平成28年分(2017年3月申告)

所得税確定申告情報(8/9)

 

 

≪各種計算例(具体例)≫

 

総合課税の場合の税率

 

●195万円まで 5%

●195万円を超え330万円まで 10%(控除額97,500円)

●330万円を超え695万円まで 20%(控除額427,500円)

●695万円を超え900万円まで 23%(控除額636,000円)

●900万円を超え1800万円まで 33%(控除額1,536,000円)

●1800万円を超え4000万円まで 40%(控除額2,769,000円)

●4000万円を超える 45%(控除額4,796,000円)

 

「課税される所得金額」とは、10種類の所得を合計した金額(ただし分離課税されるものを除く)から所得控除を差し引いた金額です。また、所得が増えるにしたがって税率が高くなっていますが、これは「累進税率」といって所得が多いほど担税力があるという考えによっています。

 

【計算例】課税される所得金額が650万円の場合

6,500,000円×20%−427,500円=872,500円

 

【控除額】

上記の税率において10%以上からは、課税される所得金額に税率を乗じた金額から一定金額を控除する(差し引くことができる)こととなっています。これは、同じ税率の水準(10、20、23、33、40%のそれぞれの税率となる所得の範囲)であっても、実質的な税率(税額÷課税される所得金額)に差をつけるためです。所得350万円の場合の税額は272,500円(350万円×20%−427,500円)で実質的な税率は7.78%(272,500円÷350万円)、所得500万円の場合の税額は572,500円(500万円×20%−427,500円)で実質的な税率は11.45%(572,500円÷500万円)となります。(所得が多いほど担税力があるという所得税の趣旨にかないます。)このように、所得の金額が区分した税率を超過するにしたがって順次、実質的な税率が上昇する構造を「超過累進税率」と呼んでいます。

 

《所得税の速算表を検証する》

 

所得税法の「条文」(89条)では上記の計算方法、つまり「速算表」にはなっておらず次のようにして計算します。

 

●195万円以下の部分 5%

●195万円を超え330万円以下の部分 10%

●330万円を超え695万円以下の部分 20%

●695万円を超え900万円以下の部分 23%

●900万円を超え1800万円以下の部分 33%

●1800万円を超え4000万円以下の部分 40%

●4000万円超の部分 45%

 

所得650万円で計算してみます。

 

●650万円のうち195万円以下の部分は5%→195万円×5%=97,500円

●650万円のうち195万円超330万円以下の部分は10%→135万円×10%=135,000円

●650万円のうち330万円超695万円以下の部分は20%→320万円×20%=640,000円

 

合計すれば872,500円で速算表での計算結果と同じです。要するに、所得を区切って低い部分から順次税率を上げながら税額を計算します。

 

これで、速算表の「控除額」の意味をご理解いただけたと思います。上記計算例の所得650万円全額に20%の税率を乗じるのではなく、所得を区切ってそれぞれで異なる税率を乗じるための調整なのです。

 

●195万円以下の部分は15%(20%−5%)減額→195万円×15%=292,500円

●195万円超330万円以下の部分は10%(20%−10%)減額→135万円×10%=135,000円

●650万円のうち330万円超695万円以下の部分→全額に20%を乗じる

 

この合計額は427,500円となり速算表の「控除額」と等しくなります。

 

《復興特別所得税》

平成25から平成49年までは、上記の要領で計算した所得税に2.1%の復興特別所得税を併せて申告・納付しなければなりません。

 

複数の給与を合計した場合の税額

 

(1)A社より(主たる給与=扶養控除等申告書を提出し年末調整をしている)

 

●年額5,000,000円(給与所得控除後の金額3,460,000円)

●基礎控除380,000円

●配偶者控除380,000円

●扶養控除760,000円(2名)

●社会保険料控除250,000円

●生命保険料控除50,000円

 

上記を前提に年末調整すれば税額は次のとおりとなります。

 

