小さな会社向けです。
会社設立ワンポイントアドバイス6/6
金融機関との対応
取引する金融機関を選ぶ
金融機関と取引のない(預金口座を持たない)事業など考えられません。会社設立時の出資金の払込みは金融機関を通す必要があり、この時点から金融機関との取引が始まります。
どの金融機関と取引するか(都銀、地銀、信金など)大変悩むかと思います。一昔前まででしたら、中小零細企業の場合は「小回りの利く(気軽に相談に応じてくれる)地銀か信金一つを選び・・・」が鉄則でした。しかし、周知のように金融機関を取り巻く環境は流動的で、取引をしている金融機関の破綻、合併、店舗閉鎖などは日常茶飯事的に起こります。取引金融機関の変動は企業経営に重大な影響を及ぼします。得意先への通知、口座引き落とし変更など多くの手続が必要となります。
現状では、「手堅い金融機関」、「複数の金融機関」と取引しなければなりません。
金融機関からの資金調達
「無借金経営」が理想かもしれませんが、現実はそうはいきません。多くの中小零細企業は金融機関からの融資による資金調達に頼っており、いかにして金融機関から融資してもらうかに四苦八苦しているのが現状です。しかし、「足りない場合は借りればよい」は甘いのが現実です。
「自己資金(出資や役員借入れ)」で十分な場合はともかくとして、そうでない場合は金融機関からの資金調達について十分な対策を練っておく必要があります。なお、「創業支援融資」などと称して各種の公的機関が起業時の資金調達に応じていますが、現実は大変厳しく、そう簡単には資金調達できないのが実情です。
多くの中小零細企業が活用している資金調達方法は、いわゆる「制度融資」あるいは「公的融資」と呼ばれる次の公的機関からの資金調達です。
(1)国民生活金融公庫
各都道府県に数箇所拠点があります。多くの中小零細企業は当初の資金調達をここから行っています。調達できる金額は、企業の規模や事業内容、調達資金の使途にもよりますが上限で1000万円程度です。また、返済は5〜7年間にわたって毎月定額でするのが通常です。なお、利率は2〜4%程度(2006年現在)で大変低利です。
審査は大変厳格ですが(提出資料も多くある意味で杓子定規)、一度資金調達ができれば返済条件を守っていれば、以後も同額の融資を継続してくれることが通常です。その意味で、自動車ローンやコピー機のリースに似ています。
(2)信用保証協会
各都道府県に最低1箇所は拠点があります。その仕組みは、企業が一般の金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会がその融資について債務保証する(保証人になる)ことにより、融資を受けやすくするということです。企業は信用保証協会に一定の「保証料」を支払う必要があります。調達できる金額は、企業の規模や事業内容、調達資金の使途にもよりますが上限で2000万円程度です。また、返済は5〜7年間にわたって毎月定額でするのが通常です。なお、保証料と利率それぞれが2〜4%程度(2006年現在)で大変低コストで資金調達ができます。
去る98年、資金繰りに窮する中小企業対策として「特別保証」が行われ、ほぼ無差別に融資が行われたことはあまりにも有名です。「国の経済政策」によって保証の方針が大きく変わってくるのが現状です。
(3)商工会議所など
商工会議所や同業者団体に加入しておくと、上記(1)(2)の資金調達がしやすくなることがあります(多くの場合加入年数が一定期間であることを要件としています)。商工会議所の「経営改善貸付」は、国民生活金融公庫からの資金調達を支援してくれます。
上記いずれの金融機関も「飛び込み」でも相談に応じてくれます。ただし、どの程度の相談内容になるかは状況によります。また、ホームページも開設していることから概略についての情報収集は容易です。
融資申込みの際に提出しなければならない資料
預金口座を開設するだけでしたら、「定款」と「登記簿謄本」で十分です。しかし、融資の申し込みとなると、申し込み金額や金融機関によっては次のような膨大な資料が必要となります。
(1)決算報告書
(2)税務申告書
(3)納税証明書
(4)金銭出納帳
(5)預金通帳
(6)売掛帳
(7)買掛帳
(8)試算表
(9)資金繰り表
(10)事業計画書
(11)その他
これから起業する人には、ほとんどが未知のものであると思います。そこで、一般的には会計事務所のアドバイスを受けながら上記資料を用意します。
金融機関側からのアプローチ
