給料の計算がズサンな会社もあります!

正確に給料の計算をするための事務作業は大変で、さらには関連する法律も知らなければなりません。

そんなことから、給料の計算がズサンになる会社もあるのです・・・

 

(内容)2012年8月4日現在

 

給料の計算が、とんでもないほどズサンな会社もあります。その原因がミスである場合もあれば、悪意をもって意図的に行っている場合もあります・・・

 

1 控除項目の計算を間違っている

 

給料の控除項目、つまり所得税、住民税、社会保険料などは関連法規の改正によって頻繁に変更になります。しかし、これに適応できていない会社もあります。控除が少ない場合には後日追加で控除され、控除が多い場合には「取られっ放し」ということになってしまうこともあります。

昨今ではほとんどの会社が「給与計算ソフト」を利用していますが、バージョンアップをしていない(法律の改正に適応していない)、入力そのものを間違っていた場合には控除項目の計算は正確には行われません。

 

2 住民税の特別徴収をしていない

 

「給与支払報告書」の提出(従業員の住所がある市区町村への報告)をしていなかった場合には会社に住民税額についての通知がありません。ですから毎月の給料から住民税が天引きされないことになります。このような場合、従業員の住所地の市区町村から従業員に直接連絡があり、従業員自らで住民税の申告・納税をすることになります。

 

3 所得税の源泉徴収をしていない

 

「面倒だから」「方法がわからないから」といって、源泉徴収を怠る会社があります。このような場合は後日税務署から指摘され、さかのぼって源泉徴収されることになります。手順としては、とりあえず会社が税務署に本来源泉徴収すべき税額を納付し、その後に従業員の給料から天引きするということになります。

 

4 給料を給与所得として扱っていない

 

会社に従属する従業員を、形式的に外注(外部の独立した業者=事業所得者なので源泉徴収が不要)として扱っている場合があります。源泉徴収したくないからです。(源泉徴収されたくない特定の従業員がこのような要望をしている場合もあります。)

悪質です!税務署から大目玉をくらいます。このような会社は早く辞めたほうがいいと思います。また、社会保険料(健康保険、厚生年金)や労働保険料(労災保険、失業保険)も支払っていないはずです。

 

5 架空の従業員?

 

給料は利益操作、つまり会社に課税される法人税の所得(利益)を操作する手段によく使われます。知らないうちに、あなたが、あなたが知らない会社の架空従業員にされているかもしれませんよ!

 

以上のようなことを一従業員の立場で、会社に改善するように主張することは不可能です。まずは、関連する役所(税務署、年金事務所、労働基準監督署など)に相談(密告?)することをおすすめいたします。

 

■「会計事務所(公認会計士や税理士)に任してある!」

 

逃げ口上ですよ(笑)。中小零細企業の社長にはこのようにいってはぐらかす人がいます。しかし、会計事務所(公認会計士や税理士)も、社長のからの歪曲された情報によって処理をしていることが通常です。

 

■給料の計算ミスの責任

 

役所(税務署など)に対しての責任は会社です。ですから、不足する税金や保険料を支払うのは会社です。しかし、会社はその不足分をあなたの給料から天引きしてきます。不足した原因があなた自身にある場合(扶養親族を誤って会社に告げた場合など)は納得できるとしても、会社に原因がある場合には納得できませんよね。

しかし、サラリーマンの場合には、これらを「会社に任せた」ということですので、あきらめるしかありません。ただし、上記のようにあまりにも会社がズサンな場合には黙っている必要はありません。

 

■会社は従業員に断りなく天引きをできる?

 

できます。つまり、従業員の「手取りが減るから源泉徴収をしないでください!」という要望を聞く必要はないということです。ただし、天引きした内容は毎月の給与明細や年末調整の結果としての源泉徴収票を手渡すことによって明らかにしておかなければなりません。また、法的な扱い(労働関連法規?)はともかくとして、やはり採用のときには、「当社では法律に定められたとおりに天引きするもの(源泉所得税のほか住民税、社会労働保険料)はする。嫌なら、よそにいってくれ!」とあらかじめ告げておくのが「道義」だと思います。

 

■源泉所得税は自分で納付しろ!

 

「給料を総額で渡すので、源泉所得税は自分で計算して『会社の名前』で納付しておいてくれ!」というとんでもない命令をする会社がありますが、そんな命令に従う必要はありません。源泉徴収は会社の義務であるからです。

 

■給与計算料(事務手数料)を従業員に要求する会社?

