年が明けてからの年末調整?

 

「年が明けたのに年末調整だなんて?」と、お考えかもしれません。しかし、年末調整は年が明けても続きます。年末調整を受けた従業員が年末調整の結果である「源泉徴収票」に関しての質問をしてくるのは年が明けてからです。年末調整が間違っていた場合には「再調整」をしなければなりません。年末調整の結果は「給与支払報告書」として市区町村へも報告しなければなりません。

 

 

  源泉所得税の納付

 

1月10日が納付期日であることはいまさらいうまでもないでしょう。(納期特例の場合は20日となります。)

 

  各従業員への源泉徴収票の交付(1月末までですが、できるだけ早く)

 

年末調整が終了したというからには、各従業員がその税額に納得しなければなりません(税金の計算が正しいということにおいて)。それには源泉徴収票の交付が必要不可欠ですが、案外これを忘れていることがあります。給与計算の不透明さは、従業員の経営者に対する不信感へとつながります。必ず源泉徴収票は交付してください。

 

  各従業員の給与支払報告書(源泉徴収票)を各市区町村に提出(1月末まで)

 

各従業員が源泉徴収票(国税)に納得したならば、次は住民税(地方税)です。各従業員の1月1日現在の住所地市区町村役所に、給与支払報告書(名称は異なりますが内容は源泉徴収票と同一です)を提出しなければなりません。各従業員の住民税は、各市区町村役所が計算し5月末に会社に通知します。住民税の特別徴収と呼ばれるもので、会社は通知された金額を6月から翌年の5月にかけて(12か月に分けて)毎月の給料から徴収します(賞与からは徴収しません)。

 

【給与支払報告書のあて先(郵送で提出する場合)】

各従業員の住所地の市区町村に提出するのは当然として、迷うのは「役所のどの部署」に提出するかということです。ほとんどの市区町村は、12月になれば「給与支払報告書・総括表」(給与支払報告書の表紙)を郵送してきますので、それに記載された部署に提出することになります(すでに特定の従業員の住民税を特別徴収している市区町村に限ります)。初めて給与支払報告書を提出する市区町村の場合には大変迷います。「市民税部(課)」「税務部(課)」「主税部(課)」など市区町村によって部署の名称はまちまちだからです。その場合は封筒の表紙に「給与支払報告書在中」と明記しておくことです。開封する人が何とかしてくれるでしょう(市区町村にとって給与支払報告書は「メシの種」です。きっと、大切に扱ってくれることでしょう)。市区町村が法人市民税の申告書用紙を会社(納税者)に郵送する際に、「経理担当者殿」「経理担当者にお渡しください」などと封筒に明記してくることがあります。お互い許される範囲の「無礼」ではないでしょうか。

 

【住民税の特別徴収義務者番号】

上記の「給与支払報告書・総括表」(給与支払報告書の表紙)のどこかに明記されています。また、住民税の決定通知(5月末)に特別徴収義務者番号が記載されているはずです。白紙の給与支払報告書・総括表(税務署が配布していると思います)を使用する場合はこれを記載しておく必要があります。なお、初めて特別徴収する市区町村の場合には番号がないのが当然です(特別徴収義務者番号を記載する欄に「特別徴収希望」と明記しておくことです)。 

 

  税務署に法定調書合計表を提出する(1月末まで)

 

「1.源泉所得税の納付」と「3.給与支払報告書(源泉徴収票)の各市区町村への提出」さえ済んでいれば、年末調整は実質的には終了したといえるかもしれません。しかし、法定調書合計表は提出してください。これの提出がない場合には、たとえ源泉所得税を納付していようが法定調書合計表を提出するよう執拗な催促があります。

 

  源泉徴収票の再発行に備える

 

各従業員へ交付した源泉徴収票は、各従業員にとって「社会人としてのパスポート」としてあらゆる場合に必要となります。税務署から白紙の源泉徴収票が配布されていると思いますが、再発行に備えて余った分は残しておいてください。また、余りがない場合には税務署に取りに行ってください。おそらく翌年中なら、前年分の白紙の源泉徴収票(年度のみが印字されている)が税務署にあると思います。

なお、翌年の年度途中で退職する者には、白紙の源泉徴収票にすでに印字された年度のみを二重線で訂正して交付してください(翌年の年末になるまで翌年分の白紙の源泉徴収票は配付されないと思います)。途中退職者にはタイムリーに源泉徴収票を交付しておく必要があります。そうでないと、年末のあわただしい時期に「今の会社で、年末調整のために前の会社の源泉徴収票が必要といわれた」との催促を受けることになります。

 

【国税庁のサイトでも源泉徴収票は入手できる】

この場合の源泉徴収票の「年度」は空白です。ただし、源泉徴収票の様式は税法の改正に応じて変更されますので、様式が変更となっている場合には注意が必要です。(平成28年分からマイナンバー制度が始まったことにより様式やサイズが変わりました)。

 

【源泉徴収票を再発行する場合の従業員の住所や姓】

年末調整が終わってからずいぶんと歳月が経過してから、従業員が源泉徴収の再発行を求めてくる場合があります。そのような場合に、従業員の住所や姓が変わっていることがありますが、あくまでも源泉徴収票を交付すべき期限(源泉徴収票の年度の翌年1月末)を前提に源泉徴収票を再発行してください。なぜならば、「再発行=復元」であるからです。源泉徴収票の提出先がそれでは不都合であるといっている場合にのみ訂正してください。

