平成28年分(2017年3月申告)

所得税確定申告情報(6/9)

 

 

≪2日(土日)でできる簡易な記帳?≫

 

事業所得の計算をするには必ず損益計算書(青色申告決算書P1、収支内訳書P1)を作成しなければなりません。損益計算書とは収益(収入)から費用(必要経費)を差し引いて利益(所得)を算出する表です。損益計算書は1年(1月から12月)を単位で作成しますが、それを作成するための作業である記帳は常日頃からしておかなければなりません。しかし、現実にはこの記帳がおろそかになっていることも多く、確定申告を前にして途方にくれる人がいます。

 

このページでは、そのような人が「とりあえず確定申告を済ませる」ための簡易な記帳の方法を説明しております。説明は事業所得を前提としておりますが不動産所得の場合にも参考にしていただけます。また、「財務会計ソフトがない場合」と「財務会計ソフトがある場合」に分けて説明をしております。

 

《財務会計ソフトがない場合》

 

1 収入の集計方法

 

業種、業態にもよるでしょうが比較的簡単だと思います。3/9≪事業所得≫のとおり、税金の計算における収入は極めて特殊な(?)基準で集計します。つまり、その年に入金がなくとも収入に含めなければならないということです。

 

(1)平成28年中に発行した請求書控えの金額の集計(月ごとに集計後、年合計を算出)

(2)平成28年中に値引きと返品が確定した金額の集計(月ごとに集計後、年合計を算出)

値引きは請求額と入金額との差額により把握します。ただし、相手先が支払いを保留している(資金繰りの都合で)場合は値引きとはなりません。値引き処理は相手先と最終的な決着がつくまでは行えません。

 

税金の計算における収入は、(1)の月ごとの金額を全月分について合計した金額=年額から、(2)の月ごとの金額を全月分について合計した金額=年額を差し引いた金額となります。

 

《店売上と請求書のない売上》

請求書がないことが当然の「店売上」については、日々の売上記録から集計します。1月1日から12月31日までの合計が、その年の店売上の合計です。

「請求書の発行を省略」している場合には、入金記録(預金通帳など)から、売上を把握するしかありません。

 

2 必要経費の分類・集計方法

 

(1)領収書集め

平成28年の日付の領収書を集めます。

 

(2)領収書の区分け(その1)→事業に無関係なものは除く

(1)で集めた領収書を次のとおりに分類します。

(イ)事業に関する支出の領収書

(ロ)私生活の支出の領収書

(ハ)事業と私生活両方にまたがる支出の領収書

以上に分類し、(ロ)は捨ててください。捨てなくてもかまいませんが、確定申告とは無関係ですのでどこか別のところに片付けてください。

 

(3)領収書の区分け(その2)→勘定科目別に分類する

上記(2)の(イ)、つまり事業に関する支出の領収書について「科目別」に分類します。科目とは簿記の用語で、費用などをその性質に応じて分類する単位のことです。電話代、切手代などは「通信費」、電車賃、高速代、ガソリン代などは「旅費交通費」という具合に分類します。なお、分類する科目については税務署が配布している所定の損益計算書(青色申告決算書あるいは収支内訳書)の経費欄の科目に基づいてください(科目は適宜追加してもかまいません)。

次に、紙袋を用意してください。分類する科目が20あるとすれば20枚の紙袋(大きいサイズの封筒が望ましいです)を用意し、袋の表に科目つまり「通信費」「旅費交通費」などを記入してください。

 

(4)領収書の区分け(その3)→月別に分類する

上記(3)で科目別に分類した領収書を、今度は月ごとに分類します。つまり、「通信費」として分類した領収書が、さらに「通信費の1月分」「通信費の2月分」・・・として分類されます。月単位に分類できたならば、その月単位に分類した領収書をホッチキスなどで固定してください。

 

(5)領収書の集計とリストアップ(月ごとに集計後、年合計を算出)

科目別、月別に分類した領収書を集計します。未使用のノートを用意してください。任意の科目から順に月ごとの合計金額を集計し(領収書金額の足し算)、ノートに「通信費1月分6,000円、通信費2月分12,000円」といった具合に記入していきます。全月分の記入が済めば年額が計算できます。

