平成28年分(2017年3月申告)

所得税確定申告情報(1/9)

 

 

≪所得税とは?所得とは?≫

 

1 所得税とは?

 

所得税は、「個人」の「所得」に課税される税金です(注)。所得税は、わが国のみならず多くの国において租税収入におけるウエイトが極めて高くなっています。それは、個人の所得を対象としているので多額の租税収入を得られること、所得が担税力の指標として合理的であることによります。

 

(注)法人(会社など)にも所得税が課税されます。法人に利子や配当などの支払いがされる際、その支払いをする者は所得税を源泉徴収しなければなりません。しかし、法人が源泉徴収された所得税は法人税額から控除(差引き)できます。つまり、法人に所得税が課税されるのは徴収を確保するための手段であると考えることができます(基本的に所得税が課税されるのは個人である)。

法人に課税される法人税も、利益を法人の所得として課税するので所得税(所得課税)であると考えることができます。しかし、わが国においては個人の所得への課税は「所得税法」、法人の所得への課税は「法人税法」として、それぞれ別の法律で規定を設けています。

 

2 所得税における所得とは?

 

所得税が上記のような税であることは誰もが知るところであります。しかし、いざ、「所得とは?」「課税される所得の範囲は?」と考えてみても、簡潔明瞭な回答が出てこないものです。

 

(1)所得税はすべての所得に課税される

所得についての概念や定義は多々ありますが、所得税における所得とは人が得た「経済的な利得」とされています。経済的な利得とは、金銭による収入のみが所得とされるのではないということです。例えば、勤務先からの金銭以外の給付(忘年会、社員旅行など)も所得とされます。なお、どの範囲の所得に課税されるかに関して、わが国の所得税は「すべての所得」としています。

 

(2)所得税は計算方法や担税力の違いに着目して所得を10種類に分類している

所得(経済的な利得)といっても、所得の性質や所得を得るにいたったプロセスはそれぞれで異なります。「勤労による所得」「事業による所得」「資産の運用による所得」「偶発的な所得」など様々です。わが国の所得税は、所得はその内容によって計算方法や担税力が異なることから、所得を次の10種類に分類しています。

1利子所得

2配当所得

3不動産所得

4事業所得

5給与所得

6退職所得

7山林所得

8譲渡所得

9一時所得

10雑所得(注)

(注)雑所得は、上記9種類以外の所得です。これから、わが国の所得税がすべての所得に課税されるのを知ることができます。

 

(3)非課税となる所得もある

本来は所得であっても、国民感情や社会政策の観点、その性質からして所得税の課税の対象とならないもの(非課税となるもの)もあります。給与所得者の通勤手当のうち一定金額、生活必需品の譲渡による収入、健康保険などの保険給付、失業等給付、損害保険金や損害賠償金で心身に加えられた損害や突発的な事故によるものは非課税となります。

 

《違法な行為によって得た利得》

違法な行為(窃盗、詐欺など)によって得た利得であっても、それを得た者が管理支配し利得を享受しているならば、所得税においては所得とされ課税の対象になります。このような扱いは、一見、違法な行為を公認するかのように思えるかもしれませんが、違法な行為の経済的性質、つまり、利得を享受できることに関しては適法な行為による利得と同じである点に着目していると考えられます。また、違法な行為によって得た利得は当然返還や没収となるのですが、現実には返還や没収とならないこともあるために、違法な行為の利得を直ちに所得税の課税の対象としないならば、適法な行為による所得が課税の対象となっていることとの均衡を欠いてしまいます。ただし、後日、違法な利得が返還や没収となったならば所得ではなくなります。

 

《収入と所得》

一般的に収入とは、それを得るための犠牲や努力を差し引く前のものをいいます。例えば、事業における収入はいわゆる売上代金であり、ここから犠牲である仕入代金や諸経費を差し引いたものを、所得税においては(事業)所得としています。ほとんどの所得には収入を得るための犠牲や努力が必要であるために、所得税においてはこれらを差し引いて所得を計算することになっています(給与所得における給与所得控除、事業所得と不動産所得における必要経費など)。

 

《最終的に所得は合算される》

わが国の所得税はすべての所得に税率を乗じて課税するという、いわゆる「総合課税」であることから、上記10種類の所得を最終的には合算しなければなりません。つまり、複数の所得があり、プラスの所得とマイナスの所得(ただし、マイナスが生じるのは不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得に限られます)がある場合には、「損益通算」することができます。損益通算とは、マイナスの所得をプラスの所得から差し引くことです。ただし、損益通算が制限される所得もあります。

 

3 所得税は誰に課税されるか?

 

所得を得た個人を単位に課税されます。なお、わが国の所得税では配偶者控除と扶養控除により個人の家族構成(家族が所得を得てそれを消費すること)を考慮した課税がなされていますが、これは個人の最低限度の生活に必要な部分には課税しないという趣旨であって、家族や夫婦を単位として課税するということではありません。なお、個人の所得が少ないほど税額も少なくなるわが国の所得税においては(下記7税率参照)、家族への形式的な所得分散により意図的に所得ひいては所得税を減額させること対して一定の歯止めがかけられています(事業所得や不動産所得の計算において、親族への対価の支払いを必要経費に算入することに対しては一定の要件と制限を設けています)。

 

4 誰の所得か?