課税される給与所得金額=給与所得控除後の金額3,460,000円−基礎控除380,000円−配偶者控除380,000円−扶養控除760,000円−社会保険料控除250,000円−生命保険料控除50,000円­=1,640,000円

 

税額=1,640,000円×5%=82,000円

 

(2)B社より(従たる給与であることから乙欄で源泉徴収され年末調整していない)

 

●年額600,000円(月額50,000円)

●源泉徴収税額18,000円(月額1,500円×12ヶ月)(注)

 

(注)従たる給与の場合には配偶者の有無や扶養親族数にかかわらず定められた金額を源泉徴収されます(月額87,000円未満の場合には3%)。

 

(3)A社とB社の給与を合計した場合の税額

 

●年額5,600,000円(給与所得控除後の金額3,940,000円)

●基礎控除380,000円(年末調整したときの金額と同じ)

●配偶者控除380,000円(同上)

●扶養控除760,000円(同上)

●社会保険料控除250,000円(同上)

●生命保険料控除50,000円(同上)

 

上記を前提に確定申告すれば税額は次のとおりとなります。

 

課税される給与所得金額=給与所得控除後の金額3,940,000円−基礎控除380,000円−配偶者控除380,000円−扶養控除760,000円−社会保険料控除250,000円−生命保険料控除50,000円­=2,120,000円

 

税額=2,120,000円×10%−97,500=114,500円

 

納付する税額=114,500円−82,000円(A社から源泉徴収された金額)−18,000円(B社から源泉徴収された金額)=14,500円

 

【ご注意】上記の所得税額に2.1%の復興特別所得税が上乗せされます。

 

損益通算

 

●不動産所得・事業所得に損失がある場合

まずは、経常所得(配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得から)から控除します。例えば、事業所得が100万円の損失で給与所得が300万円であるならば、総所得金額は200万円となります(事業所得と給与所得以外の所得がないとします)。

経常所得から控除しきれない場合(ほかに経常所得がない場合も同じ)には、譲渡所得(総合課税)、一時所得から順次控除します。例えば、事業所得が500万円の赤字、給与所得が100万円、譲渡所得が600万円の場合には総所得金額は200万円(−500万円+100万円+600万円)となります(ほかに総所得金額の対象となる所得がないとすれば)。

 

●譲渡所得(総合課税)に損失がある場合

まずは一時所得から控除します。例えば、譲渡所得が50万円の損失で一時所得が100万円であるならば、総所得金額は50万円となります(ほかに総所得金額の対象となる所得がないとすれば)。

譲渡所得の損失が一時所得から控除しきれない場合には、経常所得で損益通算した結果から控除します(まずは、経常所得の中でそれぞれのプラスとマイナスを合計した結果から控除します)。例えば、譲渡所得が200万円の損失、一時所得が100万円、事業所得が500万円の場合には、総所得金額は400万円(−200万円+100万円+500万円)となります。

 

純損失の繰越控除(青色申告者の場合の損失の繰越)

 

●給与所得プラス300万円(給与所得控除後)

●不動産所得マイナス600万円

 

損益通算の結果、総所得金額はマイナス300万円(給与所得300万円−不動産所得600万円)となりますので、この損失を翌年に繰り越すことができます。(損益通算しても総所得金額がマイナスの場合には、配偶者控除、扶養控除などの所得控除は差し引くことはできません。つまり、損失とは所得控除を考慮しない金額のことです。)

 

翌年の所得が次のとおりとします。

 

●給与所得プラス300万円

●不動産所得プラス200万円

 

総所得金額は、給与所得300万円+不動産所得200万円−繰越損失300万円=200万円となります。ここから、基礎控除、配偶者控除などの所得控除を差し引くことができます。

 

減価償却

 

(1)定額法(建物については定額法に限られます)→平成19年3月31日までに取得した資産の償却方法

 

取得価額50万円、耐用年数4年とします(償却率は0.250となります)。

●1年目(4月に取得したとします)