 

(6)事業と私生活両方にまたがる支出の領収書

このような支出は比較的限られてくると思います。自宅兼事務所の場合の家賃や光熱費がその典型でしょう。科目にとらわれず、それぞれの支出ごとに分類し、事業と私生活部分を区分けする合理的な基準を考えてみます。たとえば、2階建ての一軒家を借りていて1階を事業用、2階を住居にしている場合には家賃の半分が必要経費となります。

なお、事業と私生活部分を区分けする唯一絶対的な基準はありません。ただし、次の点には注意してください。

●後日の税務調査の際に区分けした方法を説明できること

●あまりにも非現実的でないこと

●自身に都合がよすぎないこと

●事情(事業用と私用用の比率)が変わらない限り今後もその区分けの基準を用いること

以上の方法で、事業用部分が計算できればその科目を決定し、上記(5)の領収書のリストアップの最後にでも(12月分の最後)加えてください。

 

(7)損益計算書への転記(年額で)

(1)から(6)の作業が済めば、損益計算書への科目別年額の転記ができます。その金額をご覧になって実感はわくでしょうか(多いでしょうか、少ないでしょうか?)。

 

3 月ごとの「推移表」を作成する

 

収入と必要経費を月ごとに集計した結果を、月ごとの推移表に転記すれば年間の集計に便利であるだけでなく、年間の月ごとの損益の推移を「概観する」のに役立ちます。

 

推移表の様式は、タテに損益計算書の勘定科目(青色申告決算書P1、収支内訳書P1)を記載し、ヨコに月ごとの数値を記載します。ヨコの一番右には年合計を記載します。表計算ソフトがあれば簡単に作れます。

 

4 税務調査に備える

 

収入にせよ必要経費にせよ、どのように集計したか「自分でしか分らない」「後日になれば自分でもわからない」ではどうにもなりません。つまり、数学の試験問題や大学の卒論などにおいて、その答えや結論だけでなくそこにいたる「プロセス」が大切であるのと同じです。「誠実」にそのプロセスを記録し保存しておいてください。

 

《財務会計ソフトがある場合》

 

損益計算書は財務会計ソフトが自動的に作成してくれますので、上記の《財務会計ソフトがない場合》と比べて相当省力化できます。

 

1 収入の集計方法

 

(1)平成28年分の請求書控えの集計

請求書控えを参考に、財務会計ソフトの金銭出納帳の入金欄に入力します。ほとんどの財務会計ソフトでの入力項目(金額以外)は次のとおりとなるかと思います。

●日付(請求書控え記載の請求日付)

●相手科目(売上高としてください)

●摘要(得意先の名称や納品した商品を入力します)

 

(2)平成28年中に値引きと返品が確定した金額の集計

請求額と入金額の差額などから把握した値引きと返品を、財務会計ソフトの金銭出納帳の出金欄に入力します。ほとんどの財務会計ソフトでの入力項目(金額以外)は次のとおりとなるかと思います。

●日付(値引きが確定した)

●相手科目(売上高としてください)

●摘要(得意先の名称や納品した商品を入力します)

 

2 必要経費の分類・集計方法

 

(1)領収書集め

平成28年の日付の領収書を集めます。

 

(2)領収書の区分け

上記《財務会計ソフトがない場合》2必要経費の分類・集計方法(2)領収書の区分け(その1)と同じです。

 

(3)領収書を財務会計ソフトに入力する

上記(2)の領収書(私生活部分を除く)を、財務会計ソフトの金銭出納帳の出金欄に入力します。ほとんどの財務会計ソフトで入力項目(金額以外)は次のとおりとなるかと思います。

●日付(領収書記載の出金日付)

●相手科目(通信費、旅費交通費など)

●摘要(出金内容)

 

(4)試算表(損益計算書のみ)の印刷

財務会計ソフトは、上記(1)から(3)で入力した内容にしたがって自動的に損益計算書を作成してくれます。財務会計ソフトによっては、税務署に提出する青色申告決算書や収支内訳書と同様の様式で作成されます(これを提出することもできます)。

損益計算書を眺めていただいて、いかがなものでしょうか?

