築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)

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経営分析
(内容)2014年8月22日現在

1.経営分析の目的

一般の経営分析に関する書物は、投資家、アナリスト、取引先、金融機関などの外部第三者が、企業の概略を把握するための諸指標を説明しています。いわば、企業を総論的に分析するための方法を紹介して いるにすぎません。外部第三者は自己資本比率、流動比率、各種利益率などを把握した後、業界の事情、分析対象会社の特殊性を詳細に調査し、自身が経営分析をする目的に応じて判定を下します。当然、分 析する人の立場によって結論は異なってきます。

企業内部で諸指標を活用する場合も、企業全体の総論的な諸指標だけではほとんど役に立ちません。例えば、売上高総利益率にしても「製品別」「得意先別」「地域別」「営業担当者別」などに細分化しなければな りません。好ましい指標数値は存在します。しかし、何よりも大切なのはその指標が算出された理由、特に悪い指標が出た場合の改善策です。社長さんは、正確な指標の算出に努め、経営指標をよき羅針盤とし てください。さらに、外部第三者に対して算出の背後にある状況と改善策を的確に説明できるようになってください。

2.経営分析の前提

(1)正確な決算書
正確な決算数値がなければ、正確な経営分析ができないのは当然です。会計原則を遵守した決算数値を算出するとともに、決算書の表示にも気をつけてください。決算書の表示とは、勘定科目の正確な分類、貸 借対照表での流動と固定の区分、損益計算書の利益算出プロセスです。
(2)数期間の比較
ほとんどの指標は一定時点や一定期間分を算出しても意味がありません。最低、三期間分は諸指標を算出し比較しなければなりません。
(3)月ごとの比較
指標によっては月ごとの比較が有効な場合があります。
(4)業界平均や同業他社比較
上場企業以外は正確な決算数値の入手は困難ですが、各種調査機関や公的機関などを利用して入手してください。なお、税務署に提出した個別企業の決算書が税務署によって外部(調査会社や金融機関)に公 表されることはありません。
(5)正確な資産価値
非公開企業の場合、資産の評価が原価で行われていることが大半です。あまりにも時価とかけ離れている場合は時価に換算し直してください。換算の対象となるのは不動産、売掛金(回収不能部分の切り捨て)、 有価証券、在庫(不良在庫の切り捨て)などです。
(6)諸指標の総合的判断
一つの指標のみで企業を判断することはできません。複数の指標で総合的に判断しなければなりません。
(7)企業の潜在的能力や潜在的なリスクは考慮されない
これは決算書についてもいえますが、数値に表せない事象が考慮されていないということです。有利な特許や契約、危険な取引先の存在などは決算書には表われず経営指標にも表われません。また、分析の対 象が「過去」であることも限界の一つです。

3.安定度に関する指標

(1)自己資本比率
自己資本÷総資本×100(%)
自己資本(純資産あるいは資本)=資本金+剰余金(累積利益)
総資本=資産=負債+純資産(資本)
返済不要の自己資本の比率を表します。この比率は高いに越したことはありません。しかし、自己資本比率が高くても、自己資本のほとんどが収益を生まない設備や土地に充当されている場合は、目先の資金繰 りに窮することもあります。また、自己資本比率が低くても目先の支払能力があれば影響ありません。
もっとも、自己資本比率が高いということは、負債の返済に窮する必要がないことを意味しますので、これを高める努力は必要です。特に、昨今のような縮小経済が続いている状況では、「遊休資産での売り食い」 ができるという強みがあります。また、算出にあたって総資産を時価で算出すると、より現実的な自己資本比率が算出できます。ちなみに、自己資本比率が高い業種としては設備資金のほとんどを自己資本で調達 しているメーカー、低い業種としては信用取引を基本とする商社があげられます。
(2)流動比率
流動資産÷流動負債×100(%)
流動資産 現金・預金、売掛金、受取手形、在庫など
流動負債 買掛金、支払手形、短期借入金、未払金など
この指標が100以上であれば当面の支払能力ありと考えられます。ただし、預金の中には拘束性のものもありますし、売掛金や受取手形が必ず現金化する保障はありません。
(3)当座比率
当座資産÷流動負債×100(%)
当座資産とは流動資産をさらに絞り込んだかなり短期の支払手段です。在庫や拘束性の預金は除きます。これも流動比率同様100以上が必要です。
(4)手元流動性比率
(現金預金+有価証券)÷月間売上高(ヶ月)
月間売上高は、年間売上などの平均値を用います。何か月分の売上相当の現金と現金等価物があるかを示します。これは、確実な資金を測る尺度です。
(5)売掛債権対買掛債務比率
売掛債権÷買掛債務×100(%)
販売し現金化していないものの比率と、仕入れて支払を済ませていないものの比率です。100以下でなければなりません。流動比率や当座比率は支払原資と支払義務の関係ですが、この比率は資金化のスピー ドを表わします。
(6)固定比率
固定資産÷自己資本×100(%)
設備などの固定資産は長期間にわたり使用することで資金回収を行います。そこで、設備資金の調達は自己資本で行うのが望まれます。固定比率が100以下であれば、まずは安全です。
(7)固定長期適合率
固定資産÷(自己資本+固定負債)×100(%)
固定資産の調達資金を全額自己資本でまかなうのが理想ですが、中々そうはいきません。そこで、返済が長期にわたる固定負債も含めて固定資産の調達資金の調達率を算出します。

