小さな会社向けです。

会社設立ワンポイントアドバイス2/6

 

 

資金を集める

 

開業費用の調達と投資

 

一般に開業資金といえば、事業を始めるために必要な資金です。事務所保証金、いす・机などの備品購入費用、関係者への挨拶状印刷発送費用、当初一定期間の運転資金など、緻密な見積りが必要です。

特に会社で事業を行う場合は、次の要素を考慮に入れなければなりません。

 

(1)会社設立手続のための費用

これについては、ほとんどの方がご存知です。専門家に依頼するかにもよりますが20〜60万円は必要となります。

 

(2)資本金に充当する資金

これが大変厄介です。資本金とはいわゆる自己資金で、会社にとって返済不要の資金です。集めた資金は、会社の運転資金や設備資金として使われますので、後になって急に「返して欲しい」という出資者が現れては困ります。この点を、出資者に十分説明しておく必要があります。

 

(3)資本金の用途と出金のタイミング

 資本金は会社設立後に、会社の資金として利用します。ですから、設立前に高額な出費を行うことはできません。会社事務所の家主や備品などの購入業者と、入念な打ち合わせが必要です。「個人と契約したのですよ」といわれないようにしなければなりません。なお、設立手続中の諸費用は会社が設立された後、資本金の中から引き出します。

 

(4)設立後の融資(金融機関から)

 自己資金のみで不足する場合は、金融機関から融資を受ける必要があります。なお、ほとんどの融資、特に公的融資(日本政策金融公庫や信用保証協会)の場合、使途が厳格に限定されています(設備資金と運転資金など)。使途を守れない場合、たとえば、資本金相当を株主に返金(?)した場合や、役員や株主の個人出費の立替に充当した場合は、以後の融資が一切打ち切られることも覚悟しなければなりません。なお、「使途違反」の結果は会社の決算書に明瞭に表われ、これを隠すことは不可能です。一部、いかがわしい「融資申込み代行業者」が存在しますが、くれぐれもご注意ください。

ここで、注意しなければならないのは当初の出資と異なり、融資には返済義務があるということです。また、金利も支払う必要があります。

 

(5)設立後の増資など

 資金の不足は当然生じます。その際は、会社の本則からすれば「増資」を行う必要があります。増資とは、設立後に資本金を増額することで、設立時同様に金銭の払込みや現物出資資産の給付が必要です。しかし、増資するには法的な手続とそれに伴う費用が必要ですので、一般には中小零細企業の場合、上記(4)の金融機関からの融資、あるいは株主・役員からの借入れによっています。

 

発行株数と一株当りの発行価額

 

(1)「会社が発行する株式の総数」は自由に決めることができます。

(2)しかし、「会社の設立に際して発行する株式の総数」は(1)の4分の1以上でなければなりません(株式譲渡を定款で制限している会社=ほとんどの中小零細会社についてはこのような制約はありません)。

(3)従来一株当りの発行価額は5万円以上でしたが、現在では自由に決めることができますので、(1)を多めに決めても(2)の条件を満たすことができます。

 

設立後、株式の譲渡を活発化させ多数の参加者を募りたい場合や、小資本の者(典型は従業員)を資本参加させたい場合には(1)を多めにして(3)を少なめにしておくのがよいでしょう。

 

無額面株式

 

現在は「無額面株式」のみであり、「額面株式」(株券に一株あたりの金額の記載があるもの)は存在しません。かなり以前は、「額面×発行済株式数=資本金」「新株の発行(設立後の増資)が額面で行われていた」「額面金額は資本金とする」などから、額面の意義がありましたが徐々にその意味が薄れてきたために額面株式は廃止となりました。

 

出資比率

 

会社の重要な意思決定は、出資者(株主)の持分(持ち株数)による多数決(株主総会)で決定されます。たとえば、発行株式数1000株の会社で各株主の持分が、A350株、B350株、C300株であったとします。AとBの意見が常に一致している場合には両者合計して過半数ですので、Cの意見は常に無視されることになります。特定少数の者による独断の弊害はいうまでもないことです。英知が結集される出資比率としてください。しかし、特定の出資者の独断(場合によっては出資者が一人である)がいけないわけではありません。たとえば、企業を見る目のある人に出資をしてもらい、重大な意思決定についてはその意見を仰ぐことは意義のあることです。

