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会社設立ワンポイントアドバイス3/6

 

 

設立手続中の注意点

 

設立中の会社

 

「設立中の会社」についての法律的理論は大変難解で、それについての見解も数多く存在します。実際、設立中に発起人やその他の設立関連者(以後これらの者を「発起人」とする)が行った行為をめぐっての問題が多数発生しており、それが会社成立後に長期間にわたって尾を引くことも決してめずらしくありません。以下のすべてが、法律的な意味においての「設立中の会社」の問題であるとはいえないかもしれませんが、比較的問題となりやすい事例であることは確かです。内容や程度によっては、弁護士・公認会計士など専門家への事前相談が必要になることもあります。

「発起人」の権限は、法的には相当狭いと考えなければなりません。問題は、「発起人である者」や「実質的に発起人(擬似発起人)である者」が、会社成立前に「発起人」の権限以外にした行為による権利義務関係(取得した財産や負担している債務を含む)と成立後の会社の関係です。

 

(1)先行的な営業活動

「発起人である者」は会社の設立手続中、設立事務作業のみに専念しているわけではなく、成立後の会社のために様々な業務、特に「先行的な営業活動」をしているのが通常です。これから生じた権利義務関係が実質的には成立後の会社のための行為であっても、会社が成立しても当然のように会社に移転するわけではありません。財産引受や事後設立に該当する場合はともかくとして、そうでない場合は会社設立関連当事者との間で事前に話し合っておくことが必要です。

(注)税務的には、このような活動から得た利益は成立した会社とは無関係ですのでこれを得た者が別途申告することが必要となります。

 

(2)株主の募集活動

 最近では、非公開企業でも株主を広く一般から募集することがあります。そのような場合は、株主への説明に相当労力を要します。その作業をした者には相当の対価を与えることは当然ですが、その対価の計算と支払いの時期が問題となります。

 

発起人の報酬

 

変態設立事項として「発起人の特別の利益」と「発起人の報酬」がありますが、発起人の権限のほとんどが会社設立に関する事項で、また、会社の設立手続自体も比較的短期間で終了します。ですから、あまり高額な「発起人の特別の利益」や「発起人の報酬」は考えられないと思います。

 

設立中の名義

 

理論的には、「○○株式会社発起人△△」でしょうが、実務上は発起人やその他設立関連人物の個人名を用いています。

 

発起人その他の立替費用の記録と管理

 

会社設立に関する費用は決して少額ではありません。また、複数の設立関連者が立替払いしていることが通常です。各人は、立替金額についての明瞭な記録を残しておく必要があります。その記録は個々の出費の金額だけではなく、出費の内容とその客観的証拠(領収書、請求書、契約書など)を残しておく必要があります。なお、一般的には設立当初の資本金として払い込まれた金額の中から、各人の立替費用は支払われます(会社の状態によっては支払いが相当遅れることもあります)。

 

会社と個人事業者の両立

 

事業の収入を会社と個人事業者に分けるという形態にしている人がいます。このようにする理由は、特定の得意先が「取引先を個人に限定している」、逆に「取引先を会社(法人)に限定している」ことです。「基本は気楽な個人事業者で(会社を拡大したくない)」、つまり、会社を拡大すると税務申告や社会保険などの事務手続が複雑になるので、基本的には個人で事業を営み、会社は興味半分で(将来的には拡大するかもしれない)少しだけ動かしておくという人も多いです。

会社と個人事業者の両立する場合、費用配分の方法が問題となります。同一人で、同一場所に、「法的な経理の単位=税務申告の単位」が複数あるからです。例えば、賃貸住宅で事業を営んでいる場合、家賃を会社と個人事業に配分する基準が問題になります。また、当然ながら会社と個人事業のいずれか片方に関して直接生じた費用は、片方でしか費用処理できません。

 

 

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