上記の指標はいずれも一定時点の指標に過ぎません。いくつかの時点との比較や今後の動き、他の指標との併用が必要です。たとえば、上記の指標が良好でも収益性が低下している場合は、やがて諸指標が低 下することもあるからです。

4.収益力に関する指標

(1)売上高総利益率
売上総利益÷売上高×100(%)
売上総利益=売上高−売上原価
売上総利益(粗利)の売上高に対する比率です。同業他社よりもこれが高いと大変有利です。なぜならば、会社の維持費用(販売費及び一般管理費)を差引いても利益が発生し、それをさらに将来の投資に回せる からです。
(2)売上高営業利益率
営業利益÷売上高×100(%)
営業利益=売上総利益−販売費及び一般管理費
営業利益の売上高に対する比率です。たとえ、同業他社よりも(1)の売上高総利益率が高くても、余剰人員や余剰設備(分不相応な本社ビルなど)を保有していてはこの率は低下します。また、売上総利益が必要 額に達していない場合(販売数量が少ないなど)はこの率はマイナスとなります。
(3)売上高経常利益率
経常利益÷売上高×100(%)
経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
経常利益の売上高に対する比率です。たとえ、本業が順調でも、営業外で株式の売却損や評価損があればどうにもなりません。また、本業が悪くても営業外でカバーできることもあります。
(4)売上高純利益率
税引前当期利益÷売上高×100(%)
税引前利益=経常利益+特別利益−特別損失
税引前利益の売上高に対する比率です。突発的な原因で大きく変動します。しかし、マイナスが好ましくないのは当然です。
(5)総資本回転率
売上高÷総資本または資産(回/年)
総資産が一年間に何回転したかを表します。回転数が多いほうが少ない資本で効率よく経営していることになります。しかし、それにともない利益を生んでいる必要があります。
(6)総資本経常利益率
経常利益÷総資本または資産×100(%)
投下した総資本の効率を表します。

(1)〜(4)の指標は、当然プラスでなければなりません。しかし、単なる利益率だけではなく利益の額も重要です。また、投下資本(会社の規模)の効率を示す(5)(6)との関係が大変重要です。

5.損益分岐点分析

(1)損益分岐点売上高
損益分岐点売上高=変動費+固定費
変動費率=変動費÷現状での売上高×100(%)
限界利益=現状での売上高−変動費
限界利益率=限界利益÷現状での売上高×100(%)=(現状での売上高−変動費)÷現状での売上高×100(%)=(100−変動費率)(%)
損益分岐点売上高×限界利益率=固定費
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
損益分岐点売上高とは収支均衡状態の売上高です(利益がゼロとなる)。当然、損益分岐点売上高をクリアーしていなければなりません。変動費とは売上高の増減に比例する費用で、その典型が商品仕入です。 固定費とは売上高の増減に関係なく発生する費用で、その典型は人件費や事務所の家賃です。
(2)損益分岐点比率
損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100(%)
損益分岐点からの距離を表します。100以上が必要です。
(3)必要売上高
必要売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
損益分岐点売上高に目標利益を加算した売上高です。

