(内容)2013年4月27日現在

会計ソフトではできないこと

 

パソコンが普及した昨今、会社設立と同時に会計ソフトを購入することが増えています。現在、最も普及している会計ソフトの価格は2万円から5万円程度であることがこの傾向に拍車をかけています。しかし、会計ソフトの「初期設定」と「入力」には簿記会計や会社法・税法の専門知識が必要であることから、これらが不足している場合には使いこなせないケースも数多いです。 

 

会計ソフトは万能ではなく、企業活動に必要な帳票の一部しか作成することができません。どの会計ソフトでも作成できる帳票は「総勘定元帳」「補助元帳」「試算表」「決算報告書(個人事業者の場合には青色申告決算書あるいは収支内訳書)」です。これだけの機能を備えた会計ソフトであれば1万円前後でも購入できます。

 

多くのユーザーが会計ソフトに期待するのは申告書作成機能(税額計算機能)でしょう。消費税の申告書作成(場合によっては消費税額の計算まで)と個人事業者の確定申告書作成機能を備えた会計ソフトは多いですが、法人税申告書作成ソフトは会計ソフトとは独立したソフトであることが通常です。法人税の申告書は複雑なのでこの機能を付加してしまうとソフトが高価になってしまうからです。

 

給与計算や販売管理(請求書の発行など)は独立したソフトになります。会計ソフトがカバーするのは法律上(会社法と税法)作成が義務付けられている帳票(総勘定元帳・補助元帳・試算表・決算報告書)つまり「財務会計」が対象とする領域です。だから、会計ソフトのことを「税務会計ソフト」ともいうのです。財務会計が対象としない任意の管理資料(管理会計の領域)も若干作成はできますが、それらは付録の域を脱していないのが実情です。

 

同一メーカーであれば、会計ソフトと販売管理ソフトあるいは給与計算ソフトのデータが連動している場合があります。例えば、販売管理ソフトの販売代金回収データが会計ソフトの入金仕訳と連動しているといった具合です。このようになっていれば同一データを複数のソフトに入力する手間が省けます。

 

会計ソフトは、総勘定元帳・補助元帳・試算表・決算報告書作成という定型化された業務を、定型化された手順で入力するという設計になっています。ですから、ワープロや表計算ソフトのように「白紙」にデータを入力するものではありません。会計ソフトの入力は複式簿記の原理に従って「仕訳」という形式で行わなければなりません。仕訳はいわゆる「借方と貸方」という特殊な概念であることから会計ソフトになじめない人が多いのも事実です。そのような人は、複式簿記に精通した人に仕訳をしてもらいそのとおりに入力するしかありません。 

 

 

格安会計ソフトを使うリスク

 

会計ソフトは高価であるからといってよい訳ではありません。高価な会計ソフトは経営分析などの付加的機能が豊富であるとか大企業向けの複雑な操作設定がなされていることが通常で、これらを必要としないユーザーにとっては無用の長物であるからです。かといって、機能を絞り込み、操作方法(画面)をシンプルにしている格安の会計ソフトには次のようなリスクが伴います。

 

■プログラムの算式エラー

 

致命的です。しかし、市販されている会計ソフトでこのような心配はないでしょう。経営分析などの付加的機能はともかくとして、「総勘定元帳」「試算表」「決算報告書」「消費税計算」という会計ソフトにとっての必須機能でこのレベルのエラーはまずはあり得ません。もしあったとしたら、そのソフトはとても代金をもらえる代物ではありません。

 

■バージョンアップの打ち切り(販売終了、メーカーの倒産)

 

これが現実的なリスクでしょう。バージョンアップが打ち切りになると次のような不都合に直面し、会計ソフトの乗り換えをしなければなりません。なお、会計ソフトを乗り換えたならば、大変面倒な初期設定を一からし直さなければなりません。

 

○法令の改正に適応できない

会社法や税法の改正は会計ソフトに重大な影響を与えます。使用している会計ソフトの算出結果や出力帳票が改正後の法令に適応していない場合には、もはやその会計ソフトは無価値といっても過言ではありません。

 

○新しいOSに対応していない

周知のとおりWindowsXPは2014年4月でサポート期限が終了するために、それ以降の使用はセキュリティ面からして実用上不可能です。使用している会計ソフトが「XPまで」しか対応していない場合には使用できません。

 

★会計ソフト市場の特徴(安定した需要を低価格競争で奪い合う)

会計ソフト市場には超大手企業は参入していません。というのは、会計ソフトは差別化や高機能化が難しく、会計ソフトを収益源とすることができないからです。しかし、会計ソフトの需要は尽きることはありません。特に、パソコンがすっかりと普及した現在では市場規模は十分といえます。このあたりが、会計ソフト市場が低価格競争に突入する背景なのです。低価格競争下では、競争に敗れた企業の退場が後を絶ちません。

 

 

表計算ソフトで経理(財務会計)はできるのか?

 

ここでの「経理」とは、「財務会計」つまり法律上(会社法と税法で)作成が義務付けられている帳票(総勘定元帳・補助元帳・試算表・決算報告書)を作成する作業のことです。

 

表計算ソフト(エクセルなど)で特定の作業をするには、各セルに一定の数値や算式を入力しなければなりません。この数値や算式は目的とする作業結果に適わなければなりません。経理(財務会計)の作業に関しては次のとおりです。

 

●入力

仕訳形式、つまり各取引を借方と貸方ごとに勘定科目を付して金額で入力しなければなりません。仕訳は複式簿記のデータの最小単位であり、以後の処理(総勘定元帳・補助元帳・試算表・決算報告書)はこれに基づき行われます。このデータの最小単位である仕訳が不正確であれば、以後の処理はいずれも不正確になります。

 

●分類と集計(作業結果)

分類と集計は法定の様式によらなければなりません。分類は勘定科目やその性質(資産・負債・純資産のいずれに属するかなど)によって行われます。分類と集計の結果は、総勘定元帳・補助元帳・試算表・決算報告書と呼ばれるもので様式や要件が法定されています。

 

経理作業(財務会計)を表計算ソフトで行えるのは、表計算ソフトだけでなく簿記会計や会社法・税法に精通している場合に限られます。そうでなければ、簿記会計の原理や会社法・税法に適う結果が出せないからです。

 

表計算ソフトに精通した人は多いことでしょうが、簿記会計や会社法・税法に精通した人は少ないと思います。ですから、多くの人は「財務会計ソフト」という既成のプログラムを購入しているのです。現在、普及している財務会計ソフトの価格は2万円から5万円ですので、決して高額な投資とはいえないと思います。

 

★財務会計ソフトと表計算ソフトの連動

財務会計ソフトによっては表計算ソフトと双方でデータのやり取り(エクスポート・インポート、データ変換など)ができるものもあります。この機能を活用すれば両ソフトを有効に結合できます。よく活用されているのは、財務会計ソフトの法定された様式の帳票を表計算ソフトのデータに変換し、ユーザーが必要とする形式に加工するということです。

 

 

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