「利益=所得=一年間の稼ぎ」「一年間の稼ぎ−生活費=一年間に増えた貯金(マイナスの場合は、減った貯金あるいは増えた借金)」と実感できるでしょうか?

 

(5)貸借対照表(?)

財務会計ソフトになにがしかのデータを入力すれば、自動的に貸借対照表が作成されます。しかし、無視してください(青色申告特別控除は10万円となりますが)。貸借対照表は来年にしましょう。

 

3 税務調査に備える

 

財務会計ソフトを利用した場合には、総勘定元帳を印刷しておいてください。総勘定元帳とは、売上や経費の入力した個々の内容を科目別、日付順に表示した帳簿です。最近、「電子帳簿対応」の財務会計ソフトが普及していますが、面倒がらずに印刷してください。税務調査は過去7年に及びます。7年前のデータ、場合によっては「7年前のパソコン」を管理や保管するのは大変ですから。なお、パソコンの中のデータが見つからない場合には帳簿がないという扱いになってしまいます。 「うちはパソコンの中にデータがある」といっておきながら、いざ税務調査のときにその画面を表示できないケースが目立ちます。

 

仕入、在庫

 

大事なことを説明するのを忘れていました。「仕入」と「在庫」です。仕入の集計は収入(売上)の計算の裏返しであると考えてください。ただし、いわゆる掛仕入ではなく、その都度現金で支払っている場合には必要経費の集計と同じです。

 

仕入が多い場合には在庫が厄介です。仕入れたとしても売れていないならば必要経費(売上原価)にはなりません。この分を年度末の棚卸高(期末商品棚卸高)として仕入から除いておく必要があります。

 

「個々の商品の数量×その仕入単価」

 

これを年末にある「全在庫」について合計したものが年度末の棚卸高なのです。当然のこととして「年末に」数えておく必要があります。

 

「そんなもの数えていませんよ!」

 

いまさら(2か月も経過した確定申告の時期になって)数えることはできません。税務署や税理士に相談してください。

 

 

≪税理士に依頼するには≫

 

とりあえず上記の方法で、損益計算書までをそれなりに作成しておくことです(恥ずかしがる必要はありません)。ほとんどの税理士は業務着手にあたり、依頼者に次のことをたずねます。

 

●事業開始時期

●事業内容と規模

●帳簿類の整備状況

 

以上の質問に対する回答(ほとんどの場合1時間程度の面談で済みます)から、税理士は、記帳の不備(漏れ、重複、金額誤りなど)とその訂正方法をアドバイスしてくれます。 

 

「こんなにも経費が増えた」「まだ収入があった」と、結果は様々でしょうが、将来のリスク(税務調査のトラブル)は相当回避されます。

 

 

≪今後の記帳方法の改善≫

 

上記の方法は、いずれも超邪道です(財務会計ソフトを利用した場合、後日の税務調査で不備が発見されてもメーカーへの責任追及は不可能です)。記帳方法が分らないから「無申告にしておく」「スケッチ決算する」(記帳はしないで推計値により計算する)よりは「マシ」にすぎません。来年以降は簿記の書物を参考にする、経理講習会で経理技能を修得するなどして記帳方法を改善しなければなりません。

上記の方法の最大の欠点は、「漏れ」と「重複」を発見できないということです。「慎重にしているので大丈夫」「創業来20年間この方法だけれども、税務署に何もいわれない」とおっしゃるかもしれませんが、次のようなケースを考えてください。

 

1 領収書の無い支出

 

領収書から集計する以上、領収書が無ければどうにもなりません。

領収書の無い支出の典型は交通機関の運賃(自動券売機での購入)と慶弔金です。また、預金口座からの引き落としにより支払っている場合も領収書(引落しの通知)が省略されていることが一般的です(特に最近は省略すれば代金や料金が安くなることから省略を選択することが通常です)。

 

2 請求書を発行しない売上

 

