源泉所得税の納付期限

 

年末調整をする月(12月)の分の納付する源泉所得税の計算は他の月と異なります。徴収額から還付額を差し引かなければならないからです。その結果、納付が不要となる場合もあります。また、翌月(翌年1月)分にも影響する場合もあります。

 

 

1 源泉所得税の納付期限

 

12月分の源泉所得税は毎月分と同様に、翌月の10日までに(翌年の1月10日までに)納付しなければなりません。ただし、納期特例(1月から6月分、7月から12月分を一括納付できる特例で、支給人員が10人未満の場合にのみ認められる)の適用を受けている場合は1月20日まで納期限を延長できます。納付する金額は、12月(納期特例の場合は7月から12月)に源泉徴収した金額から年末調整により還付(超過税額)あるいは追加徴収(不足税額)した税額を加減算した金額です。

 

【注】納付期限が土日祝日の場合には翌日以降の最初の平日が納付期限となります。

 

2 1月10日に源泉所得税の納付が不要の場合

 

このようなケースもありえます。12月(納期特例の場合は7月から12月)に源泉徴収した金額よりも年末調整による還付が多い場合です。つまり、納付税額がゼロあるいはマイナスとなる場合です。このような場合には納付の必要はありませんが、納付書は税務署に提出する必要があります。金融機関では納付税額がゼロの納付書は受け付けてくれませんので、税務署でしか提出できません。納付書の提出は1月10日まで(納期特例の場合には1月20日まで)に行わなければなりません。また、税務署への提出は郵送でも可能ですが、郵送する場合は納付書控(納付書の3枚目。税務署が受付印を押印します)の返送用封筒を同封してください。納付書控の受付印は税務署に対する「対抗要件」であるからです。

 

【マイナス納付税額の処理】次回以降の納付税額から順次差し引いてゆきます。また、一定の手続により「税務署から還付」を受けることもできます。

 

3 従業員への源泉徴収票の交付

 

翌年の1月末までに交付しなければなりません。しかし、できる限り早めに交付されることをおすすめいたします(年内最終給与支払いのときに手渡すのが理想です)。間違いがあった場合、1月末までに「年末調整の再調整」が認められており、再調整を行う(間違いを発見する)には源泉徴収票の早期交付が必要だからです。

 

【源泉徴収票の用紙】税務署が所定の用紙を交付しています(大阪国税局管内の税務署)が、必ずしもこれを用いる必要はなく、給与計算ソフトのメーカーが提供しているものを用いてもかまいません。税務署が配付している源泉徴収票は4枚複写となっております。1枚は本人交付用、1枚は税務署提出用(給与の金額が500万円以上の者、ただし、役員は150万円以上)、残る2枚は市区町村提出用です。(平成28年分からマイナンバー制度が始まることにより様式やサイズが大幅に変わっています)。

 

4 報酬料金の支払調書

 

弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、デザイナー、講師など一定の職業の者に対する報酬の支払いに際しては源泉徴収が必要となります。従業員の給与のように年末調整は必要ありませんが、1年間の各人に対する支払総額とそれから徴収した源泉所得税額を総括した「支払調書」の作成と本人への交付が必要です。本人への交付は給与と同じく翌年の1月末までですが、源泉徴収票同様に誤りを早期発見すべく、できる限り早めに交付してください。

 

5 源泉所得税の納付ができそうにない

 

大変困った状況です。なぜならば、源泉所得税は「預かった」税金だからです。すべての源泉徴収義務者は翌年の1月末までに、前年1年間に支払った給与と報酬、それから源泉徴収した金額の結果要約表(法定調書合計表)を税務署に提出しなければなりません。源泉所得税の納付ができなくても、これは必ず提出することです。そうでないと、後日税務署から執拗な問い合わせがあります。

 

【税務署からのお尋ね】法定調書合計表の提出がない場合には税務署から「お尋ね」(往復葉書形式)が送られてきて、それへの回答でもって源泉所得税の額が決定されることが通常です(大阪国税局管内)。このお尋ねに回答しない場合には税務署員が訪ねてきて、源泉徴収の状況を調べて帰ります。当然、そこで把握された税額を納付しなければなりません。

 

 

【源泉所得税の納付書に記入する「支払年月日」】

 

源泉所得税の納付書には給料や賞与などを支払った年月日を記入しなければなりません。源泉徴収は給料や賞与を支払う時にしなければならないことから、支払年月日は「源泉徴収義務」の生じる日付として大変重要です。

 

■この支払年月日の記入を間違った場合はどうなるのでしょうか?

 

源泉徴収義務は給料や賞与などを支払った時に生じるかもしれませんが、源泉所得税の「納付期限」は月単位で区切りその翌月10日までとされていることから、この月単位の区切りにさえ間違いがなければ問題はありません。

 

例えば、「12月分の納付書」で次のような間違いをしていたとしても問題はないということです。

 

俸給・給料等の支払年月日→12月25日【正】、12月27日【誤】

 

いずれにせよ、源泉所得税の納付期限は翌年1月10日であるからです。

 

納期特例の場合には、「1月から6月」「7月から12月」という「区切り」にさえ間違いがなければ問題はないということです。

 

■納付書に支払年月日など不要なのでは?

 

そうかもしれません。しかし、源泉徴収義務が生じた日付を明確にしておくことが何かには必要なのだと思います。

 

■こんな間違いはどうなるのか?

