会社を設立した年の源泉徴収と年末調整

 

年末調整の時期(11月中旬)になれば、税務署は年末調整に関しての案内(手引書や納付書など)を送付してきますが、これは納税者のほうから所定の届けを税務署に提出している場合に限られます。ですから、届けができていない場合には至急届けをしなければなりません。なお、届けをしていないからといって源泉徴収や年末調整をしなくてもよいわけではありません。「わざわざ自分から名乗り出る必要はない!」や「税務署が教えてくれなかった・・・」は野暮な考えです。

 

会社設立の解説書で説明されている設立時の税務署への届けは次のとおりですが、その中に源泉徴収や年末調整に関するものが「きっちりと」含まれています。

 

 

■開業届→必ず提出が必要

会社を設立したならば、速やかに「法人設立届出書」を税務署に提出しなければなりません。この届けがない限り税務署は事業者の存在を確認できませんので、税務署からは一切の連絡がありません。ただし、税務署は法務局(登記)から会社が設立されたという情報を入手していますので、開業届が未提出であることを容易に把握できます。つまり、会社を設立したならば税務署からは逃げられないのです。

 

■給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書→必ず提出が必要

源泉徴収と年末調整に関してはこの届けを提出しておかなければなりません。開業届が提出され法人税の納税義務者であることが明らかになっても、それで直ちに源泉徴収義務者(源泉徴収と年末調整が必要な者)になるとは限らないからです。給料や賞与を支払っていない場合には源泉徴収する義務はありません。ただし、会社は必ず役員報酬という給与を支払いますので、会社を設立したならば必ずこの届けが必要になります。

 

■源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 

源泉所得税は源泉徴収した翌月の10日までに納付するのが原則ですが、給与を受け取る者が10人未満の場合には半年ごと(1月から6月分、7月から12月分)の納付が認められます。そのためにはこの届けを提出しておかなければならないのです。

 

■青色申告の承認申請書

各種の税制上の特典が認められる青色申告を選択する場合には提出しなければなりません。

 

★源泉徴収していなかった・・・

大変なことです!

今から源泉徴収をするしかありません。すでに支払った給料や賞与の源泉所得税相当額を返金してもらわなければなりません。大変恥ずかしいことですが、このようにするしかありません。

 

 

会社を設立した年の源泉徴収と年末調整は上記の届けなど特別な処理をしなければならないことが多く、ただでさえ初めての源泉徴収と年末調整で不慣れなのに、それに拍車をかけるように戸惑います。

 

■納期特例が認められる前の源泉所得税の納付

従業員数が10人未満の場合には納期の特例(源泉所得税を半年ごとに納付することができる)を申請していることが多いと思います。この特例が認められるのは申請した月の翌月から徴収する源泉所得税についてですので注意が必要です。例えば、7月に開業しその月から給料を支払っており(源泉徴収しており)、7月に納期特例の申請をしている場合には、7月に源泉徴収した分については原則どおり8月10日までに納付しなければなりません。8月から12月の分については納期特例が認められますので翌年の1月20日まで(1月10日ではありません!)に納付すればよいです。

 

■前職分の源泉徴収票

年の途中で会社を設立した場合には、代表者をはじめほぼ全員が前職分の給与があると思います。同一年度において前職分の給与がある場合には、その給与を年末時点に在籍している会社(年末調整を受ける会社)の給与に合算して年末調整をしなければなりません。前職分の給与を把握するには前の会社が発行する源泉徴収票が必要です。この源泉徴収票は退職時に発行してもらえますが、発行してもらっていない場合や紛失している場合には至急発行を受けてください。

 

■自身で支払った社会保険料

退職してから会社を設立するまでの期間は自身で社会保険料を払っていたと思います。その分については前職分の源泉徴収票には表れませんので、自身で集計して社会保険料控除を受けなければなりません。(従業員も同様のケースが多いことでしょう。)

 

■還付が多額に生じる

今年中に前職がない、前職から開業までの期間が長い、開業してから年末までの期間が短い場合などには、年末調整をすれば多額の還付が生じることが通常です。なぜならば、毎月の源泉徴収はその月の給料を1年間もらい続けるということが前提としているからです。(従業員も同様のケースが多いことでしょう。)還付する税額は納付する税額から差し引くことができますので、場合によっては納付がゼロになることもあります。

 

 

【年度途中で法人成りした場合には所得税の確定申告が必要】

 

年度の途中で法人成り(個人事業者が会社を設立すること)した場合には、年度途中までは事業所得で、それ以後は会社からの役員報酬が給与所得になります。この場合、事業所得と給与所得を合計して確定申告をしなければなりません。事業所得については記帳が、給与所得については源泉徴収が必要であることはいうまでもありません。

 

法人成りした年は、年末調整をすれば多額の還付となることが多いです。なぜならば、毎月の源泉徴収はその月の給料を1年間もらい続けるということを前提としているからです。たとえば、法人成り以降の給与の年間総額が最終的には103万円の場合には途中で源泉徴収した金額が全額還付されます(給与所得控除65万円と基礎控除38万円で年末調整における所得はゼロとなります)。

 

「ラッキー!!思いもよらないボーナスだ」と思われるかもしれませんが、喜んでなんかいられません。

 

法人成りする以前には事業所得がありますので確定申告をしなければなりません。確定申告はすべての所得を合算して所得税の計算をしなければならず、源泉所得税の還付を全額受けた給与についてもこれに含めなければなりません。つまり、いったん会社から還付を受けて、後から確定申告で納付しなければならない場合もあるのです。このような事態を回避するには、年末調整をしない(乙欄で源泉徴収しておく)のも一法です。

 

なお、役員報酬から源泉徴収をした分は確定申告で算出される税額のいわば「前払い」ですので、確定申告に当たっては差し引きすることを忘れないでください。

 

★個人事業者としての予定納税

個人事業者の場合、前年の所得税額が一定金額を超えた場合には年度の途中で2回(7月と11月)の予定納税が必要となります。この分も確定申告で算出される税額の「前払い」ですので、確定申告に当たっては差し引きすることを忘れないでください。 

法人成りした年は、法人成りした時点にもよりますが予定納税をしないことが通常です。例えば、7月1日に会社設立の登記をして同日から会社で活動をしているならば、2回目(11月)の予定納税は申請によりストップしておかなければなりません。予定納税は年間を通して事業所得があることを前提としているからです。そのまま予定納税すると、確定申告で多額の還付となってしまいます(予定納税の段階で取られ過ぎということになってしまいます)。もっとも、年末調整や確定申告の時期になってこのことに気がついても遅いのですが・・・

 

 

目次