事業所得か?給与所得か?

自分の所得の区分さえはっきりしない・・・

しかし、できる限り自分に有利な方法で処理してもらいたい。

 

 (内容)2012年8月4日現在

 

年末調整が着々と進み、年が明ければ確定申告を迎えようとしている時期になっても、自身の所得が「どの所得になるか」さえ決まっていない人が少なからずいます。所得税の計算では所得を10種類に区分して各所得ごとに異なる計算方法をすることから「どの所得になるか」は大変重要なことです。

 

よく問題となるのは事業所得と給与所得の区分です。 

 

■事業所得とは?

 

【所得税法第27条 第1項】

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

 

所得税法の条文では、事業所得についてその種類が例示されているだけで事業そのものの意味については述べられていませんが、事業と呼ぶからには次のような要件を満たしていなければならないと考えられています。

 

●自己責任で行われていること

●営利性があること

●反復継続していること

●以上について客観的にも認められること

 

■給与所得とは?

 

【所得税法第28条第1項】

給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

 

事業所得同様、給与そのものの意味については述べられていません。しかし、下記の要件を満たしている場合にはそれによって得る所得は給与所得であるとされています。

 

●雇用契約が存在する

●使用者の指揮命令に服する

●使用者から空間的および時間的な拘束を受ける

●職務上の費用が使用者の負担となる

 

事業所得者も顧客(給与所得者の場合の使用者)からの指揮命令や拘束は受け、サラリーマン(給与所得者)であっても過酷なまでの自己責任が求められることも多く上記の一般的な判断基準だけでは十分ではありません。ですから、事業所得と給与所得の区分についてはその区分を税務署に「変更させられた事例」を知ることにより自らの判断の参考とするしかありません。

 

■事業所得を給与所得に変更される場合

 

実際にはこのケースが多いと思います。その理由は次のとおりです。

 

●源泉徴収をしたくない(されたくない)

支払者側としては計算や手続が面倒であることから源泉徴収をしたがりません。また、受け取る側も手取が減るので源泉徴収されるのを嫌います。このような安易な理由から給与所得を事業所得として処理することがあります。

 

●支払者が消費税の計算における仕入税額控除を受けたい

消費税の課税事業者が税務署に納付する消費税は、販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費の支払いの際に支払った消費税を差し引いて計算します。給料(給与所得)は消費税の対象でないことから、消費税の対象である外注費など(事業所得)の名目で支払ったほうが納付する消費税は少なくなるということです。

 

●支払いを受けた者が申告をしていない

このような場合には、支払いを受けた者に課税がされておらず所得の区分もされていないことから、税務署は給与所得として扱い源泉徴収をするよう促します。(背後には上記の二つの理由があることが通常です。)

 

■給与所得を事業所得に変更される場合

 

このケースは少ないと思いますが、次のようなことが実際にあり裁判にまでなりました。

 

●弁護士の顧問料は給与所得ではなく事業所得とされた

何が事業に該当するかは、様々な要素を考慮して最終的には社会通念で判断するしかありませんが、弁護士は依頼者との間に雇用関係はなく独立して業務を行っているからです。事業所得者によっては必要経費がほとんどない場合もあり、給与所得者となれば給与所得控除が認められ有利になることから、このような主張をする納税者も現れるのです。 

 

≪リストラの一環として事業所得者にさせられた・・・≫

「俺は・・・、本当はサラリーマン(給与所得者)なんだ!!」

 

昨今、名目上は独立した事業者であっても、「以前勤務していた会社のみ」からの仕事をしている人が目立ちます(外見上は以前のまま)。元勤務先が、このような施策を採るのは、「人件費の変動費化」「諸経費の削減(特に社会・労働保険料)」「源泉所得税徴収義務の回避」がその主な理由だと思います。このような立場の人(独立して事業を営んでいるとはいえない人)が事業所得者となるかどうかは疑問ですが、元勤務先が「給与所得の源泉徴収票」を発行していない以上は事業所得として確定申告するしかありません(とりあえず形式に従うしかありません)。

 

このような人の共通の悩みは次のとおりです。

 

●必要経費がほとんどない

作業するのは元勤務先(そこの設備を利用できる)、交通費も相手負担であることが通常で、収入金額から一定金額の給与所得控除が認められるサラリーマンよりも所得税の負担が増えてしまいます。

 

●記帳が煩わしい

多くの人は、サラリーマン時代に経理を経験したことがありませんので大変なのは当然です。

 

●早く還付を受けたい

特定の職業によっては、毎回の受取り金額から源泉所得税が天引きされることがあります(デザイナーなど)。天引きされる率は10%ですので(1回の支払いが100万円を超える場合には100万円を超える部分については20%)、大変つらいです。しかし、これを取り返すには(還付を受けるには)、確定申告まで待たなければなりません。間違っても、「天引きしないでくれ」などと依頼してはいけません。

 

●消費税が心配・・・

人によっては年間の売上げが1000万円を超えることもあります(経費は自前、自宅で仕事をするなどの場合)。売上げが1001万円(税込み)とすれば、税務署に納付する消費税は約24万円となります(簡易課税、サービス業)。24万円といえば大卒の初任給です。やはり、一国一城の主になった以上は、サラリーマン社会への未練は捨てて、独立自尊の精神をもって稼がなければなりません。

