給与所得控除と所得控除(収入と所得の違い)

所得税は給料の総額(基本給や残業代など)に税率を乗じて計算されるのではありません。

色々と差し引いてもらえます!

 

(内容)2012年8月4日現在

 

★給与所得控除★

 

所得税においては「収入」と「所得」は異なります。このあたりが税金の難しいところです。

 

「収入」とは、それを得るための犠牲や努力を差し引く前のものをいいます。例えば、事業における収入はいわゆる売上代金であり、ここから犠牲である仕入代金や諸経費のいわゆる必要経費を差し引いたものを「所得」(事業所得)とし、課税の対象としています。

 

給与所得の場合、「給与所得控除」が給与所得者の必要経費であり、給料という収入を得るための犠牲や努力です。源泉徴収票をご覧いただくと、「支払金額」(給料の総額=収入)から給与所得控除を差し引いた金額が「給与所得控除後の金額」=「給与所得の金額」なっているはずです。

 

給与所得控除(必要経費、努力、犠牲)は、多いですか?少ないですか?

 

感想は人それぞれでしょうが、給与所得控除の金額は「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で給料の金額(年間の合計)に応じて一律に定められていることから、これを受け入れるしかありません。事業所得(自営業者)の必要経費が各自の事情に応じて計算できることと対照的です。

 

■控除(こうじょ)=差し引く

 

所得税の計算においては、いたるところでこの言葉が出てきます。控除とは「差し引く」ということです。「給与所得控除」「所得控除」など、いずれも何らかの金額から差し引くという意味で使われています。

 

■給料の「総額」と「手取り」

 

給料の総額(税込収入などともいいます)とは、給料から天引きすることが法律で定められているもの(税金や社会・労働保険料)を引く前の金額をいいます。一方、手取りとは給料から天引きすることが法律で定められているものを差し引いた残りの金額です。当然、給料の手取りと「課税される所得金額」(給与所得控除後の金額から配偶者控除、扶養控除などの所得控除を差し引いた金額)は異なります。

 

■給与所得控除の上限

 

給与所得の必要経費である給与所得控除は収入に応じて必ずしも増加するとは考えられないこと、また、主要国においても定額であるまたは上限があることから、年間給料が1500万円を超える場合に上限(245万円)が設定されています(平成25年の給料から)。 

 

■特定支出控除(給与所得控除を実額に近づける)

 

給与所得者が下記の「特定支出」をした場合、その年の特定支出の合計額が給与所得控除を超えるときは確定申告によりその超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができます。

 

・一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出

・転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの

・職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出

・職務に直接必要な資格(一定の資格を除きます。)を取得するための支出

・単身赴任などの場合で、勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの

 

これらの特定支出は、いずれも勤務先が証明したものに限られます。また、勤務先から補てんされる部分があり、その補てんされる部分に所得税が課税されていないときは、その部分は特定支出から除かれます。

 

なお、平成25年以降、給与所得者の実額控除の機会を拡大する観点から、以下のとおり改正されます。

 

特定支出の範囲に次のものが追加されました(いずれも勤務先が証明したものに限られます)。

 

・職務の遂行に直接必要なものとして弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費

・書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するもの(65万円を上限とする)

・制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出(65万円を上限とする)

・交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(65万円を上限とする)

 

また、従来の特定支出が給与所得控除額を超える場合という要件が2分の1に緩和されました(その年中の給与収入が1500万円を超える場合は125 万円を超える部分)。

 

■退職所得控除

 

退職所得の場合、収入から「退職所得控除」を差し引き、さらにその金額を半分にして課税します(1/2課税。ただし、平成25年以降は勤続年数5年以下の役員などの退職金については廃止されます。いわゆる天下り役員の優遇税制を是正するのです)。退職金は長年勤務してきた給料の後払い的な性質であり特定の年度に一括して発生します。そこで、税負担が過重にならないように(高い累進税率が適用されないように)、退職金からは給料よりも多くの控除を認めているのです。

 

★所得控除(給与所得控除を控除してからさらに控除します)★

 

給与所得の計算において、給料の総額から給与所得控除が差し引かれるまでは理解できたとしても、この後さらに「所得控除」が差し引かれることが給料に関する所得税の計算をより一層複雑にしています。

 

所得(給与所得や事業所得)は誰が得た場合であっても同様の金額となります。「給与所得=給料の総額−給与所得控除(給料の総額で決まる)」は、給料の総額が同じであれば誰であっても同じなのです。

 

しかし、このままでは「扶養家族の多い人や障害を背負った人の税負担は少なくすべき」といった、いわゆる個々人の「担税力」が考慮されなくなってしまいます。

 

