前年比較と年間推移の検討

 

 

帳簿の一行や個々の仕訳はいわば「点」にすぎず、記帳にあたりこれだけを眺めていても、いわゆる「木を見て森を見ず」という失敗を犯してしまう恐れがあります。記帳がひと通り終わり試算表が完成したならば、ぜひとも下記の方法で全体像を眺めてみることをおすすめいたします。

 

1 前年比較

 

勘定科目ごとに前年の金額と比較してみます。財務会計ソフトの場合には「前期比較」という機能があると思います。前年と比較して増加している、減少している、不変であることに「合理的な理由」があるでしょうか?

 

「合理的な理由」といってもそんなに難しく考える必要はありません。事務所や倉庫を借り増しした場合には「地代家賃」が増加しているはずです。従業員を増やした場合には「給料賃金」が増えているはずです。積極的な広告をした場合には「広告宣伝費」が増えているはずです。要するに1年間に起こった事実関係の変動に応じて各勘定科目も変動しているかを検討すればよいということです(事実関係に変動がないのに変動している場合も要注意です)。

 

各勘定科目の「変動に合理性がない」場合には下記のことが原因として考えられます。

 

●勘定科目(仕訳)を間違っている

●記帳漏れと二重記帳

●前年の処理が間違っている

●前年と今年で勘定科目が違う

 

2 年間推移の検討

 

各勘定科目の年間の推移、つまり月ごとの変動を追跡することも大変有意義です。財務会計ソフトの場合には「年間推移や月次比較」という機能があると思います。

 

年の途中で事務所や倉庫を借り増しした場合には途中の月から「地代家賃」が増加しているはずです。従業員を増やした場合には途中の月から「給料賃金」が増加しているはずです。夏季には冷房をすることから「水道光熱費」が増えているはずです。特定の月に集中的に広告をした場合にはその月は「広告宣伝費」が増えているはずです。

 

各勘定科目の「変動に合理性がない」場合には下記のことが原因として考えられます。

 

●勘定科目(仕訳)を間違っている

●記帳漏れと二重記帳

●月の途中で勘定科目を変更した

 

3 比率分析など

 

やや高度ですが、税務署は比率分析をしていますので何とかやってみてください。

 

●売上と仕入の関係

「売上−仕入」は粗利益(売上総利益)といわれます。この率、「粗利÷売上」(粗利率、売上総利益率)が変動している原因を突き止めておく必要があります。

 

●売上と売掛金の関係

売上と売掛金は取引条件が不変であるならば一定の比率(売掛金の回転期間、売掛金÷年間売上の12分の1、要するに何か月分の売掛金が残っているか)であるはずです。変動している場合には原因を突き止めます。

 

●仕入と買掛金の関係

仕入と買掛金は取引条件が不変であるならば一定の比率(買掛金の回転期間、買掛金÷年間売上の12分の1、要するに何か月分の買掛金が残っているか)であるはずです。変動している場合には原因を突き止めます。

 

4 同業者との比較

 

同業者の数値を入手することは困難です。業界紙や同業者からの断片的な情報をもとに比較するしかありません。

 

 

【税務調査に備える】

 

確定申告が終わったならば次は税務調査に備えなければなりません。申告が終わったからといって安心して、次の帳簿類を廃棄したり紛失したりしないでください。

 

●総勘定元帳

青色申告決算書や収支内訳書の勘定科目ごとの増減と残高を記録した帳簿です。会計ソフトで作成した場合には印刷しておいてください。

 

●金銭出納帳と預金出納帳

複式簿記で記帳した場合には必ず作成されているはずです。現金と預金の増減と残高は複式簿記(経理記録)の根本です。

 

●預金通帳

金融機関という相当信頼性の高い外部者が作成した資料です。大切に保管しておきましょう。

 

●請求書の控など(収入)

請求した得意先や請求内容を確認する資料は請求書の控えということになります。

 

●請求書と領収書など(必要経費)

相当数が多いと思いますので、日付順に整理してスクラップブックにでも貼り付けておくことです。

 

★パソコンの中のデータがない!

 

このようなことにならないためにも、印刷しておくことをおすすめいたします。

 

「帳簿を作成したけど、パソコンの中のデータがなくなった」で済むのなら、誰でもそうします。

 

そんなに甘くないですよ!

 

 

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