクルで成果が出ないのは問題です。

 

★赤字の原因は突発的なものでなければなりません

 

例えば、「仕入値の急激な上昇に値上げが間に合わなかった」「新規事業に先行投資をした」場合です。

 

★地力があれば(毎事業年度黒字であれば)突発的な赤字には対処できます

 

当然です。ただし、赤字が創業来の利益の範囲内でなければなりません。また、「3年稼いで1年遊ぶ」ではいけません。

 

 

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