このような一律な計算に下記のとおりの個人的事情を考慮するために所得控除をします。

 

■最低の生活保障(基礎控除、配偶者控除、扶養控除)

 

基礎控除38万円(本人のみ)、配偶者控除38万円、扶養控除38万円(16歳以上の扶養親族一人当たり)です。

妻1人(収入なし)、子2人(ともに収入なしで16歳以上)の場合には、基礎控除38万円+配偶者控除38万円+扶養控除76万円(38万円×2人)=152万円までは課税されないということです。

この152万円という金額は年間の給料総額から給与所得控除を控除した金額です。

年間の給料総額でいえば約240万円です。

こんなものでしょうか?

 

■個別事情(障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除)

 

■予期せぬ損害や出費(雑損控除、医療費控除)

 

■義務的あるいは必要不可欠な出費(社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命・地震保険料控除)

 

なお、これらの所得控除は黙っていても会社はしてくれません。勤務している(年末調整をしてくれる)会社に対して一定の手続をする(扶養控除等申告書と保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書を提出する=年末調整をする)、自ら確定申告をすることが必要です。

 

以上の計算までができれば、後はその金額に税率を乗じることにより所得税の計算ができます。

 

★借金と所得税の関係(給与所得者の場合)★

 

借金を背負いこんでいて楽しいという人などいません。返済に重圧を感じるとともに、今後も現在のように返済を続けられる収入を維持できるかという不安でいっぱいでしょう。

 

給与所得者(サラリーマン)の所得税の計算において借金は、次のような局面で考慮されます。

 

■住宅ローン控除

 

年度末の住宅ローン残高の0.4%から1.2%を、給与収入から計算された所得税から差し引くことができます。

 

■住宅を買換えた場合の損失の扱い

 

買換えた住宅に関しての住宅ローンがあれば、買換え前の住宅を売って生じた損失を給与所得から差し引くことができます。

 

■強制換価手続による資産の譲渡(多額の借金を背負い返済ができなくなった)

 

この場合は資産(不動産など)の譲渡代金は借金の返済に消え、すでに資力を喪失しているので資産の譲渡代金に関する所得税は徴収不能になることが明らかですので非課税としています。

 

【借金で生活費をまかなう】

このようなケースは所得税の計算上は一切考慮されません。ただし、最低限の生活費さえ借金でまかなわなければならない場合には、収入は相当少ないでしょうから所得税も少なくなります。

 

★自営業者は税金をごまかせる?(サラリーマンは税金をごまかせない?)★

 

大変よく聞く声です。答えにくいことですが、答えないわけにはいきません。

 

■自営業者は自分で税金の計算をしてそれを税務署に申告します

 

この申告というものは納税者の自主性が重んじられることから、ともすれば不正な税額の計算により申告が行われる場合もあります。当然、税務署は黙っていません。申告納税制度においては、不正な申告を正すために税務署という国家権力による税務調査が必要不可欠となります。確かに、自営業者は好き勝手に申告できるかもしれませんが、後から税務調査で正されるのです。

 

不正な申告をしておきながら税務調査の対象とされない場合もあります。すべての納税者を税務調査の対象にすることは不可能であるからです。しかし、税務調査の対象にされなかったのは偶然にすぎません。いつまでも、この偶然が続くとは限りません。また、「いつ税務署にばれるのか?」という精神的苦痛は相当なものです。

 

■サラリーマンは勤務先で税金を天引きされます

 

サラリーマンは毎月の給料、賞与(ボーナス)から税金を天引きされます。ですから、収入をごまかすことができません。サラリーマンの所得の計算は勤務先がしますので、サラリーマンは自営業者のように自らの判断で税金の計算ができません。

 

サラリーマンが税金で損ばかりしているわけではありません。一部の大企業や公務員が恩恵を受ける「福利厚生」です。実質的には給与収入に等しいような豪華な福利厚生(社員旅行や社宅など)にも課税されない場合があります。また、自らが税金の計算をしないことから税務調査を受ける心配がありません(勤務先が税務署との対応はしてくれます)。

 

【まとめ】

 

●「収入」と「所得」は異なります。所得税が課税されるのは、収入から一定金額を控除した(差し引いた)所得です。

 

●サラリーマンの必要経費は「給与所得控除」と呼ばれ、収入(給料の総額)から差し引くことができます。この金額は給料の額によって一律に定められています。

 

●給与所得控除を差し引いた後、さらに「所得控除」で個人的事情を考慮してもらえます。所得控除の中には、自ら確定申告をしなければ認められないものもあります。

 

 

徹底解説!「給料の税金」

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