 

  源泉徴収票への「信奉!」 

 

源泉徴収票が「社会人としてのパスポート」であるがゆえに、人によっては源泉徴収票に異常な「信奉」を抱いていることがあります。「社長、源泉徴収票を・・・・となるように書いてください」との不純な再発行の依頼については、毅然とした対応をしてください。

源泉徴収票は会社が作成した内部資料に過ぎません。とくに、名もなき中小零細企業の源泉徴収票など誰も信用してくれません。昨今、金融機関(融資の審査)、家主(賃借人の信用状況の調査)などは個人所得の正確な把握の手段として、源泉徴収票ではなく公的証明力のある「市区町村発行の所得証明」(給与支払報告書に基づいており「納税」という確かな裏づけがある)の提示を要求することが通常です。

 

  扶養控除等申告書など(年末調整の基となった資料)の保存

 

まれに従業員に返却している会社がありますが、税務調査の際、扶養控除等申告書などの年末調整の基となった資料は検討の対象となりますので、会社で保存しておく必要があります(7年間)。「確定申告で必要だから」という従業員がいるかもしれませんが、会社が確認済みの事項(源泉徴収票に記載されている事項)についての証明書類(保険料の支払証明など)は確定申告に際して改めて提出する必要はありません。なお、たとえ退職した従業員であっても返却の必要はありません。

 

  年末調整と確定申告(給与所得者の確定申告)

 

給与所得しかない人が1ヶ所からのみ給与を受け取っており、そこで年末調整をした場合(さらに事業所得などが無い)には確定申告の必要はありません。しかし、次のような場合には確定申告をする必要があります。

 

(1)医療費、寄付金控除、住宅借入金等特別控除(初年度)を受けたい

これらを勤務先でするものと思い込んでいる人がいます。しかし、確定申告をするしかありません。

 

(2)年末調整が間違っていた(税額が多かった)

生命・損害保険料、個人負担の社会保険料(特に扶養親族分)などの控除を忘れることが目立ちます。1月末までの場合には「年末調整の再調整」ができますが、2月以降は確定申告するしかありません。

 

(3)年末調整が間違っていた(税額が少なかった)

控除できないのに配偶者控除や扶養控除をしている場合がこれに該当します。本来は会社が訂正すべきことです。1月末までの場合には「年末調整の再調整」、2月以降は「前年分の源泉所得税の納付漏れ」となります。なお、後者の場合は会社に不納付加算税と延滞税が課税されます。(このケースは、税務調査で指摘されるまで放置されていることが通常です。)

 

 

【年末調整が間違っていた場合はどちらの責任(加算税と延滞税はどちらが負担する)?】

 

●従業員がウソの報告をした場合

不足する源泉所得税は従業員の負担となります。不納付加算税(源泉所得税の納付がなかったことによるペナルティ)と延滞税(源泉所得税の納付が遅れたことによるペナルティ)は基本的には会社の負担でしょうが、従業員のウソがあまりにも悪質で多額な場合には従業員に負担させてもよいかもしれません(人事評価に反映してもよいでしょう)。

 

●会社がミスをしていた場合

加算税と延滞税は会社が負担するのは当然です。不足する源泉所得税を従業員に負担させるのは一見酷なような気がします。しかし、従業員は会社に任せているのですから、止む負えないミスの場合(年末調整作業は短期間の過密作業であることからある程度のミスは不可避的に発生する)にはあきらめるしかないと思います。従業員には誠意をもって不足となった事情を説明しておくことともに十分な謝罪をしておかなければなりません。なお、不足分を会社が負担した場合にはその金額は従業員に対する給与扱いとなり、再び源泉徴収が必要となります。

 

 

【年末調整の再調整があった場合の1月分の給与明細】

 

年末調整は年内最後の給与を支払う際にしなければなりませんが、すでに行った年末調整に間違いが発見された場合には翌年1月末まででしたら「再調整」(年末調整のやり直し)を行うことができます(1月分の給与で税額の過不足を精算します)。

 

この再調整を行えば新たに源泉所得税の還付あるいは追加徴収が生じますが、これについての1月分の給与明細、給与台帳(給与計算ソフト)、源泉所得税の納付書での扱いは次のようにします。

 

●1月分の給与明細では1月分から行う源泉徴収税額とは区分して記載する

再調整分は前年の税額の調整ですのでその旨を明確に記載しておく必要があります。

 

●翌年度の給与台帳には記載しない

給与台帳の源泉徴収税額に含めてしまうと翌年に徴収した税額が過大になってしまいます。(源泉所得税以外の項目で記載しておく必要があります。)

 

●1月分の納付書に再調整での追加徴収と還付を記載しておく

「年末調整による不足税額」(追加徴収)と「年末調整による超過税額」(還付)の記載を忘れないようにしなければなりません。

 

●源泉徴収票の再交付

再調整の前に源泉徴収票を交付している場合には再調整後の内容で再交付しなければなりません。

 

●再調整した場合の仕訳

12月に年末調整をしたとき同様に次の仕訳をしておきます。

(借方)給料+預り金(源泉所得税)→再調整による還付

(貸方)預金または現金+預り金(源泉所得税)→1月分と再調整による追加徴収+預り金(住民税、社会労働保険料)

 

 


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