年末調整に関する仕訳と勘定科目

 

年末調整(源泉徴収)に関連する勘定科目は「預り金」です。この預り金という勘定科目の処理に悩む経理担当者は多いです。この勘定科目の増減を正確に処理できるようになれば、経理のベテランの域に達しているといっても過言ではありません。

 

【ご注意】以下の説明は預り金勘定に補助科目を設け、源泉所得税だけの補助科目があることを前提としております。

 

 

1 還付金は預り金勘定の減少

 

還付金は毎月の給料から源泉徴収した所得税を返金するわけですから、源泉徴収したときに預り金勘定の貸方に計上した分を借方に計上して預り金勘定を減少させます。ですから、年末調整で還付金が生じる場合には次のような仕訳となります。

 

(借方)給料+預り金(源泉所得税)

(貸方)預金または現金+預り金(源泉所得税)+預り金(住民税、社会労働保険料)

 

借方の預り金(源泉所得税)は各従業員への還付金の合計額です。

 

貸方の預り金(源泉所得税)は12月も源泉徴収される従業員の源泉所得税の合計額です。また、12月の給与明細においても通常どおり源泉徴収しその上で還付金を計算している場合もその金額が貸方に計上されます。

 

2 還付をすれば預り金勘定がマイナスになる場合もある

 

このようなこともあります。

 

11月分までの源泉所得税は全額納付しているとして(11月までの預り金は全額消えているとして)次のようなケースで考えてみます。

 

●12月に源泉徴収した税額合計→100(上記1の貸方の預り金(源泉所得税))

 

●12月に年末調整で還付した金額合計→150(上記1の借方の預り金(源泉所得税))

 

預り金(源泉所得税)はマイナス50となります。

 

「その月に源泉徴収した以上に還付するなんておかしい!?」と思われるかもしれませんが、年末調整は年間の税額の精算ですのでこのようなこともありうるのです。特に、住宅ローン控除の適用を受ける従業員が多い、年度途中で賃下げをした、中途採用の従業員が多い場合などはこのようになることがあります。

 

3 預り金勘定のマイナスは厳密には「未収入金」

 

上記2のように預り金勘定がマイナスということは、源泉徴収し納付しなければならない金額以上に、税務署に代わって従業員に還付をしているわけですので、税務署から返金してもらう必要があります。しかし、通常は税務署からの返金ではなく翌年1月以降に源泉徴収する分から差し引いて納付します。返金を受けるためには要件があり、さらに手続も面倒だからです。また、返金を受ける場合には1月分以降は通常どおり納付しなければなりません。これが案外つらいです!

 

預り金勘定のマイナスを解消したい場合には下記の仕訳をします。

 

(借方)未収入金50

(貸方)預り金(源泉所得税)50

 

そして、未収入金相当額を差引いて納付した際に次の仕訳をします。

 

(借方)預り金(源泉所得税)→翌年1月徴収分

(貸方)現金または預金+未収入金50

 

 

≪源泉徴収漏れがあった場合の仕訳≫

 

源泉所得税は、給与を受け取る従業員や源泉徴収が必要な報酬を受け取る者(弁護士、デザイナーなど)の負担であることから、源泉徴収漏れがあった場合でも事後的に「源泉所得税相当額の返金」を請求することができます。

 

■源泉所得税を納付する前に返金を受けた場合

 

(借方)現金あるいは預金

(貸方)預り金(源泉所得税)

 

ただし、源泉徴収漏れがあった支払いの次以降の支払いで返金してもらう(通常の源泉徴収に源泉徴収漏れ分を加えて天引きする)場合には、支払時に漏れの分を加算して、通常する仕訳と同じようにすればよいです。

 

■源泉所得税の納付後に返金を受けた場合

 

このケースになるのは税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合だと思います。

 

税務署に納付した際の仕訳は次のとおりです。

 

(借方)未収入金→返金を求める金額

(貸方)現金あるいは預金

 

そして、従業員などから返金を受けたときに次の仕訳をします。

 

(借方)現金あるいは預金

(貸方)未収入金

 

