給与所得とは?

サラリーマンの給料は数ある所得のうちの一つです!

所得には所得税が課税されます。

 

(内容)2012年8月4日現在

 

わが国では一定額以上の所得のある人は「所得税」(個人の税金でいわゆる国税です)の納税義務者となります。所得のある人は所得税以外に地方税としての「住民税=都道府県民税+市町村民税」の納税義務者にもなりますが、このページでは国税である所得税について説明いたします。

 

サラリーマン(役員、正社員、非正規社員、パート、アルバイトなど)が受け取る給料やボーナス(賞与)は「給与所得」と呼ばれます。給与所得は、所得税が課税される10種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得)のうちの一つです。

 

所得税は10種類の所得すべてを合算して課税されるのが原則です。いわゆる、総合課税といわれるものです。そして、所得税は自らが1年分(毎年1月から12月まで)の所得合計とその税額を計算して申告=「確定申告」をすることが原則です(いわゆる申告納税制度)。

 

■源泉徴収と年末調整

 

給与所得の所得税は源泉徴収されます。源泉徴収とは給料を支払う会社が給料から所得税を天引きし、その天引きした所得税を税務署(国税の役所)に納めることです。源泉徴収は毎月の給料を支払う際に行いますが、源泉徴収した税額は仮の税額であるために最終的な税額の計算は年度末にあらためて行う必要があります。この手続を年末調整といいます。

 

■給与所得者で確定申告が必要な場合

 

給与所得については「源泉徴収」(雇用者による税金の天引き)と「年末調整」(雇用者による税額の精算)でもって税金の計算と納税が完了することから自ら確定申告をする必要はありません。ただし、給与所得以外の所得がある場合、2か所以上からの給与所得がある場合、年末調整が済んでいない場合には確定申告をしなければなりません。

 

■社長も専務も給与所得者

 

給料とは会社に従属している人に支払われる労働の対価です。ですから、社長や専務などの役員であっても会社に従属している以上は、会社から受け取る給料(役員報酬)は給与所得ということになります。役員は株主総会で選任され株主総会で解任されるわけですから、会社に完全に従属しているのです。

 

世間一般の考え、会社の規程、労働関連法規(労働時間、社会・労働保険料などについて定めた法律)からすれば、役員、社員、パート、アルバイトなどで立場や処遇は大きく異なるかもしれませんが、所得税においては「会社への従属」という基準によって同一の分類(給与所得)になるということです。株主兼社長の場合(中小零細企業の場合)は「会社に従属」という考えに抵抗があるかもしれませんが同様に考えます。

 

■フリーランス(給与所得にはならないことの条件)

 

会社との契約内容によって変わってきます。契約内容からして「会社に従属」していると判断される場合には給与所得とされます。しかし、この「従属」の判断は非常に難しいのが実情で、一応下記が「従属していない=給与所得ではない」の目安になります。

 

●自身で仕事を立案しそれを会社に提案している。

●日々の業務について会社から具体的な指示を受けることはない(出勤時間などが決められていない)。

●業務に必要な諸経費を自身で負担しなければならない。

●業務に不具合がある場合には報酬を減額される。

 

以上の条件を満たしている場合には事業所得あるいは雑所得となります。このような扱いになる典型的な職業は、弁護士、公認会計士、税理士、経営コンサルタント、講師、ライター、デザイナー、モデルなどです。

 

■在宅社員

 

たとえ出勤することが義務付けられていなくても、会社に従属している以上は給与所得者です。在宅社員は出勤していなくても、毎日特定の時間帯は会社と連絡可能な状態にしておくことが義務付けられている(拘束されている)のが通常でしょうから、会社に出勤しているのと違いはありません。

 

■派遣社員

 

派遣社員も給与所得です。給料をくれる会社(派遣会社)と仕事をしている会社(派遣先)が違うだけです。

 

■固定給と歩合給や残業代など

 

ともに給与所得です。会社に従属して労働したことによる対価であるからです。

 

■自身の「所得区分」を確認する方法

 

規模の小さい会社の場合には所得の区分(給与所得か?事業所得か?)を正確にしていない場合があります。自身が受け取る労働の対価の区分は、それの計算内容を明示するために作成し手渡される「明細書」を見れば分かります。その明細書が「給与明細」などの名称で、支給額と控除額(対価から差し引かれるもの)の欄あり、所得税が控除されている(差し引かれている)場合には給与所得と考えて間違いありません。(ただし、給与所得以外でも所得税を源泉徴収される職業もありますのでご注意ください。)

 

■所得税は誰に課税されるか?