 

≪サラリーマンが副業を赤字にして給与所得の税金の還付を受ける≫

 

このような節税ノウハウがあるそうでが、ノウハウと呼べるかは疑問です。要するに、「損益通算」のことです。損益通算とは、不動産所得や事業所得がマイナスの場合に他のプラスの所得からマイナスの額を差し引くことです。これは「裏技」でもなんでもなく、税法で認められている合法的方法です。サラリーマンが営んでいる副業が赤字(所得がマイナス)であれば、その赤字を勤務先からもらう給与所得(給料や賞与など)と損益通算できますので、自ら確定申告をすれば給与所得から源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。

 

問題は次の点です。

 

■雑所得でなく事業所得として申告する

雑所得の赤字は損益通算できません。そこで、雑所得を事業所得として申告するのです。サラリーマンの副業がすべて雑所得となるわけではありませんが、事業所得になるケースは限られてくると思います。

 

■自宅関連費用や私生活での出費を「目一杯!」必要経費にする(事業所得として認められるとして)

「目一杯!」といっても、営んでいる副業と全く無関連な出費は必要経費にはできません。例えば、副業の全てがネット上で行えるのに自家用車の減価償却やガソリン代を必要経費にするなどが必要経費とは認められない典型です。

 

★所得がマイナス(赤字)=財産が減っている

ということです。サラリーマンの副業が赤字であるならば、副業を行うことによって給料で稼いで貯めた貯金を取り崩しているのです。そんな副業は長続きしません(やめなければなりません)。

 

★特定の年度だけ赤字になる(所得計算の特性)

事業は年度に関わりなく継続しますが、所得は年度ごとに(1月から12月に区切って)計算します。そこで、特定の年度の「収入が偶然少なくなる」あるいは「必要経費が偶然多くなる」ことによって赤字になる年度もあるのです。「将来のために多額の広告宣伝活動を行った」「複数の従業員を競わせて選別した(余分な給料を払った)」場合などは、特定の年度に必要経費が多く計上されます。

長期的には(複数の年度を通算すれば)「収入−支出(必要経費)>ゼロ」となり、ゼロを超える部分が事業主の取り分でなければ事業は継続できません。ですから、「事業所得が赤字!」「節税できた!」といって喜んではいられないのです。

 

★所得税の申告は自主申告です

「とりあえず」、好きなように申告書を書いて提出できるのです。これを正すのは、いうまでもなく税務調査です。

 

≪個人事業者に対する課税の概略≫

(起業をお考えの方は参考にしてください)

 

■所得税など

 

個人の所得には所得税(国税)が課税されます。「所得」とは経済的な利得(金銭での収入があるなど)のことです。所得はその性質によって10種類に分類され、それぞれで課税方法が異なります。個人事業者の所得は「事業所得」とされ「収入−必要経費」として計算されます。個人事業者の所得には、所得税のほか事業税(都道府県)と住民税(都道府県+市町村)が課税されます。

 

個人事業者は自ら事業所得を計算しなければなりません。所得税などを申告して納めるのは1年(暦年)ごとになります。このように、自ら税額を計算して申告することを申告納税制度といいます。

 

個人事業者が納める税金はこれだけではありません。

 

■消費税

 

個人事業者は消費税(国税および地方税)を納めなければなりません。個人事業者は販売の際に消費税を受け取り、仕入や諸経費を支払う際に消費税を支払います。個人事業者が税務署に納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額です。消費税は全ての個人事業者が納めなければならないのではなく、売上規模と創業年数によって納税義務が免除される場合があります。なお、消費税も所得税などと同様、原則として1年(暦年)ごとに自ら計算して申告と納税を行います。

 

■源泉徴収

 

源泉徴収義務というものがあります。この義務は、個人事業者が従業員に給与(給料、賞与など)を支払う際に所得税(国税)を源泉徴収し(天引きし)、それを税務署に納めるというものです。なお、源泉徴収同様、従業員の住民税(都道府県民税と市町村民税)も天引きし市町村役所に納めなければなりません(都道府県民税も市町村役所に納める)。

 

■固定資産税、自動車税、印紙税

 

これらは他の個人(サラリーマンなど)と同じです。不動産を所有していれば固定資産税が、自動車を所有していれば自動車税が、一定の契約書を作成すれば印紙税が、それぞれ課税されます。

 

★儲かるまで税金のことは考える必要はない?

儲かっていない(収入−必要経費が少ない)場合、所得税などはそんなには課税されないかもしれません。しかし、それ以外は儲けとは関係ありません。

 

★申告納税制度(自主性が求められます)

サラリーマン時代、所得税は勤務先から源泉徴収されそれ以外の固定資産税などは役所から通知が来ていたことでしょう。しかし、起業すればそうはいきません。「知らなかった」「(役所から)連絡がなかった」は通用しないのです。

 

会社に対する課税概略

(起業をお考えの方は参考にしてください)

 

 

徹底解説!「給料の税金」

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