★不納付加算税と延滞税の勘定科目

源泉徴収漏れに関してはこの問題が付きまといます(納付期限後に源泉徴収漏れが判明した場合)。不納付加算税と延滞税は従業員などの負担ではありませんので、「預かる」(勘定科目としては預り金)とか「返金を求める」(勘定科目としては未収入金)という考えはありません。不納付加算税と延滞税は会社の負担であることから費用処理をしなければならず、勘定科目としては租税公課が適切でしょう。なお、不納付加算税も延滞税も法人税の計算においては損金不算入となります。

 

★給与の源泉徴収漏れ分を会社が負担する

源泉徴収漏れの原因が会社のミスである(源泉徴収が必要であることを認識していなかった)場合にはこのようにすることもあるでしょう。この場合には源泉徴収相当額を費用(勘定科目は給料、賞与など)処理することになりますが、その費用処理した分については給与として課税の対象にしなければなりませんので、さらに源泉徴収が必要になります。

 

 

≪預り金勘定がおかしい!?≫

 

源泉所得税は、会社などの給料を支払う者が源泉徴収義務者として、給料を支払う際に一定額を天引きし(徴収し)、後ほど税務署に納付します。要するに、源泉徴収義務者にとって源泉所得税は預かった税金なのです。預かった税金であるならば預り金勘定を用いて、「増加=貸方=預かった」、「減少=借方=納付した」、「納付すれば残高はゼロになる」として記帳をしなければなりません。

 

しかし、様々な理由からこれがそう簡単にはできないのです。

 

■記帳した額と納付額が異なる(納付額が正しい)

この場合は納付額に合わさなければなりません。勘定科目に誤りはないか、入力金額に誤りはないかを検討しなければなりません。(源泉徴収そのものは正しく行われているとします。)

 

■記帳した額と納付額が異なる(記帳した額が正しい)

この場合は大変やっかいです。(源泉徴収そのものは正しく行われているとします。)納付額に不足や過大があるからです。不足の場合には至急納付しなければなりません。過大の場合には税務署に所定の用紙で還付の請求をしなければなりません。

 

■納付額は正しいが源泉徴収した額が間違っている(記帳は間違って源泉徴収した額でしている)

この場合、納付をしても預り金勘定はゼロにはなりません(マイナスになる場合もあります)。納付額が正しいのですから追加での源泉徴収、あるいは源泉徴収をした分の還付により、源泉徴収税額を納付額に合わさなければなりません。この一連の動きを記帳すれば預り金勘定の残高はゼロになります。

 

■源泉徴収税額も納付税額も間違っている(記帳は間違って源泉徴収および納付した額でしている)

徴収不足分の追加徴収と過大徴収分の還付をします。納付額に不足がある場合には納付、過大である場合には還付を請求します。この一連の動きを記帳すれば預り金勘定の残高はゼロになります。

 

■年末調整の還付

これがややこしいです!還付の際には還付額を預り金勘定の借方(減少)に記入し、納付書では「年末調整による超過税額」に記入していれば問題は起きません。(「年末調整による超過税額」は1回の納付では消えない場合がありますのでご注意ください。)

 

★預り金勘定の記帳が完璧にできれば経理はプロ級です!

 

源泉所得税についての経理処理の質問が、経理経験の浅い人、特に簿記の知識がないまま会計ソフトを使用している人から「非常!」に多いです。そして、その多くが「解決不能」の状態です。上記のとおり、預り金勘定の記帳には様々な要素が関連しており、そのすべてが「正しく」、「相互に矛盾なく」行われなければ預り金勘定は正しい状態にはなりません。

 

預り金勘定の記帳が完璧にできれば経理はプロ級なのです。会社ならば経理の管理職(元帳や試算表の正確性を確認する人)、会計事務所の職員であれば一つの関与先を全面的に任される立場です。「給与台帳」「給与明細の控」「納付書」「通帳」「元帳」・・・、といった具合に個々の帳簿資料を検討し「どれが正しいか?」「どこが間違っているか?」を明確にし、間違いを正せる能力を会得しているということです。

 

★預り金勘定の残高が「増える一方」「全然減らない」

 

やばいです!

 

「源泉所得税を滞納している?」、「納付時の勘定科目を間違っている(租税公課などで費用処理をしているのでは)?」と第三者(税務署や金融機関など)は疑いを持ちます。いずれも好ましいことではありません。

 

 


目次