また、配当は一株当たりで金額か決まりますので、出資比率が高いものほど配当の総額は多いということです。

 

持分(株式)の譲渡

 

「貸したお金(出資した資金)を返して欲しい!」

 

大変よくあることです。かならず、このような要望があると考えておく必要があります。

しかし、出資金に返済や返金という考えはありません。減資という手続により可能ですが、ただでさえ資本金が少ない中小零細企業では事実上不可能です。また、最近では会社による自己株式の買取りという方法が上場企業などでは行われていますが、これについても中小零細企業では現実的ではありません。

持分は、回収を望んでいる出資者が、他の出資者あるいは他の人(他の会社でもかまいません)に譲渡するのが原則的な方法です。このことは、上場企業の株主が株を売買することを考えればご理解いただけるかと思います。しかし、問題は中小零細企業においては持分を売買する市場も存在せず、さらに譲渡価格の決定方法が明確でないということです。

 

(1)譲渡の相手先

やはり、会社関係者に限られてくると思います。経営者は譲渡が必要となった際に備えて譲渡先を探しておくだけでなく、自ら買取る心構えが必要です(あらかじめ、このような約束をしておくことも有意義かもしれません。つまり、設立当初は多数の出資者が存在しているけれども、将来的には特定の者が買取ることにより当初出資者は資金を回収できます)。

 

(2)譲渡価格

大変厄介です。「株式」ほど価格算定が難しい「資産」はないからです。

「当初一株5万円だったので、5万円で買取ります(買取ってください)」

創業後、順調に業績が向上していれば株価は当初出資額を上回り、業績が下降していれば下回るのが一般的理屈です。しかし、上場企業の株価が業績とかけ離れた水準にあることも多いことから、株価の算定はそんなに簡単ではないことはご理解いただけるかと思います。

「譲渡時の一株(一口)あたりの純資産額、利益、配当を基準に・・・」など、明確な取り決めをしておく必要があります。

 

《会社の資金で返してしまった(?)場合》

返してもらった人(出資者)は会社からお金を借りていることになります(会社にとってはその人に貸している)。当然その人は金利を会社に支払う必要があります。出資者は激怒するでしょうがこれが正しい扱いです。

 

現物出資の留意点

 

現物出資を、金銭出資する資金がない場合の代替手段と考える傾向があります。たしかに、会社設立の手続としては多少複雑化するかもしれませんが、結果的には出資者が保有する資産を名義変更するだけで済んでしまうからです。しかし、現物出資は会社にとって現物出資資産が有意義なものである場合(事務所建物、工場用設備など)に限り、しかも、その手続を慎重に行う必要があります。

特に、現物出資は税金の扱いに注意しなければならず、場合によっては多額の課税が発生します。現物出資において、会社とそれに関連する者に関しての税務上の扱いは次のとおりです。

 

(1)現物出資者

資産の移転による譲渡所得課税の問題が生じます。現物出資により現物出資対象資産の権利が、出資者個人から会社に移転しますので譲渡という扱いになります。当然、譲渡所得(現物出資資産の評価額−取得価額−譲渡費用)が発生すれば課税の対象となります。なお、譲渡所得金額を抑えるために現物出資資産の評価額を時価の2分の1未満とした場合は、時価により譲渡(現物出資)したとみなされますので注意が必要です。

 

(2)会社

現物出資評価額が時価未満である場合は、時価と現物出資評価額の差額は受贈益として会社の益金(収益)に算入されます。反対の場合は、現物出資者に対する贈与や寄付金とみなされます。

 

(3)現物出資者以外の株主

株式の時価に関して、現物出資者と他の出資者との間で贈与の認定が行われる場合があります。(現物出資資産の評価が時価よりも低く行われた場合。)

 

現物出資以外の方法

 

実際、会社設立関連者の資産(不動産や設備など)を、会社に移転したり使用させたりする必要が生じることがあります。その場合、一般的に用いられている方法は「賃貸借」です。これによった場合は譲渡所得の問題は発生しませんが、会社設立後に会社(借主)が賃料を支払うことになりますので資産提供者(貸主)に所得が発生します。なお、資産提供者に生じる所得は賃貸することによる所得ですので、他の所得(役員報酬、給与、配当)とは区別して考えなければなりません。メンバー間での十分な取り決めが必要です。