 

信じられませんが、実際にあるようです・・・

 

≪給与収入の調整?(違法な調整にご注意を!)≫

 

いわゆる「103万円の壁」を超えないようにするために、給与収入の「調整」が行われることがあります。その方法には、次のとおり合法的な方法と違法な方法があります。

 

●実際の勤務時間を調整する(合法的な調整)

これが本来の調整です。しかし、会社によっては人員配置の都合から個人的事情を受け入れてくれないこともあります。

 

●勤務時間の繰越し(違法な調整)

その年の給与収入の対象となる(支払いの対象となる)勤務時間を翌年に繰り越します。要するに、支払いを翌年にすることによって金額を「ごまかす」のです。当然、タイムカードなどとつじつまが合わなくなります。

 

●架空人員への給与収入の配分(違法な調整)

架空人員(多くの場合は実在する専業主婦や学生に名前を借りている)に103万円を超える部分を「振って」しまいます。このためには架空人員が勤務しているように装う必要があります。また、実在する人員の勤務時間を実際よりも減少させる必要もあります。この方法は、実際の給料の支払額とタイムカードや給与台帳などが一致しないので二重帳簿や裏帳簿が作成されることが通常です。

 

★違法な調整の誘惑に負けてはいけません

上記の違法な調整は税務署も熟知しており簡単に発見されてしまいます。違法な調整は会社にとっても源泉所得税の納付額の削減になりますので、会社のほうからすすめてくる場合もあります(パートやアルバイトを確保するための対策と考えている場合もあります)。会社にすすめられても、「私は結構です!」と断ってください。

 

★違法な調整がばれた場合

給与所得と税額を、調整前の給与収入で計算し直すことになります。結果として本人は課税され、配偶者や親などが配偶者控除や扶養控除を受けられなくなってしまいます。これを、数年分を同時にされると大変「痛い!」です。

 

≪給与計算ソフトが財務会計ソフトほど普及していない理由≫

 

毎月会社からもらう給与明細が手書きという会社に勤務している人も多いと思います。給与計算ソフトは財務会計ソフトほど普及していません。その理由は、次のとおりです。

 

●給与計算ソフトは毎年の保守料金を支払ってバージョンアップしなければ使い物にならない

これが最大の原因でしょう。給与計算に関連する所得税、社会保険、労働保険の計算法規はほぼ毎年改正されます。ですから、これらの計算を目的とする給与計算ソフトは毎年バージョンアップしなければならない宿命にあるのです。多くのメーカーの保守料金は年額3万円程度です。従業員数名の会社にとってはとても負担できる金額ではありません。

 

●従業員ごとの設定が複雑(頻繁に設定の変更が必要)

従業員ごとの設定項目が非常に多いです。「氏名」「生年月日」「住所」「家族構成」「基本給」など、設定項目が多く、さらには頻繁にこれらが変更となりその都度設定を変更しなければなりません。この設定が間違っていれば、正確な給与計算ができないのは当然です。

 

●全従業員の給与計算について使用しなければならない

給与計算ソフトは、個々の従業員の税額や社会保険料などの計算だけでなく、会社としての源泉所得税の納税額や社会・労働保険料の納付額も計算できます。当然、「全社ベースの計算」を有効に行うには全従業員の給与計算を給与計算ソフトで行わなければなりません。つまり、短期間の雇用者であっても、わざわざ給与計算ソフトに登録しなければならないのです。

 

●たまにしか使わない

ですから、なかなか操作方法が習得できず、手作業よりも作業の効率が落ちてしまいます。キーボードを叩く度に、マウスでクリックする度に、エラーメッセージが表示されるようではどうにもなりません(笑)。

 

★給与計算ソフトを導入すべき事業規模など

パートやアルバイトなど、時給制で毎月の給料の額が変動する従業員が相当数いなければ採算がとれません。ですから、小規模な会社の従業員は、前近代的な手計算による給与計算の不正確さというリスクにさらされるということなのです。

 

【まとめ】

 

●正確な給料の計算は難しいことから計算間違いをしている会社は多いです。

 

●控除項目の計算には専門知識が必要で、さらには計算方法が頻繁に改正されます。

 

●意図的に給料の計算を自社に有利になるように間違うという悪質な会社もあります。

 

●給与計算ソフトで計算しているからといって正確であるとは限りません。入力ミスは当然として、ソフトのバージョンアップをしていない場合があるからです。

 

●正確な給料の計算は会社の義務です。会社が計算間違いをしている場合には遠慮なく会社に質問ください。また、会社が悪質な計算をしている場合には関連する役所(税務署、年金事務所、労働基準監督署など)に相談することをおすすめいたします。

 

 

徹底解説!「給料の税金」

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