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経理担当者の採用と育成
(内容)2006年7月11日現在
1.自分で経理をします
非常にご立派なお考えです(大正解です)。 中小零細企業の場合、会社の資金を動かしているのは社長さんです。また、資金移動の原因 を一番把握しているのも社長さんです。帳簿は、会社の資金移動の描写にほかなりません。 社長さん自身が、会計事務所のサポートを受けながら経理をすることが基本です。 2.大企業出身者 学歴も高く、身のこなしも経理作業(特に書類作成の形式)もスマートで知識が豊富です。しか し、いわゆる大企業病が心配です。 大企業の経理業務は大勢で行うため個々の経理担当者は歯車です。大企業の場合、不正が できないようにするため、特に経理業務では個々人が歯車でなければなりません。たとえば、 元一流電気メーカーで20年間営業経理(請求書の発行、回収、取引先の信用調査など)に携 わっていても、試算表は一切知らない人も数多くいます。 大企業出身者を採用するにあたっては、具体的な職歴をたずねてみる必要があります。中小 零細企業では、売上や仕入関係は社長さんが管理していることが通常ですので、振替伝票、 総勘定元帳、試算表ができる人が必要ではないでしょうか。
中小零細企業では、大企業出身者を嫌う傾向があります。しかし、大企業的な管理体制も取り
入れていかなければなりません。特に、税務署をはじめとする役所や金融機関との接触には 大企業的思考が必要です。 「中小企業の痛みがわかるものか・・・」ばかりいっていてもどうにもなりません。上手く融合して 行く必要があります。
3.会計事務所経験者
一見、合理的な方法です。しかし、会計事務所職員は「帳簿」や「申告書」は得意であっても、 請求書作成、銀行との折衝などは得意ではありません。中小零細企業の帳簿は、一か月分の 記帳にあまり時間はかかりません。会計事務所経験者を採用すると手待ち時間が発生してし まいます。 もし、会計事務所経験者を採用するとしたら、パートかアルバイトの短時間雇用に限ります。
4.税理士有資格者
会計事務所経験者と同じことがいえます。 また、資格を保有していても実務経験がなければどうにもなりません。採用にあたっては、実 務経験の程度を確認しておく必要があります。また、将来の独立開業希望の有無を確認してく ださい。腰掛けと人脈形成が本音の場合があるからです。 なお、税理士有資格者を採用しても、その人はあくまでも「従業員」です。申告書の税理士欄に 署名押印をしないのが通常です。ここに署名押印するのは、自身の事務所を構えている企業 (依頼者)とは独立した税理士のみです。
会計事務所に依頼すると、「報酬が高い」、「急な対応ができない」、「融通が利かない(要望を聞いてくれない)」など
の理由から、この方法あるいは上記3.の方法を採用する社長さんがいらっしゃいます。特に、「曲芸的な節税」、「ス ピーディーな金融機関対策」を志向する社長さんにこの傾向があります。
確かに、専門能力のある経理担当者がいつもそばにいると頼もしいかもしれませんが、従業員である限りは社長さ
んに盲従しなければなりません。これが会社にとって致命傷になることがありまので注意が必要です。
高度な(会計事務所と同程度の)専門能力の経理担当者が必要なのは、それなりの規模の会社です(規模につい
ての明確な基準はありませんが、従業員数でいえば50名以上ではないでしょうか)。
5.人材派遣
大企業出身者と同じことがいえます。さらに、派遣契約の内容に縛られるため、よほど経理業 務が定型化されており、直ちに携わってもらえる仕事がない以上、派遣を受けても宝の持ち腐 れになってしまいます。 6.未経験者 一見、無謀かもしれませんが、上手くいっているケースも多くあります。 経験者は直ぐに、「前の会社では」とか「本に書いてある」とかを口走ります。しかし、未経験者 は社長さんの指示(当然、正当で適法な)に素直に従ってくれます。会計事務所のサポートさえ あれば、未経験者でも十分経理業務をこなせていることがあります。
中小零細企業の場合は、この方法が最も費用対効果があると思います(実は当事務所はこの方法を推奨していま
す)。中小零細企業の場合、経理専任者が必要というほどに経理業務の量がありません。必要なのは、経理専任者 というよりも「雑務担当者」です(決して「雑務」を軽視しているのではありません)。電話番、取引先などの簡単な応 対、そして経理業務などの雑務を幅広くこなせる人材が中小零細企業には必要です。
7.自慢話
