必要経費Q&A

個人事業者用(事業所得者用)

 

不動産所得の必要経費

 

≪追加説明≫

 

必要経費を理解するための関連知識

 

■必要経費と費用の違い

 

費用とは一般用語であるとともに簿記会計の用語でもあります。必要経費は税金(個人事業者に関する所得税法)の用語です。簿記会計用語としての費用は必要経費のことであると理解しておいてもよいと思います。要するに、費用とは事業における収益を生むための直接的あるいは間接的な支出です。

 

■費用(必要経費)と支出(出費)の違い

 

簿記会計の用語である費用では支払った部分が除かれる(前払費用や前払金)あるいは支払っていない部分が含まれる(未払費用や未払金)ことがありますが、一般用語である支出(出費)では支払った部分(お金を使うこと)を指すことが通常です。しかし、両者の違いは金額を認識する時点の違いであることから、最終的には両者は一致します。

 

■支出を資産計上するとは?

 

このあたりが簿記会計の難しいところです。資産には現金、預金、有価証券など様々なものがありますが、「支出(費用)に関連する資産」は支払ったものを直ちに費用とするのではなく特定の部分を翌年度以降の費用として繰り越すための資産です。購入した車両の代金を、購入した年度に全額費用(減価償却費)とはせず車両運搬具という資産勘定で繰り越すことなどがこれです。

 

■利益と所得の違い

 

簿記では収益(収入)−費用(支出)のことを利益といいますが、所得税の計算においてはこれを所得(事業所得)といいます。

 

■会社と個人事業者の違い

 

会社の利益=収益−費用(事業主=代表者の取り分としての給料を含む)⇒事業主の給料(役員報酬)に所得税が、利益に法人税が課税されます。

個人の(事業)所得=収益−費用(事業主の取り分としての給料は含まない)⇒事業所得に所得税が課税されます。

 

■計上?

 

この言葉も簿記ではよく出てくる言葉です。「資産計上、費用計上」といった具合です。金額を計算して帳簿に記入する(決算数値に反映させる)という程度の意味でよいと思います。当然、個人事業者の場合には計上した資産や費用の金額によって所得が、結果としての税額が変わってきます。

 

■記帳

 

入出金などを帳簿に記録することをいいます。帳簿は法律で定められた一定の種類を一定の要件に従って作成しなければなりません。

 

■事業主貸(個人事業者の取り分)

 

複式簿記で記帳(帳簿作成)をする場合には、この勘定科目の理解が必要不可欠となります。複式簿記の場合には、現金と預金の入出金を個々の増減ごとに把握しておく必要がありますが、事業主貸は費用とはならない事業主の生活費(私的出費)を事業用の資金から引き出した場合に用いる勘定科目です。要するに、個人事業者の簿記においては事業と私生活(衣食住や趣味など)を区分して、事業に関する費用のみを記録(記帳)するということです。

 

■必要経費と所得控除の違い

 

必要経費が事業所得における成果である収入に対応する犠牲であるのに対して、所得控除(配偶者控除、扶養控除、医療費控除、社会保険料控除など)は個人的事情による担税力を考慮するためにあらゆる納税者に対して認められる所得からの減額要素です。

 

■家事関連費

 

家事関連費とは、家事上(事業主の事業とは無関係な私生活)の費用と事業上の費用とが混在しており、その区分が数量や時間などで明確にできないものをいいます。自宅兼事務所の場合の家賃、水道光熱費などがそれです。家事関連費については、その事業における「使用割合」が合理的に区分できる場合に限って必要経費とすることができます。自宅兼事務所の場合には、双方の使用面積比などにより事業における使用割合が明らかにできなければなりません。

 

■家事費

 

事業とは一切無関係の費用(衣食住や趣味など)をいいます。当然、必要経費にはなりません。

 

■生計を一にする親族へ支払う給与

 

