売上(収入)の計上漏れはないか

 

 

事業所得者の税務調査において売上(収入)は最重要検討項目の一つであり、重点的に時間を費やして調べられます。事業所得の売上(収入)は「その年において収入すべき金額」であって、「その年に入金のあった金額」ではありません。

 

★「その年において収入すべき金額」とは?

 

【所得税法第36条第1項】

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

 

入金額だけで売上(収入)を確定するのが合理的でない場合もあることから、「その年において収入すべき金額」という表現をしているのです。

 

★発生主義のことでしょ?

 

多くの人はご存じだと思います。しかし、これがそう簡単でない場合もあります。

 

その年の売上(収入)はその年の日付で発行した請求書(控)から集計しますが、「請求書(控)が漏れている」「請求額が正しくない」「請求後に請求金額が変わった」場合などもありますので、下記のとおりの検討をしておく必要があります。

 

 

1 預金通帳と請求書の照合

 

「入金から売上(収入)を集計するのではないのでしょ!?」との反論があるかもしれません。そのとおりですが、それは「請求と入金の時点が違う」という意味であって通帳(入金記録)がまったく無意味であるとか、ましてや税務署が通帳を検討しないというわけではありません。税務署は、請求額が漏れなく売上(収入)に計上されていることを確認するために必ずといってよいほど通帳と請求書(控)の照合作業をします。ですから、通帳と請求書(控)の金額は必ず照合しておく必要があります。

 

2 翌年1月以降の通帳の検討

 

請求と入金の時点が異なることから、確定申告の対象となる売上(収入)の入金が確定申告の対象となる翌年の通帳にされていることもあります。ですから、翌年の通帳は「確定申告の対象外」と考えるのではなく翌年の通帳も必ず検討しておかなければなりません(税務調査でも調べられます)。

 

3 請求より入金が少ない場合

 

このようになる典型は、得意先が請求額から振込手数料相当額を差し引いて支払ってくる場合です。この場合も、売上(収入)は請求額となり、振込手数料相当額は必要経費に計上します(勘定科目としては雑費ですかね?)。請求後に値引かれることもあります。そのような場合には値引かれた時点に値引き処理、つまり売上(収入)を減額します。ですから、12月に請求して翌年1月に入金があった場合には翌年の売上(収入)が減るということです。

 

【源泉徴収される職業の場合】

源泉徴収される職業の場合も請求額よりも入金額が少なくなりますが、売上(収入)は源泉徴収される前の金額となります。なお、源泉徴収された金額は必要経費ではなく、申告書第一表の「源泉徴収税額」から差し引くことになります。

 

4 請求より入金が多い場合

 

このようなことはあまりないと思います。もしあるとすれば、請求書の「網羅性」に問題がありますので税務署は相当疑ってかかります。

 

5 請求書の再発行と訂正

 

得意先が支払ってくれないことから請求書を再発行することがありますが、このような場合には最初に発行した分だけを売上(収入)とします。当初の請求が間違っていることからそれを訂正した請求書を発行した場合には、訂正後の請求書の金額を売上(収入)とします(売上として計上する日付はあくまでも当初の請求日です)。

 

6 繰越請求額

 

請求額の一部の支払が次回の請求に繰り越されることがありますが、このような場合でも請求額の全額を売上(収入)とします。当然、次回の請求から計上する売上(収入)はこの分を除いた金額となります。

 

7 現金で集金している場合

 

この場合の入金記録は「領収書の控」です。領収書には「連番」を付しておき漏れなく売上(収入)を計上していることを税務署にアピールしておく必要があります。現金集金については通帳のような客観的な記録が残らないことから、税務署は取引先への「反面調査」や「独自に収集した資料」で漏れを確認することもあります。

 

8 理由がわからない通帳への入金

 

預金口座に得意先から入金(振込み)があるとその得意先名が通帳に表示されますが、窓口やATMで預け入れした場合には何も表示されません。税務署はこのような入金を上記7の現金集金分の漏れと考えますので、入金の理由は預金出納帳や伝票に記録しておくことです。