「前の会社で国税局を追い払ってやった」、「○○銀行の役員と親しい」、「親戚に国税局の幹 部がいる」などを採用の面接で語る人は論外です。このような人は基本的に経理業務不適格 者です。経理業務に不明瞭、不正確は禁物だからです。 もし、魅力をお感じの場合は、従業員としてではなく「経営コンサルタント」として「成功報酬」を 条件に契約なさったらどうでしょうか。 8.パソコンの技能 是非ともある人を採用してください。 パソコン会計ソフトも一般化し、もはやパソコンは帳簿の一部となりました。また、ワープロソフ トや表計算ソフトは、内部管理資料や金融機関への説明書類の作成に大変重宝します。 もっとも、「パソコンしかできない人」は経理担当者としては失格です。 9.何を、どこまで任せてよいのか 難しい問題です。会社の規模や状況によります。 銀行取引印や会社実印は社長さんが厳重管理するのは当然として、それ以外のことが任すこ とのできる最大範囲かと思います。 具体的な業務内容は次のとおりです。 (1)小口現金の管理と金銭出納帳の記帳 (2)預金出納帳の記帳 (3)領収書の整理 (4)請求書の発行 (5)売掛帳の記帳 (6)納品書・請求書の保存 (7)支払予定表の作成 (8)買掛帳の記帳 (9)振替伝票の起票 (10)総勘定元帳の作成 (11)試算表の作成 (12)給与計算 (13)登記事務 (14)会計事務所の対応 10.帳簿類の査閲(経理担当者以外による検査・点検) 「自分は経理に疎いので」、「以前、税務調査や融資で苦労をかけたので」、「先代からの経理 担当者なので」と、経理担当者に遠慮する社長さんがおられます。また、経理担当者によって は「私がこの会社の経理を見てやっている」、「私にしかできない」という尊大な態度の人がい ます。さらには、不都合なことをひたすら隠す人もいます。 しかし、経理作業は他の人にその正確性が確認されて初めて業務が完了します。社長さんそ の他の査閲を拒む経理担当者は、正当な業務命令を拒んでいることになります。 請求書(控え)と入金状況の照合、手形や小切手と請求書との照合、納品書と到着商品との照 合などについては、査閲を怠ってはいけません。 中小零細企業の場合、何かあったときは社長さんが全個人財産を提供しなければなりませ ん。金銭関係を任せすぎることは禁物です。また、経理担当者はどんなに有能であっても、他 人の家の庭先で仕事をしていることを忘れてはいけません。 是非は別として、日本の中小零細企業の実情です。 11.経理担当者が後継者(補助者)を育てない 経理担当者には職人気質な人がいます。「見て習え」、「俺の技は教えない」の一点張りで、帳 簿を机の奥底にしまいこんで後継者を育てない人がいます。いくら有能でも、組織人である以 上はこのような行為を許してはいけません。連携プレーができてこそ有能な組織人であるとと もに有能な経理担当者です。最悪の場合は配置換えや解雇も仕方ありません。
12.他の従業員や取引先と経理担当者の関係
経理担当者は、会社や社長さん個人の重大な秘密を掌握している場合があります。他の従業 員や取引先がそれを目当てに接近してくることがあります。「口が堅い」ことが経理担当者の前 提条件であることは当然です。
13.経理担当者が急に辞めた
試算表の作成が多少遅れるのは仕方がないとして、請求、支払、給与計算は止めるわけには 行きません。こんな場合に備えて、請求、支払、給与計算は他の人でも何とかできる状態にし ておく必要があります。 試算表作成については、会計事務所に応援してもらうことです。 14.経理担当者との衝突 実は、頻繁にあることです。会計事務所にとっても頭痛の種です。 「細かいことばかりいいやがって」、「いつも机に座っている」、「稼ぎもしていないくせに」の強烈 な批判を浴び、耐え切れなくなってやめていく経理担当者が多くいます。「節税(脱税)請負 人」、「銀行対策担当者」などは、経理担当者への偏見です。 社長さん自身が経理業務の存在意義を認識し、それを他の従業員に伝えるとともに、経理担 当者も会社にとって有意義な情報の提供に努めなければなりません。
15.無償協力者
無報酬(極めて低報酬を含む)の経理担当者がいる会社があります。肩書きは、「顧問」、「相 談役」など様々です。無報酬なので「全く仕事をしない」のは当然として(この場合は無害)、下 心をもって協力している場合は大変な目にあいます。特に、会社に関与することの真意が次の ような場合は、絶対に受け入れてはなりません。 (1)自身と深い関係にある他社に有利な取引を強要する (2)自身と深い関係にある他社の保証人となることを強要する (3)自身の私的費用を会社に付け替える=横領 (4)会社の秘密を流用する 無償協力者の受け入れは、会社が窮地の際(税務調査で困っている、融資が受けられないな ど)に行われることが多いようです。 会社は営利目的の存在です。あらゆるサービスは「直接的な対価」を支払って受けなければな りません。多少安かろうと支払が遅れようと、この鉄則を絶対に破ってはいけません。 どうしても無償協力者を受け入れたい場合、社長さんは「経営権の譲渡」を検討しなければな りません。無償協力者を意のままに操ることなどは絶対にできません。
ある意味で会計事務所は融通が利きません。そんなことから、会計事務所への依頼を避け
「完全支配下」の経理担当従業員を選好する傾向にあります。
経理の不備や誤りは直ぐには表面化しません。税務調査での追徴課税、金融機関の取引
停止は経理の不備や誤りが積み重なった結果です。トラブル処理ほど後ろ向きで企業経営を 圧迫するものはありません。
融通の利かない会計事務所の事前活用も必要ではないでしょうか。
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