原則として必要経費にはなりません。ただし、青色申告を選択している場合には、親族の事業への従事状況などが一定の条件を満たしていれば給与として相当な額に限り必要経費とできます。白色申告の場合には事業所得から算出した一定額を必要経費にできます。

 

■生計を一にする親族へ支払う家賃など(給与は除く)

 

親族に支払ったとしても必要経費とはなりません。ただし、親族が負担した事業に必要な費用は必要経費にすることができます。例えば、親族名義の土地家屋で事業をしている場合には、これに関する減価償却費、固定資産税、水道光熱費などを必要経費にすることができます。(生計を一にしていない親族への支払いは必要経費にできます。)

 

■前払い

 

支出のうち前払い(先払い)となる部分は費用とはなりません。例えば、12月に翌年の新年会の代金を支払ったとしても支払った年の費用にはなりません。要するに、商品やサービスは支払いが済んでいても使用や利用をしなければ費用にはならないということです。

 

■未払い

 

未払い(後払い)であっても費用となるものはあります。例えば、1月になって昨年の忘年会の費用を支払ったとしても昨年の費用とすることができます。

 

■勘定科目の増設

 

青色申告決算書と収支内訳書の既成の勘定科目で不足する場合には勘定科目を新設します。特に業界特有の費用が多額に発生する場合には、その内容がわかるような勘定科目を増設しておくことが望まれます。

また、既成の勘定科目では「今風」の出費が当てはまらない場合があります。随分前から使用している勘定科目ですので当然のことです。ソフトウェアの購入代金やサポート料金はどれに当てはまるでしょうか?ネットショップの出店費用は?

 

■借金返済と必要経費

 

借金をしてから今日までのことを冷静に振り返ってください。借金をするのは仕入代金や諸費用を支払うためで、借金をしたならばそれ相当の必要経費が発生しているのです。つまり、借金の返済分(元金)を必要経費とすることは必要経費を二重に計上することになります。ですから必要経費とできるのは利息部分だけになります。

 

■リース、レンタル、分割払い

 

自動車などを購入する際、その支払方法として次が考えられますが、それぞれにより必要経費の計算が異なります。

 「全額自己資金」の場合には購入代金を減価償却により数年間にわたって必要経費とします。「リース」の場合には支払ったリース料を必要経費とします。「レンタル」の場合には支払ったレンタル料を必要経費とします。「分割払い(購入した業者への)」の場合には購入代金(未払い分を含む)を減価償却により必要経費とします。「金融機関などからの借入れ」の場合には購入代金(借入金による部分を含む)を減価償却により必要経費とします(先ほどのリースも同様に処理できます)。

 

■領収書(証)の入手を忘れたあるいは紛失した場合

 

至急発行してもらってください。相手先か拒む場合があります。そのときは帳簿(金銭出納帳や出金伝票)に出金内容を明瞭に記載し(金額、相手先、支払内容など)、領収書に代わる書類(請求書、納品書、注文書など)を残しておくしかありません。

 

■領収書が無いのが当然の場合

 

「電車賃」は、利用者と交通経路を記載した記録(金銭出納帳、旅費明細、出金伝票など)を残しておきます。「販売機での購入(ジュースなど)」は、いつ、どこで、何のために支出したかについての記録(金銭出納帳、出金伝票など)を残しておきます。「香典、祝金」は案内状やお礼状を残しておきます。「預金口座振替で領収書の発行が省略されているもの(保険料、月会費など)」は、通帳は当然として、毎月の振替金額を取り決めたときの契約書を残しておきます。

 

■領収書さえあれば・・・

 

「領収書さえあれば(たとえ偽造したものであれ)」は言語道断ですが、「領収書がないから」といってあきらめる必要はありません。かといって、「領収書がなくても」はいけません。

 

■領収書の日付と記帳の日付

 

領収書の日付は実際に支払った日付になることが通常です。問題は、領収書の日付よりも遅れて記帳する場合の日付を何時にするかです。領収書の日付で出金扱いしてもかまいませんが、厳密には事業用の資金が動いた日付になります。そうでないと、現金出納帳の残高が実際の現金の残高と一致しないからです。