小規模企業同士では、信頼関係からよくこのようなことが行われます。

「何から売上を集計するのでしょうか?」

「税務署は何から売上の漏れを把握するのでしょうか?」(税務署はそう簡単には見逃しません)

まさか、税務署は「請求書を発行していないのなら売上に含める必要はありません」といわないでしょう。そんなことをいえば、誰も請求書など発行しません。

 

3 売上から差し引く値引きや返品の把握

 

値引きや返品については、相手先と口頭でやり取りするのが通常です。値引きや返品の把握は請求額と入金額との対応関係に基づきますが、これを証明するには預金や現金の動きを把握しておく必要があります。しかし、上記の方法は「損益のみ」に着目した方法で、損益の背後で動く預金や現金についてはまったく考慮されていません。

 

4 領収書が2枚ある場合

 

●銀行振込みにより支払った場合の領収書は「振込金受領書」です。しかし、支払先によっては後日「領収書」を発行する場合があります。保険会社などはそうです。

 

●カード払いの場合も要注意です。カードで買い物した店も、カード会社も領収書を発行します(カード会社は利用明細)。どちらで集計すればよいのでしょうね。

 

いずれも、経費がダブって計上される典型です。税務署も熟知していますので、くれぐれもご注意ください。

 

5 請求書と領収書

 

申告期限が迫りあせってくると、請求書と領収書の区別がつきません。支出によっては請求書と領収書の両方があります。当然ですが、片方の金額しか必要経費になりません。

これも、典型的なミスです。

 

6 未払いと前払い

 

●その年に支払っていない場合でも必要経費になることはご存知ですよね(未払い)?

その分は入っていませんので忘れずに集計してください。(来年は必要経費にはなりません。)

 

●その年に支払っていても必要経費にならない場合もありますよね(前払い)?

その分も入っていますので除いておいてください。(来年は必要経費になります。)

 

記帳の正確性を人間の「注意力」だけに頼るのは極めて危険です。正確性が確保されている方法(複式簿記)による必要があります。

 

なお、今後、法人成り(個人事業者から会社への変更)をお考えの場合は、確定申告終了後直ちにこの方法から脱皮してください。この方法のままですと法人成り後、「会社から個人事業者に変更したい」「どこかにいい税理士はいないか(楽な記帳方法を教えてくれる税理士はいないか)」「もう決算申告をやめる(税理士との契約を解除する)」などの泣き言を吐くことになります。

 

異常な申告数値とは?

 

「記帳なんて面倒でしていられない。記帳をしないで税務署に怪しまれない数値で申告しておこうと思います。その数値を教えてください」

 

このようなことを聞いてくる人がいます。

 

税務署は業種、業態、地域などの別に平均的な申告数値を詳細に把握していますが、この数値は公表されてはいません。ただし、ごく一般的な税理士であるならば察しがつきます。また、この数値は「模範的納税者」を前提にしています。ですから税務署に疑われない正常な申告数値の場合の税額は、希望額(?)をはるかに上回るということです。

 

医療費?国民健康保険料?国民年金保険料?

 

大事なものを忘れていました。しかし、医療費、国保料、年金保険料は必要経費ではありません。所得控除です。医療費は「医療費控除」、国保料と年金保険料は「社会保険料控除」として必要経費とは別に差し引きします。必要経費は青色申告決算書や収支内訳書で収入から差し引くのに対して、医療費や国保料は申告書の「所得から差し引かれる金額(所得控除)」で差し引きます。

 

「どうせ引くことに変わりはないだろ!」は通用しません。また、間違っても必要経費と所得控除の両方でだぶって引かないようにしてください。

 

【生命保険料や地震保険料】

これも所得控除です。必要経費には含めないでください。

 

 

必要経費Q&A

5分程度でお読みいただけるように簡潔にまとめてみました。

必要経費について頭の中を整理していただければ幸です。

ついでに、机の中も整理してください(笑)。

 

 

個人事業者の記帳【最重要チェックポイント】

記帳の精度をワンランクアップするため、

特に重要なチェックポイントをまとめてみました。

 

 

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