小さな会社向けです。

会社設立ワンポイントアドバイス4/6

 

 

運営体制の整備

 

役員(取締役と監査役) 

 

取締役会や監査役は、設立時の資本充実同様あるいはそれ以上に会社法の規定どおりに機能していません。中小零細企業はおろか、上場企業でさえ「取締役会の代表取締役の監督」「監査役の監査」などは十分に機能していません。実際の会社経営の方法は多種多様で、その経営方法は無数に考えられるからです。「カリスマ経営者」「ワンマン社長」など、有名優良企業の中にも会社法の規定どおりに運営されていない会社は多数あります。ただし、会社法は会社経営を規制する法律であると同時に、会社運営の指針(モデル)あるいはトラブル解決手段であることを忘れてはなりません。

平成18年から施行された新会社法では役員の最低人数を、「取締役は1名以上」「監査役は任意」とされました。中小零細企業の実情に配慮してのことです。

 

役員にしてはならない人

 

次のような人はたとえ役員としての能力を備えていたとしても、役員にすることは好ましくありません。

 

(1)過去に事業に失敗している人

「失敗を許す風土が必要」といっても現実はそう甘くありません。過去に事業に失敗した経歴は、あちこちに長期間残るようです。特に、金融機関は敏感であらゆる手段で調査します。破産などの法的手続は当然として、一度だけの不渡りやクレジットカードの決済不能も見逃しません。

 

(2)今後、融資の際に保証人を依頼したい人

保証人の要件として、「役員は除く」となっていることがあります。保証人予定者には資金提供(含む出資)に専念してもらい、成果分配をすることが基本です。

 

名目上の役員

 

あまり感心できる方法ではありません。取締役・監査役には様々な義務と責任があり、それを全うすることにより会社制度は有効に機能するからです。

また、名目上の役員就任は、有形無形の「借り」を作ることになります。人によっては、名目役員になったことを恩に着せて、後日、無理難題を要求してくることもあります。特に、無報酬の名目役員にこの傾向が顕著です。それでも「役員は多いほうが・・・」に固執する場合は、親族を名目役員とするしかありません(これがわが国の実情です)。もっとも、「どうせ、あの会社は同族(個人商店)・・・」との陰口をたたかれますが。

 

有名人を役員にする

 

会社の信用力やイメージを向上させるために有名人(政治家、大物実業家、タレント、学者など)を役員としていることがあります。役員は法定された欠格者(成年被後見人など)に該当しなければ、形式的な書類さえ揃えれば役員として登記できます。世間はこのことをよく知っていますので、だますことはできません。有名人を形式的に役員にしても効果はないのです。

 

雇われ社長

 

会社制度の基本は「所有と経営の分離」ですから、大変見下した言葉かもしれませんが「雇われ社長」があるべき姿です。しかし、雇われ社長の背後に「実質社長」がいて絶大な権力をもっていることは感心できません。特に、金融機関や税務署はこれについて大変敏感ですので注意が必要です。

雇われ社長は「経営のプロ」で、皆から名実とも社長と認められなければなりません。「操り人形」ではないのです。

 

役員の肩書(名刺や会社案内に表示する)

 

(1)代表取締役

「代表取締役」「代表取締役社長」「取締役社長」が一般的です。

 

(2)取締役

 「取締役」「専務取締役」「常務取締役」「取締役○○部長」が一般的です。なお、肩書次第で税務上の役員報酬の扱い(損金処理)が異なってきますので注意が必要です。

 

(3)監査役

「監査役」しかないと考えられます。なぜならば、監査役は監査に専念しなければならないからです(会社の他の職務を兼ねられません)。

 

「社長となんか呼ばれたくない」という方がおられます。それはそれでよいのですが、社内や近親者間ではともかくとして、名刺や会社案内のどこかには法的な肩書(役職名)を明示しておく必要があります。

 

公認会計士(税理士)・弁護士などを役員に選任する

 

一見、合理的な方法です。公認会計士(税理士)・弁護士は会社制度に通じているからです。しかし、公認会計士(税理士)・弁護士としての業務と役員としての業務の線引きが困難となります。そこで、公認会計士(税理士)・弁護士を役員に選任する場合は、面倒でも役員に就任する者と本来の公認会計士(税理士)・弁護士業務を行う者を別人にしておくことが望まれます。なお、業務によっては会社に対しての公認会計士(税理士)・弁護士業務と役員を兼任できないことがありますので注意が必要です。

 

公認会計士(税理士)・司法書士などへの依頼

 

新規開業者の場合、会社制度を理解するためには自身で会社設立をするのがよいかもしれません。しかし、会社設立手続は決して簡単ではありません。会社設立手続の遅延は、資金の固定化や最悪の場合は設立失敗を招きます。そこで、設立手続(主に登記と税務)そのものは専門家に任せるのが賢明です。(形式的な手続は簡単ですが、将来を見据えた会社の「設計」には専門知識が必要です。)

ただし、「それでは、すべてお願いします」「私に、すべてお任せください」は考えものです。設立時は、会社制度を理解する絶好の機会です。「相談」「提案」「説明」を怠らない専門家に依頼しなければなりません。

(注)「見せ金まがい」のことを代行する業者が存在するようです。登記手続は形式に則りますが、「見せ金まがい」の弊害は前述のとおりです。賢明なご判断を期待いたします。

 

配当(資金提供者へのお礼)

 

会社が資金提供者に配当をするのは当然です。しかし、次の理由から多くの中小零細企業が配当をしていないのが実情です。

 

(1)株主と役員が同一人物

(2)法人税率が役員報酬の所得税率よりも高い

(3)本当に利益が出せない

 

上記(1)から(3)は相互に関連しています。配当は一事業年度の税引き後の利益(法人税を支払った後の利益)から行います。役員報酬は会社の経費であり、役員報酬に対する所得税の税率(給与所得としての所得税)が法人税率よりも低い限りは役員報酬を増やし続ける(利益を発生させない)ことは当然です。つまり、役員報酬に対する所得税の税率が法人税率を大幅に下回る状態では資金繰り的にも節税上も、とても配当などできないということです(役員の私生活も決して裕福ではありません)。

しかし、中小零細企業といえども純粋の出資者がいることもあるでしょう。しばらくは配当できないでしょうが、必ず年に一度の株主総会は開催しささやかな会食はしてください。当然、費用(交際費となります)は会社負担です。

 

取締役の任期が10年(法定の最長期間)であることの証拠?

 

平成18年から施行された新会社法では取締役の任期を最長10年とすることができます。ただし、それには「非公開会社であること(株式の譲渡制限があること)」と「任期について定款に定めがあること」という二つの要件を満たさなければなりません。

 

履歴事項証明書(登記簿謄本)の「株式の譲渡制限に関する規定」を見れば非公開会社であることは一目瞭然ですが、取締役の任期については履歴事項証明書のどこを見てもわかりません。とある金融機関が取締役の任期が10年であることの「証拠?」の提出を求めたそうです。このような場合、理想としては定款の写しを提出することでしょうが、あいにくその会社は変更後の定款を作成していませんでしたので定款変更した際の株主総会議事録の写しを提出しました。

 

何も法に触れるようなことはしていないのに、「任期が過ぎているのに改選の登記をしていないのだろ?」と疑われたのです。しかし、客観的に考えて任期10年はあまりにも長すぎると思います。登記費用さえ惜しむ「ドケチ(貧乏)会社」と思われても仕方ないでしょう・・・

 

 

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