損益分岐点はかなり重要な指標で、これをクリアーしないとやがて企業は消滅します。しかし、損益分岐点の算出は容易ではありません。損益分岐点を算出するには、まずは現状の費用を固定費と変動費に分類 しなければなりません。それには日常の正確な記帳と試算表の作成(正確な勘定科目の分類)が必要不可欠です。

6.成長力に関する指標

(1)売上高伸び率
企業活動全体の成長性を表します。
(2)営業利益増減率
営業活動の成長性を表します。
(3)経常利益増減率
財務活動を含めた成長度合いを表します。
(4)純利益増減率
処分可能な利益の増加率を表します。
(5)自己資本増加率
自己資本の蓄積状況を表します。

7.その他の指標

(1)売掛債権回転期間
売掛債権回転期間=売掛債権÷(売上高÷12)
何か月分相当の売掛債権が残っているかを表します。月末締めの翌月末入金でしたら、この値は1になります。数期間比較してこの値が大きくなっていると外部者は警戒します。売掛債権の回収遅延が生じている おそれがあるからです。
(2)買掛債務回転期間
買掛債務回転期間=買掛債務÷(仕入高÷12)
何か月分相当の買掛債務が残っているかを表します。月末締めの翌月末支払でしたら、この値は1になります。数期間比較してこの値が大きくなっていると外部者は警戒します。資金不足による買掛債務の支払 繰延べが生じているおそれがあるからです。
(3)商品回転期間
商品回転期間=商品÷(仕入高÷12)
何か月分相当の在庫が残っているかを表します。数期間比較してこの値が大きくなっていると外部者は警戒します。商品の売れ残りが生じているおそれがあるからです。

8.企業の状況別経営指標

(1)成長企業
成長力に関する指標、特に売上高伸び率が飛び抜けています。しかし、借入金による先行投資負担が大きく安定度に関する指標の自己資本比率や固定比率が低いことがあります。さらに、規模拡大を第一目標 としている場合は利益率が低く、無理な販売条件を容認していれば売掛債権回転期間が長くなります。成長企業も一歩間違えれば倒産することがあります。なお、最近では企業の早期株式公開が可能となり自己 資本の調達が容易となったため、自己資本比率が高い場合もあります。そうなれば、安心して企業の成長を図れます。
(2)優良企業
いわゆる手堅い企業です。成長性はさほどありませんが収益力、損益分岐点、回転期間とも好ましい状態で一定しており、結果として自己資本が継続して蓄積され不況抵抗力を備えています。優良な成長企業が 理想であることはいうまでもありません。
(3)衰退企業
成長力に関する指標がマイナスとなっています。販売条件も厳しく、利益率、売掛債権回転期間とも悪化の一途です。仕入代金の支払が遅れだすこともあり、その場合は買掛債務回転期間が長くなります。また、 「元優良企業」であれば遊休資産の売却で自己資本比率を低下させつづけています。
(4)粉飾決算の疑いのある企業
そもそも経営分析の前提となる決算書が不正確ですので、算出された指標自体が無意味です。しかし、次のような指標や現象に企業の素顔をうかがうことができます。
@成長性、利益率に関する指標はよいのに売掛債権と在庫の回転期間が延びている(不良売掛金・在庫の発生)
A当座比率が低下している(目先の支払資金不足)
B買掛債務の回転期間が短くなっている(簿外債務の存在)
(5)過少申告の疑いのある企業
これも(4)と同じで算出された指標自体が無意味です。ただし、粉飾決算と異なるのは、過少申告の場合は帳簿から収益や資産を除外することが多いこと、調査をする税務当局は職権に基づくあらゆる手段で情 報を入手できるということです。しかし、次のような指標や現象に企業の素顔をうかがうことができます。
@固定長期適合率が低い(固定資産の早期償却や取得時費用処理)
A在庫回転期間が短い(在庫のカウントもれや過小評価)
B買掛債務回転期間の長期化(仕入や諸経費の架空計上) 


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公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)



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