築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)

トップページ


目次へ
貸借対照表
(内容)2014年8月19日現在

1.貸借対照表(バランスシート)の意味するもの

一定時点(月末や事業年度末)において右側(貸方)が資産の調達源泉である負債や純資産(資本)を、左側(借方)が具体的な運用形態である資産を意味します。会社設立時は右側が資本金で左側が預金です。 初年度が終了すると左右とも変化します。当初の資産である預金は様々な名目の資産に変化しています。車輌、事務所の保証金、売掛金と様々です。資本金の下部に当期利益あるいは損失が記入されていま す。これは一事業年度の企業活動で利益あるいは損失が生じ資産に増減が生じたためです。この当期利益あるいは損失は損益計算書の金額と一致します。なお、銀行から融資を受け年度末に未返済額がある 場合は負債として計上されます。負債も資産の調達源泉ですが純資産(資本)と違って返済が必要です。「自己資本」である資本と区分する意味で「他人資本」と呼びます。

《純資産》
2006年の会社法改正に伴い決算書の様式が大きく変わりました。特に大きく変わったのは貸借対照表で、従来の「資本の部」を「純資産の部」と呼ぶようになりました。資本とは「資産−負債」であり正味の資産で あるので従来から「純資産」と呼ばれていることもありました。
「純資産の部」は下記のとおりに細分されます。
(1)株主資本
●資本金
●新株式申込証拠金
●資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金)
●利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金、○○積立金、繰越利益剰余金)
●自己株式申込証拠金
●自己株式(マイナス項目)
(2)評価・換算差額等
●その他有価証券評価差額金
●繰延ヘッジ損益
●土地再評価差額金
(3)新株予約権
株主資本(株主の持分)は純資産の一部ということなのでしょうか?株主資本は、株主が出資した資金(資本金+資本剰余金)とそれにより稼いだ部分(利益剰余金)となっています。未実現の利益(評価・換算差 額等)は株主資本ではありません。

《調達源泉と運用形態》
大変奇妙な言葉です。負債や純資産(資本)が調達源泉であることは何とか理解できます。借入金(負債)と資本金(株主の出資)はまさに事業資金の調達です。商品代金の未払いである買掛金(負債)は、商品の 支払代金を猶予(融通)してもらっていますのでこれも資金調達と考えることができます。問題は資産がなぜ運用を意味するのかということです。
株主の出資や借入金の当初の姿は現金か預金です。これをそのままにしておいては利益を生みません。そこで、材料の購入、設備投資などに投下しなければならないのです。そう考えれば、資産に材料(棚卸資 産)や設備(建物や機械)が含まれることの意味が理解できます。また、いまだ運用していない資金が現金や預金として残るのも理解できます。
しかし、資産の多くを占める売上代金の未回収分(売掛金)を運用と考えるのは抵抗があります。これを運用と理解するには次のように考えなければなりません。調達された資金は材料や設備に投下されます。そ の後、材料は製品に姿を変え、設備は製造の過程で消耗します。これを一定時点でとらえると(貸借対照表は点の概念です)、調達された資金の運用先は、販売代金として回収された現金、未回収の売上代金、 未消費の材料と設備に分かれるということです。さらに、販売代金として回収された現金と未回収の売上代金には、材料代や設備投資額に利益が付加されていることから、当初運用金額よりも増殖していることを ご理解いただけるかと思います(減少している場合は損失です)。

《企業とは?》
様々な定義が考えられますが、会計における企業という概念はいたって簡単です。それは、次のような活動を繰り返す存在です。
(1)資金調達→(2)財貨・用役を生み出すための資金投下(調達資金の流出)→(3)財貨・用役の販売→(4)投下資金の回収→(5)資金の再投下
貸借対照表と損益計算書はこのプロセスの表現にほかなりません。(1)は貸借対照表の負債と純資産(資本)です。(2)は貸借対照表の棚卸資産や設備です。(3)は貸借対照表の売掛金です。(4)は貸借対照 表の現金と預金です。(2)は損益計算書の費用でもあります。(3)は損益計算書の収益でもあります。
貸借対照表は上記のプロセスの点(特定日)を、損益計算書は線(一定期間)を表わします。ただし、人為的に区切る一会計期間で考えた場合、始点と終点を捉えなければなりません。その際(2)と(3)のプロセス の処理が厄介です。(2)については消費の有無の検討、(3)については現金化する可能性の検討をしなければなりません。これが会計基準であり、その大原則が発生主義です。

2.バランスシート(貸借対照表)調整

「企業規模に応じたバランスシートへの調整」ということがいわれます。売上高が全盛期の半分に減っているのに資産や負債が不変では、各年度に生じる利益で固定資産の償却や借入金の返済負担に耐えること はできません。設備投資(建物や工場設備)や運転資金(仕入や諸経費の払い)の大半を銀行融資に頼っており、収益が縮小し回復の見込みがない場合は、銀行融資の返済財源を確保するために遊休土地、長 期保有目的の有価証券など過去の蓄積を処分するのが通常です。このように貸借対照表の諸項目が変動するプロセスを、バランスシート(貸借対照表)調整といいます。