融資を希望しているわけでもないのに、預金口座を開設している(場合によっては一切のつき合いのない)金融機関から「決算書を見せて欲しい」とアプローチしてくることがあります。その際、「業績が悪いので」、「融資は受けないので」、「秘密が漏れる」と金融機関の要望を拒絶する経営者が数多くいます。
しかし、これは自社の客観的な評価を知る絶好の機会です。「良」と評価された場合には、以後金融機関は様々なアプローチをしてきます。それが経営上のメリットにつながることもありますので、「決算書を見せて欲しい」に対しては前向きになることをお勧めいたします。
リース
資金調達の一形態としてリースがあります。リースの実質は特定の物件を購入するための「融資」であると考えられます。その対象は比較的少額なコピー機、パソコン、自動車だけでなく、製造設備や店舗の場合もあります。
なお、まれにレンタルとリースの違いをご存知でない方がいます。レンタルは比較的短期間で、解約したければ一定期間後には解約できます(解約後には賃料を支払う必要がありません)。しかし、リースは物件の代金全額(契約が終了するまでのリース料総額)を支払わない限り解約できません。
保証人
保証人とは債務者が融資の返済ができない場合に、債務者に代わって返済に応じる人のことです。会社は「有限責任」とはいうものの、中小零細企業の場合、融資に際しては必ず保証人が必要です。代表者は当然として、融資金額や会社の状況によっては数名の保証人が必要となることがあります。
担保提供資産
担保提供資産とは債務者が融資の返済ができない場合に、債権者がそれを処分することにより返済金に充当する資産のことです。中小零細企業の場合、融資に際しては担保提供資産が必要となることがほとんどです。なお、会社にめぼしい資産がない場合には、代表者などが担保提供資産を用意することが通常です。
金融グループの形成
前述のように一社での資金調達は容易ではありません。そんなことから、複数の者が「金融グループ」を形成することがあります。その仕組みは様々で、健全な方法から危険あるいは違法な方法まであります。
(1)相互に保証人となる
たとえば、一方が製造でもう一方が販売しているような営業上親密な関係にある会社間で、相互に保証人になる方法です。(保証人は個人だけでなく法人でもなれます。)
「保証人だけには・・・」が信念の人がいますが、この程度は事業を行う上で背負うべきリスクとして許容しなければならないのではないでしょうか。
(2)調達資金の転貸
比較的余裕のある会社に融資を受けてもらい、その資金を困っている会社に回す方法です。ほとんどの融資(特に公的融資)は、融資をした企業の運転資金や設備資金が使途であることを前提に行われます。使途違反は契約違反です。当然、契約を破った企業への以後の融資は打ち切られます。また、決算書において使途違反を隠蔽した場合(ほとんどの場合に簡単にばれますが)は詐欺罪に問われることがあります。
調達資金の転貸は、経営者としての「禁じ手」の一つです。
(3)新会社の設立
上記(2)のために新会社を設立します。多くの場合、経歴が綺麗な者(いまだ保証人になっていない者)を名目社長としています。金融機関の多くは新会社に対して不信感を抱きます(このようなケースに敏感です)。
(4)融通手形
古典的方法です。もはや、上記(1)〜(3)ができない企業同士が手形を振り出し合い、その手形を割引きや裏書きする方法です。延命策にすぎず双方の倒産は時間の問題です。
資金調達における会計事務所の役割
(1)「融資がうまく受けられるように決算書を・・・」
(2)「金融機関と交渉して欲しい」
大変多いご要望です。
(1)について
「不正確で不明瞭な(漏れ、誤りなどがある)決算書」ではどうにもなりません。会計事務所ができることは、「正確で明瞭な決算書」を作成することと、認められる複数の経理処理方法から「融資申込みに有利な方法」を選択して決算書を作成することです。
「常に、売上代金入金後すぐさま預金を引き出しており、常時ある預金残高はゼロに等しい」といった状態の会社(資金繰りが極めて苦しい会社)では、たとえ「正確で明瞭な決算書」を作成してもどうにもなりません。
「そこを何とか見栄えがよいように」といわれてもどうにもなりません。
(2)について
前述のように融資申込みに必要な資料は膨大で、その内容は大変専門的です。そんなことから、金融機関が会計事務所にコメントを求めることがあります。その際は、会計事務所に対応を任せるのが賢明です。