 

■領収書の様式

 

領収書にはレシートなどの簡易なものも含まれます。しかし、日付、金額、店舗名だけでなく、(買い物をした客の)氏名あるいは社名、購入した商品やサービスの概略が記載されているものをできる限り入手してください。

 

■領収書と請求書の違い

 

領収書は代金を支払ったという証拠であることから、商品やサービスの内容が詳細に記載されていないことが通常です。一方、請求書には請求の対象となる商品やサービスの内容が詳細に記載されていることが通常です。ですから、必要経費に関する証拠資料としては領収書だけでなく請求書も残しておく必要があります。

 

■クレジットカードで支払った場合の領収書

 

買い物をした店の領収書とクレジットカード会社から月ごとに送られてくる明細書の両方を残しておく必要があります。

 

■銀行振込した場合の領収書

 

銀行が発行する受領書を残しておきます。ATMの場合には利用明細を残しておきます。ネット銀行の場合には「振込み完了」と表示された画面を印刷しておきます。

 

■開業費

 

このことで必要以上に悩むのは賢明ではありません。「開業費!?開業費!?」といって悩んでいる費用のほとんどは、実は既成の勘定科目に該当するからです。(例えば、開業の挨拶状は広告宣伝費です。)

 

 

【唯一絶対的に正しい勘定科目はあるのか?】

 

ある必要経費について、誰もが同じ名称の勘定科目を用いている場合とそうでない場合があります。例えば、電気代、水道代、ガス代については誰もが水道光熱費としていますが、ガソリン代については旅費交通費、消耗品費、雑費など様々です。

大切なことは、「ある支出が必要経費になるかどうか」であり、どの勘定科目になるかは二の次であるということです。

 

【税務署が行う勘定科目ごとの年度別比較】

 

税務署は数年分の申告数値を並べて検討します。当然必要経費についてもそのような検討をしています。この場合、単なる増減を問題としているのではなく、事業内容や経済情勢の変動に応じた変動であるかを検討しています。そして、その変動に不審な点があれば税務調査の対象とされるのです。

 

【同業者の動向】

 

気にするなといっても無理でしょう。しかし、同業者がどうであれ、あなたはあなたの解釈で必要経費を決めればいいのです。確かに税務署は同業者の数値を把握しています。しかし、それ以上にあなたの特殊事情も把握しているのです。ですから、同業他社と同じであるほうが不自然なこともあるのです。

 

【必要経費がほとんどない】

 

最近、名目上は独立した自営業者(事業所得者)であっても、特定で一か所の得意先の仕事だけをしている人が増えています。しかも、仕事をする場所は得意先のオフィスなどの正社員と同じ場所であることから外見はサラリーマンと区別がつきません。得意先がこのような施策を採るのは「人件費の変動費化」「諸経費の削減(特に社会・労働保険料)」「源泉所得税徴収義務の回避」がその主な理由で、従来からの「外注」「アウトソーシング」という考えとは根本的に違います。

 

このような人たちの共通の悩みは必要経費がほとんどないということです。家賃は不要です。パソコンなども貸与されます。自己負担は交通費程度です。

 

事業と無関係な出費で必要経費を水増しすることは当然できません。自身のスキルアップのための費用、例えば、研修会参加費用や書籍代などは必要経費にできますが「節約志向」からこれらも全くない人が多いです。

 

このような状態でサラリーマン時代と収入が同じ、つまり、給与総額(各種の天引き前)と得意先から受け取る収入額が同じであれば税負担が増えます。サラリーマン(給与所得者)では認められる給与所得控除がないからです。

 

かつては、「くろよん(9、6、4)」といって税務署による所得の把握率は、サラリーマン9割、自営業者6割、農林水産業者4割とされていました。自営業者と農林水産業者は、収入はごまかせるし必要経費は水増しし放題でした。しかし、「名ばかり自営業者」はそうはいかないようです。

 

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