 

所得を得た個人を単位に課税されます。わが国の所得税では配偶者控除と扶養控除により個人の家族構成(家族が所得を得てそれを消費すること)を考慮した課税がされますが、これは個人の最低限度の生活に必要な部分には課税しないという趣旨であって、家族や夫婦を単位として課税するということではありません。

 

■所得税は暦年で課税される(給与所得の場合には1年間に受け取った分)

 

所得税は暦年(1月1日から12月31日)で得た所得の合計に課税されます。要するに、給与所得の場合には1年間にもらった給料の合計が給与所得の合計になるということです。

 

「パートやアルバイトの給料」「正社員の残業手当」の「計算期間」が当月1日から当月末日、そして、「支給日」が翌月25日などとなっている場合には、年末までに12月分(12月1日から31日まで)の金額を計算することができませんのでその分は翌年にもらうことになります。そこで、「雇用契約や慣習により支給日が定められている場合」には、その年に「支給日の到来している給与」をその年の給料の総額とします。つまり、計算期間が当月1日から当月末日、そして、支給日が翌月25日の場合には、その年の12月分(計算期間は12月1日から12月末日)=来年1月25日払いの給料はその年の給料=給与所得には含めないということになります(翌年の給与所得になります)。

 

■通勤手当には非課税限度枠(課税されない部分)がある

 

給与所得者の通勤手当のうち一定限度額は非課税となります。通勤に必要不可欠な手当にまで課税するのはあまりにも酷だからです。なお、通勤手当が支給されない会社もあります。その場合には、給与所得として課税された中から自己負担で通勤費用を捻出しなければならないということです。

 

■現物給与(経済的利益)

 

給与所得になるのは現金(あるいは銀行振込み)でもらった給料だけではありません。会社から物をもらった場合、会社に自身の負担すべき費用を支払ってもらった場合も給与所得として課税されます。いわゆる現物給与(経済的利益)と呼ばれるものです。ただし、現物給与の中には一定の条件で非課税となる場合もあります。

 

現物給与の例をあげれば次のとおりです。

 

●物をもらった(あるいは安く売ってもらった場合の安くしてもらった部分)

●社宅などを無償で貸してくれた(あるいは安く貸してもらった場合の安くしてもらった部分)

●無利息で貸してもらった(あるいは低金利で貸してもらった場合の安くしてもらった金利部分)

●会社の設備(保養所、レジャークラブなど)を無償で利用させてもらった(あるいは安く利用させてもらった場合の安くしてもらった部分)

●会社からの借金の返済を免除してもらった。

 

会社から毎晩のように夜食を食べさしてもらっている。

会社の商品を安く買っている。

会社の自動車を私用にも使っている。

会社の社宅に無償で住んでいる。

 

要注意です!

 

■副業の収入

 

副業による所得がある場合には、その所得も合計して所得税を計算しなければなりません。計算の方法は、その副業の所得が上記10種類のどの所得になるかによって変わってきます。なお、副業をしている場合にはいずれの所得になるにせよ自身で確定申告をしなければなりません。

 

■給与所得の税務調査

 

サラリーマン(給与所得者)が税務署に直接調べられることはありません。なぜならば、給与所得者の税金を納付する義務は源泉徴収をした(給料から天引きして税金を預かっている)会社にあり(源泉徴収義務者)、税務署も会社を調べるからです。ただし、サラリーマンが会社に申告したことに基づいて会社がサラリーマンの税金の計算をした部分(配偶者や扶養親族のことなど)について税務署から指摘があった場合には、会社はサラリーマンに事情の説明を求めてきます。また、不足税額がある場合にはサラリーマンが負担することになります。

 

■退職金→給与所得ではありません!

 

「退職所得」として課税されます。退職金は長年勤務してきた給料の後払い的な性質であり、特定の年度に一括して発生する所得であることから、給与所得と同様の税負担を求めるのではなく、給与所得には含めないで退職所得として税負担が軽くなるような方法で(低い累進税率を適用して)課税するのです。

 

■源泉徴収しないでくれ!

 

給与所得となる限りはこのような要望はできません。ただし、給与所得か事業所得かの判断が難しく、「敢えて」事業所得とした場合には必ず自身で確定申告をしておくことです。税務署はこのような場合には、受け取った者が確定申告をしているかどうかを調べ、確定申告していない場合には給与所得とし源泉徴収を促すことが通常です(源泉徴収漏れとして事後的に源泉徴収されます)。

 

【まとめ】

 

●サラリーマンの給料には「所得税」という国税が課税されます。

 

●サラリーマンの所得税は自ら申告し納付する必要はなく、毎月の「源泉徴収」と「年末調整」で納税(申告や納付)が終了します。ただし、給与所得以外の所得がある場合、2か所以上からの給与所得がある場合、年末調整が済んでいない場合には確定申告をしなければなりません。

 

●サラリーマンの給料は「給与所得」とされていますが、給与所得の範囲は広く会社に従属する立場の人の労務の対価はすべて給与所得となります。社長や専務の給料も給与所得なのです!

 

●給与所得とその他の所得の区分が難しい場合もあります。なお、給与所得以外の所得になる場合には必ず自身で確定申告しておく必要があります。

 

●所得税は暦年(1月から12月)の給与所得をもとに計算されます。その年に、もらった(もらうべき)給料に課税されるということです。

 

 

徹底解説!「給料の税金」

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