3.資産とは

一般に資産といえば現金、預金、有価証券、不動産など金銭的価値があるものを意味します。会計においてもこれらは資産ですが、このほか売上代金の未入金分(売掛金)や支払った費用の内翌事業年度以降 に繰り越されるもの(前払費用、有形固定資産)も含まれます。これは、現行会計が発生主義会計を採用しており収益や費用を入出金にかかわらず把握することによります。

4.現金と預金

何も説明は要しないかもしれません。しかし、金銭管理がずさんな場合は帳簿から導き出された現金残高が異常な数値となります。日常の経理処理の不始末がこの勘定科目に最も端的に表われます。現金残高 が異常ならば決算は終了していないと考えなければなりません。現金残高が異常に多い場合は費用や資産購入の記帳漏れ、異常に少ない場合(物理的にはありえませんがマイナスの場合)は収益の記帳漏れが 考えられます。

5.売上債権

売掛金(売上代金の未入金分)と受取手形がこれに該当します。たとえ未入金であっても、すでに販売(納品、サービス提供など)が終了している以上は損益計算書で売上高に計上しなければならないことにより発 生します。なお、後に入金が不可能となった売上債権は貸倒損失(かしだおれそんしつ)として費用処理することで、すでに計上した売上を取り消します。得意先の経営状態が悪化し入金期日が長くなり始めると、 期末売上債権金額と当期売上高の比率が上昇します。当然好ましいことではありませんが、数期間の決算書を比較すればこの傾向は顕著に表れます。

6.棚卸資産(いわゆる在庫)

仕入商品、自社製造製品、原材料がこれに該当します。これらは販売するまでは売上原価とはなりませんので、年度末に残っているものは棚卸資産として当期の仕入高から差し引くとともに、翌年度以降の費用化 に備えて貸借対照表に計上しておきます。

小売業、卸売業など在庫を多く保有する業種では棚卸資産の金額が決算数値に多額の影響を及ぼします。在庫の評価(各棚卸資産1個当りの金額)次第で、棚卸資産の総額は大きく変動してきます。また、不良 在庫を数量に含めるかどうかでも金額が変動してきます。売れ残り在庫が増加すると、期末棚卸金額と当期仕入高との比率が上昇します。当然好ましいことではありませんが、第三者が決算分析すればこの傾向 は明らかです。

7.有形固定資産

長期にわたり利用される資産で、建物、機械、車輌、備品などがこれに該当し、一定期間にわたる減価償却という手続を経て費用となります。長期間利用するので数事業年度に費用配分するのは当然ですが、一 般に利用されている税法が定める「耐用年数」(減価償却する期間)が現実と乖離していることが多く、減価償却費控除後の帳簿価額で売却不能であることから資産と考えるには抵抗があるかもしれません。

なお、業績不振で減価償却をしていない企業がありますが収益力の乏しさを物語っています。収益を生み出すために投資したのにそれを回収できる収益力がないからです。なお、土地も典型的な有形固定資産で す。しかし、建物、機械などのように減価償却の対象とはなりません。消耗しないからです。土地の貸借対象計上額は取得価額(買値)です。バブル崩壊までは時価がこれを上回っているのが普通でしたが、現在で はそうとは限りません。

8.その他の資産

(1)仮払金
旅費や交通費の先渡し分です。基本的には費用として消滅するものですので決算時になっても多額の仮払金があることは好ましくありません。
(2)有価証券
株式、社債などをいいます。計上は取得価額(買値)で行いますが、年度末には区分に応じてあるものは取得価額のまま、あるものは時価で評価し評価損益を認識します。
(3)保証金
事務所や倉庫の賃貸借契約をすると家賃の数か月分の保証金を要求されます。一定期間を経過してから賃貸借契約を解除すると全額に近い金額が返還されます。その意味で資産としての理解もすんなりできま す。
(4)保険積立金
貯蓄性のある保険契約の保険料は費用処理するのではなく、この勘定科目に計上しなければなりません。しかし、保険積立金が解約返戻金と一致するとは限りません。
(5)無形固定資産
特許権、商標権、ソフトウェアなどの取得価額がこれに該当します。経済のソフト化が進んだ昨今では、設備(有形固定資産)以上にウエイトの高い資産かもしれません。無形固定資産は場合によっては支出の数 百倍の収益を生みます。

9.負債とは

一般に負債といえば法律的に債務として確定した「借金(金融機関からの融資)」が思い浮かびます。また、仕入や諸経費を発生主義に基づき計上するための仕入債務や未払金も負債の多くを占めます。仕入債 務や未払金は支払期日が到来していませんが、債務としては確定しているので負債となるのは当然です。

会計における負債は、法律的に債務が確定しているもの以外も含まれます。将来確実に見込まれる費用(貸倒、退職金、修繕費など)の当事業年度までの負担分、いわゆる引当金も負債となります。中小零細企 業で引当金を設定する例はあまりありません。その計算が煩雑なことと前提となる事象自体があまりないからです。また、引当金を設定しなくても税法上は問題ありません。

