不動産所得


2018/12/26

不動産所得の計算

不動産所得とは、不動産の貸付けによる所得です。不動産所得の金額は、事業所得同様に「収入−経費」として計算します。

不動産所得の計算は事業所得と比べて収入や必要経費の件数が少ないことから簡単で、記帳も1年分をまとめてできるかもしれません。しかし、個々の収入や必要経費の金額が大きいことがあり、処理に当っての判断次第で税額が大きく変わります。ですから、不動産所得のある人は常日頃から多額な入出金の税務上の扱いついて注意しておく必要があります。また、ミスが重大な計算誤りにつながることもありますので、余裕を持って処理をして、何度も見直すことが必要です。

◆入居者別の収入(管理会社の報告書を利用)

収入を集計するに当たっては、「集金管理用」に作成している入居者別の家賃の入金記録から集計します。管理会社に集金を任せている場合には、管理会社から送られてくる報告書を集計します。収入の大部分は定期的な家賃ですが、保証金や敷金などが不定期に入金されることがあります。これらについても入居者別に把握しておきます。

よほど賃貸物件も入居者も多い場合は別として、物件も数件で入居者も数十人の場合には収入の集計はそんなに難しくないと思います。

◆賃貸物件の取得価額(判断によって必要経費の額が大きく変わる)

賃貸物件の取得価額の決定は大変重要です。なぜならば、以後の大変長期にわたる減価償却の計算に大きな影響を与えるからです。不動産所得の必要経費の大部分が減価償却費ですので取得価額の決定は慎重にしなければなりません。

○土地と建物を一括して取得した場合
取得価額を土地と建物に区分しなければなりません。契約書にそれぞれの価格が明記されている場合にはそれに従いますが、明記されていない場合には時価などを手がかりにして自ら計算しなければなりません。当然、建物の取得価額が多いほど減価償却費が多くなるので有利になります。

○入居中の物件を取得した場合
売買価格は敷金や保証金を差し引いた金額となりますが、取得価額の計算ではこれらを加えた金額となります。資産(土地と建物)と負債(敷金や保証金)を同時に取引きすることから売買価格は差引計算となりますが、税務計算上は資産と負債を別々に計算します。

○付随費用の扱い
不動産業者の仲介手数料は取得価額に含めなければなりませんが、不動産取得税や登録免許税は取得価額に含めずに購入した年度の必要経費にすることができます。

○相続や贈与で取得した場合
被相続人や贈与者の取得価額を引き継ぎます。相続税や贈与税の計算で用いた時価ではありません。

○自宅を賃貸に転用した場合
取得価額から賃貸用に転用するまでの期間の減価償却相当額を差し引いた金額が取得価額となります。

不動産を買えば節税になる?

とにかく不動産を買い、それを賃貸すれば節税になるという考えは根強く、賃貸の採算や借入金の返済負担をあまり考えずに不動産に投資をする人がいます。

◆不動産所得の赤字は他の種類の所得と損益通算することができる

不動産所得が赤字(損失)となる場合がありますが、その赤字を他の所得(給与所得や事業所得など)と損益通算(差し引き)することを不動産投資の節税メリットと説明されていることがあります。

不動産所得が一時期は赤字となることがあります。投資の初期、大規模修繕を行った年などです。賃貸不動産業というのは必要経費が特定の年度に集中し赤字になる傾向にありますが、その赤字は以後の年度で回収しなければなりません。もし、長期間、赤字が続くのでしたら財産が擦り減っているということです。

◆相続税・贈与税の節税対策と混同している

相続税・贈与税において現金(預貯金)は額面どおりに課税されますが、不動産は取引価格(時価)より低く課税されることがほとんどです。土地は一般的には国税庁が算定する路線価で評価して課税されますが、この路線価は実際の取引価格よりも低く設定されています。建物は固定資産税評価額で評価されますが、これも現実の取引価格よりも低いことが普通です。

ですから、現金を不動産に変えて贈与する、あるいは不動産にして相続を迎えるほうが税負担は軽くなります。これを所得税の節税と混同している人がいます。不動産を買えば現金は減りますが直ちに所得税の節税にはつながらないのです。

さらに、不動産を借入金で購入することを相続税の節税と説明していることがあります。借入金という「負の遺産」が相続財産を減らすからです。いうまでもなく借入金は返済しなければなりません。遺産と遺産(相続で取得した不動産)からの収益でもって借入金が返済できない場合は大変なことになります。

★不動産賃貸業はサービス業です!

不動産賃貸業で成功するには優良な入居者(安定収入がありマナーもよい)の確保が必要不可欠です。そのためには、賃貸物件の立地条件や構造が良好であるだけでなく、入居者に快適な環境を提供するという「サービス精神」と「サービス提供のノウハウ」が何よりも大切です。

節税のためだけに不動産を購入しても財産を擦り減らすだけです。やる気のない業者が儲かるはずがないからです。「私は家主だ、大家だ、オーナーだ。キミに貸してやっているんだ!」という態度では消費者の要求が日増しに高まる昨今では優良な入居者は絶対に集まりません。不動産賃貸業はホテルと同じで、年中無休の24時間営業という大変厳しいサービス業なのです。

「関連業者や金融機関が儲けさせてくれる」「税理士がうまく節税してくれる」は甘いです!