{500,000(取得価額)−50,000(残存価額・取得価額の10%)}×0.250(償却率)×9ヶ月÷12ヶ月(年額の償却費を月割りします)=84,375(償却累計額84,375)

●2年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

{500,000(取得価額)−50,000(残存価額・取得価額の10%)}×0.250(償却率)×=112,500(償却累計額196,875)

●3年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

2年目に同じ(ただし償却累計額は309,375)

●4年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

3年目に同じ(ただし償却累計額は421,875)

●5年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

{500,000(取得価額)−50,000(残存価額・取得価額の10%)}×0.250(償却率)×3ヶ月÷12ヶ月(3月までで4年の耐用年数に達します)=28,125(償却累計額450,000、簿価50,000円)

◆減価償却は簿価が取得価額の5%(25,000円)になるまで行うことができまので、あと25,000円を減価償却費とすることができます。

◆取得価額の95%相当額まで償却した年分の翌年分以後は、期首簿価(25,000円)から1円を控除した金額を5で除した金額が償却費の額となり、1円まで「均等償却」します(平成20年分から適用)。

 

(2)定率法→平成19年3月31日までに取得した資産の償却方法

 

定率法の場合に同じく、取得価額50万円、耐用年数4年とします(ただし償却率は0.438となります)。

●1年目(4月に取得したとします)

500,000(取得価額)×0.438(償却率)×9ヶ月÷12ヶ月(年額の償却費を月割りします)­=164,250(償却累計額164,250、簿価335,750)

●2年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

335,750(前年度末簿価)×0.438(償却率)=147,058(償却累計額311,308、簿価188,692)

●3年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

188,692(前年度末簿価)×0.438(償却率)=82,647(償却累計額393,955、簿価106,045)

●4年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

106,045(前年度末簿価)×0.438(償却率)=46,447(償却累計額440,402、簿価59,598)

●5年目(年度を通してその資産を保有していたとします)

59,598(前年度末簿価)×0.438(償却率)×3ヶ月÷12ヶ月(年額の償却費を月割りします)=6,525(償却累計額446,927、簿価53,073)

◆減価償却は簿価が取得価額の5%(25,000円)になるまで行うことができまので、あと28,073円を減価償却費とすることができます。

◆取得価額の95%相当額まで償却した年分の翌年分以後は、期首簿価(25,000円)から1円を控除した金額を5で除した金額が償却費の額となり、1円まで「均等償却」します(平成20年分から適用)。

 

(3)定額法(建物については定額法に限られます)→平成19年4月1日以降に取得した資産の償却方法

 

残存価額という考えがなくなりました。ただし、備忘価額として(帳簿に記録を残しておくために)1円は償却せずに残しておく必要があります。

 

計算例は下記の国税庁のサイトをご覧ください。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2106.htm

 

(4)定率法→平成19年4月1日以降に取得した資産の償却方法

 

定額法同様、残存価額という考えがなくなりました。ただし、備忘価額として(帳簿に記録を残しておくために)1円は償却せずに残しておく必要があります。

 

定率法を理解するに当たっては下記の用語を正確に理解しておく必要があります。

 

償却保証額(ここまでしか償却できないという意味ではありません!)

資産の取得価額の一定金額をいいます。毎年減価償却を続け、ある年度で減価償却をした結果が償却保証額に満たない場合にはその年度から減価償却の方法が変わります(以後定額法と同じように計算します)。

 

保証率

償却保証額を算出するための率です(資産の耐用年数によって異なります)。つまり、取得価額に保証率を乗じた金額が償却保証額です。

 

改定取得価額

「前年どおり減価償却をした結果(調整前償却額)<償却保証額」となる年の前年の未償却残高(いまだ償却していない金額)をいいます。この年からは減価償却の方法が変わります(以後定額法と同じように計算します)。

 

改定償却率

定率法で改定取得価額に乗じる率です。

 

要するに、減価償却の額が償却保証額以下になった年から、前年までの未償却額(取得価額−前年までの減価償却の合計)を改定取得価額として定額法と同じように計算をするということです。