 

実質的出資者(資金提供者)

 

設立手続を簡略化するためや、実質的出資者を表面化させないために、名義上の出資者を用いることがあります。これでも会社の設立はできますが、実質的出資者の扱い(特に成果の分配)や税務上の問題が残ります。

 

(1)実質的出資者の真意

実質的出資者の真意が、(A)名義上の出資者への資金融通(金銭の貸付)ならば問題はありません。むしろ、この方法は後日の株式譲渡が不要で合理的といえます。しかし、(B)実質的出資者が払込み手続を任せきっていたため事実関係を知らなかった(あるいは無知であった)、(C)名義を出したくないが実質的に会社を支配したい場合などは、後日の紛争が予想されますので注意が必要です。

 

(2)税務上の手当て

上記(1)(A)の場合は、その返済期日や利率を取り決めておかないと、名義上の出資者に贈与税の問題が生じます。(C)の場合は、今後の実質的出資者への対価支払いの扱いが問題となります。形式上は会社と無関係である以上、会社の資金で対価を支払うことはできません。名義上の出資者が個人的に対価を支払うしかありません。

 

払込金の拘束期間

 

募集設立の場合は払込みを取り扱った金融機関の保管証明が必要で、保管証明をもらうために資金が一定期間は拘束されます。その間は資金が使用できないために、多額の出金(特に事務所の保証金、機械の購入代金など)とタイミングの調整が必要です。

 

株主名簿

 

会社設立時には誰が株主であるかが大変明瞭です。この時期に明瞭な株主名簿を作成しておき、後日の株主の変動を明確に記録する習慣を身につけてください。

 

株券の発行

 

株券は発行しないのが原則です。そこで、持分を明らかにするには上記の株主名簿が必要となるのです。

 

有限責任

 

有限責任とは、出資者がその出資額を限度として責任を負うことをいいます。たとえば、ある会社の出資額が500万円でめぼしい資産は残らず1000万円の負債のみ残して倒産した場合、出資者は500万円を限度として責任を負えばすみます(倒産するまでに出資した500万円は使い果たしてしまっているでしょうが、出資者はそれ以上失う=責任追及されることはありません)。

しかし、有限責任といってもそんなに甘くはありません。中小零細企業の場合、たとえ有限責任であっても、銀行から借入れをする際には経営者(ほとんどの場合出資者でもあります)の個人保証や個人財産の担保提供を要求されることが普通です。会社の財産基盤が弱い以上当然でしょう。また、一般取引先(特に仕入先)は、「会社(有限責任)なので信用できない」「会社以外のところに財産を隠している(会社をつぶしても逃げ道がある)」など、個人事業者以上に警戒する場合もあります。

 

資本金の実際

 

会社に関する法規制をしているのは「会社法」です。多くの先発企業はこの会社法に大変無知で、場合によっては違反していることさえあります。特に、会社設立時の「資本充実」に関してこの傾向は顕著で、「見せ金まがい」の方法で会社を設立していることもあります。

会社は有限責任といっても、金融機関からの融資、事務所の賃貸借などの際には代表者の個人保証が必要です。そんなことから、「どうせ・・・・」とお考えかもしれませんが、設立時の資本充実はとても大切なことです。

「見せ金まがい」のことをしてしまうと、設立直後に会社の資金(預金)はほとんどないことになります。これを会計的に説明すると、引き出した金額相当額は「貸付金」という資産勘定で処理しなければなりません。回収が確実視されている「貸付金」ならまだしも、「見せ金まがい」の行為の結果であるならば「回収可能性」はほとんどないと考えなければなりません。また、会社設立後には、設備資金や運転資金が必要となりますのでこれを新たに調達しなければなりません。そこで、今度は「借入金」という負債が発生します。設立第1期からこのような状態では先が思いやられます。当然、金融機関は融資に難色を示し、税務署は資金移動の背後に何があるかを詮索します。

「見せ金まがい」の背後には、会社設立時の資金不足と会社関連者との複雑な金銭関係が潜んでいることが通常です。これらは、設立後も金銭の動きに如実に表われてきます。会社法の規制はしらけて聞こえるかもしれませんが、これを守れないようでは設立後にまともな会社運営をすることは不可能と考えてください。