不動産賃貸業の税金問題(不動産所得以外)

不動産所得の計算は購入時の取得価額(以後の減価償却)、大規模な修繕、入居者の出入り(敷金と保証金)さえ正確に処理しておけば、そのほかは非常に簡単です。なによりもお金の出入りの件数が少ないです。しかし、不動産所得のある人にはそれ以外に次のような税金に関する重大な問題が付きまといますので、正確な情報収集と適切な判断がしばしば求められることになります。

◆不動産を取得した資金の出所(源泉)

賃貸用不動産を購入するには高額な資金が必要です。税務署が把握している、不動産購入者の過去の所得と財産形成の状況からして不自然さがある場合には、税務署は所得や相続・贈与の申告漏れについて密かに調査を開始します。例えば、購入した不動産の名義人が専業主婦や未成年者である場合です。

◆消費税の申告と納税

不動産賃貸業の場合も、基準期間(2年前)における課税売上高が1000万円を超える場合には消費税の課税事業者となり、消費税の申告と納税が必要となります。なお、賃貸物件が「住宅のみ」の場合には収入が1000万円を超えたとしても消費税の課税事業者にはなりません。

納税する消費税は入居者から受け取った消費税から、諸経費を支払った際に上乗せして支払った消費税を差し引いた金額です。通常は受け取った金額のほうが圧倒的に多いでしょうが、賃貸物件を取得した年は支払った消費税のほうがはるかに多くなります。購入した建物の代金には多額の消費税が含まれているからです。

消費税の計算においては支払った消費税の計算を「みなし計算」することができる「簡易課税」が認められています。これが有利ならば選択すべきです。

◆固定資産税

当然のように課税されます。

◆事業税

不動産賃貸業も地方税においては事業に該当し、都道府県に事業税を納税しなければなりません。

◆譲渡所得

売却の際に課税される譲渡所得は、「何時売るか?」「誰に売るか?」「売却して得た資金を何に使うか?」によって大きく変わってくることがあります。

譲渡所得の計算は「売却収入−取得価額−譲渡費用」です。建物の取得価額は不動産所得の確定申告を続けていれば一目瞭然ですが、土地の取得価額については契約書か購入時の領収書しか手がかりがありません。売買契約書は大切に残しておいてください。

◆今後の相続(贈与)問題

不動産は相続税が課税される対象となる財産です。不動産の状況や貸付先によって相続税額は異なってきます。残された遺族が、相続税の納税に苦慮し挙句の果てには大切な不動産を「叩き売り」しなくて済むように生前に対策を講じておく必要があります。生前贈与は税負担が大きいといわれていますが、方法によっては(相続時精算課税など)負担が少なくて済む場合もあります。

不動産賃貸の収支を把握する(生活の糧を得る)

不動産賃貸をしている人であれば、不動産賃貸の収支についての理解はしています。しかし、実際に収支を「把握」している人は、どちらかといえば少ないように思います。というのは、不動産賃貸をしている人の多くは給与収入や年金収入があり、不動産賃貸は副収入であることが多いからです。また、不動産賃貸を相続により引き継ぎ、非自発的に不動産賃貸をしている人の中には収支の計算方法さえ不確かな人もいます。

◆専用預金口座の開設

収支を把握する第一歩は、不動産賃貸専用の預金口座を開設することです。この預金口座に家賃の入金をするのは当然として、固定資産税の納付、火災保険料や修繕費の支払い、ローンの返済をします。

◆不動産賃貸と無関係な入出金を混入させない

専用預金口座には余計な入出金を混入させてはいけません。しかし、中には専用預金口座で入出金させるべきか悩むものがあります。

例えば、各種の税金です。固定資産税は、賃貸物件と自宅が同じ市町村にある場合には一括して計算通知されます。課税根拠の内訳はわかるとしても、その区分けは大変です。所得税や住民税も不動産賃貸(不動産所得)以外の分が含まれていると区分けが必要になります。このような出費は、不動産賃貸に関する部分のみ専用預金口座から出金します。

◆生活費の引出し

専用預金口座から生活費を引き出し、私生活上の出費はその引き出した中から行います。専用預金口座から「直接」私生活上の出費を支払ってはいけません。例えば、私生活上の公共料金や保険料を専用預金口座から口座振替してはいけないということです。

◆資金が不足する場合

専用預金口座の資金が不足する場合には、私生活の資金から補充しなければなりません。大規模な修繕などはこのようにしなければならないことがあります。この場合、私生活の資金から直接支払うのではなく、いったん専用預金口座に入金して、専用預金口座から支払います。

◆不動産賃貸に関連する書類の保管

不動産賃貸に関する書類も私生活の書類とは分けて保管しておく必要があります。賃貸物件の購入に関する契約書や領収書は当然として、賃貸借契約書、ローンの返済予定表、諸経費の領収書など、紛失しないようにしなければなりません。