10.借入金

金融機関からの融資がこれに該当します。この金額について会計的解釈が入り込む余地はほとんど無く、真実をありのまま記載する以外ありません。資産の預金と同じです。ただし、債務免除が行われた場合 は、債務免除相当額の借入金を消滅させるとともに、同額の債務免除益を損益計算書に計上することになります。

11.仕入債務

法的に支払義務が確定している負債ですが、仕入計上基準次第で金額が変動してきます。合理的な仕入計上基準を選択し毎期継続しなければなりません。仕入債務の支払遅延が恒常化してくると、仕入債務と 仕入高の比率が上昇します。当然好ましくありません。

12.未払金

仕入債務と会計的性質は同じですが、その発生原因が仕入活動以外であるという違いがあります。例としては、諸経費(人件費、家賃など)や設備購入に関するものがあります。

13.未払法人税等(法人税、住民税、事業税)

納税義務が確定するのは決算期末より2ヶ月後の申告期限ですが、発生主義に基づき年度末に未払計上します。

14.その他の負債

(1)前受金
得意先から販売代金を販売(引渡し)が終了する以前に受取った場合は、売上計上するに先立ちこの勘定科目で処理します。そして、販売後に同勘定科目を取り消して売上計上します。前受金は、販売できない 場合は得意先に返金しなければなりません。法的性質は様々でしょうが、会計的には負債です。
(2)預り金
従業員からの源泉所得税、住民税、社会保険料の預かり分で、未だ納付期限が到来していない部分です。各役所に納付する義務は会社にあります。やはり負債です。

15.資本金と純資産(資本)

資本金は、株主から出資された金額です。登記事項とされ、設立時以降法定の増減資手続(法務局での登記)がない限り金額は変動しません。いわば、資本金は過去の出資の記録です。純資産(資本)は、一定 時点で「資産−負債=純資産(資本金+累積利益)」として計算されます。企業活動にともない変動します。

純資産(資本)の純増減は「利益」です。設立時資本金と途中増減資金額に創業時からの累計利益を加減算したものが純資産(資本)です。なお、資本準備金は出資金額のうち資本金に組み入れなかった部分を いい、利益準備金は累積利益の中から配当に備えて一定金額まで積立が強制されているものですが、中小零細企業の貸借対照表にこれらが表われることはあまりありません。

16.流動と固定とは

貸借対照表の資産や負債を記載するにあたってのルールです。流動と固定を区分し、通常は資産・負債とも流動を上に記載します。なお、流動とは決算期末から数えて「一年以内」あるいは「正常な営業サイクル 内(商品の購入から販売までのサイクル)」に、資産ならば資金化する、負債ならば支払義務が到来するという意味です。しかし、流動と固定を厳密に区分することが実務上困難な場合があります。

17.債務超過

貸借対照表で、左側の資産よりも右側の負債(債務)が多く差し引きしての純資産(資本)がマイナスの状態をいいます(資本金はマイナスにはなりません)。このような会社は、資産の調達源泉である負債や純資 産(資本)の活用にことごとく失敗し、資産を消耗しきっています。

多額の負債を抱え、預金は当然として、有価証券や土地などの換金性のある資産は既に使い果たし、回収可能性の乏しい売上債権、販売可能性の乏しい棚卸資産、物理的・機能的価値を失った設備しか資産と して保有していない場合は、たとえ決算数値が債務超過でなくとも第三者は事実上債務超過と判断します。

18.好財務内容(健全財務)

資産−負債(他人資本)が出資金額である資本金よりもはるかに多く(累積利益が多い)、資産に対する純資産(資本、自己資本)の比率が高い状態をいいます。資産の増加、負債の減少をもたらすのは利益で す。利益は最終的にはキャッシュ(現金・預金)となります。これが資産となるとともに他人資本である負債の返済を可能とします。キャッシュは企業活動の源泉です。さらなる利益を生み出します。しかし、新たな利 益獲得手段を失った企業は、特定時点でどんなに自己資本が充実していようが、やがては資産を消耗し自己資本が減少していきます。

好財務内容とは、特定時点で多くの純資産(資本)を保有していることだけではなく、永続的な収益力のある企業体質にほかなりません。企業の純資産(資本)は有効に活用してこそ意味があるのです。

また、17の債務超過も特定時点の状態に過ぎません。特に、中小零細企業の場合役員一族からの借入が多額である、取れもしない多額の役員給与が計上されていることがあります。中小零細企業ゆえに可能 な、また必要な債務超過もあるのです(注1)。融資の条件として「3期間連続経常黒字」「債務超過でないこと」を掲げ、中小零細企業を「赤字決算恐怖症」に落とし入れ、余分な税金を納税させておきながら融資の 審査を厳格にし、さらには公的資金=税金の注入を受けて立ち直った金融機関に対してはある種の憤りを感じます(注2)。

(注1)役員一族が後継者育成のために多額の私財を会社に貸し付けている、本社事務所が役員一族の所有で家賃を支払い続けている場合などがこれに該当します。
(注2)金融機関は黒字決算であれば必ず融資してくれるわけではありません。決算数値の信頼性はもとより、企業規模、担保状況なども考慮します。社長さんは、返せる金額を冷静に見極める必要があります。


戻る


公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)


トップページ