 

誰の所得であるかについて、形式と実質が異なる場合があります。例えば、事業主が単なる名義人で事業から得られる利得を名義人以外の者が享受している、他人の不動産を賃貸しているなどです。所得税においてこのような場合には、真に法律上、所得を得る立場にあるものに課税するという立場に立っています。

 

5 所得税は暦年で課税される

 

所得税は暦年(1月から12月)で得た所得の合計に課税されます。例えば、事業を行っている人が1月から11月までは大変儲けていても、12月にそれまでの儲けを吹き飛ばしてしまうような損をした場合には、その年に所得税は課税されません(事業所得以外の所得がないならば)。

また、所得税の納税の義務が生じるのは暦年終了時(12月31日)ですが、納税額を計算するための事務処理の日数を考慮して実際の納税は3月15日までにすればよいことになっています(納税の前提として2月16日から3月15日までに申告をしなければなりません)。

 

《損失の繰越》

所得税は暦年での課税を原則としていますが、一定の場合(青色申告を選択している、災害などにより損害を受けた場合など)には過去3年間で生じた損失を差し引くことができます。つまり、損失は翌年以降3年間繰り越すことができるのです。

 

《何時の所得(収入)となるか?》

所得税は暦年で課税されるので、特定の所得がどの年度の所得になるかは大変重要なことです。なぜならば、所得とする年度が異なれば各年度の所得が異なり各年度の税率(下記7)も異なる場合があるからです。どの年度の所得になるかについては個々の所得の性質によって異なりますが、所得税においてはその年度の収入を「その年において収入すべき金額」としているので、現金などが手元に入った年度ではないということです。一般には、収入となる「権利」が確定したならば「その年において収入すべき」であるとされ、権利が確定した収入に基づいて(そこから必要経費などを差し引いて)所得の計算をしなければなりません。

 

6 個人的事情による担税力の考慮

 

上記2の10種類の所得は、誰が得た場合であっても同様の金額となります。しかし、個人が得た所得はまずは本人とその家族の生活(衣食住)のために消費されることから、所得税を課税するに当たっては、家族構成などの個人的事情(最低限の生活の保障)を考慮しなければなりません。この個人的事情の課税への考慮は、下記のとおりのいわゆる「所得控除」と呼ばれるものによって所得の金額から一定額を差し引くことによって行われます。この所得控除は、収入を得るための犠牲(収入−犠牲=所得)とは性質が異なります。

 

●基礎控除(誰もが認められます)

●配偶者控除(一定の所得以下の配偶者がいる場合に認められます)

●扶養控除(一定の所得以下の扶養親族がいる場合に認められます)

●障害者控除(本人やその扶養親族が一定の障害を背負う場合に認められます)

●勤労学生控除(一定の所得金額以下の勤労学生に認められます)

●雑損控除(災害、盗難などにより一定金額の損害を受けた場合に認められます)

●医療費控除(本人や親族の医療費の一定金額について認められます)

 

7 税率

 

総合課税される場合の税率は「課税される所得金額」が高くなるに従って段階的に上昇する仕組みとなっており、下記のとおり「所得の総額を区分」して、低い部分の税率は低く、高い部分の税率は高くして計算します。

 

●195万円以下5%

●195万円を超え330万円以下10%

●330万円を超え695万円以下20%

●695万円を超え900万円以下23%

●900万円を超え1800万円以下33%

●1800万円超え4000万円以下40%

●4000万円超45%

 

しかし、上記のように所得を区分してそれぞれに税率を乗じて税額を計算するのは面倒であることから、次の「速算表」を用いて「所得の総額に応じて」計算をします。当然、結果は同じです。

 

●195万円まで5%

●195万円を超え330万円まで10%(控除額97,500円)

●330万円を超え695万円まで20%(控除額427,500円)

●695万円を超え900万円まで23%(控除額636,000円)

●900万円を超え1800万円まで33%(控除額1,536,000円)

●1800万円を超え4000万円以下40%(控除額2,769,000円)

●4000万円超45%(控除額4,796,000円)

 

控除額とは、税率を乗じた額から差し引く金額です。

 

8 分離課税

 

所得税は上記10種類の所得を合計して、そこから所得控除を差し引いた金額に課税するのが基本的な仕組みとなっています(総合課税)。しかし、一定の所得については他の所得と合計してしまうと不都合が生じるものがあります。例えば、担税力を超えた税額になってしまうために納税者に酷である、他の所得よりも担税力があるので税額を高くしなければならない場合があるからです。

 

分離課税となる主な所得は次のとおりです。

 

(1)退職所得

退職所得(いわゆる退職金を受け取ることによる所得)は長年勤務してきた給与の後払い的な性質であり、特定の年度に一括して発生する所得です。このような所得を他の所得と合計して課税すれば、わが国の所得税が累進税率を採用していることから税負担が重くなってしまいます。また、退職所得は老後の生活の糧であることから税負担を軽減する必要があります。そこで、退職所得については他の所得と分離して課税するようにしているのです。