 

●存在しない年月日を記入してしまった(4月31日、6月31日、閏年でない年の2月29日など)

●未来の年月日を記入してしまった

 

納付する際に金融機関や税務署に指摘されると思います。しかし、「納付の目的(源泉所得税を納付する区切りである月)」が正しければ指摘されないかもしれません。

 

試しに、わざと間違ってみますか(笑)?

 

 

【12月分の源泉所得税を年内に納付することはできるのか?】

 

12月分の源泉所得税の納付期限は翌年1月10日です。

 

■年内に12月分の源泉所得税を納付してすっきりした気分で年を越したい!

 

源泉所得税は月ごとに納付しなければなりません。源泉徴収をするのは給料などの支払いをした時ですので、その月が終わるまでその月に源泉徴収した額は確定しないということです。しかし、月の途中でもうこれ以上は源泉徴収することがないのが明らかとなったならば、その時点でその月の源泉所得税を納付してもかまいません。

 

■来年の1月以降の分を今年中に納付しておきたい(今なら資金に余裕があるので)?

 

できません。なぜならば、いまだ源泉徴収義務が生じていないからです。義務もないのに納付した場合には返金となります(税務署や金融機関が納付書を受け付けてくれないかもしれません)。

 

★追加納付

当初納付した源泉所得税に納付漏れがあった場合には、新たな納付書に追加税額とそれの対象となる給与や報酬を記載して納付します。納付書右下の「摘要」に「追加納付分」とでも記載しておけば税務署もわかってくれます。

 

★納期特例の場合

半年分(1月から6月、7月から12月)を一括して納付する納期特例の場合でも、最終月(6月と12月)の途中で納付することができます。

 

 

【納期の特例のデメリット(特例をやめる)】

 

源泉所得税はその月に徴収した分を翌月10日までに納付するのが原則ですが、給与の支給人員が常時10人未満である場合には納付を年2回(1月分から6月分、7月分から12月分)にまとめることができます。いわゆる源泉所得税の納期の特例です。この納期の特例は、毎月納付をする事務的な負担がなくなるというメリットがある半面、次のようなデメリットがあります。

 

■半年間で徴収した源泉所得税が用意できない(納税資金がない)

納付しなければならない源泉所得税を別途保管しているのはまれですので、納税資金の用意に苦心することもあります。

 

■半年分を集計する作業が大変

この作業も結構大変です。

 

■不納付加算税や延滞税が課税されやすい

源泉所得税の納付が遅れた場合には不納付加算税と延滞税が課税されますが、不納付加算税も延滞税も納付が遅れた税額(A)に一定率を乗じて計算(B)されます。(A)は全額1万円未満、(B)は不納付加算税の場合は全額5千円未満、延滞税の場合には全額千円未満ならば全額が切り捨てになります。納期特例の場合には(A)が大きくなりますので、当然(B)も大きくなります。納付加算税や延滞税が課税されやすい(切り捨てとなる範囲に収まらない)ということです。

 

★源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書(特例をやめるための手続)

納期の特例をやめるにはこの届けをしなければなりません。一方的に月ごとの納付にはできないのです。なお、「届けをした月まで」の源泉所得税は翌月10日までに「まとめて納付」しなければなりません。例えば、5月に届けをした場合には、1月から5月分を6月10日までに納付しなければなりません。6月以降の分からは月ごとの納付になります。

【余談】この届出書は給与の支給人員が「10人以上になって」特例が適用できなくなった場合の届けと共通です。「要件に該当しなくなった」のと「自ら特例の適用をやめる」とでは違うと思うのですが・・・

 

 

【昨年の納付書は使えるのか?】

 

毎年、年末調整の時期になれば各税務署は年末調整関連資料を各源泉徴収義務者に送付しますが、その中には源泉所得税の納付書も同封されています。納付書の枚数は、納期特例(半年ごと納付)ならば2枚、特例でない(毎月納付)ならば12枚あれば1年分になるのですが、それぞれ1枚余分に入っています。書き損じに備えた予備用です。書き損じがなければ毎年納付書が1枚余ります。そこで、この余った古い納付書を翌年も使えるのかという疑問がわいてきます。

 

■使えるようです

「年度や月」の記入欄は空白ですので納付書が同じ様式である限り翌年も使えます。

 

■左下に毎年違う番号が印字されている

何らかの意味があるようですが気にしなくてもよいようです。

 

■社名や所在地が変更になった(所轄の税務署は同じ)

使えるようですが変更部分を訂正しておいてほしいとのことです。ただし、できることなら変更後の社名や所在地が印字された納付書の発行を受けるべきです。訂正された納付書は受け付けない金融機関もあるからです。

 

■所轄の税務署が変わった

使えません。あらかじめ印字されている税務署名、税務署番号、整理番号が変わるからです(これらは2重線で訂正できません)。

 

【ご注意】以上は、いずれも大阪国税局管内の税務署で確認された事実に基づいております。

 

★余った納付書は廃棄すべき?

昨年と納付書の様式が変わっていたら、金融機関が納付書の不備を理由に受け付けてくれない場合もあります。それが納付期限の最終日で、金融機関の営業時間中に納付書の書き換えが間に合わなかった場合には「不納付加算税」や「延滞税」が課税されてしまいます。ですから、もったいないようですが余った納付書は廃棄し、つねに最新の納付書を使用するほうが安全だと思います。

 

 

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