 

9 私的な預金口座(家族名義の預金口座も含む)

 

あまりにも売上(収入)関連の記録が不正確な場合には私的な預金口座にまで調査の対象を広げられます(取引銀行などで調べられます)。ですから、「税務調査で税務署に見せる資料の『外で』」は甘いということです。

 

 

≪請求一覧表の作成≫

 

請求書の控をファイリングしただけの状態では後日の入金状況をチェックするのが大変です。そこで、下記の項目を記載した請求一覧表をぜひとも作成してください。

 

●請求日付・・・請求一覧表は請求日付順に記載します。

●請求先

●請求内容

●請求金額

●入金日

●入金方法・・・振込み、現金集金の別を記載します。

●入金額・・・差し引かれた振込手数料、値引かれた金額を明記しておきます。

 

各請求書についての上記の項目を「一行に」記録しておけば、請求から入金までの状況を容易に追跡することができます。

 

請求日付、請求先、請求内容、請求金額が総勘定元帳の「売上高」と「売掛金」に記載されます。入金日、入金額が総勘定元帳の「売掛金」と「預金あるいは現金」に記載されます。

 

 

≪事業専用の預金口座を開設する≫

 

事業専用の預金口座を必ず開設し、特に通帳の入金欄の「入金理由」については明確に説明ができるようにしておかなければなりません。税務署は、通帳の入金欄=売上(収入)と考えますのでこのことが非常に大切です。

 

 

≪自家消費≫

 

自家消費とは、個人事業者が本来は販売するための商品や製品などを、家事(事業以外)のために消費することをいいます。ケーキ屋が自分の作ったケーキを食べるなどがその典型です。この場合の仕訳は下記のとおりです。

 

≪借方≫事業主貸

≪貸方≫売上高(あるいは自家消費、家事消費などの収益勘定)

 

通常の売上高ですと借方は売掛金や現金預金となりますが、自家消費の場合には事業主が代金を「家から店に」支払うことはありませんので事業主貸としておきます。(事業主から受け取った代金を直ちに事業主に渡した?と考えてもよいかもしれません。)

 

●金額はいくらにすればいいのか?

仕入値で計上しておけばよいです。1個70円で購入した商品を自家消費した場合には、売上70円に対して仕入も70円、つまり儲けなしということです。

ただし、仕入値が通常の売値(客に売る値段)の7割を下回っている場合には、通常の売値の7割でなければなりません。今の例で、1個の売値が100円でしたら問題はありませんが、110円の場合には自家消費の金額は77円となり7円の儲けということになります。

 

●仕入値がわからない?

売値の7割としておくしかありません。

 

●売値がわからない(売値の変動が激しい)?売れ残って捨てるしかない商品を自家消費した?

難しいケースもあります・・・

 

 

≪雑収入≫

 

青色申告決算書の2ページに「月別売上(収入)金額及び仕入金額」という表があり、その中に「雑収入」という項目があります。収支内訳書の1ページの「B」に「その他の収入」という項目があります。

 

「雑収入」と「その他の収入」は同じ意味であると考えられます。要するに、「本業以外」の事業所得の収入ということです。作業くずの売却代金などがその典型です。何が本業であるかが明確でない場合には複数の事業による収入が「売上」として集計されることになります。

 

雑収入(その他の収入)の内容や金額にあまり過敏になる必要はありません。なぜならば、売上であれ雑収入(その他の収入)であれ、「事業所得の収入」であることは同じであり、両者の区分によって事業所得の金額が違ってくることはないからです。ですから、雑収入(その他の収入)がゼロであっても税務署に不審に思われることはありません(当然、売上に収入が漏れなく集計されている必要があります)。

 

★事業用車両の売却

譲渡所得として申告をしますので、車両の売却代金は事業所得の収入には含めません。

 

 

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