 

(2)山林所得

山林所得(山林の伐採や譲渡による所得)も、上記の退職所得同様に獲得には長期を要します。そこで、総合課税することによる累進税率の上昇を緩和しなければなりません。

 

(3)土地建物等の譲渡益(譲渡所得)

政策的な理由から様々な変遷を経ているのは誰もが知ることです。景気過熱時には高税率を適用して地価高騰を抑え、景気低迷時(地価下落持)には低税率などの各種の優遇を行っています。

 

(4)有価証券の譲渡益(譲渡所得)

上記(3)土地建物等の譲渡益(譲渡所得)と同様の変遷を経ています。

 

《分離課税となる所得と他の所得との損益通算》

分離課税となる所得であっても、他の所得との損益通算が認められます。ただし、継続的な所得(=経常所得といい、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得がこれに該当します)はその中で、偶発的な所得(譲渡所得、一時所得)はその中で、それぞれプラスとマイナスを差引した後に損益通算します。(ただし、土地建物等の譲渡所得(特定の居住用は除く)、株式等の譲渡所得など一切の損益通算が認められない所得もあります。)

 

9 申告納税(納税者自らが税務署へ申告書を提出)と源泉徴収(支払う者が所得税を徴収して税務署に納税する)

 

所得税は、1年間(暦年)の所得を翌年の2月16日から3月15日までに自ら申告し納税する「申告納税」が原則ですが、一定の所得については「源泉徴収」、つまり所得となるものを支払う者が一定の方法で所得税を源泉徴収して(差し引いて)、受け取る者に代わって納税する場合もあります(給与所得、利子所得、配当所得など)。

人によっては、源泉徴収だけで所得税の課税が終了することもありますが、自ら申告が必要な人の場合には源泉徴収された税額は最終的な税額の「前払い的」な性質となります。

 

10 相続税と贈与税

 

相続や贈与によって個人が取得する財産も経済的な利得ですので、所得税を課税しなければならないかもしれません。しかし、わが国の所得税においては相続や贈与により取得する財産は、それぞれ相続税や贈与税が課税されることから、所得税は非課税とされています。(相続や贈与による取得は単なる財産の移転であるので、経済的な利得は発生していないために所得税の課税の対象にはならないと考えることもできます。)ただし、法人からの贈与に対しては所得税が課税されます(法人からの贈与に対しては贈与税が課税されないからです)。

 

11 担税力?

 

「担税力」があれば課税されますが、担税力とは「所得」と同様に大変多様で難解な概念です。わが国は、「租税法律主義」であることから、国民から特定の租税を徴収するには、それについての法律の定め(明文化)が必要となります。要するに、ある物、行為、事実が課税の対象とされることが「法律」で決まっているならば、それらには担税力があるのでしょう(所得税においては所得があるのです)。租税についての法律は大変緻密で、個々人(税務署員と納税者)の身勝手な判断や都合が介入しないようになっています。当然そうでないと困ります。なぜならば、税務署員が納税者の顔色によって、納税者が一時の感情や都合によって納税額を自由に決定できてしまうからです。

 

会社からの給料や事業の儲けが所得税の対象となるのは誰もが知ることです。しかし、所得税において課税の対象となる所得は種々雑多で、それぞれについて緻密で厳格な法律の定めがされています。

 

「知らなかった」では済まされません。

「どうも、所得税が課税されそうだ」と感じたならば要注意です。

 

【住民税】

住民税(都道府県民税と市町村民税)は、前年度の所得(所得税の計算とほとんど同じ)に応じて税額が決まります。つまり、ある年に所得税が課税されたならば、翌年は「自動的」に住民税も課税されるということです(所得が一定金額以下の場合には課税されません)。各市町村(都道府県民税も市町村が徴収します)は、前年の所得を税務署(確定申告が必要な人の場合)や企業など(給与所得者で自らの確定申告が不要な人の場合)からの報告により把握します。

 

≪所得税の実際≫

 

所得税は国民にとっては大変身近な税金ですが、大変複雑難解な税金でもあります。わが国の所得税収入の大部分は事業による儲け(事業所得)と会社などが支払う給料や賞与(給与所得)からです。事業所得については自らが申告しなければなりませんが、無知あるいは故意により申告をしない、あるいは不適法(不正確)な申告をする人が少なからず存在するのが実情です。給与所得については会社などによる所得税の源泉徴収(いわゆる天引き)で基本的に課税関係は終了しますが、この源泉徴収をしない会社などが存在します。その他の所得(特に毎年生じない所得)については、特に不慣れなために申告を忘れてしまうことが多々あります。

 

所得が個々人の担税力の尺度として合理的であることは確かですが、「税務署が所得を正確に把握すること」「納税者が所得として認識すること」はそう簡単ではありません。

法律に従って少しでも多く(正確に)所得税を取ろうとする「税務署」と、少しでも納税したくない(納税することを知らない)「納税者」との「小競り合い」が日々繰り広げられています。小競り合いでは済まず刑事事件(脱税)となっていることもあります。

 

 

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