 

【国税庁サイトの計算例】

 

以上が理解できれば下記国税庁サイトの計算例が理解できるはずです。

 

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2106.htm

 

国税庁のサイトでは、取得価額100万円、耐用年数10年、償却率0.200、保証率0.06552、改定償却率0.250とされています。ただし、この例では2年目から6年目までの計算が省略されていますので下記で計算しておきます。

 

【1年目】100万円×0.200=200,000円(未償却残高800,000円)

【2年目】800,000円×0.200=160,000円(未償却残高800,000−160,000=640,000円)

【3年目】640,000円×0.200=128,000円(未償却残高640,000−128,000=512,000円)

【4年目】512,000円×0.200=102,400円(未償却残高512,000−102,400=409,600円)

【5年目】409,600円×0.200=81,920円(未償却残高409,600−81,920=327,680円)

【6年目】327,680円×0.200=65,536円(未償却残高327,680−65,536=262,144円)

 

《減価償却の方法の選定と届出》

新規に開業した、今まで保有していなかった種類の資産を新規に取得した、新たに事業所を開設した(減価償却の方法は事業所単位で選定します)場合には、選定する減価償却の方法を届出なければなりません。届出がない場合には、法定された償却の方法(定額法)で減価償却しなければなりません。

 

《30万円未満の減価償却資産》

平成18年4月1日から平成30年3月31日までに購入した減価償却資産については、その個々の資産の取得価額が10万円以上30万円未満のものについては、購入した年に取得価額全額を必要経費とできます。ただし、取得価額の年額合計(取得した10万円以上30万円未満の資産が複数ある場合にはこれらの合計)が300万円という上限が設けられています。なお、この扱いは青色申告の場合に限られます。

 

《減価償却資産を廃棄した》

営業所、店舗の廃止などにより減価償却資産を廃棄する場合があります。この場合、昨年末までに減価償却をしていない金額(未償却残高=簿価)を廃棄した年度の必要経費とすることができます。

 

《減価償却資産を売却した》

この場合は、「売却収入−昨年末の未償却残高」が「譲渡所得」になります。マイナスの場合(売却収入<昨年末の未償却残高)は、譲渡所得の赤字を他の所得から差し引くことができます(建物の場合には不可)。

 

 

≪税務署は申告書を受け付ける際にどこを見ているのか?≫

 

税務署の窓口で申告書が受け付けられたからといって「申告内容の全て」が認められたというわけではありません。しかし、税務署は申告書を受け付ける際に下記のような点を確認している模様で、これらに不備がある場合には申告書を受け付けてもらうこと「さえ」できません。

 

●住所、氏名、電話番号は記入されているか

当然のことです。

 

●管轄は間違っていないか

税務署には管轄があります。ですから、管轄外の申告書は受け付けてはくれません。所得税の確定申告書の場合は第一表に記載された「住所あるいは事業所の所在地」で管轄が決まってきますのでこれを確認していると思います。

 

●申告期限は到来しているか

申告書は申告期限が到来していなければ受け付けてもらえませんので、申告期限が到来していることを確認していると思います。所得税の確定申告の場合は還付申告を除いて2月16日以降でなければ提出できません。

 

●必要な申告書用紙と添付書類は揃っているか

検算と申告内容の検討は後日行うとして、この程度は申告書を受け付ける時点で確認しているはずです。そして、この時点で申告書用紙と添付書類の漏れがあれば受け付けはしてもらえず再度の来署を求めてきます。

 

●認められない控除などをしていないか

配偶者特別控除、住宅借入金等特別控除は申告をする本人の合計所得金額が一定額を超えると認められません。専従者給与あるいは専従者控除と配偶者控除あるいは扶養控除は重複して適用できません。当然、受付の段階で確認していると思います。

 

●還付金を受け取る預金口座

還付申告の場合には確認していると思います。

 

●その他

その時々で重点的に確認する項目があるようです。

 

 



所得税確定申告情報

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