(内容)2013年4月27日現在

法人成りをした年の確定申告

 

法人成りをした年の確定申告は大変複雑です。

 

◆以下においては、7月1日に会社設立の登記をして同日から会社で活動をしている(個人としては活動していない)とします。

 

■所得の種類は事業所得と給与所得

6月までは事業所得で7月以降は給与所得(設立した会社からもらう役員報酬)です。6月分までは例年どおり(年間を通して個人事業者であった年と同じように)個人事業者としての記帳と確定申告が必要です。確定申告は事業所得と給与所得を合算してしなければなりません。わが国の所得税は、1年間の「すべての所得に対して課税すること」になっているからです。

 

■役員報酬(役員給与)からした源泉徴収

役員報酬は給与所得ですので支払いの都度源泉徴収が必要ですし、年内最後の役員報酬を支払う時には年末調整も必要です。この源泉徴収をした分は確定申告で算出される税額のいわば「前払い」ですので、確定申告に当たっては差し引きすることを忘れないでください。

 

■個人事業者としての予定納税

個人事業者の場合、前年の所得税額が一定金額を超えた場合には年度の途中で2回(7月と11月)の予定納税が必要となります。この分も確定申告で算出される税額の「前払い」ですので、確定申告に当たっては差し引きすることを忘れないでください。

【法人成りした年は予定納税をしないことが通常】

法人成りした年は、法人成りした時点にもよりますが予定納税をしないことが通常です。この例ならば、2回目(11月)の予定納税は申請によりストップしておかなければなりません。なぜならば、予定納税は年間を通して事業所得があることを前提としているからです。そのまま予定納税すると、確定申告で多額の還付となってしまいます(予定納税の段階で取られ過ぎということになってしまいます)。

 

■個人事業者としての廃業届の提出

個人事業者としての廃業届(個人事業の開廃業等届出書)の提出を忘れないでください。また青色申告の取り下げもしておきましょう。

 

■個人事業者時代の債権債務

債権債務の典型は6月末時点(個人事業者としての最終日)の売掛金と買掛金です。これは、会社に引き継ぐのではなく、個人として回収(売掛金)と支払(買掛金)をします。なぜならば、個人事業者時代に発生しているからです。

 

■資産の扱い

これが一番大変だと思います。資産としては、在庫、機械、車両、備品などがあります。これらは、法人成り後の会社の活動に必要であることから会社が引き継ぎます。要するに、個人から会社に譲渡します(会社法での事後設立という概念に該当することもあります)。個人から会社への譲渡ですので所得税や消費税の問題が生じます。また、譲渡価格をいくらにするかという問題も生じます。税理士や税務署に相談して慎重に処理してください。

 

★区切りやすい時期まで会社を休眠させておく

事業は通常、月単位で動いています。しかし、諸般の事情から会社の設立登記が月初めにできないこともあります。そのような場合には、月の途中から月末までは会社を休眠としておき、翌月1日から会社として活動するほうが事務処理はしやすくなります。

 

★会社と個人事業者との併存

法人成りした後も個人での営業を続けなければならないことがあります(個人名義でしか取引してもらえない得意先が存在するなど)。当然、会社と個人事業者の併存も認められますので無理して個人事業者を廃業する必要はありません。ただし、当然のこととして今後も給与所得と事業所得で確定申告することになります。また、個人事業者と会社との「費用の配分」が問題となります。

 

★法人成りすると個人事業者時代の税務調査がある

必ずではありませんが、区切りですので個人事業者として「最後の」税務調査が行われることが多いです。ですから、法人成りした年の確定申告は例年以上に正確にしておく必要があるのです。

 

 

法人成り後も残る個人名義の取引

 

法人成りをしたならば以後の取引はすべて会社名義で行わなければなりません。しかし、個人事業者の時代から続く取引の名義が法人成り後も諸般の事情から会社名義に変更できない場合があります。このような場合には「とりあえずは個人名義」で取引、つまり個人名義で注文や支払いなどをして会社の帳簿に記入しておくしかありません。

 

特に厄介なのは、個人名義の預金から自動引落しになっている支払いです。取引によっては名義変更が認められず、一定の契約期間が終了するまでは会社名義の取引に変更ができないものです(個人名義の預金から引き落とすしかない)。このような取引は次回の契約更新時には必ず会社名義に切り替えると共に会社名義の預金からの自動引落しにしなければなりません。(このような取引が多数ある場合には預金口座の動き全体を会社の帳簿に記入しておくしかありません・・・)

 

形式上は個人名義の取引であっても、実質的には会社の取引であるならばそれでよいかもしれません。しかし、形式と実質は一致させておかなければなりませんのでこのような取引は必ず解消してください。

 

★創業当初から会社組織を選択してください!

法人成りした場合に一番厄介なのがこの名義変更です。特に、個人での営業年数が長く取引件数が多いほど手続は複雑になります。ですから、創業時に多少なりとも会社組織を意識されている場合には迷わずに会社組織を選択すべきだと思います。

 

 

法人成り後は個人事業者として利用していた預金口座は解約すべきか?

 

「解約しなければならない」というルールがあるわけではありません。法人成りをしたからといって、事業を行っていた個人そのものは以後も存在し続けるのですから、個人の所有物である預金口座が消滅するわけではありません。これは、預金口座に「屋号」が含まれている場合も同じです。ただし、個人事業者としての活動は終了したわけですから、残された預金口座に法人が引き継いだはずの「事業に関する」入出金があってはいけないのは当然のことです。

 

★解約することが「望まれます」

解約するに越したことはありません。というのは、税務調査では個人事業者としての最終年度の締切り、つまり、法人に完全に事業を引き継いだかを調べるからです。税務署は、いつまでも個人事業者としての預金口座が動いていると、法人成り後も個人として営業をしており、その分は無申告になっていると考えるからです。

 

★解約する時期

法人成り後も個人事業者としての入出金が残ってしまう場合があります。売掛金の入金、買掛金の支払い、事業者としての納税(所得税、消費税、事業税など)です。これらが済むには一定の期間が必要でしょうから、それまでは預金口座を残しておく必要があります。もっとも、これらの入出金を個人事業者では利用していなかった別の預金口座で行う場合には解約してもかまいません。

 

 

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