 

資本金と会社の金銭

 

会社の資本金とは、「会社の発行済株式総数×一株当り発行価額」です(必ずしもそうでない場合もありますが)。会社の設立当初は、資本金相当の金銭(現金)が必要ですが(現物出資が行われた場合はこの限りではありませんが、現物出資資産は正当な金銭的価値で評価しなければなりませんので、実質的にはそれ相当の金銭がありそれで資産を購入したのと同じです)、会社が活動して行くにしたがって会社が保有する金銭合計と資本金が一致しなくなるのが通常です。

たとえば、金銭出資のみで設立された資本金1億円の会社が、会社成立後直ちに5千万円の工場設備(土地、建物、機械など)を購入したとします。この時点で会社の金銭は5千万円となります。そして、5千万円で購入した工場設備の金銭的価値は5千万円ということはありません。5千万円以上あるいは以下かもしれません。

資本金は、会社の規模や信用をはかる尺度で登記事項ともなっています。しかし、それは常時それ相当の金銭を保有していることを法的に義務づけている、あるいは法律が保証しているのではありません。ただし、会社設立後も資本金相当の金銭をはじめとした正味資産=資本(資産マイナス負債)を保有することが必要であることは経営上当然です。なぜならば、正味財産が資本金(過去の投資額)を下回っているということは、投資が成果を生んでいないということだからです。この状態が長期間続くならば会社はやがて倒産に追い込まれます。

 

資本金の重み

 

(1)「資本金」は、出資者(株主)の会社への投資額(過去形)でその金額の登記が義務づけられています。

(2)「資本(純資産)」は一定時点の資産マイナス負債で、当初出資額である資本金と一致しないのが通常です。

(3)決算書において資本(純資産)は、資本金プラス累積利益(累積損失)として表示されます。

(4)資本(純資産)が資本金を下回っても法的な罰則はありません(ただし配当はできません)。

 

「当社には資本金相当の預金がない」と、嘆いている経営者がいますが、必ず嘆く必要は限りません。これは極論ですが、資本金相当の金銭にこだわり、まったく投資しない会社(活動を開始しない会社)がよい会社といえるでしょうか。大切なことは株主から出資された資金を投資し、それを増殖させ株主に還元することです。そして、やがては資本金をはるかに上回るキャッシュを保有する、強い体質の優良企業となることです。

また、資本の状態を株主や第三者に信用してもらうには、正確、タイムリー、正常、誠実な会計情報の提供が必要であることはいうまでもありません。

 

役員借入は「打出の小槌」

 

「会社に役員借入があれば、役員は所得税を課税されずに会社から資金を引き出せる」と、先輩経営者が得意気に「節税法」を語ることがあります。

 役員報酬(役員の給料)をもらうときには、給与所得として源泉所得税が徴収されます。しかし、役員借入は、役員からすれば「貸付金の返済」ですので所得にはなりません。当然、税金は課税されません。

 そこで、「役員借入を増やしておけば節税になる」と考え、役員借入を架空に計上したくなる衝動に駆られるかもしれません。その簿記的な仕組みは単純です。役員借入の受入れ処理をして直ちに架空の経費を計上すればよいのです(入金後直ちに出金があったことにする)。しかし、絶対にこのようなことをしてはいけません。税務署は役員借入が過大にあれば、どこかに財源があるか(無申告の所得)、役員借入を「打出の小槌」として架空計上していると考えます。

先輩経営者の真意は、「以前、業績不振のときは(個人財産を提供して)大変だった。最近、ようやくそれを取り戻すことができるようになってきた。それも、税金が課税されずに」と解釈してください。

 

資本金はいくらにすれば

 

少しでも多いほうがよいことはたしかです。だたし、資本金の額は会社の信用度を表わすとともに、義務や制限の基準にもなります。たとえば、会社の利益にかかわらずに各自治体が課税する「均等割」は、資本金が多いほど多額となりますし、各種公的補助(融資や補助金)も資本金が多い場合受けられないことがあります。これらを回避するためには、資本金とするだけの十分な資金があっても、上記の役員借入を活用することも一法です。

 

 

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